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京大漫トロピーのブログです

【12/7】爆発しないならば、彼は非リアである。

 こんにちは、蔦屋です。師走なのにこの1週間走った記憶がありません。

 本日取り上げる漫画は、『くノ一ツバキの胸の内』*1です。作者は『からかい上手の高木さん』も描いている山本崇一郎で、この漫画自体はアニメ化もされているため、既にご存知の方も多いと思います。
shogakukan-comic.jp

 「くノ一ツバキ」の舞台は山奥に暮らす忍者の里。「あかね組」では数十人の若い忍者見習いたちが日々修行に励んでいた。しかし里には男がおらず、修行に差し支えるため男を見たこともないという環境で、数十人の若いくノ一たちが暮らしている。
 ツバキはあかね組、戌班の頼れる班長。まだ見ぬ男を侮るくノ一たちを先生に代わり叱ることも。だが実は男に人一倍興味があるのはツバキの方で、男の情報を耳にすると頭が真っ白になるのであった。「男に恋する」乙女ツバキは念願の男に会うことができるのか?

男はサル

という漫画。キャラがかわいい。キャラ設定が天才的。とにかくキャラを愛でるための漫画です。

 ところで、この漫画で僕が一番好きな話は、「モテ」についての話です。
この話の前に、男のいない「あかね組」に突如、男がいる村からの転入生がやってきます。彼女はツバキの班に配属され、すったもんだを経て馴染んでいくのですが、当然彼女は里で唯一男のことを知る人間となるわけです。そんな彼女がポツリとこぼした「モテそう」という言葉にツバキがすかさず反応。そこから「モテ術」が里で流行り始める、という話です。

「モテる」ってなんですか?

どうすればモテるのかを問われた転入生は、自分もよくわからないと答えます。その代わり誰がモテるのかの実例を挙げて、「ベニスモモ」「モクレン」そしてツバキはモテるだろうと言います。この転入生による例示が、僕にはかなり的確なものに思えるのです。意識的にモテるキャラをバリエーションをもって描けるというのは、本当にすごい手腕だと思います。

 今日はこの三人の紹介をしつつ、モテとは何かを探っていきましょう。なぜそんなことをするかって?それはもちろん、実際にモテている、彼氏彼女がいるということはなるほど、幸福の一形態であることを認めることがひとまずできるかもしれない。しかしそれは出会い、体調その他多数の偶発的要因による局所的結果に過ぎず、現にカップルの多くは時が経てば崩壊することを運命付けられているといえる。ともすれば実際にモテるということは永続する幸福ではなく弁証法的に不幸とも結びつきうるものであるがゆえに人間はむしろモテることに振り回されることの方が多い。一方モテるとはどういうことかを知るということは、モテるということが質量的結果であるとすれば形相的原因を探ることであり、永続的なモテ、ないしモテとの永遠的一体化への方法であるということができる。そして何より、ソクラテス以来の伝統として知って生きるということは無条件に良いことであり、ソフィストの弁論術に対して……


それはいいんだ!*2


気を取り直して。
まずツバキ。
本作の主人公にして、あかね組戌班の班長。戌班の愉快な下級生(食べるの大好き、ツバキ大好き)をまとめるしっかり者。
忍術の腕は随一であり、組のくノ一たちからも一目置かれる。
しかし「男」というワードを聞くとポテンシャルが著しく低下。また男に関する事例ではモラルが緩む。

on/off

なお、モテ術を取得できなかったのは里で、脳筋の「ツワブキ」とツバキだけ。

次にモクレン
医療担当の申班の班長。その役どころもあり皆から頼りにされる。
奥義である「パーン」(患部への平手打ち)は打ち身から頭痛まであらゆる痛みを癒すため、厳しい修行において重宝される。

僕の踏み外した人生にも、パーンってして?

大変マイペースであり、たまの休日には朝から森に繰り出して散歩、山菜採りなど穏やかなひと時を過ごすことに喜びを感じる、のだが、頼まれると断れない性質であり結局仲間の世話を焼いている。
なお、モテ術(モテるポーズ)はこっそり試してみて、ひとりでに赤面していた。


最後にベニスモモ。*3
未班の班長。罠フィリアのミズバショウと、努力主義者かつベニスモモloverのトウワタを班員にもつ。
忍術の技能は高く、ツバキと張り合うほど。天才の自分には努力は不要と考えており、いつもハンモックなどでダラダラしている。それゆえトウワタには修行をしろといつもせっつかれている。
しかし実は凄まじい影の努力家で、努力を恥ずべきものと考えている節がある。ツンデレ

見習いたいもんだなぁ

モテると言われる彼女たちについて見てきたが、そこからモテの条件について以下のことが言われる。*4
貞淑 身体、心などについて一定の価値観を有しており、それに反する状態に自らを置くことを強く恥じる。
②実力 優れた能力により皆に認められている。
③責任 重要な役割を持つことにより多大な影響力を持ち、その責任を全うする。

うん、なるほど。この条件に合っている他の例としてハナ先生やコノハ先生も、確かにモテそうだよね。

男を「知って」いる先生方

蔦屋による自己評価
貞淑……恥は悪しき社会的構造物と考え、憎んでいる。
実力……なし。
責任……責任は悪しき社会的(以下略)


「もう最近 八方塞がりで
僕らどうすればいいのかな
なんかもう わからないんだ」

スガシカオ「コノユビトマレ」よりー

*1:よく考えたら、タイトルのセンスが狂っている。このリズム感。

*2:筆者は最近、小学校以来の非リア仲間が彼女を作ったために、もちろん祝福してはいるが、嫉妬とも焦りともつかない、際限なき空虚さを覚えている。

*3:紅季。本記事のレゾンデートル。

*4:性の聖性問題が分析を妨げることが考えられるが、実践的には聖なるものを聖ならざると仮定して行為することも必要だということを、身をもって実感する今日この頃。