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京大漫トロピーのブログです

【12/23】俺を育ててくれたボドゲ3選

ふれにあです。
今23時なんですけど、マジで何書けばいいか思いつきません。遅くなります。ごめん。

僕は今年で漫トロ最後なわけで、春から東京で働く予定です(卒業できれば)。あと何か月かすれば引っ越しになるわけですが、そこでこれまで自分が買ってシェアハウスに置いていた「ボードゲーム」の大半を持っていくわけです。
そうすると、今シェアハウスでは盛んに卓が立っているゲームでも廃れていってしまうかもしれません。この記事を残して、遠くの将来に新たなボドゲ伝道師や強プレイヤーが「誕生」してくれればいいなと思い、今回は自分を構成するボードゲーム3選とゲームに対する考え方を書こうと思います。


【ミリオンダウト】
僕がアナログゲームに目覚めたゲームは間違いなくこれだ。ミリオンダウトとは大富豪×ダウトの"天才専用ゲーム"で、1プレイ2~3分の1対1のトランプゲームだ。トランプの中でも14枚のカードしか使わず、しかしそれゆえに僕が知るゲームの中で最も自由度の高い「嘘をつく」ことができる。オンラインではアプリで、オフラインではトランプを使ってプレイできる。

million-doubts.com

僕がプレイしていたかつてのタイトル画面

 ルールは簡単。1人7枚ずつの手札を配り、それを相手より早くなくすことを目指す。出し方は基本大富豪と同じだが、カードを裏向きにして出すことができる。裏向きのカードは相手が何も言わなければ都合のいいように化け、相手がダウトしたら開いて嘘かを確かめる。嘘だったら山にあるカードを嘘をついた側に押し付けられ、本当だったらダウトした側に押し付けられる。どちらかが手札を先になくしたとき、もう片方の持っている手札の枚数が勝ち点になる。また、ゲーム中に手札が11枚を超えると即座にその枚数分の大負けになってしまう。
 このゲームの何が「天才専用」かって、それはなんといっても、真剣にやると信じられないほどイライラすることにある。セオリーは一応あるが嘘つきゲームなので勿論「セオリーは裏をかくためにある」ものであり、プレイヤーは常に理不尽を押し付けて勝ち、理不尽を押し付けられて負ける。負けて負けて負け続ける。1対1のゲームなのに、ほぼレート無差別のオンラインで一番勝っている人(=全盛期の僕)でも1,000試合やって60%しか勝てない*1ってやばくないですか??
 ゲームの攻略としては自分の行動のリスクとリターンの比較を徹底することであったり、配られたハンドの最高の結末を現実的な範囲で叶えることであったりと、あらゆるゲームに通じる。それでいてカードを裏向きにすれば何だって作り出すことができ、違和感のないストーリーを作って人を騙したり、違和感を感じて嘘を見破る。「運も実力の内」が本当だということも知ったし、頭では「こんなのほとんど失敗するじゃんよ」と思っていても都合次第ではダウトするような、「デジタル」的思考もここで知った。
 まあでも、このゲームには本当に色々な体験をさせてもらった。間違いなく今の自分の思考のベースに関与しているゲームだ。浪人期のセンター試験直前にニコ動で出会ってドハマリし、大学の講義中には講義を聞き、板書を取り、ミリオンダウトを打ち、ミリオンダウトのノートを取るというクアトロタスクをしていた。当時4回生だった同じ学内の先輩*2が同大学内で唯一のプレイヤーだった僕を見つけ、二人で当時僕の家であった熊野寮に集まって何時間もミリオンダウトを打つということをした。本当に懐かしい。このゲームは当時アクティブにプレイしている人≒Twitter上でプレイを公言している人が200人ぐらいで、民度が高いコミュニティだった。1回生の7月に初めてのオフ会として大阪のボードゲームカフェに行って初めて会う人達と知り合い、年上の大学生に「僕ふれにあさんとやるのマジで苦手」と言われて喜んだり、「コヨーテ」のような別のボドゲにも触れた。ミリオンダウトの人と会う回数は結構多く、合計で50人ぐらいのプレイヤーと実際に会って話した。ゲームマーケットに何度も行くようになったのもこのゲームの影響だし、オンオフ問わず何度か大会にも出た。一晩でレートを1950から1480まで落として包丁でリスカしようかと思ったこともあった。このゲームに関する経験は今は書ききれないぐらい多いな。
 僕は2019年の4月にこのゲームのアプリ内ランキングでダントツの1位になり、まあそこで満足して熱心にプレイすることはやめてしまったのだけど、27,000試合ぐらいプレイして、何冊ものノートを取った。今でもミリオンダウトのプレイヤーとは多少絡みがあるし、他のボドゲプレイヤーにある程度まとまった時間が取れたときに紹介して遊んでいる。*3今でもアプリはサービス中だが昔ほどの活気がないのは悲しいし、続いていってほしい。


HANABI
 ミリオンダウトで知り合ったプレイヤーがBGAでこれに興じているのをTwitterで見かけたゲーム。コンポーネントが少ない割に恐ろしいほど硬派で、かつ他のゲームとはかなり異質な、「ちゃんとした」協力ゲームである。今回取り上げるゲームの中ではプレイ回数はかなり少ないのだが、このゲームの「面白さ」は唯一無二だし、個人的には周りの人と最もプレイしたいゲームだ。自分はこのゲームが好きすぎてルール説明のパワポまで作った。

BGA版。ここでも争いは起きる。

 「ちゃんとしてない」協力ゲームとは全員で目的を共有していても誰か一人が音頭を取って他のプレイヤーをコントロールして、実質的にソリティアになってしまうようなもののことを指すのだが、このゲームはそんなありがちな欠陥を根本的に潰す「情報の非対称性」と「コミュニケーションの制限」が用意されている。2~5人のプレイヤーが一人数枚の手札を持つのだが、そのカードは「自分のものだけ見えない」。それを協力者からの限られた情報に基づいて順番通りに出していき、全員で順番通りにすべてのカードをそろえることを目指す。
 このゲームをちゃんと攻略する上で欠かせないのが「フィネス」のようなテクニックだが、これらはこのゲームを数多くプレイしてきた先人によってつくられた"宗教"なので、しばしば同卓者との間に宗教戦争が勃発する。本当に事前に示し合わせてから突き詰めればアクションを符号化して理論上最効率で伝達を済ませる方法*4もあるので、あくまで「お互い初対面だけど頭の中でだったら無限回プレイ経験を積める人」としてのプレイであるというスタンスを示し、噛み合わせていくゲームだ。テクニックが上手くいったり、何とか伝われとイレギュラーな発信をしてそれが意図通りに伝わったときの気持ちよさは他では味わえないものだし、逆に誰か一人がやらかすと途端にすべてが崩壊してしまう恐ろしさもある。前述の宗教を共有していてもなお細かな思想の違いによる争いは絶えず、例えば「このゲームは1回満点を取ることが目的なのか、それとも無限回の平均点を高めることが目的なのか」という議論も絶えない*5し、かつて僕の最初の1手をきっかけにゲームが崩壊し、お互いちゃんとした意志を持っての行動だったので1時間を超えるケンカになったこともある。
 また、このゲームはボードゲーム全体で見てもかなり異質かつ学問的であり、Deep Mindがこのゲームの「お互い初対面であるプレイヤーとの対局」をガチで研究している*6。やっていることの延長はまさに「人間とAIエイリアンのコラボレーション」であり、人類の進歩にもってこいだ。自分は数理情報系の大学院でゲームに関する研究をしているので、一時期本当にこのゲーム関連で修論を書こうかと考えていたことがある。
 ということでHANABIは「協力ゲーム」とは仮初の、この世のボードゲームの中でも類を見ないほどのギスギスを生み出す最高のゲームである。最初から争い合ったいた方がまだ和やかだったと言える、極限のシビアさを是非味わってほしい。


テラフォーミングマーズ】
 上二つとは比べものにならないぐらい、長く、重いゲームだ。「火星開拓の一番の功労者となること」を目指して立ち回りを競うというコンセプトで、1プレイで3時間ぐらいかかるのだが、僕は4年で200回ぐらいプレイしている。限られた時間の中で他のプレイヤーがどう動くかを観察・予測し、先手を打ったり後手に回ったりして、火星というパイを少しでも自分のものにしようとする。

 自分はいわゆる「重ゲー」に分類されるゲームは苦手寄りで、それはなぜかというと「序盤の1ミスでその後数時間の負けが確定してしまうから」である。「Barrage」や「Gaia Project」はまさにそれであり、特にプレイヤーの中で実力差があると純粋に楽しむハードルがかなり高い。しかしながら、このゲームはそうした重ゲーの中ではかなり逆転の可能性があり、最後まで順位がわからないことが多い。先述の2作は運要素をかなり排しているというストイックさがあるのは評価したいのだが、「テラフォ」は程よく運要素や秘匿情報があり、妨害に特化したカードによってプレイヤーバランスを取ることが比較的容易で、そしてソリティアとしての楽しみもそれなりに大きい。重ゲーとしてのバランスが非常に良いと思う。
 また、運要素がそこそこあるからといって、このゲームがぬるいということではない。やはりプレイすればするほど1行動の大事さがわかってくるし、ゲームがいつ終わるのかをゲームの序盤から想定しておくことや、200種類以上あるカードの中からたった1枚のためのケア行動、一度捨てられて除外されたカードが山札の枯渇によって復活する「転生」の考えなど、大規模なゲームだからこそできる長大な思考を巡らせることができるのは、オタク的な楽しみ方としてかなり面白い。
 僕がこのゲームをなぜこんな回数プレイできているのかというと、それは2020年に熊野寮で週に何度も僕を呼び出してテラフォに誘ってくれた3人のおかげである。彼らは僕よりしっかりと考えてゲームを解き明かしていき、毎回1時間を超える感想戦をして夜を明かした。初心者の頃は「めちゃくちゃ強いじゃんこれ」と思っていたカードがカスであることに気づいたり、思わずへえーと言ってしまうフロンティア精神のあるプレイを見られて本当に楽しかった。先週、そのうちの2人と久しぶりにテラフォをしたのだが、負けてもこんなに楽しいと思えるゲームはなかなかない。それはゲームのおかげであり、仲間のおかげでもある。
 あとこのゲーム、拡張要素が大量に出ていて公式が出しているものはすべて所持しているのだが、結局バニラが圧倒的に面白いのはちょっと残念だ。


【まとめ】
 これら3作のゲームは間違いなく自分の勝負観、延いては人生観の基盤に関与しており、かけがえのない出会いだった。こうした気づきや新しい考えを手に入れられたのは仲間がいたことは勿論だが、僕が大学生という暇のある期間に手を出せたからであるというのも大きいだろう。
 今年僕がランキング1位にした漫画もそんな、「余白」にしか突っ込めない形無きものを大事にしようという漫画であった。しょうもないことも大事なことも、仲間がいて気楽にできるってのは特権だね。

この画像、前に(会誌で)使ったな……

 四月からは今ぐらいの余白はなくなってしまうけど、こうした出会いや付き合い、そして愛すべきゲームと仲間たちがくれたものは大事にしたい。メリークリスマス。

*1:https://ameblo.jp/phrenia-dia/entry-12453547363.html

*2:その先輩は去年、ミリオンダウトで知り合った女性と結婚された。

*3:ただし極めて過酷なゲームなので、数多くの人間に薦めたがその場でハマっても1か月以上続けた人はいない。

*4:https://github.com/hanabi/hanabi.github.io/blob/main/misc/hat-guessing.md

*5:僕は後者だが同卓者のほとんどは前者。

*6:https://arxiv.org/abs/1902.00506