mantrog

京大漫トロピーのブログです

【12/7】爆発しないならば、彼は非リアである。

 こんにちは、蔦屋です。師走なのにこの1週間走った記憶がありません。

 本日取り上げる漫画は、『くノ一ツバキの胸の内』*1です。作者は『からかい上手の高木さん』も描いている山本崇一郎で、この漫画自体はアニメ化もされているため、既にご存知の方も多いと思います。
shogakukan-comic.jp

 「くノ一ツバキ」の舞台は山奥に暮らす忍者の里。「あかね組」では数十人の若い忍者見習いたちが日々修行に励んでいた。しかし里には男がおらず、修行に差し支えるため男を見たこともないという環境で、数十人の若いくノ一たちが暮らしている。
 ツバキはあかね組、戌班の頼れる班長。まだ見ぬ男を侮るくノ一たちを先生に代わり叱ることも。だが実は男に人一倍興味があるのはツバキの方で、男の情報を耳にすると頭が真っ白になるのであった。「男に恋する」乙女ツバキは念願の男に会うことができるのか?

男はサル

という漫画。キャラがかわいい。キャラ設定が天才的。とにかくキャラを愛でるための漫画です。

 ところで、この漫画で僕が一番好きな話は、「モテ」についての話です。
この話の前に、男のいない「あかね組」に突如、男がいる村からの転入生がやってきます。彼女はツバキの班に配属され、すったもんだを経て馴染んでいくのですが、当然彼女は里で唯一男のことを知る人間となるわけです。そんな彼女がポツリとこぼした「モテそう」という言葉にツバキがすかさず反応。そこから「モテ術」が里で流行り始める、という話です。

「モテる」ってなんですか?

どうすればモテるのかを問われた転入生は、自分もよくわからないと答えます。その代わり誰がモテるのかの実例を挙げて、「ベニスモモ」「モクレン」そしてツバキはモテるだろうと言います。この転入生による例示が、僕にはかなり的確なものに思えるのです。意識的にモテるキャラをバリエーションをもって描けるというのは、本当にすごい手腕だと思います。

 今日はこの三人の紹介をしつつ、モテとは何かを探っていきましょう。なぜそんなことをするかって?それはもちろん、実際にモテている、彼氏彼女がいるということはなるほど、幸福の一形態であることを認めることがひとまずできるかもしれない。しかしそれは出会い、体調その他多数の偶発的要因による局所的結果に過ぎず、現にカップルの多くは時が経てば崩壊することを運命付けられているといえる。ともすれば実際にモテるということは永続する幸福ではなく弁証法的に不幸とも結びつきうるものであるがゆえに人間はむしろモテることに振り回されることの方が多い。一方モテるとはどういうことかを知るということは、モテるということが質量的結果であるとすれば形相的原因を探ることであり、永続的なモテ、ないしモテとの永遠的一体化への方法であるということができる。そして何より、ソクラテス以来の伝統として知って生きるということは無条件に良いことであり、ソフィストの弁論術に対して……


それはいいんだ!*2


気を取り直して。
まずツバキ。
本作の主人公にして、あかね組戌班の班長。戌班の愉快な下級生(食べるの大好き、ツバキ大好き)をまとめるしっかり者。
忍術の腕は随一であり、組のくノ一たちからも一目置かれる。
しかし「男」というワードを聞くとポテンシャルが著しく低下。また男に関する事例ではモラルが緩む。

on/off

なお、モテ術を取得できなかったのは里で、脳筋の「ツワブキ」とツバキだけ。

次にモクレン
医療担当の申班の班長。その役どころもあり皆から頼りにされる。
奥義である「パーン」(患部への平手打ち)は打ち身から頭痛まであらゆる痛みを癒すため、厳しい修行において重宝される。

僕の踏み外した人生にも、パーンってして?

大変マイペースであり、たまの休日には朝から森に繰り出して散歩、山菜採りなど穏やかなひと時を過ごすことに喜びを感じる、のだが、頼まれると断れない性質であり結局仲間の世話を焼いている。
なお、モテ術(モテるポーズ)はこっそり試してみて、ひとりでに赤面していた。


最後にベニスモモ。*3
未班の班長。罠フィリアのミズバショウと、努力主義者かつベニスモモloverのトウワタを班員にもつ。
忍術の技能は高く、ツバキと張り合うほど。天才の自分には努力は不要と考えており、いつもハンモックなどでダラダラしている。それゆえトウワタには修行をしろといつもせっつかれている。
しかし実は凄まじい影の努力家で、努力を恥ずべきものと考えている節がある。ツンデレ

見習いたいもんだなぁ

モテると言われる彼女たちについて見てきたが、そこからモテの条件について以下のことが言われる。*4
貞淑 身体、心などについて一定の価値観を有しており、それに反する状態に自らを置くことを強く恥じる。
②実力 優れた能力により皆に認められている。
③責任 重要な役割を持つことにより多大な影響力を持ち、その責任を全うする。

うん、なるほど。この条件に合っている他の例としてハナ先生やコノハ先生も、確かにモテそうだよね。

男を「知って」いる先生方

蔦屋による自己評価
貞淑……恥は悪しき社会的構造物と考え、憎んでいる。
実力……なし。
責任……責任は悪しき社会的(以下略)


「もう最近 八方塞がりで
僕らどうすればいいのかな
なんかもう わからないんだ」

スガシカオ「コノユビトマレ」よりー

*1:よく考えたら、タイトルのセンスが狂っている。このリズム感。

*2:筆者は最近、小学校以来の非リア仲間が彼女を作ったために、もちろん祝福してはいるが、嫉妬とも焦りともつかない、際限なき空虚さを覚えている。

*3:紅季。本記事のレゾンデートル。

*4:性の聖性問題が分析を妨げることが考えられるが、実践的には聖なるものを聖ならざると仮定して行為することも必要だということを、身をもって実感する今日この頃。

【12/6】お嬢様学校コンプレックス

こんばんは、はいどろです。日を跨いでしまいすみません。紅白対抗アドカ6日目のテーマは「白」。白といえば純粋無垢、純粋で無垢なものといえば「天使」、そしてうら若き乙女たち。ということで少女漫画からひとつ紹介したいと思います。

左から柚子、和音、史緒

笑う大天使(ミカエル)』は、1987年から白泉社花とゆめ』で連載された学園コメディ。舞台は名門お嬢様学校、聖ミカエル学園。元伯爵家の血をひく史緒・名門華族出身の母を持つ和音・一大レストラングループの総帥令嬢の柚子らは真のお嬢様になりそこね、互いの本性も知らぬまま猫をかぶり、良家の子女然としたうるわしい学園生活を送っていました。ところがある日、柚子と和音は学園の裏の林でこっそり庶民の味「アジのひらき」をくわえている史緒を目撃してしまい、互いの本性がバレてしまいます。というのがこの作品の導入なのですが、すでに不思議な空気が漂い始めていますね。この独特の空気感は川原泉作品に共通して見られます。

これが、こう......。


川原泉お得意のうんちくを織り交ぜながら日常パートは進んでいきます。しかし、3人はあるとき戯れに化学実験で作った薬品が原因で超人的な怪力の持ち主になってしまいます。いろいろツッコミどころ満載ですが、サクサク進めていきましょう。

な〜んでだろうなあ


時を同じくして、巷では名門女子高生連続誘拐事件が発生していました。犯人一味が学園内にいることを突き止めた3人は、超人的パワーを使って誘拐事件を解決します。

女子高生の写真を挟んだ聖書に嬉しそうに頬ずりする神父...明らかにアヤシイ


とまあ、内容について触れるのはこの辺りまでにしましょう。個人的に印象に残っているシーンはこちら。麦チョコってそんなに好きでもないのになぜかこれを見ると食べたくなってしまいます。

能天気でよろしいことですな


最後に、記事を書いている途中にWikipediaで見つけた作者のエピソードが興味深かったので引用。

大学4年在学中に、初めての漫画「ジュリエット白書」を『花とゆめ』に投稿。その後、大学の教授の紹介で地元女子校の教員採用の面接を受けたが、良妻賢母教育と勉学のどちらを優先するかという質問に「もちろん勉学」と答えた結果、不採用となる。この件が川原のお嬢様学校コンプレックスの元となったという。


そして、『笑う大天使』の冒頭

アーメン....


川原泉の描きたかった少女像、本作の彼女らのようなキャラはこの作品以後も姿を変えて登場します。不思議な台詞回しや独特のぼーっとした空気感、キャラ造形などが気に入ったのであれば作者のどの作品から読んでも楽しめると思います。それではごきげんよう

【12/5】おまえの料理なんか誰も食わねーよ ザマーミロ!

こんにちは、へっどです。奇数日なのでテーマは「紅」、ということで真っ赤な激辛料理を作ろうと思います。

激辛料理といえば中国の四川料理が有名ですね。最近読んだ料理漫画だと『鉄鍋のジャン!』が中華料理をテーマにした作品で面白かったです。主人公の秋山醤はおよそ主人公とは思えない凶悪な面構えで、料理勝負に勝つためならいかなる卑怯な手段をも厭いません。対戦相手の調理道具に酸をかけて腐食させたり、審査員に提供する料理に中毒作用のあるキノコを盛るなどなんでもありです。せっかくなのでこの作品から何か作りたかったのですが、秋山醤の作る料理はどれも技量的に難易度が高かったり、使用する食材が違法だったりするので諦めました。

今回作るのは四川料理辣子鶏(ラーズージー)です。見た目が赤く、あまりポピュラーでなく、そして材料が集めやすいという理由でこの料理を選びました。それでは作っていきます。

材料:

  • 骨付き鶏もも肉 300g
  • 片栗粉 適量
  • 乾燥赤唐辛子 20g
  • 醤油 大さじ2
  • サラダ油 適量
材料はこれだけ

まずは赤唐辛子を鍋に入れて水を加え、火にかけます。沸騰したら火を止め、30分ほど蒸らします。

赤い

次に鶏肉に片栗粉をまぶします。多めの油を入れたフライパンを中火で熱したら鶏肉を入れ、表面がカリっと揚がるように炒めます。揚がったら鶏肉を取り出してキッチンペーパーの上で休ませます。

この状態だと味付け無しの唐揚げ

フライパンに残った油に赤唐辛子を入れて香りを引き出します。香りが十分出たら休ませていた鶏肉を再度フライパンに入れ、赤唐辛子の香りを移すように炒め合わせます。

ここまでは順調

仕上げに醤油を回し入れて強火で熱したら、油は残したまま具材を器に盛ります。

少し焦げてしまった……

思ったほど赤くはなりませんでしたが完成です。味付けは醤油と赤唐辛子のみなので単調な味になるかと思いきや、辛さはほとんど無く、また赤唐辛子の香りが鶏肉に移って独特の風味があります。骨付き肉を使い香ばしく揚げたことで肉自体にも強烈な旨味があり、少ない調味料で成立するようによく考えられたレシピだと思いました。ちなみに唐辛子は辛すぎて完食できなかったんですが、どうやら辣子鶏はこの鶏肉だけを食べる料理のようで、唐辛子は残して他の料理に再利用したりするものらしいです。

見た目のインパクトも十分で、手軽に美味しく作れるので皆様もよかったらどうぞ作ってみてください。

【12/4】YA向けをいつまで楽しめるか問題

紅白対抗アドカ4日目、白組2人目のやまぴです。特に理由もなく遅れました、すみません。



最近授業で図書館司書関係の授業を取っていることもあって、YA(ヤングアダルト、主に12~18歳の中高生)向けの作品に触れる機会が増えている。



元々「思春期」「青春」「甘酸っぱい恋愛」みたいなワードに弱く、その辺を扱った作品を見ることが好きだったので苦にはならない、と思っていたけど、寄る年波には勝てないのか、それともこれも成長の一貫なのか、若干青臭かったり眩しかったり、少なくとも昔のように主人公たちと同じ目線で物語を追体験することは日に日に難しくなっている気がする。悲しいね。




とはいえ、例え同じ目線にはなれなくとも、過去の思い出を慈しみ、追憶のかけらを噛みしめ、嘗め回し、しゃぶりつくすような感傷的な鑑賞の楽しみが新しく増えたともいえる。いつまでそれも続けられるか一抹の不安はよぎるけれど……。



さて、今回紹介する『ルート225』もそんなYA向け作品を探す中で見つけたもの。(この先ネタバレあり)



原作は芥川賞作家の藤野千夜、漫画は『放浪息子』とか描いてる志村貴子。淡い水彩画調の絵で、優しさと脆さが共存してる感じが題材とかみ合ってる。



水彩の余白の「白」も輝きが若さの象徴のようで、大学3年目おぢさん予備軍の目にはまぶしく映る。はい、これでテーマ回収。(つーかこれが限界)


14歳の少女エリ子は、一つ年下の弟のダイゴと家に帰る途中でおかしな世界に迷い込んでしまう。そこは現実と少しだけずれたパラレルワールド。微妙に違う風景、死んだはずの少女が現れ、家にはまだ温かいシチューがあるのに両親の姿はない。身に覚えのない仲直りをしている元親友。果たしてエリ子とダイゴは、両親のいる元の世界へ帰ることができるのだろうか。


あらすじはwikipediaから引っ張ってきたけど、早い話がパラレルワールド物。辻村美月『ツナグ』とか森絵都『カラフル』とかもだけど、こういうSF(少し不思議)要素は思春期の揺れ動く心情とすごくマッチしていると思う。子供と大人、日常と非日常、両方の狭間を行ったり来たりできるのはこの時代の特権だ。

こういうのわかるーーーーーー


この作品は基本的に姉のエリ子のモノローグがメインだけど、この独白が性に合うかどうかでこの作品の評価が決まる気はする。Amazonのレビューでは「少女の口調が鼻につく」みたいな意見も散見されたけど、個人的には結構気に入っている。若干斜に構えていて、かつそれに応じたメタ認知能力と年齢特有の豊かな感性はあるがそれをうまく言語化する術は持ち合わせていない程度の、思春期の中学生としては中々いい塩梅のキャラ造形だと思うよ。



その他のキャラも弟のダイゴは姉とは対照的にあまり自分のことを喋らないタイプだけど、SFへの順応度は高くて元の世界に戻るために活躍したり、エリ子の幼馴染のマッチョは「彼氏じゃない」けど、どの世界でも親切ないいやつだったり、この辺はYAの文法に乗っ取っていてなじみやすい。




姉のエリ子の独白に合わせて、物語は進んでいく。世界は少しだけ、でも確実に変わってしまっている中で、弟のいじめの問題、疎遠になった親友や苦手な叔父との関係など、思春期の問題をこれでもかと詰め込んでいる。個々のエピソードも(若干脚色はありつつ)心情面での解像度が高いが、こんなん全部並行して取り組んでたら頭おかしなるよ……。

いじめっ子相手でもさすがにやりすぎや




そんな状況でもエリ子は弟の前では普段通り「姉」として、そして、違う世界のクラスでも「エリ子」として気丈にふるまう。全部が少し違っていて、何より昨日まで当たり前に一緒に暮らしていた両親が存在しない世界。仮に自分がこの世界に迷い込んでしまったとして、彼女のように強くいられるだろうか。



唯一涙を見せるシーン、オネエチャ……



その後も姉と弟は協力者の助けを得ながら、なんとかパラレルワールドの世界の謎を解明していく。こういったYA向け作品は道中どれだけ辛くても最後にハッピーエンドと、そこから得られる教訓がセットになっているのがお約束だからね。結末が決まってる分ドキドキは少ないがその分安心して見れるのが良い。







ん?んん?あれ、お約束だよね……?










え、え、え、ちゃんと、元の世界に帰れるよね……?あと、7ページしかないけど、大丈夫?おぢさん、手伝おうか……?













あ、あ、あ、あ、、、、、、うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(ここで手記は途切れている)












最後にタイトルの話だけ。『ルート225』は国道225号線と√225=15のダブルミーニングになっている。


国道225号線は鹿児島県鹿児島市から枕崎市まで至る道路。作中で姉弟が迷い込んでしまった世界では目前に海が見えたことから、場所は恐らく道路南端の枕崎市。そしてそこから数キロ南に進めば見えてくるのは、古事記の神話が残る火乃神公園と、そして沈没した戦艦大和の慰霊碑。そこにいたのが死んだはずの同級生の少女。

今更だけどかわいすぎる


√225=15に関しては作品名でもあり、後半第8章のタイトルでもある。第1章のタイトルは√196=14。この作品の主人公は14歳の少女エリ子。第1章から第8章の間では、作品の描写上(主人公たちの体感上ともいえる)は恐らく3日しか経っていない。



国道の方はラストのネタバレを避けることができないので、√の方を少しだけ考えてみる。といってもこちらは意味は割と読み取りやすい。パラレルワールドの設定はあくまで物語を成立させるためのものだが、それを抜きにしても個々の作品内の3日間の描写は√196=14歳~√225=15歳の体験として普遍性のあるものになっている。親の不在を筆頭に、姉弟・親戚・友人との関係性、いじめ、異性との距離感、すべての問題がパラレルワールドがなくとも彼女たちに当然起こりえたものである。そして、それはつまり、現実世界を生きる読者である思春期の少年少女にも当然起起こりうるものである、というメッセージかな、多分!



とまあ、こんな感じで、自分の子どもができたらぜひ読ませてあげたい系漫画ですが、おぢさん予備軍の自分でも十分楽しめるとてもいい作品です。皆さんもたまにはYA向け作品を摂取して若さを保ちましょう!楽しめるうちはね!

【12/3】俺たちのスラムダンク

本日12月3日は何の日でしょう。


そう、映画『THE FIRST SLAM DUNK』の公開日です!!!!



自分もさっそく見てきましたが、めちゃくちゃ良かったです。
どうあがいても面白い山王戦、ここしかない!という絶妙な切り口のオリジナルストーリー、そして井上雄彦のリアルなキャラ造形とマッチしたCG映像で描き出される躍動感あふれるバスケシーン。
嗚咽混じりの号泣でした。
感動です。


申し遅れました、げんしです。
「スラダン」見に行くために約一年ぶりに京都の中心街へ繰り出しましたが、引きこもりゆえの体力のなさが祟り疲労で帰宅後即気絶してしまい投稿が遅れました。すみません。
今日(というか昨日)は奇数日なのでアドカのテーマは「紅」ですね。


世間はW杯で盛り上がっておりますが、この時期に盛り上がるスポーツと言えばサッカーだけじゃありません。
クリスマスをまたいで開かれる全国高等学校バスケットボール選手権大会、通称「ウィンターカップ」からもわかるように、バスケットボールも熱いんです!


そこで今日は「紅」高校バスケを合わせた漫画でも紹介しましょうか。


今日紹介するのは1996年頃の「ジャンプ」で連載されており、神奈川県湘南地区を舞台としてバカだけどジャンプ力のある主人公とクールで天才肌なライバルの2人を中心に、センターを務めるキャプテンや一時は停学にも追い込まれたスリーポイントが得意な元不良などバスケ部の個性的なキャラクターたちが持ち前の努力と友情で大会を勝ち進んでいく少年漫画です。


ここまで書けば何の漫画か分かる人もいるでしょう。



今日の漫画は










『I’ll』です。「スラムダンク」かな、って引っかかってもらえると嬉しいです。


古本屋で全巻セット500円とかでよく売られてる漫画なんで読んだことある人も多いでしょうし、読んだことある人ならわかると思うんですけどこの漫画、ガワだけ見ればほぼ「スラムダンク」なんですよね。
なぜ「スラダン」連載中に似たような設定で連載を始めたのか。47都道府県あるうちなぜ舞台がよりによって神奈川で、なぜよりによって湘南なのか。なぜ不良はスリーポイントがうまいのか......。


ちなみにどのへんが「紅」いかというと、背表紙ですね。



この背表紙が本棚の中で圧倒的存在感を誇っていたので、正直「紅」というテーマを聞いてこの漫画以外何も思い浮かびませんでした。
でもよく考えたら湘北のユニフォームも赤いし桜木花道の髪も赤いし普通に「スラダン」もテーマに合ってたのかも......。


とりあえず「アイル」について。
作者は『テガミバチ』の浅田弘幸。関係ないですけどクリスマスの時期になるとスガシカオが歌ってる『テガミバチ』のOPが無性に聞きたくなるんですよね......。
1995年から2004年まで月刊少年ジャンプで連載されていた漫画で、キャラクターの服装や街の様子、セリフのフォントから平成感がにじみ出ていてなんとはなしにエモーショナルな仕上がりです。


この漫画、ガワこそ「スラダン」に似てますが中身は全然違います。
本格バスケ漫画というより青春部活漫画という感じで、あまりバスケやってる印象はなく主人公と幼馴染がいちゃついたり主人公とライバルがいちゃついたりみんなで海辺BBQしたりバスケとは全く無関係のバンドマンと喧嘩したり、そんな感じの漫画です。
作中のコマでもバスケ描写の少なさを指摘してます(してない)。

このキャラ自身もバスケ素人のポッと出マネージャー


この漫画の真髄は単行本巻末に収録されているスペシャルエディションにあります。そこでは短いページ数で各キャラの絡みやサイドストーリーが描かれるのですが、これが完成度の高い短編で、本編はその短編の強度を上げるためのおまけみたいなもんです。


例えば5巻末に収録されている短編「手紙」では主人公と幼馴染カップルの話が描かれます。
主人公の立花茜は普段だと桜木花道清田信長を足して2で割ったような元気溌剌な性格ですが、子どもの頃に父親を亡くしているらしく、毎夏訪れる父の命日では少ししおらしくなります(多分この漫画のテーマとしては「喪失感を抱えた者たちの生き様」みたいなものがあるので、基本どのキャラも親しい人を亡くしたり大好きなものを見失ったりしてます。無駄に重い)。


そのことに気づいている幼馴染の芳川菫が立花に寄り添い、元気づけるために手紙を書くといった話なのですが、これが恋愛ものとして非常にキュンキュンします。本編ではどちらかというと立花とそのライバルのBL成分が多いんですが、それだけにこの短編の破壊力は強いです。なにより菫がかわいい。幼馴染、良い。

夏の湘南の浜辺で昼寝する幼馴染、良い


日本のクリスマスはやっぱりこういうカップルのためのイベントですよね。


俺はそんなカップルとは対の存在なはずなのに、なんでアドベントカレンダーとかいうクリスマスど真ん中みたいなイベントに関わらなきゃいけないんですかね。
虚しいよ。

【12/2】クリスマスをやっつけろ!(やっつけない)(やり過ごそう)

3回生も後半にさしかかり、人生に「就職」の2文字がちらつき始めた。親、友達、サークル、バイト……どこに行ってもその話ばかりしている気がする。嫌だ。大抵はへらへら笑うか叫ぶかして乗り切っている(?……やり過ごしている)が、断罪の時が刻々と近づいているのは確かだろう。人生のツケを支払うべく、処刑台に足をかける。今年のテーマは「紅白」。俺の担当は白。目障りなエントリーシートは、依然として空白のままだ。


こんにちは、夕陽です!京大漫トロピーが主催する12月を盛り上げる激熱イベント、紅白ファボ・RT合戦の2日目をお知らせするよ!
今日は偶数日なので、テーマは「白」です! というわけで、「白」に合ったいいテーマがないかと頭をひねった結果……なにも思いつきませんでした!

冒頭で白と就職をかけて話をしていたが……それは書いてて段々辛くなってきたので、やめた。せっかくのブログ企画なんですから、明るい話がしたいよね!嫌な「就職」の話じゃなくて、なりたい「目標」の話をしましょう!なにになろうかな?




犬……犬になりたい。




というわけで日々の疲れを癒してくれる犬漫画を紹介するぞ!みんなも獣になってクリスマスをやり過ごそう!

犬姫様二宮ひかる/アフタヌーンコミックス)

ただのポルノ漫画。主人公・健一(以下ケンイチまたはケニチ)が自室のベッドにて彼女とSMプレイに興じていると、毛布の下から見知らぬ全裸の美女が現れる。事態を呑み込めずにいるケンイチをよそに、浮気と勘違いした彼女は激怒し、出て行ってしまう。誤解だー!と三文台詞を吐いた主人公が次にとった行動は、濡れ衣の釈明ではなく謎の美女をリリーフ登用したSMセックス続行であった。

出だしはホンマにただのエロ漫画。いや、出だしだけではない。なんとこの主人公、全6話中にやったことが1回の露出プレイと2回のセックスだけという性豪っぷりである。この3回中に己の人生を顧みて前に進む決意をするわけだ。なめとんのか。

なっとるやろがい!
謎の美女の正体はケンイチ家の飼い犬・ライであった。ケンイチを見るうちに人間の生活にあこがれを抱き、気づけば変身してしまっていたらしい。彼女には振られちゃったけど、新しい従順な嫁が出来たぜ!よし、ハッピーエンドだな。風呂行ってくるわ……とはならないのが、この作品がアフタ漫画であるための最低限のエクスキューズだろう。うまい話にはなんとやら。ある朝ケンイチが洗面所の鏡をのぞくと、なんとそこには犬になった自分の姿が。エネルギー保存の法則に従い、飼い犬の人間化は飼い主の犬化によって贖われるのだった。
入れ替わってる~!?
この漫画最大(最低限)の見どころは後半の告解シーンである。犬にはなりたくねえが、人間でいることの理由を示せない主人公。「誰だって強く望めばなんにでもなれる」というライの言葉は、何者かになることを恐れ、努力を怠ってきた彼の心にブスりと刺さるのだった。 モラトリアムでぬくぬくしながら欲望に従うだけだった毎日。それこそ犬そのものだと吐き捨ててケンイチはむせび泣く。ついでに腰も振る。目に湛えるは懺悔の涙。シモから流るは白い涙。まったく忙しい奴である。
行為前から賢者モードに入っている
若干貶しつつもわざわざこの漫画を紹介してるのは、このシーンが今の自分に刺さるとまでは言わなくてもそれなりに感じ入ることがあったから……。 この漫画では、序列的な関係性というものがひとつのキーポイントとして存在する。ケニチに与えられているスケベパワーは、他者に対して優位に立つための道具として作用しているわけですな。そして、彼にとっては現実の諸問題(将来の選択、ライの人間化、etc.……)を振り切るためのエンジンでもあるんです。

飼い犬・ライが人間になる過程で獲得していくのもこの性のパワー。異性に対する自意識、羞恥心、というふうに段階を経て、最終的に初潮という形で明示されます。 アフタヌーンは初潮を真正面から描く。ジブリはメタファーする。

二人が同じ立場に立つことで仮初のエロエロ主従関係が破壊されます。同時にエンジンも切れて、ケニチの問題が前景化する。ライの変化に戸惑うのは、自分の掌の中だと思っていた存在が解放されていく姿に、自分が社会に合わせて変化していく・させられていくことを重ねて怯えているからなんでしょう。見事や。これはもはや『君の名は。』です。違います。

ほんで先刻の犬と人間の二者択一の話につながんねんな。前者は権利の剥奪。じゃあ後者は現状維持?ノンノン。自分が犬じゃないのなら、立派に人間がしたいなら、変わらなければいけません。受験や恋愛、そして就職…………人間の人生には、変化がイニシエーションとして設定されているのですから。まぢ最悪~~。

さあ、果たして主人公は許されるのか!?それとも犬に成り下がるのか!?真相は君自身の目で確かめろ! 全1巻、アフタヌーンが放つ衝撃の(文字通り)意欲作!




ま、俺なら犬ゥ選びますけどね……なんて軽いことを言える状況ではなくなってきている。コロナで就職氷河期になったってマ?どちらにせよ、高潔なニート精神に乗っかっていれば誰かが救ってくれる、なんてことは無さそうだ。NHKはぶっ壊され(ていないが)、岬ちゃんはそのメサイア思想とともに社会へ消えて行ってしまった。俺は降りしきる雪の中、モラトリアムのかけらを漫画から拾い集めている。死んだようにこの世を生きる犬、そう、ゆうれい犬として_____

京大漫トロピーは、働く新社会人の皆様を応援しています!(会員によります)


おまけ
・『天国への道』 作者:太ったおばさん
https://www.pixiv.net/artworks/58561073

犬と雪で思い出した。Pixivに載ってる無料漫画。最初と最後はロードムービーとして完璧に近いが、途中で人権派のガキんちょが急に〈〈真理〉〉に目覚めるシーンが挟まるので、苦手な人は要注意だ!

ほな、さいなら

【12/1】クリスマスで紅といえば……

どうも、旧会長のなめしです。

今年も漫トロは12/1〜12/25まで毎日ブログを更新するアドベントカレンダー企画をやります。今年のテーマは「紅白」。奇数日の会員が「紅」、偶数日の会員が「白」を題材に記事を書いて、更新ツイートのRT・いいねで競う……らしい。これ勝ったらなんかあるの?

 

さて、「紅白」というクリスマスから年の瀬までを意識したテーマで、流石に初手から年末を先取りするのはよくないだろう。となるとクリスマス、そして「紅」、といえばこれはもうサンタしかない(だいぶ白も入ってるけど)。しかし、サンタ漫画というのはそう多くないのも確か。最近だと板垣巴留の最新作『SANDA』があるが、直近の会誌で取り上げているし、こういう機会には新しく漫画を読まないとなんだか記事の書き損という感がある。

そんなわけでなかなかふさわしい漫画が思いつかず悩んでいたのだが、あるではないか。『SANDA』よりサンタ漫画としての純度が高く、かつ読んでおきたかった作品が。

 

 

 

そう、『★SANTA!★』である

ちゃんとクリスマスカラーなので完璧

別にガチのサンタは出てこないうえになぜ主人公の名前がサンタなのか説明されないとはいえ、音を濁らせた『SANDA』よりこちらの方が真のサンタに近い、ということに異論を挟む余地はないだろう。アドカの歴史も長いので既に誰か使っている可能性があるのが難点だが、打ち切り漫画を読む気分になってしまったのでもう止まれない。

蔵人健吾の『★SANTA!★』は2003年にジャンプで連載され、そして12話にして打ち切られてしまった作品である。とりあえず世界観の紹介だけしておくと、強大な魔神が打ち倒されたのち、各地で獣人が発生、さらに魔神の力が108つに分かれて各地の獣人たちに受け継がれたというもの。うーん。

1話のあらすじ・キャラクター紹介は試し読みでもしてもらえばいいだろう。3話以降はユウヒという鬼との出会いからニャージ一味との戦いに移り、そして俺たちの戦いはこれからだ!して終了。

 

実際に読んでみると、やはり(少年)漫画としては絶望的なまでに面白くない。下の画像は最初のページなのだが、他が黒背景+白文字のなか一つだけ長方形の導入文があったり、魔神を倒した剣士の名前がアララギケイスケだったり、全ての雲行きが怪しい。

作中の空模様がこの漫画の未来を暗示している

そもそも獣人という設定にも無理がある。さすがにファンタジーバトル漫画で動物縛りはハードモードが過ぎるだろ。有名どころの動物には限りがあるし、数を絞って話を作ったとしても獣人を強キャラに見せるのは至難の技にちがいない。キャラ造形(特に獣人)の問題はかなり深刻である。この世界の獣人は豚であれば額に「piggy」と彫ってあり、牛であれば肩当てに「猛牛」と記されているのだが、それはギャグ漫画のキャラクターの作り方だよ……。

なんでpiggy入れちゃったんだろう

作者は『★SANTA!★』の前にギャグ漫画を描いている。しかし、その経験をこの作品に活かすべきではなかった。短編ギャグ漫画であれば露骨なガワを用意して中身を典型から外すことが容易であるし、実際作者も2巻巻末についているギャグ漫画ではヒーローをクズ気味に設計できたりしている。とはいえ、ファンタジーバトル漫画の連載で初めからそれをやるのは難しいだろう。結局、作者のキャラクターデザイン能力の欠如等々がこの漫画にとてつもない安直さと空回り感を与えていると言わざるを得ない。というかどっちかっていうとコロコロなんだけど、2003年のジャンプってどういう雰囲気だったの?

 

とまぁケチをつけてきたが、この漫画で重要なのはそんなところにあるのではない。いや、安直さと空回りは本質的なのだが、読者の側でそれをプラスに転じさせないといけないのである。それさえできれば、先述したような難点の数々はえも言われぬ快楽と安心感を提供してくれるものへ一変する。たまに「ワンピース」みたいなコマあったりしてめちゃくちゃいい。

「ワンピース」みたいなコマ

「ワンピース」みたいな設定

ある種の空回り感を説明する意味でも、最後にこの漫画で最も有名なコマ(というか、そこしか知られていないコマ)に触れておくべきだろう。それが次である。

実際はページ真ん中でいきなりキレてテンポをぶった切っている

これだけ見ると全く意味不明だが、一応文脈はある。村の少女・ユキに世話になった鬼・ユウヒは、ユキと「オムスビを1つくれるたびに村を襲う獣人を1匹倒す」という約束をすることになる。しかし、鬼の一族の寿命は短く、ユキは残り少ない命を村の警護だけに使うユウヒを心配する。そんな彼女に主人公のサンタが、オムスビをあげることが実質的にはユウヒの枷になっていることを示すために放ったのがこのセリフである。

文脈込みでもまぁまぁ浅いのはともかく、このコマは単体で見るより最終話の描写と合わせた方が味が出ると思う。ニャージ一味を倒し、ユウヒはサンタとともに旅に出ることを決意する。下はそこにユキがやってきてサンタたちにオムスビを渡すシーンである。

オムスビを渡すことがユウヒを縛るとサンタに教えられたユキは、オムスビを渡さないことで門出を祝福する。この様子を見たサンタはもちろん……。

 

なんでお前がわかってないんだよ。

 

ここが『★SANTA!★』一番の笑いどころだと思うのだが、あまり言及している人を見たことがない。この手の漫画はネットがなければあまり広まらないが、広まったら広まったでパッと見衝撃的なシーンだけ先行して周辺部が置き去りにされちゃうんだなぁ。まぁ広まってもみんな読まないのはわかるけど……。

有名な打ち切り漫画が読みたかっただけなので雑に終わらせるが、総合的な読漫画体験としては悪くなかった。そういう方向性の漫画が好きな人は買う価値があると思う。

 

いやー、ブラックフライデーだかなんだか知らんが7割還元されてよかった〜。