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京大漫トロピーのブログです

【12/9】思い出はいつも綺麗だけど

こんにちは、まつだです。12月も中旬に近づき、世間はクリスマス一色の空気になりつつありますね。街を歩いていても、右にはアベック、左にはアベック、、。もう脳を焼かれる思いです。恋人がいないまま迎える18回目のクリスマス....大変むなしいです。家で1人寂しく、セブンの無駄に高くてちっこいショートケーキを泣きながら食べる自分が想像できる。こんなはずじゃなかったのに、いつからこうなってしまったのだろう…。
華の大学生、クリぼっちなんて避けたい!と思い立って、中学校の頃から仲の良い友達をクリスマスの遊びに誘おうと思い連絡を取った所、「クリスマスは恋人と過ごす」とのこと・・。彼女は中学時代から恋愛なんてまるで興味がない風でしたが、今年入った大学で初めての恋をしたらしいです。初めて恋をした人と付き合える、それってとても素敵だなあ…と思います。何においても初めてってトクベツですが、特に恋愛における"初めて"の尊さは言葉にできないほど清いと思います。また、恋愛において'好きなタイプ'が固定されている人って、前好きだった人の面影を残してる人を好きになってる、ってことだと思うので、心のどこかに今好きな人以外を思い浮かべてる時点で、純粋な恋愛じゃないと思うんです。だから、そういった気持ちが無いまっさらな恋愛をできるのは、"初恋"限定だと思うんですよね。

今回のテーマは「誕生」ということで、恋心の誕生、"初恋"に焦点を当てた作品を紹介したいと思います。

初恋限定。』(ハツコイリミテッド)

簡単なあらすじとしては、「中学生•高校生の8人の女子の、初恋にまつわるお話」といった感じです。物語はオムニバス形式で展開されていきます。


↑こちらは中学生ヒロインたち。
自他共に認める美貌の持ち主、江ノ本慧
美少女だが重度のブラコン、別所小宵
クールで隙の無い褐色美少女、土橋りか
大人しめ清楚な美少女、千倉なお
そして、本作における事実上の主人公、有原あゆみ

このあゆみちゃんが財津操という巨漢な男子高校生に惚れられたことで、物語はスタートしていきます。

全くタイプではない彼からのアプローチに困り果て、学校で力尽きてしまったあゆみ。そんなあゆみを助けてくれたのは、同じクラスのイケメン男子、財津衛

ただしイケメンに限る、的な行動を素でやる恐ろしい奴です。あゆみちゃんはまんまと財津君に惚れてしまうんですね。
ん、ちょっと待てよ?"財津"という名字、どこかで聞き覚えが……

そうです。彼は先述した、あゆみちゃんのことが好きな財津操の弟なんですよね。なかなかに複雑です。
そんな衛(財津弟)にも想い人がいました。二つ上の高校生の幼なじみ、山本岬です。
3巻の表紙のお姉さんです。めちゃくちゃえっち‼︎
この岬にも後々想い人ができるのですが、その相手は…
実際に読んでからのお楽しみに。

ここまでお読みになった皆さんはお分かりでしょうが、この作品、ヒロイン達がとにかく"可愛い"んですよね。モノローグの一言でさえも甘酸っぱい。心理描写がリアルです。キャラデザもさることながら、性格も個々に異なる愛らしいヒロイン達の恋模様に注目です。

色々なキャラの視点から話が進んでいくので、前の話でチラッと出てきた脇役程度の子がメインのお話になったり、その子が、また別のヒロインの話ではサポート役になったり、と飽きることなく話を楽しめます。
この点については、作者も
「このマンガには特定の主人公は存在しません。逆を言えばどのキャラクターも主人公です。」と述べています。
なので、キャラクター贔屓するのはなるべく避けたいんですが、私が特に好きなキャラについてどうしても紹介したいので、この場を借りて

江ノ本慧ちゃんです。「男は顔」と述べる彼女でしたが、体育祭の応援係の仕事中、普段おちゃらけている顔もイマイチでスケベな男子、楠田が真面目に仕事を頑張っている姿を見て、徐々に彼の事が気になり始めます。
しかし、普段喧嘩ばかりしている楠田に恋にも似た気持ちを抱いてしまったこと、それは彼女のプライドに反するものでした。対する楠田も、慧のことが気になってはいるが素直になれず…。果たして、彼と彼女の気持ちが交わる日はくるのか。結末は、その目で見届けてほしいです。

しかし、この作品の魅力は別のところにあると私は思います。巻末の『限定少女』という話が非常に良いんです。
ドジっ子の中学2年生、安藤そあこが下着を全部つけ忘れて登校してしまう、というよくある設定なんですが、作者の技量と女性キャラの美しい身体の描き方により、数ページでも大変満足できるものになっています。このおまけ漫画のためだけに買っても損はない、と言い切れます。

このブログを読んでいる皆さんは、とっくに初恋の経験がある、それどころか、初恋の思い出さえ忘れてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。だからこそ、この作品を読んでほしいです。初めて恋をした時のドキドキする気持ち、ワクワクする気持ち…失ってしまった恋の輝きを、思い出させてくれます。
成長した現在の私達は、マッチングアプリ機械的な出会いを求め、婚活サイトの優先条件のチェックボックスを学歴・職業・年収で埋め、多くの人が、学生時代のような相手の"人柄"や"行動"に惹かれる、といった純粋な恋愛の仕方を忘れてしまっています。

でもそれは仕方のないことですよね。好きという真っ直ぐな気持ちだけで生きていけるほど人生は軽いものではないし、将来を視野に入れた選択をすることは、必ずしも間違っているとは言えません。むしろ正しく、称賛されるべきものです。
それゆえに、この作品を読み、初恋の綺麗な記憶を思い出してみるのはどうでしょうか。初恋を神格化しすぎな気もしますが、初恋なくして今の恋愛はありえない、とまでは言い切れなくても、初恋が現在の恋愛観に影響を与えている部分も、少なからずあると思います。
戻れない過去が、失ってしまった青春が、いつかの未来の自分の背中を後押ししてくれることもあります。過去を振り返ることは退化ではなく、前に進むための一歩でもあります。