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京大漫トロピーのブログです

【12/21】夜は短い。一年も短い。

まるたです。
もう入トロ5年目の出番ですか。クリスマスはもう目の前に近づき、2017年も終わろうとしています。
漫トロピーも来年を見据え一回生中心の新体制に移行し、新会長をはじめ非常に積極的に働いてくれており頼もしい限り。願わくば夜遅くまで果ては朝まで残りボドゲに興じる一回生が増えると嬉しい。


さておき、本題に参りましょう。
といえば、京都大学に通う僕が紹介するにふさわしい漫画があります。
僕は森見登美彦作品の世界観に憧れて京都の大学に進学したのですが、氏の代表作の一つが夜は短し歩けよ乙女
春の先斗町、夏の古本市、秋の学祭、冬の流行り病と京都の四季を駆け抜け、いや歩き抜ける黒髪の乙女と、彼女に一目惚れし何とか気に入られようとナカメ作戦*1を実行する偏屈な先輩の物語です。
今春にはアニメ映画が公開された大ヒット作なので今更ですが、2008年にコミカライズされています。

原作小説を読んだうえでの感想で恐縮ですが、「黒髪の乙女」と言えば中村佑介による表紙絵や映画版の、素朴で知的な女性のイメージが強い。一方で琴音らんまるの描く乙女は大きなくりくりおめめが特徴的。従順な後輩らしくて可愛らしいのですが、やはり幼すぎる。彼女の珍奇な行動の数々が、掴み所のない謎めいた性格というよりも単なる幼さからくるものに感じられるのが難点。
ポップな絵柄でキャラクターがよく動いてくれるのは楽しいが、何とも動きがコミカル過ぎて、原作の味(独特の怪しげで偏屈な雰囲気や、冗長な台詞回し)が浮いて感じられてしまう。あの毒の混じった阿呆なモノローグはどこ?
良い点としてはオリジナルエピソードが多い!原作の倍以上のボリュームです。おぼろげな記憶を辿ると、休講で暇する乙女の行動を分析・推測して大文字山に登る話などは面白かったです。原作エピソードも学祭編でプリンセスダルマを演じる乙女の表情の見事なこと。原作とのギャップはありますが、女の子が可愛いし漫画版の世界観は完成しているので大学生のコメディ作品として読めば楽しめるのではないでしょうか。
そういえば、2年前だか3年前だかのNFで黒髪の乙女のコスプレをした女性がいましたね。緋鯉を背負い、達磨を首飾りにし、様々なブースを歩き巡る姿はNFにおいてもひと際目を引く存在でした。


これだけでは寂しいのでもう一つ。
といえば、見る将の僕はAbemaやニコ生で将棋中継をよく観ます。今年の将棋界は史上4人目の中学生棋士である藤井四段のデビュー・連勝記録に始まり、加藤一二三九段の引退、羽生棋聖竜王を獲得し永世七冠の資格を得るなど話題に事欠かない一年でした。
今年の漫トロでは棋士の対局時の食事に注目した『将棋めし』が流行り、僕も個人寄稿で「将棋漫画十選」とか書いてたのですが間に合いませんでした。糞座談の校正が長引いたのが悪い。そこで没原稿を引っ張り出して漫画を紹介します。「棋士には月下の光が良く似合う」という名言を生んだ作品、『月下の棋士』。

昭和の大棋士・御神三吉の紹介状を持参して将棋会館を訪れた青年・氷室。圧倒的棋力を見せつけて奨励会に特例入会した氷室は、御神三吉がタイトル戦で用いた幻の戦法「端歩突き」で将棋界に旋風を巻き起こす。神を自称する名人滝川や新世代の天才佐伯を始め、一癖も二癖もあるライバル棋士を相手に、最強の棋士を目指す青年の物語。――ここまであらすじ。
能條純一による不朽の名作です。入会当初は圧倒的な強さを見せつける一方で精神的な幼さを感じさせた氷室が、棋力も人間力も高い難敵と戦うことで、更に脆さを見せながらも、じっちゃんと自分の将棋を信じて勝ち抜く姿が格好いい。いずれの対局もインパクトのある戦形で見どころがあり、演出も優れています。強い棋士が指すと、駒が光るんですよ!
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何より魅力的なのは、実在の棋士をモデルにした登場人物たち。*2軒並み奇人変人ながらも、対局描写からは棋士としての誇りを強く感じられ、迫力ある表情、台詞が強い印象を残す。この辺りは能條純一の見事な手腕と言うほかない。神を自称する名人・滝川やいわゆるデジタル世代である一方氷室への強い執着心をもつ佐伯など人間味を感じさせない棋士が感情的な氷室と上手く対立しています。キャラ紹介漫画でもあります。
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↑登場する変人たち(ごく一部)
巻末には監修の川口俊彦さんによる2Pのコラムが掲載されていて、これがまた面白い。1993年連載開始ということで、米長邦雄升田幸三大山康晴の紹介に始まり、羽生善治新星として紹介されるなど時代を感じられて興味深い。
将棋を知らない人は何から楽しめばいいやらですが、こんな感じで棋士から興味を持ってみたり、日曜午前のNHK教育NHK杯を観たり、タイトル戦に注目してみるのはいかがでしょうか。中継のある対局なら、今は叡王戦本戦が佳境に入りつつあるので将棋連盟サイトから日程を調べてみましょう。
しかし何より注目したいのは将棋界のトップ、名人のゆくえ*3です。皆さんは将棋界の一番長い日という言葉をご存知でしょうか。三月上旬に行われるA級順位戦の最終日のことです。名人戦挑戦者やB級1組降格者の決定はこの最終日までもつれ込むことが多く、非常に重要な一日として棋界内外から注目されます。毎年長時間の力戦が繰り広げられ、日を跨いで熱戦が続くことも珍しくありません。今年度は5連勝と好調なスタートを切った豊島八段が直近2連敗を喫し、羽生竜王と久保王将と並び2敗組が3人*4と面白い展開になっています。


最後に、僕はアイマスも好きなんですけど、去年あたりから81m@s(将棋×アイマス)動画が増えています。
元々、『春香と学ぶ将棋講座』で将棋のルールを紹介したり『アイドルペア将棋』でアイドルが対局する試みはあって、更に眉間飛車Pの『81マスのマーメイド』は将棋とドラマが一体となった世界観が画期的で、演出も工夫された傑作でした。
それから数年が経った2015年、KKPPによる『盤上のシンデレラ』という動画が投稿されました。

アイドル=将棋指しだったんだよ!という世界でのモバマスキャラによる将棋動画。
KKPPの棋力の高さ、将棋内容の深さ、アイドルの個性の扱い方、演出・BGMの分かりやすさ*5、どれをとっても優れています。居角左美濃急戦や天彦新手*6など本当に当時の最新定跡まで研究しているのが凄くて、こんな動画って中々ないんですよね。投了のタイミング、事前研究の価値、解説者の在り方、ソフトの評価値の見方など扱うテーマも深い。世界観も物語も面白いし、島(村卯月)の早投げという小ネタから始まったとは思えないクオリティです。
話が盛り上がってきたところで、残念ながら昨年秋の18話を最後に製作が中止されてしまったのですが、今も続いていたら雁木とか採用してたんだろうなあ……
このシリーズが話題になったのをきっかけに、より物語寄りの『神崎蘭子の将棋グリモワール』などいくつかの作品が投稿されました。新時代感ある。
なんか今年は漫トロ内にPが増えたようなので、是非見て欲しい。


終わりだよ~(o・∇・o)

*1:ナるべくカのじょのメにとまる作戦のこと

*2:滝川(谷川)、大原(大山・中原)、村森(村山)など

*3:行方八段がいるので漢字だとややこしい

*4:先ほど、羽生竜王が投了。3敗に後退した。

*5:脳内将棋盤パリーンも終局のテーマも大好き

*6:佐藤天彦八段(現名人)の角換わりにおける新手・5四銀のこと。公式対局で初めて指される以前にシリーズ第4局で解説されていた