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京大漫トロピーのブログです

【12/6】それが何か見せつけてやる

げんしです。
まず始めに、Adoさん、「うっせぇわ」におかれましては2021年度新語・流行語大賞受賞おめでとうございます。
「正しさとは 愚かさとは それが何か見せつけてやる」
良い歌詞ですね。

ということで自分のテーマは正しさの「正」です。
と思っていたのですが、「正しさ」について書いていくうちに色々とっちらかって収拾が付かなくなってしまったので、このテーマは諦めます。悔しい。まぁでもせっかく書いたのに全ボツはダルいので、とりあえず自分が宣伝したかった曲などを貼り付けときます。一番言いたかったことは、1st Album「狂言」リリースおよびワンマンライブ「喜劇」開催決定おめでとう、Adoさん、ということです。

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ここからは、自分が代案として考えていたテーマ「性」について書きたいと思います。
実は自分も『少年のアビス』について書こうかなとぼんやり考えていたのですが、今年の12月4日分のアドベントカレンダーでおしおさんが見事に紹介してくださっていたので、自分は「アビス」に似ている漫画を紹介しようと思います。

『少年のアビス』は田舎が舞台で、を扱い、を解き明かしていく話なのですが、ちょうど二週間前、同じように田舎・性・謎の三要素を備えた漫画をどっかで読んだことがあるな~と思い、いろいろ遡っていくうちに無事該当する漫画にたどり着きました!
その名も『ももえのひっぷ』です!!!

読んだことある人は、どこが「アビス」に似てんねんと思ってしまうかも知れませんが、気にせずいきましょう。
作者はコージィ城倉、別名義で『グラゼニ』の原作とかしてる人みたいですね。
2010ー11年に連載されていた漫画で、全四巻です。読みやすいボリューム!

ではまず内容の紹介。
主人公の桃肢(ももえ)が自らの魅力的な肉体を武器に謎を解き明かしていく、エロギャグ×ミステリ漫画です。
第一巻裏表紙に書いてある作品紹介が上手くまとめられているので、そちらを見ていきます。

「ダム建設を巡り過熱する、とある田舎町の町長選挙。そんな選挙戦の最中、ダム建設中止派候補・大小中(だいしょうあたる)が”限りなく事故に近い傷害致死”で死んだ! この非常事態にダム建設を中止させたい関係者が取った驚愕の行動とは・・・!? 陰謀に巻き込まれた未亡人・大小桃肢(ももえ)の壮絶なる戦いが始まる!!」

ご覧のように、この作品にも田舎・性(未亡人ももえ)・謎(陰謀)が登場します。
それぞれの要素について軽く触れておきます。
田舎に関しては、そのままです。なにが町という田舎を舞台に物語は進みます。「アビス」では田舎の閉塞感が描かれていますが、本作では跡取り問題やダム建設、言い伝えといった田舎にまつわる社会的な話題が描かれています。
性に関しては、夫である大小中を亡くした未亡人・桃肢が一人で性的な役割を担っています。桃肢の魅力に男は誰も逆らえません。
そして謎に関してですが、やけにしっかりしたミステリが展開されます。一見ギャグっぽいエロ漫画なのに、論理はしっかりしていますし、伏線も丁寧にばらまかれています。一番大きな謎は「なにが町では一体何がおきているんだろう」というホワットダニット型の謎ですが、それ以外にもホワイダニット、フーダニットが並行しています。

ではもう少し細かくこの作品の魅力を見ていきます。
なんといってもこの作品の特徴は、上にも書いたとおり「エロギャグ」と「ミステリ」の二点です。
この二点が独立して作品を象徴しているわけではなく、二点が重なり合って作品の魅力となっています。
どういうことか。
そもそもミステリの伏線というのはダブルミーニングになるのが望ましいとされています。されていると言うのは、今たまたま手元にある『書きたい人のためのミステリ入門』(新井久幸)の中に、それが望ましいって書いてあるというだけのことなのですが......。

(ちょっとネタバレが避けられそうにないので、以下ネタバレを含みます)
たとえば本作では、矢沢という人物の顔面にできた怪我が後のイベントにつながる伏線になるのですが、単に矢沢を電柱なんかにぶつけて顔を怪我させるとかでは伏線としてはバレバレですしダサいですよね。
そこでどうするかと言ったら、本作は伏線を桃肢とのエロギャグエピソードに重ねているのです。
具体的には桃肢に誘惑された全裸の矢沢が障子を突き破ることで、矢沢は怪我をします。

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矢沢はプリケツが良い

読者は、というか少なくとも自分はこのページを見て笑ってしまいましたが、後にこれが伏線だと気づかされたときには、やられた!と思いましたね。
このシーンでは、矢沢の怪我という伏線に「桃肢との絡みのオチにできた怪我」というエロギャグの面としての意味と「矢沢本人かどうかを識別するときに役立つ怪我」というミステリの面としての意味を同時に込めているのです。
本作にはこういったダブルミーニングな伏線が作品全体を通してまんべんなく、さりげなく配置されています。
上記の「ミステリ入門」にも、良いミステリは謎を解くヒントを作品全体に偏り無く散りばめているって書いてあった気がします。よって『ももえのひっぷ』は単なるちょっとエッチな漫画ではなく、良いミステリでもあるんです。

まとめるとこの作品の魅力は、笑える下ネタとそれを伏線にするミステリということになります。
あと、ネタバレしてしまうのを日和ってあまり詳しく書いてきませんでしたが、下ネタと謎解き以外にもこの漫画にはいろいろ魅力はあります。終わりも近いので列挙しますが、戦争やら熊やら中国やら面白そうな要素がまだまだあります。
よかったら読んでみてください。

なんか全然「性」って感じのことを書けなかったので、とりあえず最後に『ももえのひっぷ』っぽいページだけ貼っておきます。

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この尻が、男を狂わせます