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京大漫トロピーのブログです

【12/24】裏アドベントカレンダー4日目。桜井梨穂子編①

桜井梨穂子編 第1章「オモイデ」

醤油:4人目、純一のおさな馴染み・梨穂子編です。
QP:ウォーミングアップ出来てますか?
ミシ:もちろんです。早速、観て行きましょう。
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(梨穂子「2年前の12月、わたしは、おさな馴染みの純一から突然お買ものに誘われました。もうすっごく嬉しくて、デートきぶんで出かけたら、実は純一が好きな女の子に贈るクリスマスプレゼント選びに付き合わされただけだったんです。わたし、ガッカリしちゃって。プレゼント選びは、それでそれでとても楽しかったんですけどね。でも、結局その子と純一はうまく行かなかったようで、後からそれを知ったときには、自分のことのように悲しくなりました。あの頃も今も、わたしはずっと純一に片想中なんです」)
ミシ:うおおおおおおおおおおおんっ、梨穂子ぉおおおおおおおお!
QP:のっけから不憫やわぁ……。
醤油:冒頭、アマガミの世界観が構築されたXデーよりも前、梨穂子のコンフェッションから始まります。声は新谷良子さんですね。「ひだまりスケッチ」の沙英さん。
QP:これ、誰に宛てた告解なんでしょうか?
ミシ:親友の香苗さんや、茶道部の先輩2人にでしょう。
醤油:純一への好意を明言したか否かはともかくとして、日常会話の中、それとなく相談はしてるでしょうね。したがって、梨穂子をとり巻く周囲の人間が、純一への恋慕をあらかじめ察した状態で2人の話はスタートします。
(OP)
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ミシ:コルクボードに純一との歴史を貼りたくってる梨穂子、涙ぐましくて、揺さぶられますね。
醤油:あ、鶴屋さんの声が聞こえる。
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(あさ。寝坊した梨穂子は、親友の香苗に叩き起こされる)
ミシ:『茨姫』ですね。
QP:え?
醤油:「眠れる森の美女」のことです。王子のキスで目を覚ますんですか?
QP:香苗さんが王子?
ミシ:否。このシーンのみを参照すると、一見そうとも思えるんですが、香苗さんはあくまでも、子どものできぬ王さまと王妃に、お姫さまが一人生まれることを予言する「蛙」の役です。
醤油:両生類。みずと陸との間を往来する者。意識と無意識を繋ぎ、或は無意識内より意識界へと出現してくるあらたな可能性を示唆する存在ですね。
ミシ:香苗さんのロールはさておき、この「蛙」の予言通り、王と妃の間に子が生まれると、12人の仙女を招き宴が催された。仙女達はそれぞれ「一人は徳を、もう一人は美しさを、三番目は富を」と云ったように、誕生した姫へ善意の贈りものをするが、招かれざる13番目の仙女が、宴に呼ばれなかった報復として「死」を贈ってしまう。
QP:天道の十二宮に示されるように、12は完全数としての意味が強く見出されます。それらの完全なものに、一つの異質な悪・13番目の因子が侵入することで「茨姫」の話は進展を見せるんですね。
醤油:13と言えば、円卓の……
QP:それはもう、中多編で言及したでしょう?
醤油:すみません。
ミシ:贈られた死・「つむの一突き」の呪詛は15の年齢になったとき発動し、姫を百年のねむりにつかせた。
QP:ははぁん。言わんとしてることが掴めてきましたよ。15歳。中学3年生。2年前のクリスマス、人知れず純一に失恋し、純一の側も失恋した例の事件が、梨穂子にとっての「つむの一突き」となったんですね。そして、梨穂子は現在に至るまで2年間の精神的な休眠状態となる。
醤油:その「つむの一突き」によってもたらされた「休眠状態」とやらが、主に純一との関係に見出され、これまで2人の関係性の発展を阻害してきたのか。純一が押し入れにひき籠もった同時期、梨穂子もまた冷凍睡眠されてたんですね。
ミシ:ここでもう一つ注目すべきは、梨穂子が「怠惰」である点です。2年前の決定的な事件よりも以前、梨穂子と純一の関係性は、おさな馴染みの延長線上に生じた緩やかな好意・唯一性で保障されてあった。ところが、純一に好きな女性ができることで、その安全神話は崩壊してしまう。
QP:この純一が失恋した女性は、これまでさんざん議論の俎上に上った、母性の有する否定的な側面ですね。あれから2年が経つと言うのに、未だに純一のこころを捕らえて離さず、その全てを呑みこんで無に帰さんと追ってくる。
ミシ:これまで意識が依存してきた規範に頼れなくなった梨穂子ですが、すると、通用しなくなってしまった規範に反目するものが無意識内に形成されます。この反目のために本来、無意識から意識へ流れる筈の精神エネルギーの逆流が生じ、梨穂子は「怠惰」の状態に陥った。
醤油:本人の生来的な性質もあると思われますが、それにしても些か頓馬ですからね。
ミシ:そして、この退行現象に耐え、その頂点に達すると、再びエネルギーの流れの反転が生じ、無意識内で培われた創造的な内容を意識内へともたらします。上の画像。母に抱かれた赤ん坊のようにまるまった梨穂子が、無理矢理目覚めさせられる構図は、自己実現への十全な準備状態が整って、純一との間にあらたな関係性が築かれることを暗示するのです。
QP:おさな馴染みの先へ進むために、梨穂子は一旦「死」を体験しなくてはならなかったんですね。
醤油:そうした観点をふまえた上で観て行きましょう。
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(寝ぐせを直そうとする梨穂子。香苗「それにしても最近遅刻多すぎだよ~?」)
ミシ:やはり、この寝ぐせは「これから変革がはじまるぞ」と言う霊感を表してるんでしょうね。
QP:遅刻の多さや忘れものは、精神エネルギーの逆流を如実に示してますね。
醤油:どうしよう! どうしよう~!
ミシ:可愛ええな?
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(忘れものをとりに帰ったために遅刻しそうになる梨穂子。ショートカットを試みるが、金網にひっかかって前にもうしろにも進めなくなってしまう。そこに偶然、純一が現れる)
ミシ:あああああああああああああ、可愛すぎる~!
(純一「落ちつこう、梨穂子」)
醤・QP:だってさ、ミシェル。
(おちょくりながらも、なんだかんだで、おさな馴染みの窮地をすくう純一であった。純一「身体のちからをぬき、うつ伏せになれ」)
ミシ:身体のちからをぬき、マントラを聴くのだ。全てを委ねよ。
QP:一体どうしたん? この人。
醤油:I have no idea. ところで純一君、パンツ見えそうだったのに全然意識してませんでしたね。
QP:これが森島先輩とかでしたら、穴に嵌まったのを見た瞬間大興奮でしょうね。
ミシ:身体的な性差はそれなりに意識してますよ。ただし身内補正で、動悸を感じる閾値が通常よりも高く設定されてしまってるんです。
(なんとか救出され、ほっとむねを撫で下ろす梨穂子。梨穂子「ふにゃぁ~」)
醤油:ふにゃぁ~。
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(梨穂子「はっ、たすかった! バンザーイ!」)
ミシ:バンザーイ!
醤油:バンザーイ!
QP:バ、バンザーイ!
ミシ:最高ですね?
醤油:ええ、全くです。
QP:皆の知能レベルが退化してる。
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(体育の授業。高跳びに挑戦する梨穂子。しかし失敗してしまう)
ミシ:まだ跳べません。
QP:余計なウェイトありますからね。
醤油:そう言う話じゃねぇんだよ。
ミシ:醤油君。この人、敵です。
QP:すみませんでした。二度と口にしません。
ミシ:許しましょう。
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(昼。菓子パンを次々と胃袋に収める梨穂子。見兼ねた香苗がエアーダイエットを提案するものの、当の梨穂子は「あしたからやる」と言う)
QP:この子、美味しそうにごはんを食べますね。高評価ですよ。
醤油:「あしたから」と言って、目を逸らすから、他のヒロインにも一人遅れをとるんですよ。
ミシ:来たるべきときのためにカロリーを蓄えておく重要性を、本能で感じてます。なまじ共に過ごした時間が長くなると関係性は硬直し、変革に莫大なエネルギーと時間を要するようになる。それを賄おうとしてるんです。
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(ダイエット復活の理由を純一だと指摘され、焦る梨穂子。逡巡ののち「よし、きょうからがんばる!」と決意をあらたにする)
ミシ:チャンスは来たれり。躍進の時間です。
醤油:狼煙をあげろぉ!
QP:2年A組に乗り込むぞぉ!
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(純一に、あさのお礼だと言って手作りのマフィンを贈る梨穂子。梨穂子「わたし、ダイエットすることにしたから!」)
ミシ:何度目かのダイエット宣言。
醤油:しかし、このたびのダイエットは一味違った展開を見せます。
QP:滾るなぁ。
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(親友の恋路を温かく見守るウメハラと香苗。その甲斐あって、日曜日に4人でスケート場で遊ぶ運びとなる)
QP:2人の優しさが身にしみます。
醤油:イイ画なんですけど、この2人はくっつきません。
ミシ:お似合なのに残念ですね。
(Bパート。カロリーを鑑みて泣く泣く、パンダココアではなくウーロン茶を購入する梨穂子)
QP:エライぞぉ。がんばれ。
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(しかし、茶道部部室に出向くと、先輩達の甘言に惑わされ、堪えきれずシュークリームを食べてしまう)
QP:ダイエット中だって言ってるでしょう? どうして、そう甘やかすんですが。
ミシ:過度な節食で健康を損なってしまうことを恐れてるんですよ。家族愛です。
醤油:百忍通意。重要な言葉ですよ。耐え忍んだら意は通じるんです。
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(古代ヘブライ語で「シューク」は「愛」・「リーム」は「オマジナイ」を意味し、元来は好きな人にプロポーズをするときに渡したお菓子であると、でまかせを吹き込む先輩。騙されてしまう素直な梨穂子)
ミシ:純真な梨穂子を弄びやがってよぉ。
醤油:部員不足はこの2人の人間性に問題があるからではありませんか?
ミシ:このままでは廃部ずら。
QP:そっちは廃校でしょ。
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(非常階段。ダイエット宣言をした手前、誰にも見つからぬよう隠れてシュークリームを頬ばる梨穂子を、純一は目撃してしまう)
醤油:この不合理さが堪りませんね?
ミシ:ええ、全くです。
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(一緒に下校する梨穂子と純一。途中立ち寄った公園で、ようちえんの頃の記憶に浸る梨穂子。しかし、梨穂子と純一の記憶は食違う)
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(純一「るんるんるんるんるるるりら。お姫さまになれ。キレイなお姫さまになれ~」美也「お姫さま、お姫さま、にししし!」)
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(純一「まんままんまんままんがまん。美味しそうなまんま肉まんになれ~」美也「まんま肉まん、まんま肉まん、にししし!」)
醤油:「オモイデ」ですね。
ミシ:グリム童話を連想させますよね。
QP:祈祷する純一。ぴょんぴょん踊る美也。この兄妹、狂ってません?
ミシ:おそらく純一のほうが正確な記憶でしょうけど、なんでもイイんでしょうね。
醤油:同じ日常を過ごした事実と、その過去を2人で懐かしむこと。それが、梨穂子の幸せでしょうからね。
(昔のようにすべり台を滑ろうとして、臀部が嵌まってしまう梨穂子)
QP:また嵌まってます。
ミシ:井伏鱒二の『山椒魚』のようですね。
醤油:は?
ミシ:大きく育ってしまったんですよ。身体も。純一への恋情も。
醤油:あ、ハイ。
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(お風呂上り、ストレッチを試みるが、身体が固すぎて満足に出来なかった)
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(翌日、純一は遅刻するであろう梨穂子を想って、あらかじめ鉄柵の穴をひろげておく。ひっかからず通過することができ、「ストレッチのお蔭だ」と喜ぶ梨穂子)
ミシ:これまでのダイエットが実を結ばなかった素因。それは、梨穂子の創造的退行が整っておらず、まだ時期尚早だったのもありますが、王子=純一の介在・協力と言う最後の要素を欠くものだったからなんですね。
醤油:純一からの受入れサインが出たんですね。三日坊主にならず、しっかり継続性を誓う姿勢もエライです。
QP:ええ娘や。
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(ED)
醤油:ええ歌や。好きです。
QP:恋はあせらず。
ミシ:「果報は寝て待て」と言うしね。
醤油:しかし、宇宙空間でたゆたう梨穂子の画、肉感的すぎやしません?
ミ・QP:同意します。

【12/24】E-Hentai.orgに同人誌を勝手に英訳して転載する人間は何を考えているのか

ハッピー・ホリデイズ! ひでシスです。

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今年のテーマは煩悩なので、エロ同人誌の話をしましょう。

皆さんはE-hentai.orgってご存知ですか? 同人誌や漫画を違法にコピー・翻訳し共有しているフォーラムサイトです。ぼくは女の子が飴やクッキーに変身して食べられるという同人誌を書いたりしているのですが、今回このサイトに同人誌のうちの一つが違法にアップロードされているというタレコミを頂いたのでメールを送って対処してみました。

やり取りの経緯

1. E-hentaiに転載されたことを知る


以上のようにある心ある方からタレコミをいただきました。Twitterで活動しているとこういうタレコミは案外普通にもらえるものです。http://g.e-hentai.org/g/990436/6768d8bc29/を確認するとたしかに自分の同人誌でした。
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1.1 メッセージを送るためにE-hentaiでアカウントを取得する

E-hentai.orgのページヘッダの「Forms」から「Register」と辿り、アカウントを取得します。必要とされる情報はメールアドレスのみです。

2. アップロード者に対してプライベート・メッセージを送信する

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ギャラリーページに表示されたアップロード・アカウント名の隣のメールボックス・アイコンをクリックすると、プライベート・メッセージを送信する画面が出てきます。

「俺はマルクス主義者だ。もっと漫画を転載してくれ」とメッセージを送ります。
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要点をまとめると、

  1. ぼくの同人誌を翻訳してくれてありがとう
  2. いくつか質問をさせてください
    1. 訳するのにどれぐらい時間がかかりましたか
    2. あなたの目的と信条は何ですか
    3. あなたの言語環境を教えてください
    4. どこからオリジナルの同人誌をダウンロードしましたか
    5. 最新の原稿を送ります

あたりです。

3. メッセージが返ってくる

1週間かからずにメッセージが返ってきました。返ってこないことも予想していたので、ちゃんと返事をしてくれて嬉しいです。
メッセージを直接載せるのはどうかと思いましたので、翻訳したものを掲載します。

こんにちは!

うわー、あなたがその翻訳を全く見つけるとは本当に思ってもみませんでした! 私はあなたの芸術とアイデアの大きなファンだと言いたいです。サイズフェチと状態変化は私のお気に入りのコンテンツの一部です。


でも、悪いニュースがあります。私はそれを翻訳した人ではありませんでした。

書かれていることを知ることは本当に面白いと思ったので、私は自分のために英語へ翻訳するために別の人にお金を払いました。大変申し訳ありませんが、私は日本語がわかりません。私はアメリカに住み、英語を話します(いくつかのドイツ語の知識があります)。

私がやっていることは、GIMPPhotoshopなどのプログラムを使って、日本語のテキストから英語のテキストへ編集することです。私が支払った人々は私に台詞を与え、私はそれをテキストを置き、他の人々が楽しむためにそれらをアップロードした。


私は著作権法をあまり重視していません。なぜなら、それは世界中の多くの企業、企業、個人によって頻繁に悪用されているからです。

しかし、私は、例えば何かが違法にアップロードされた場合にお金を失う苦しいアーティストの窮状を理解することができます。私は新しいリリースのものをアップロードするためにしばらく待っていますが、実際にはアーティストの販売に害を及ぼしています。

しかしまた、私は物事をオンラインでアップロードすることはアーカイブ作業にとって重要だと考えています。私はE-hentaiは同人誌をアーカイブするのに良い場所だと思います。ある日DLsiteやbooth.pmが休止したり終了したりすると、その作品はインターネット上のどこでも利用できなくなり、基本的にダウンロードしていない人には手に入らなくなります!


とにかく、私はそれを翻訳した人ではないことを申し訳なく思います。私はあなたの新作が好きです!もし私がそれを手に入れることができれば、それを翻訳と一緒にアップロードします。ありがとうございました!!!

同人誌と違法アップロード

まず、違法コピーと違法翻訳は基本的にNGであることは明記しておきます。以下は、ぼくが著作権を持つ作品群に対して、マルクス主義者のぼくが持っている意見として聞いてください。

う~ん。たしかに、ぼくが日本語でしか漫画を出していなかったのはよくなかったかも知れません。作品を正規の方法で入手して、翻訳者にコミッションを払って、文字入れを自分でやってから転載する人も世の中にはいるんですね。これ以降、ぼくはできるだけ英語でも作品を書くことにしています。
「違法アップロードはアーカイブのため」というのも一面ではもっともらしい意見です。電子データはコピーされ続けることでしか世に残らないのですから。

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この作品が、『違法コピー』という手段以外で世に残り続けることができるだろうか

他人にお金を払って翻訳を依頼するほどの作品を読みたい人間と、その作品の権利者を上手くくっつけて、きちんとマネタイズすることができればそれが一番だと思います。

P.S.

ギャラリーページにアップロード者からの「できれば買ってあげてね」コメントが付いていました。
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I don't think eating people will make you popular. In fact I'm almost certain It would do the complete opposite.

ワロス

【12/23】悩みについて悩まずに書く

ホリィ・センです。漫トロ7年目です。今年のアドカは煩悩がテーマだと聞きました。この際「煩」はどうでもいいです。いつも性について考えてばっかりの人間なので、「悩(み)」の方にフォーカス当てます。

しかし、悩みについて書くことをイチイチ悩みたくないです。僕は院生なんですけど、修士論文提出が来月13日ということであんま時間ないんで、ちゃっちゃと終えます。ということでこの文章は自動筆記のような書き方をしています。「自動筆記」のちゃんとしたやり方を僕は知らないけども、とりあえず何も考えずに言葉が浮かんでくるまま書く、ということをやります。アドリブとも言うのかもしれない。

鴻上尚史の『孤独と不安のレッスン』という本を読んでいたら、「悩む」ということと「考える」ということは違うのだ、ということが書いてありました。うんうん悩むことによって費やされた時間はただただ無駄で、おそらくネガティブにもなるのでしょう。それに対して「考える」は建設的です。考えることに時間を費やせば費やすほど、物事は進展していきます。なるほど、そのような分類はできるかもしれない。

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

ところで僕は昔からよく何かを考えている人間だと思います。一人で自問自答を繰り返します。兄が独り言癖のある人だったのもありますが、どうも自閉的な何かがあるんだと思います。独り言を繰り返して一人で納得を重ねていきます。
そう、「悩む」とは終わらない独り言を繰り返すことなのかもしれません。確かにそれは「考える」なのだろうけど、自己の中で閉じて完結したシステムの中で導き出される答えは、建設は建設でも象牙の塔でしょう。僕の人生においては「悩む=考える」という等式は結局のところ成り立っているのかもしれません。

終わらない独り言、そこで思い出すのは「セカイ系」です。ユーカリさんが君の名は。の話をしていて、「セカイ系」にぶち当たっていたのでついついいろいろと思い出してしまいました。セカイ系にもいろんな定義がありますが、それこそ『セカイ系とは何か』(前島)の中にある一つの定義を出すならば、「エヴァっぽい」ということです。具体的にはエヴァンゲリオンのシンジくん的な自分語り、すなわち「独り言」でセカイが成り立っているという状況です。

この要素を突き詰めると、その後のサブカルチャー作品にも一つの線が見出せます。ひたすらに主人公の目線でセカイを語り続けるエロゲー。「ヤレヤレ系主人公」が独白し続けるライトノベル。これらは悩み=独り言の系譜だったのだと。

僕はそんな作品が昔から好きでした。他愛のない作品にも主人公の独白を見出しました。今や『マギ』でビッグマネーを掴んだ作家、大高忍先生の過去作品に『すもももももも』というのがあるんですけども、これも僕に言わせれば「無力な主人公がそれでも葛藤してあがく作品」なんですよね。なお、『マギ』においてはこの要素はアリババくんに受け継がれているような気がします。バトル漫画の系譜を読み解けば、ポップ(『ダイの大冒険』に出てくるキャラクター。最初はヘタレだけど、後に成長し頼もしいキャラクターになる。「ヤムチャ」の対義語)的なものだとは思います。


まあ、「案ずるより産むが安し」って言葉があるぐらいで、悩んでるのがバカらしいところはあります。自閉的な人間は自己完結している分、むしろ行動的だったりします。そこには他者はいない。セカイ系も「きみとぼく」で閉じられた想像力の欠如したものとされていますけど、それは「自閉」だって同じでしょう。セカイ系を好む人間の大きな層としては自閉的な人間がいるのだと思います。

君の名は。』についても僕は結局あくまで新海誠の作品として観ています。『秒速5センチメートル』の第二話「コスモナウト」でメールを送ることができた主人公、それがタキくんなのだと。悩むことをやめて動き出したんだろう。飛騨に会いに行く行動力がタキくんにはあった。自閉していた人間(新海)が悩み抜いた結果、動き出したんでしょう。

何も方向性を見出さないまま悩みについて思うこと書きましたけど、独り言と言えば、オススメの漫画は『吾輩の部屋である』ですね。大学院生が自分の部屋にこもって独り言を言いながら(あるいは「喋る家具」にツッコまれながら)くだらないことに悩み続ける作品です。自己完結した世界も意外とポップで笑えるんだなという希望に溢れています。
時期が悪かったのか、宣伝が足りなかったのか、ジャンル的に受け入れられないのか、漫トロではあんま流行らなかったなあ。

吾輩の部屋である 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

吾輩の部屋である 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

駄文失礼しました。

ホリィ・セン

【12/23】七咲逢編④(終)

七咲逢編 第4章「コクハク」

ミシ:This is a story about control. My control. Control of what I say. Control of what I do. And this time I’m gonna do it my way.
QP:急にどうしたんですか。
ミシ:イヤ、自分が17のときは何も出来なかったなと。
醤油:好きだからって、『glee』ネタぶっこむの止しましょうよ。
ミシ:「control」は「成熟」を扱う七咲編にピッタリだと思って、言っちゃった。てへ。
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(創設祭。純一は七咲との約束通り、女子水泳部のおでん屋台を手伝う)
QP:女子水泳部の屋台なのに男子が店番をしてたら憤怒しますけどね、僕は。
ミ・醤:たしかに。
QP:そんなこんなで最後のOPです。
(OP)
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茶道部の2人がサクラとして屋台にやって来て一芝居を打つ)
醤油:梨穂子パートへの繋ぎですね。一応、七咲の成熟を描く意図もありそうですが。
ミシ:この程度、はじめから出来てたように思うのですが。
(甘酒で酔っぱらった高橋先生と、監査役綾辻さんがやって来る。見つめ合う二人)
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QP:次々とキャラが集まってきますね。
ミシ:休憩時間です。尺が余ってるんですね。
醤油:七咲、おでんを贈賄して、純一との交際を綾辻さんに認めさせようとしてますね。
QP:マウントを獲ってやったぞと言った表情をしてますね。
醤油:実際に簒奪したのは、綾辻さんの婿となるべき人間ですね。
ミシ:ここの綾辻さんは、七咲の前向きな変化を誇張させるための単なる装置です。許さん。
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ガンダムが暴走する)
醤油:尺が余ってるためガンダムですら動き出します。
ミシ:怒れる巨神兵ですね。
QP:これ、やっぱり夢ですよ。マッチ売りの少女が火の中に幻視する悪夢です。
醤油:饗宴ならぬ狂宴です。
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(順調に屋台を経営する2人。おでんを溢してしまった子供を見た七咲は、無償で代わりを提供する。おでんは無事完売した)
ミシ:露骨やけど、在りし日の七咲逢と郁夫、ですかね。
QP:母性の安売り。バーゲンセールですね。
ミシ:ばぶぅ。
醤油:前話のノリで、隙あらば挿入歌が流れ出します。
ミシ:2番を使うの卑怯ですよ、卑怯。
醤油:Can’t you make up your mind~♪
QP:覚悟は出来ましたか?
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(Bパート。最終のバスでどこぞの山奥に連れて行かれる純一)
ミシ:これ、帰りのバスどうするんですか? 片道きっぷ?
醤油:今日は帰しませんよ、先輩。
ミ・QP:ああ゛~?
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(山を登る2人。純一を待つのは、天然の温泉だった)
QP:老婆心ながら忠告しますと、夜に登山は危険ですよ。
醤油:満月に照らされてますから、視野は良好です。私有地ですから、慣れたものです。
ミシ:月も蒼ざめてますよ。
QP:もう何なん? 怒るで?
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(混浴する2人。七咲「見てもイイですよ。下、水着着てますから」)
醤油:嘘です。着てません。
QP:肩紐が見当たりませんし、この時点で判ると思うのですが。
ミシ:2人とも動揺してますから、無理もありません。
QP:そもそもなんで温泉入ってるんですか、この2人?
醤油:不器用な七咲なりのOKサインです。対人スキルが壊滅的なため、まず環境をしつらえる。終バスでここに来ることで、純一と自身の退路を断ってるんです。ここまでして、ようやく「好き」と伝えることが出来るんです。
ミシ:まるで女郎蜘蛛のようですね。慄きます。
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(七咲「わたし、先輩が好きです。好きなんです」)
ミシ:どこにもおらぬ神に祈ってるで、この娘。不憫やわ。
醤油:身体から溢れてしまう隠しきれぬ恋情は、火ですね。その身を焦がすのです。
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(純一「僕も七咲が好きだ。どうしようもなく」)
QP:お前、トラウマはどうしたんや。
ミシ:性にほだされてません?
醤油:高校生の恋愛なんて、そんなもんでしょう?
ミ・QP:うへぇ。
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(感極まって純一に抱きつく七咲。はだけたバスタオルの下は、生まれたままの姿だった。動揺する純一。七咲「恥ずかしかったので、嘘をつきました。でも、先輩に告白したことを考えたら、些細なことでした。なにも問題ありません。イイんです。わたし、先輩のことが大好きですから」)
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ミ・QP:うわあああああああああああああああああああああああああああああ!?
QP:問題しかありませんよ。
ミシ:アダムとイヴです。
QP:衣類をまとえ! 衣類を!
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(密事を鹿に目撃される)
醤油:愛の営みを鹿に目撃されます。SS+で話題に上るのですが、このあと鹿が異常繁殖して、この山、立入禁止になるんですよね。
ミシ:鹿も、本能に火、点けられちゃったんですね?
QP:最悪だぁ。
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(エピローグ。晴れて恋人関係となった2人は、淫蕩の限りを尽くすのであった)
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(fin)
QP:実際のところ、七咲は自らを天に結びつけることはできたんですか?
ミシ:理想の恋人が出来て、もうウハウハですよ。天にも昇る心地でしょう。
QP:なんかもう、やりきれませんわ。
醤油:もはや好みの問題でしょう。僕は、七咲の「地上の火」にひき摺られ、弱体化してしまった純一が好きではありませんが。
ミシ:ファンに怒られますよ。
QP:七咲が「火」の女であることは、頑なに譲らんのですね。
ミシ:ともあれ、次は桜井梨穂子編です。
醤油:ようやく平和なレビューができそうだ。

【12/24】桜井梨穂子編につづく。

【12/23】七咲逢編③

七咲逢編 第3章「ヘンシン」

ミシ:満身創痍でやって来た第3話です。
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(街頭。奇怪なピエロに遊園地の無料優待券を貰う純一)
QP:この恰好、どこかで見た覚えがあります。
醤油:ブラックマジシャンですね。
ミシ:ああ、道理で既視感があると思った。
(OP)
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(遊園地の前で待ち合わせをする純一と七咲。本来は郁夫も来る予定であったが、風邪をひき留守番だと言う)
醤油:おそらく嘘でしょうね。郁夫に話すら通さなかった可能性も考慮できますよ。
ミシ:そのセンが濃厚ですね。どうしても、2人きりになりたかったんでしょう。
醤油:1月から始まるアニメ「セイレン」には、高校生になった郁夫が出てくる予定ですから、かれの口から真相が明かされるやもしれませんよ。
ミシ:あの日、姉ちゃんは病床に臥せった僕よりも、どこぞの馬の骨と遊園地で遊ぶことを優先した。
QP:42度の高熱にうなされ、僕は自室で一人、生死の境を彷徨った。これまで、姉が僕を軽んじたりすることなんて一度たりとも無かったのに……。
ミシ:全部、全部、あの男が現れたからだ!
醤油:茶番やめーや。
(七咲「あの、先輩? 今日のわたしの服に何かコメントとかナイんですか?」)
ミシ:正直、似合ってます。
醤油:精一杯背伸びをして、おめかしして来たんでしょうね。
(純一「あの、ごめん。よく似合ってるよ」)
(七咲「遅すぎます」)
QP:は?
醤油:ハイ、そこ落ちつきましょう。単なる照れ隠しですからね?
ミシ:寛容の精神が試されてます。忍耐ですよ、QP先生。
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(ジェットコースター、コーヒーカップ、ガンシューティング。遊園地を満喫する2人)
ミシ:コーヒーカップって、同じところぐるぐる回るんですよ。
QP:前に進めず、足踏みしてる状態なんですね。
醤油:ちょっと無節操に含みをもたせすぎですよ。
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(2人は遂に問題の迷宮。「ファラオ謎の入口」に立ち寄る)
ミシ:原作ゲームですと、各ヒロインルートで、薫が男性になったり、綾辻さんが小学生になったりと、不思議な出来事が起こる特異点のような場所ですが、アニメだと尺の都合からか全て七咲編で回収してしまうんですよね。些か突飛な印象を感じてしまうのは、そのためでしょう。
醤油:仕組みは全く不明ですが、おそらく、各人の抱える問題、潜在意識や変身欲求が反映される設定のアトラクションなんでしょう。したがって、父性を渇望する薫は男に、子どもの頃の夢を大事に想う綾辻さんは小学生となった。
ミシ:ここ、綾辻さんが懐に犬を抱えてるんですが、有り得たかもしれぬパラレルな可能性、幻影のため直後に掻き消えます。
醤油:あくまでもこの世界に犬は登場せず、神も不在であります。
ミシ:ちなみにゲームですと、森島先輩はポメラニアン、中多さんは辞書(知識の泉ですね)、梨穂子はド根性ガエルTシャツになります。では七咲は一体なにへと姿を変えるのか。
QP:う~ん、黒猫とかでしょうか?
醤油:味噌ラーメンです。
QP:え?
醤油:味噌ラーメンです。
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(迷宮の最深部に鎮座するファラオの憤怒を買ってしまった2人は、呪われてしまう。ファラオ「戯言なぞ要らん。覚悟を決めろ」)
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(そして七咲は、味噌ラーメンに姿を変えられてしまった)
QP:嘘でしょう? クレイジーすぎる。
ミシ:これは罰なんでしょうね。
醤油:ここでキーワードとなるのは、ファラオの口にした「覚悟」と云う単語なんですね。純一は、七咲の隣に並んでおきながら、トラウマの影響もあるんでしょうが、未だどうにも腹を決め兼ねており、七咲の抱く好意に釣り合わぬ中途半端な、不誠実な状態にあった。それをファラオは咎める。
ミシ:ちょうど、悩むと云う行為に関して苛烈な、七咲の性格を代弁するようですね。昼食のメニューを悩むのも駄目、他の女性に目移りするのも駄目。
醤油:1話の食堂のシーン、覚えてますか? 純一は悩んだ結果、シーフードカレーでもとんかつ定食でもなく、ラーメンで妥協した。このラーメンこそ七咲です。純一は七咲を選んだのではなく、ただなんと無しに第3のメニューを選ばされた。そこに純一本人の主体性は皆無であり、七咲と接する姿勢にも同じことが言えます。七咲の本質に向き合わんとする「覚悟」が元より欠落してるんです。
ミシ:味噌ラーメンへの変身は、純一に己が罪を自覚させる、ファラオによる痛烈な風刺なんですね。
QP:とすると、このファラオ、結構な世話焼きですよね。七咲を好きになれるようオプションのバターまで渡して、純一の背中を押すんですから。
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(純一は味噌バターの香りの誘惑にあらがえず、丼に口をつけようとする)
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(すると、タイミングを計ったかのように集団催眠が解かれる)
QP:七咲を食べようとしたと言うことは、純一が選ぶ「覚悟」を見せたと言う解釈でイイんですよね?
ミシ:なんだか合点が行きませんが、おそらくそう云うことなんでしょう。
醤油:もしかすると七咲は、本来純一に選ばれる可能性の無かった存在であったのかもしれません。
ミシ:しかし、神なる中枢管理機構がその調整機能を停止し、世界にバグが起きた。ファラオは破壊された統治システムの名残でしょう。
QP:或は、既に全員死んでおり、神無き死後の世界と言う可能性も。
ミシ:七咲ルートが正史で、他のルートが夢なんじゃなかろうか。
QP:なんだか壮大な話になってきましたね。
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(デートの〆。2人は、はじまりの公園へ。「一緒にブランコに乗ろう」と提案する七咲)
醤油:駅弁してますよ。
ミシ:下品ですよ。純一の視界を自分の姿で埋め尽くそうとしてるんですね。
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(七咲側からのキス)
ミシ:と思ったら、ちゅーしてしまった。
QP:唐突すぎて感情の昂ぶりが感じられませんね。
醤油:不器用ですから恋の駈ひき、ドラマチックな大人のキスが演出できなかったんですよ。
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(Bパート。放課後。中庭で七咲と待ち合わせする純一であったが、なかなか姿を現さず、心配する。プールサイドに様子を見に行くと、七咲と塚原先輩の口論を目撃してしまう)
醤油:ここから、七咲最大のもろさが露出してしまうイベントです。
QP:橘側のイベントが全くありませんね。
醤油:七咲の面倒を見るので手一杯になってしまってるんですよ。
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(プールに飛び込み逃亡を図る七咲であったが、後を追う純一に捕まる)
ミシ:制服のまま咄嗟にプールへ跳び込むなんて、なかなか出来ることではありませんよ。
QP:純一の中に覚悟は、ちゃんとあったんですね。
醤油:それにしても、背景で鳴ってる曲が新海作品のようにエモくて笑ってしまう。
(帰路。スタメン落ちがショックだったと吐露する七咲。しかし、その表情はどこか晴れやかだった)
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(なぜ逃亡したのかと問う純一。涙を見られたくなかったからだと答える七咲。純一「僕は嬉しかったよ。普段と違う七咲が見れて、なんか嬉しかったよ」)
醤油:こうした心理は薫編でも見られましたが、七咲の場合はその理由が判然としませんね。
ミシ:弱みを秘匿したかったなら、プールの一件以前に遡らなくてはなりませんからね。既に純一にはさんざん見せてます。
QP:単にブサイクな泣き顔を見られたく無かったんでしょう。
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(なぜ追ってきてくれたのかと問う七咲。七咲の涙を見たら、無我夢中になったと答える純一。別れ際、七咲「これから時間ありますか?」)
醤油:露骨に誘ってますが、時間も時間ですし、さすがに自重します。
ミシ:かわりにクリスマスの約束をとりつけて、第3話は閉幕です。
(ED)

【12/23】七咲逢編②

七咲逢編 第2章「トキメキ」

ミシ:恋の呪文はスキトキメキトキス
醤油:さすがの猿飛
QP:2話のサブタイトル、「サイアク」から一転「トキメキ」ですか。
ミシ:観て行きましょう。
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(純一・薫・梅原の三馬鹿は、ハイレベルな容姿の転入生が図書委員をはじめた噂を耳にし、図書室へ野次馬をしに行く。誰が確認するかで揉めてると、またもや偶然その場に居合わせた七咲に「周りの迷惑」だと諫められる)
ミシ:この段階では純一と七咲との接点が希薄なため、偶然出くわすパターンが連続しますね。
醤油:森島ルートと似てますね。ただし、前者では純一が血眼になって日常に先輩の姿を見出さんと奮闘してたのに対し、後者の七咲編では七咲側から純一に声を掛けてくる。反転してるんですよね。
QP:さっきから疑問なんですけど、この娘運動部ですよね? それなのに先輩に接する態度がまるでなってませんよ。慇懃無礼にも程がある。
醤油:純一にのみですから。おそらく美也から幾らか事前情報は聞かされてるんでしょう。それで話の中で親近感を抱くようになり、多少のやんちゃ、素の己を出しても兄の甲斐性で許してくれるだろうと高を括った。七咲の中では美也を仲介にして、既に純一との疑似的な兄妹関係が構築されてしまってたんでしょうね。そして現実との齟齬に困惑して、あのような陰険な態度をとってしまったと。もっともすぐに自分のよく見知った側面を純一に見出し修正しましたけどね。
ミシ:お、シンデレラコンプレックスですかぁ? 中多さんを見習え。
醤油:狭量ですよ、ミシェル君。僕の寛容さをわけてあげましょう。
ミシ:なんか、ねちゃっと湿ってるので遠慮します。
図書室でなにをしてたのかと問う純一に「数学の追試の勉強をしてた」と答える七咲。「よかったら教えようか」とやたら先輩風を吹かす純一)
醤油:純一が数学得意である設定は、七咲編でしか出てきません。
ミシ:どのヒロインも軒並み純一よりハイスペックですからね。梨穂子以外に、数学得意だなんてわざわざ喧伝できません。綾辻さんに鼻で笑われます。
QP:噂をすれば出てきましたよ。
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(通りがかる綾辻。純一に七咲を紹介され、見つめ合う2人)
QP:え、怖っ。無言で腹の中探り合ってません?
ミシ:牽制です。一瞬の交差で2人の格付けは終わりました。ゴミを見る目でしたね。
醤油:綾辻さんにとって薫や森島先輩は別次元の人間ですが、七咲は自分と同一直線状の下位互換と言って差し支え有りませんからね。
ミシ:圧倒的な人間力の格差を除外すれば、なかなかどうして似通ってるんですけどね。要は純一にポーカーフェイスの裏側、とり繕った人格の奥にあるChildlike、純真さに触れて貰うのを密かに待ち望んでる訳でしょう?
QP:便利な言葉ですね。ポーカーフェイスとChildlike。
醤油:濫用しすぎですよ。
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(七咲「先輩、本当に数学得意なんですね。見直しました」)
(反抗期に入った小学生の弟との接しかたを純一に相談する七咲)
ミシ:郁夫君のことですね。
QP:親友の美也には相談せず、あえて純一に相談する辺り嫌らしさを感じます。
ミシ:美也は弟の存在すら知りませんでしたからね。
QP:己のプライベートな領域に踏み込ませる誘導。恋の駈ひきですね。
ミシ:否、そのような戦略性のある行為ではありません。単に七咲の人間強度が下がり始めてるんですよ。そしてそれは、僕らの英雄にも波及します。
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(翌日。担任に呼び出され、遅刻の多さを注意される純一。その理由を問われ「ビーバー三国志に夢中で夜更かししてしまったからだ」と捲し立てる)
QP:これ、本当にあの純一君ですか?
醤油:おつむもモラルも、あきらかに弱くなってますね。
ミシ:英雄の資質を剥奪されてます。あの大判焼きを食べてしまったのが良くなかった。
(「しっかりしろ」と担任に尻を叩かれ「そうだ。そうなんだよ! 解ったぞ、七咲」と何かを閃く純一)
QP:もう何もわかりませんよ……。
ミシ:期待感の強かった中多さんのときと異なり、嫌な予感しかしません。
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(Bパート。テラスで昼食を採る七咲・美也・中多の3人。そこに純一が走ってくる。美也「お兄ちゃん! イキナリ出てきて何なの? 紗江ちゃんが吃驚してるでしょ」)
ミシ:ああ、中多さんは天使ですね。
QP:むねを見るな。むねを。「それにしても、スゴイね……」って何やねん。
(純一「美也も七咲も、中多さん位に成長するとイイな」)
ミシ:さすがに失言ですよ、純一君。
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QP:七咲、激怒して席を立ちましたね。
醤油:第2話は冒頭・高橋先生、中盤・中多さんと、一貫して他の女性に目を奪われてしまう純一の痴態が描かれ、それに対し七咲が怒りを露わにします。「わたしだけを見て」ですね。
ミシ:「悩む」と言う行為に関して、非常に苛烈ですよね。1話で言えば、高橋先生がシーフードカレー、中多さんがとんかつ定食、美也が(元より選択肢に入ってなかったことから)B定食、そして最後に行きつく味噌ラーメンが七咲に相当する。
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(放課後、女子水泳部が練習するプールに忍び込む純一。暴挙に及んだ理由を詰問され、職員室での一件よろしく、再び独自の論理を捲し立てる純一)
(純一「それは、決して大きいとは言えなくても、毎日の部活で鍛えられた胸筋に内側から押し上げられ、外側からは抵抗を無くすために開発された競泳水着によって圧迫されてるムネ! 僕は、その美しく火薬のように爆発しそうなエネルギーを蓄えた感じが見たくて、のぞきに来てしまったんです! 本当にすみませんでした!」と土下座。七咲のほうを見る)
(頬を赤らめ、たじろぐ七咲)
ミシ:これが、英雄のなれの果て、ですか。
QP:こんな純一さん、僕は見とうなかった。
(塚原「そう。君はそのことをたった一人に伝えたかったようね。まったく。あとは任せたわ、七咲」)
ミシ:塚原先輩の対応も、人智を超えてます。純一への不信感を逸らし、あの場をおさめるだなんて、さすがのカリスマです。戦慄します。
醤油:他のルートの純一だったら、もっと上手くやれたんでしょうにねぇ。神亡き世界ですから、多少の理不尽は許容するほかありません。
QP:地獄やな。
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(七咲「先輩って、一体何なんですか? あんなことを大声で言うなんて、わたしには理解できません」)
QP:大丈夫。僕らにも理解できてませんよ。
(純一「でも、七咲に謝りたくて。ごめん」)
(七咲「部活が終わるまで、外で待ってて貰えますか」)
ミシ:もう全てを許した表情をしてますね。満更じゃなさそうです。
醤油:ミッションクリアですね。神は、人の子らに乗り越えられぬ試練など課しません。
QP:だから、神は死んだって言ってるじゃありませんか。
醤油:失礼。言葉のあやです。
ミシ:僕らの知ってる純一も、もう死んだんやね。かれ等は、どうしようもなく原罪を背負っとる。
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(放課後。浜辺。トイレ施設前。弟の一件に関して、純一はアドバイスする)
(純一「七咲の弟、少し甘やかしてもイイんじゃないかな? 今日高橋先生に叱られて、思ったんだ。僕も小学生のとき、わざとイタズラして女の先生に怒られた。今思うと、そうやって、興味をもって貰えるように甘えてたんだよな。きっと今の七咲の弟も、それと同じなんだよ。だから、甘やかしても大丈夫だと思う」)
ミシ:ヒロインの抱えた苦悩に関し一応の解決は提示してますが、なにかふに落ちませんね。この言及は郁夫のことであり、七咲の純一への態度でもあるんですよね。
醤油:構ってほしくて、迂遠な容喙をしてますからね。
QP:これ、純一のほうも「もっと僕を甘やかしても大丈夫だよ」と暗に仄めかしてませんか?
醤油:バブみ、を感じてるんですね。
ミシ:ああ、人間強度が下がってますね。共依存の関係です。
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(七咲は問題解決のお礼として、弟に贈ろうとして断られた「イナゴマスクの変身セット」を、純一に贈答しようとする。さすがに躊躇する純一だったが、七咲の寂しそうな表情を見て、しぶしぶ貰う)
醤油:七咲は純一をヒーローにしたくて、こんなことをするんですね。
ミシ:しかし、この世界での純一は、ヒーローにはなれません。しかたなく、ベルトは七咲が装着することになります。未熟な七咲自身に変化を要請してるんですね。
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(暫くごっこ遊びに興じる2人。通りがかった子ども達に変身をせがまれ、ノリノリで演じる七咲。最後にはベルトを譲ってしまう)
醤油:もうベルトは不要なんです。変身しなくとも、なにも出来ぬ現状を打破しなくとも、隣で純一が笑ってくれるなら、もう大丈夫だって安堵を得たんです。
ミシ:えっ、第3話のサブタイトル「ヘンシン」ですけど……。
醤油:……。
QP:あくまで好意的な解釈をすれば、外部から強制される変化ではなく、自己の内部から生じる自発的な変化で無くては無意味であると感じ、手離したんでしょう。ベルト一本で大胆にヒーローを演じることが出来るならば、幾らでも望むものになれる。己の可能性を見出し、それに賭してみたくなった。
ミシ:えっ、しかし3話は再び外部から変化を強制されて――。
醤油:次、行きましょう。
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(就寝前。純一を想って「ときめく」七咲。七咲「たぶん、意識し始めてるんだ。年上なのに頼りなくてちょっとカワイイ。それでも時おり見せる安心感にほっとする」)
QP:「トキメキ」の回収、無理矢理すぎません?
ミ・醤:ああ゛~。
(ED)

【12/23】裏アドベントカレンダー3日目。七咲逢編①

七咲逢編 第1章「サイアク」

醤油:次は、七咲編ですね。
ミシ:2年前のあの日の回想から、再び話が始まります。やはりこの日は、アマガミの世界が生まれたXデーなんですね。
(七咲「郁夫の欲しがってた玩具、やっと買えた~」)
QP:早速、七咲が出てきましたね。昔のほうがお洒落な格好してません?
ミシ:せやね。2年間の内に何かあったんでしょうか?
醤油:水泳部への入部ですね。
ミシ:すぐ答えが出ました。
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(失意の内にあった純一は、曲がり角で少女と行き会う。家族と幸せなクリスマスを過ごすであろう少女に、羨望と嫉妬を感じる)
(新OP)君は君のままで~♪
一同:ああ゛~、歌が変わってるよぉ~。
QP:2期ですか? これ、2期なんですか?
醤油:2クール目やね。4人目やから。
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(森島ダンス)
醤油:謎の森島ダンス。好きですね。好き。
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(梅原と下校する純一は、立ち寄った公園でブランコに乗る七咲を見つける。めくれたスカートの中身を咄嗟に凝視してしまうと、咎められる)
ミシ:はじめて会った人間に辛辣な悪態をつく七咲ですが、その実、高圧的な態度をとるのは僅か15分ほどなんですよね。
QP:巷ではツンデレに分類されるとの話でしたが?
ミシ:すぐ陥落します。(ツン)デレですね。
醤油:本人もどうふるまうべきか迷ってるんですよ。自己のキャラクター・アイデンティティへの理解が未確立なんです。
ミシ:まだ高校1年生ですからね。
QP:また自分探しの話ですか?
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(とり繕うように自己紹介をする純一。しかし、七咲は「警察を呼ぶ」などと言う)
QP:スカートの中を覗き見てしまったとは言え、あまりのユーモアの無さに純一君、びびっちゃってますよ。さすがに可哀想じゃありませんか?
ミシ:完全に委縮してますね。でも、七咲としてはこうして純一が逐一反応してくれること自体、嬉しかったりするんでしょう?
醤油:そもそも他者との間合の詰めかたが下手ですからね。平静を装ったところで、内心ドキドキものですよ。可愛くありません?
QP:う~ん、まだちょっと分かりませんね。続き観ましょう。
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(翌日、食堂。悩む純一に「うしろが閊えてる」と突っかかる七咲。七咲「優柔不断なんてミットモナイですね」)
ミシ:ここもまた随分と苦言を呈されてますね。空腹で苛々してるんでしょうか?
醤油:自己理解の未熟さからくる攻撃性が顕著になってますね。パンクに憧れてるんでしょう。
QP:結局、純一が選んだのは悩んでたシーフードカレーでもとんかつ定食でもなく、ラーメンですか。
ミシ:てっきり七咲と同じB定食にすると思ったんですけどね。
醤油:これ、後の展開を鑑みるに、やはり味噌ラーメンなんでしょうねぇ。
(昼、美也が話題にしてた黒猫を見つける純一。あとをつけると、七咲に出会う)
ミシ:犬ではなく黒猫。
醤油:本編に犬が未登場なのって、七咲編だけですよね。
ミシ:すでに森島ルートで確認したことですが、DOG=GOD。つまり、七咲編は神不在の世界を描こうと試みてるんですわ。
QP:さすがに牽強付会ではありませんか?
醤油:たとえそうだとしても、それなら、あの黒猫は、一体なんの象徴だと言うのです?
ミシ:……CAT=ACT。
一同:!?
ミシ:ああ、なるほど。どうやら取っ掛かりを掴んでしまったようです。CAT=ACT。神不在の世界で、人はどのように生きるのか。精査してゆきましょう。
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(黒猫を抱き上げる七咲。その弾みで、スカートの中身に関心を奪われてしまう純一。目ざとく感知した七咲は不敵な笑みを湛え、自らスカートをまくって黒スクを見せつける)
ミシ:Jesus……。これ、倫理観やら貞操観念やら、諸諸大丈夫ですか?
醤油:水着ですから、見られても問題ありません。
QP:イヤ、「痴漢は止めろ」と煽ってるくせに、自ら見せてしまうのはどうなんでしょうか。卑猥すぎますし、色色とチグハグでしょう?
醤油:しかし、スポーツですから大丈夫です。
QP:譲りませんね。
ミシ:それは、その、有酸素運動的な意味で……?
QP:止しましょう。これ以上は藪から蛇を突きかねません。
(七咲「わたし、1-Aの七咲逢です。美也ちゃんと同じクラスですよ」)
ミシ:ここら辺の自己紹介を装った会話、酷く形式的ですよね。
醤油:悪態をつき過ぎてしまった「サイアク」の邂逅を、修復しようとしてるんです。空空しく映るのは、そのためですよ。CAT=ACT。猫かぶれって言うしね。
ミシ:七咲は道を過またねば、古手川唯のようになれた筈です。
醤油:むかつくけど、言ってることは理解できます。
ミシ:話は再び脱線するのですが、CATの密意に関連して「好奇心は猫をも殺す」と言うことわざがありますよね。
醤油:つづけて。
ミシ:この「好奇心」と言うのが曲者です。『トルーデさん』と言うグリム童話をご存知でしょうか? わがままでナマイキな少女が両親の制止も聞かず、トルーデさんと言う得体の知れぬ隣人の家を訪ねる。するとトルーデさんは魔女の正体を現わし、娘を棒きれに変えて火の中に投込んでしまうと言う話です。
醤油:好奇心の誘惑に屈した人間は、報復されると言った教訓ですか?
ミシ:否。娘の行動は、心の中に存在する個人的な父親や母親の像を超え、なお深く、普遍的無意識の領域へ向かって行った、至極自然な行為として解釈されます。しかし、普遍的無意識の内容は、人間に畏敬と恐怖の感情を呼び起こす。同じくグリム童話の「名付け親さん」に出てくるヴァシリーナの賢明さや、「マリアの子ども」の発揮した剛情さなど、的確なアプローチを取らなくては、母なる自然の炎は辺りを一瞬の間明るく照らすにしろ、すぐに闇に戻ってしまうと言うことです。
QP:しかし、その話が七咲編とどう関係するのですか?
ミシ:七咲の六大での立ち位置は「火」の元素、「成熟・浄化」でしたよね。『トルーデさん』で語られる魔女の火は、グレートマザー、大地と結びつく、重く、暗くかがやく炎であって、天上にかがやく聖なる火と比較される。ユング夫人は、マリアを天に存在する「高位の母」に位置づけ、トルーデさんを典型的な「低位の母」とします。しかし、後者にも天へ向かう意志は潜在する。その象徴がトルーデさんの息子である火ですが、それは上方に向かって閃くものの、あくまで大地に結ばれてる。この「劣等なロゴスとして特性づけられる」・「娘の好奇心」は手段を誤ったがために結果、天には至らなかった。七咲編は、七咲の中の劣等なロゴスが、天と結びつき「浄化」の炎となるか、大地に留まり「卑俗な火」のままになるか、その「成熟」の顛末を純一と共に見守る話なのです。
醤油:火は、人間の文明にとって建設的で不可欠なものですが、反面すべてのものを焼き尽くす破壊性をも有します。
QP:しっかし、ゆかなの声で「先輩」って呼ばれるのは、ええもんやな。
ミ・醤:同感です。
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(Bパート。商店街の福びきの一等・ハワイ旅行を強請る美也。しかし、純一は漫画『ビーバー三国志』に夢中で、まともに取り合わなかった。翌日、その報復で「ハワイ当たれ」と書かれた額を七咲に笑われる)
QP:タオルを貸したりだとか、憧れの森島先輩に笑われたことを慰めるだとか、もう堕ちてませんか? え、なにか劇的なイベントありましたっけ?
醤油:これが本来の逢ちゃんなんです。本来は素直でイイ子なんですよ。
QP:頭がおかしくなりそうだ。
醤油:耐えろ。
ミシ:突然挿まれる梨穂子と中多さんのカットインが癒しです。サンキュー、サッエ。
QP:ファッキュー、アッイ。
醤油:やめろぉ。
(放課後。荷もつ持ちを頼まれた純一。七咲「両親が共ばたらきなので、家のことはわたしがやってるんです。結構好きなんですよ、家事」)
QP:本当、距離の詰めかたが下手ですね。突然、放課後デートですか……。
醤油:他のヒロインが超人過ぎるんですよ。普通はこんな感じです。
ミ・QP:ダウト。
醤油:もたざる者同士の、精一杯の歩みですよ。応援しましょうよ。
ミシ:あ、でも、澄ました表情で家事出来ますよアピール、可愛ええな。
QP:ちょろすぎますよ。
(荷もつ持ちのお礼として、福びき券を渡された純一。結局一等は当たらず、六等・500円分の商品券が当たる)
QP:はずれ、ですね。森島先輩辺りとなら、必ず一等をひき当てるでしょうに。
ミシ:アレは神さまですからね。較べるのは酷です。それに、神は人に身に余る幸運を与えなどしません。破滅を招く元です。500円程度のささやかな祝福が、身の丈ですよ。もっとも、元よりこの世界に神など存在しませんがね。
醤油:さっきから辛辣ですね。黒猫に肉親でも殺されたんですか?
ミシ:あ、先日13年連れ添った愛猫が亡くなりまして。悲しかったなぁ。
醤・QP:知らんがな。
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(手に入れた商品券で、2人は大判焼きを買って食べる。七咲「はじめて買ったんです。クリーム入り。普段は手堅く小倉餡を買うんですけど、せっかくだから試そうかと思ったんです」)
醤油:知恵の実を齧ってますね。
ミシ:そして楽園を追放されるんですね。ゆえに神不在の世界であると。
醤油:七咲、普段とは違う味を選んでますよ。自らの殻をやぶって、前進してます。
ミシ:これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、七咲にとっては偉大な飛躍である。
QP:ニール!
ミ・醤:アームストロング!
ミシ:しかしこの一歩も、案外大判焼きの食べさせっこや交換を目論む、七咲の奸計やもしれませんよ。だのに、純一君が一息で食べきってしまって、辛酸を味わってます。
QP:絶妙に歯車が噛み合わんなぁ。
(浜辺を散歩する2人。純一「七咲はスゴイよなぁ。部活やって、ボランティアやって、こんな風に家のことまでやって、僕なんてイイとこ無いよ」)
(七咲「そんなこと無いですよ。水着を見てたスケベな目は、可愛かったですよ」)
(純一「それ、褒めてる?」)
(ボランティアの話で感化されたのか、浜辺で目につくゴミを拾う純一とその姿に感激する七咲)
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(七咲「先輩っ。大判焼きのクリーム、美味しかったですよ」)
ミシ:え、なんのためにゴミ拾ってるんですか?
醤油:地元愛ですよ。
ミシ:ダウト。水泳部で何となくやらされてるだけでしょう。イマイチ哲学が感じられんのです。
醤油:そんなものではありませんか? たかだか女子高生に、確固たる意志を見ようとし過ぎなんですよ。
QP:きまぐれですからね。猫ね。
醤油:大判焼きのクリーム美味しかったって言ってるんですよ? 一念発起して踏み出した新世界は鮮やかな色彩をしてましたって、出てきて良かったって言ってるんですよ?
ミシ:へぁ~?
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(ED。ゆらゆら揺れてる~♪(中略)ポーカーフェイス。Childlike~♪)
QP:恋はみずいろ。曲名はともかく、歌詞ピッタリですね。
ミシ:笑ってしまうわ、こんなん。
醤油:不謹慎ですよ。