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mantrog

京大漫トロピーのブログです

【12/21】棚町薫編②

棚町薫編 第2章「トマドイ」

QP:ようやく2話ですよ。
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(風呂で煩悶とする薫。まさか、わたし、恋してる!?)
ミシ:アヒルの玩具。ゆのっちですね。
醤油:ミスター・ビーンだって風呂にアヒル浮かべてますよ。
ミシ:すみませんでした。
(OP)
QP:座席の配置でグルーピングが出来てますね、これ。マウント取る側と取られる側。
ミシ:また、先生の持病が始まりましたか……。
醤油:温かく見守って上げましょうよ。
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(田中さんの恋文を回し読みした男子学生に激昂し、詰め寄る薫)
醤油:男性に対する攻撃性が露わになってますね。
ミシ:恵子さんの表情に注目ですよ、皆さん。能面です。装置です。
QP:可哀想ですね。
(屋上。なんだかんだの解決)
醤油:綾辻さんと薫って似てますよね。学校でも家でもアイソレートして、頼みとする人間が純一ただ一人になる。
ミシ:そうですか? 薫には親友の恵子が存在してますよ。大きな差異です。
QP:えっ、薫、家でもアイソレートするんですか? 二人三脚でやって来たとか言う母親おるやん。
醤油:それがねぇ、この後一悶着あるんですよ。
QP:嫌だなぁ、それ。
醤油:まぁ観て行こうや、QP君。と言うか、恵子の問題、簡単に流されましたね。
ミシ:薫には、まだ恋する恵子の苦悩が実感として解らんのだから、チープな解決に落ちつくのは致ししかたなかろうて。
QP:誰ですか、あなた。
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(薫「わたし、この季節の空は好きなんだよね。やけに高く見える」)
QP:お、「風」の密意ですよ。
ミシ:空の高さに関しても言及してます。やはり地上のしがらみから抜け出して、自由な空へ飛翔せんとする深層意識でしょうか。
醤油:それ位、ある程度不満を抱えた人間なら誰しもが思うことでしょう。しかしまぁ、薫が高さを望む反面、純一が高所恐怖症を患ってることは厳然たる事実としてあるんですよね。2人が連れ立って歩く際、果たして同じゴールへ辿りつけるのかと言うような未来への不安が仄かに臭う。それを相補の関係で、比翼連理の鳥となって、未来へはばたく。そんな話でしょう、これ。
ミシ:ロマンチストですね。
醤油:照れます。
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(純一が薫に好きな相手を尋ねる。回答を渋る薫は逆に問うが、純一は「イナイヨ」と返す)
ミシ:しつこく言わせて貰うと、父娘のアレです。
QP:せやな。
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醤油:なんやこの鳥はぁ!?
ミシ:番ですよ。もしくは幸福のブルーバードですかね。
QP:チルチルとミチル。
ミシ:スイスの心理学者、カール・グスタフユングは、鳥が、魂・精神などを表すことをたびたび指摘してます。鳥は人間と異なり、空を自由に飛べる。そこから、突然に閃く考えや、思考の流れ、空想とも結びつくんですね。この閃きは、無意識内に存在する心的内容が突如として意識内に出現することによって生じます。その際、自我はそれを噛み砕き、既存の意識体系とうまく結びつける必要があるのですが、この無意識の活動が強すぎると、自我は混乱し進むべき道を見失ってしまう。
醤油:『ヘンゼルとグレーテル』が、まさにそれですよね。何千の小鳥が目印のパン屑を啄んでしまうと、兄妹は道に迷ってしまう。そして3日目に兄妹を魔女の棲むお菓子の家まで導くのも、この小鳥だ。
ミシ:そのお菓子の家に棲む魔女は、無意識界に君臨するグレートマザーなんですよね。グレートマザー、人類に普遍的な母なるものの元型には、共通した「包含する」性質と、そのふれ幅による両面性が見出せます。肯定的な側面は「生」のイメージ、「支える・育てる・実らせる」ですが、子どもを抱きしめるちからが強すぎると「つかむ・誘う・呑みこむ」など、子どもの自立を妨害し精神的な「死」へと向かわせる否定的な側面が出てくる。件の魔女は後者の「悪母」であり、兄妹を死へ誘わんとする。それが最後パン釜で焼かれ焼失すると、兄妹は母親からの精神的自立を果たすんですね。特にグレーテルは、はじめヘンゼルにおんぶに抱っこだったのが、焼きがまを自ら操作したり、帰り道兄と替わりばんこで鴨の背に乗ったりと、自らの女性像を明らかにし、女性らしく配慮と強さを持つ人格へと変化してます。あ、ちなみに最後の白鴨は、母性の肯定的な側面ですよ。
QP:随ぶんと謳ってくれるじゃねぇか、ミシェル。
ミシ:僕の敬愛する河合隼雄先生、その受売りですけどね。
醤油:しかし、そうなると2羽であることにますます有意味性が生じてきますね。
ミシ:と言うと?
醤油:それぞれが純一と薫、それぞれの精神と、そこに生じる天啓、恋愛関係への発展に伴う混乱を示唆してる。
ミシ:なるほどね。
QP:深読みしすぎやろ、コイツら。アニメ楽しみましょうよ。
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(薫「わたし達の関係って何なんだろう?」関係の定義と変化を望む薫だが、純一に「必要か?」と一蹴され、「絶対必要だ」と食ってかかる)
ミシ:ああ、これまで関係の定義をしてこなかったんでしょうねぇ。
醤油:もう完全に、娘が女性として育ってゆく過程に戸惑う父親の姿ですね。
QP:関係の変化を要請されてますよ。
ミシ:どちらかと言えば、純一は攻略される側やね。
醤油:薫は途中までセルフオートで落ちて行きますからね。
(その変化とやらにつき合ってやると言う純一だが、変化の内容を尋ねると薫は「考えてなかった」と言葉に詰まる)
ミシ:ははぁん。まだ自我がね、無意識から生じた突然の閃きをね、整理できてなかったんですよね。
QP:どんどんうさん臭くなって行くな、この男。
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(薫は逡巡したのち、純一にとっ掴まる)
QP:これはアクユウとしての二人の距離感を表してますね。すごく近い。
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(鳥が飛び立つ)
醤油:飛び立つのやめーや。
ミシ:北に行くんですかね?
QP:北から来て南に行くんですよ。
醤油:北から来た蟹グラタン!
ミシ:賽は投げられたんですね。地上高くにね。
醤油:「楽園」それは日出ずる未来。
QP:『RAVE』懐かしーですねぇ……。
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(不幸な事故で唇と唇が接触してしまう2人)
ミ・醤・QP:ズキュウウウン!
QP:これを待ってました。
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(薫「はじめてだったのよ!?」「今の無し、ノーカウントッ!」)
醤油:咄嗟に純一君が謝ると、薫、不満そうな表情になってますね。
ミシ:薫からしたら、もっと聞きたかった言葉があるんでしょう。
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(純一「待てよ、僕だってはじめてだったんだぞ! 僕の唇奪って逃げるつもりなのか!?」)
ミシ:コレですよ、コレ。この告白が欲しかったんですよ、薫は。
醤油:はじめて、ですね。
QP:このキスを契機に、幸か不幸か2人の関係は次のステージ、恋愛的なそれへと発展して行くんでしょうね。
(Bパート。場面は移り、放課後の教室へ)
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(純一「薫、さっきの仕返しに図書室へ来イ。イイから来イヨ」)
ミシ:ここから一転攻勢、純一君のターン。理不尽な報復の開幕です。
(梅原「これは、面知れ―ことになりそうだなぁ」
醤油:危険な香りを嗅ぎとってますね。しかし、悲しきかな。図書室で催される蛮行を、親友は嗅ぎつききれませんでした。
ミシ:梅原君は、潜在的ホモですからね。純一自身の変化しか感知出来ぬのでしょう。リベンジポルノに及ばんとしてるとは言え、恋愛的な側面では未だそれほどエンジンは掛かってませんからね。
醤油:そのかわりに、全ルートの観測者である美也、実の妹に密事を目撃されると。地獄ですね。
QP:一体なにがはじまるんです?
(純一「さっきのお返し、きっちりさせて貰うぞ。男らしくな」)
醤油:「男らしく」ですね。
ミシ:なぜ純一側が被害をこうむった体になってるんでしょうか。理解に苦しみます。
醤油:大事な「はじめて」を奪われたんですよ?
ミシ:同条件でしょう?
QP:薫は「無し」って言ってたじゃありませんか。
ミシ:全く無かったことになってませんからね。
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(純一は、脇腹くすぐりの刑での報復を想像するが、納得が行かず、頭をふる。純一「駄目だ駄目だ!」)
ミシ:純一君は、おりに触れて想像力の限界へ挑みますが、これは既存のメソッドでは解決しえぬ問題が目の前に浮上してきてるからなんですね。
醤油:窮した純一君はここで、陳列された一冊の本を目にします。
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(『人体の神秘』)
(純一「よし! へそにキスをする!」)
ミシ:無意識から生じる閃きを、恐れず、躊躇せず行使する。これは純一君の自我の構造が未知の事柄に対して柔軟・寛容であることを証明します。
(薫「そう。でも、もしわたしがイヤって言ったらどうするの?」)
(純一「嫌って言うのか? そ、それは、無しで……」)
(薫「男らしくナーイ」)
(純一「わ、わかった。だったら、薫が嫌って言っても、無理矢理する!」)
(薫「じゃぁ、イイよって言ったら? ねぇ、どうするの?」)
(純一「そしたら全力でする!」)
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QP:う、うえぇ?
醤油:皆さん大困惑ですよ。もう2人だけの世界ですね。森島へんのときは、こうした密事を行う際には離れたポンプ小屋まで出向く必要がありましたが、この2人は手近な領域、図書室で済ましてしまうんですよね。
ミシ:事の重大さに無頓着なんでしょうね。これも下手したら、友達もしくは父娘間で行われるスキンシップの範疇だと捉えてるのではありませんか?
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(薫「ちょっと、なにじっと見てるの? へそにキスするんでしょ?」)
QP:もう何なんだこれは……。頭がおかしくなりそうだ。
(薫「えぅ、くすぐった……」)
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(純一「お、女の子のはだって、こんなにスベスベなのか……。唇がふれるだけでこんなにキモチイイなんて」)
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(薫「ちょ、ちょっとっ。今なめたでしょ! だ、駄目ぇ! 終わりっ」)
醤油:胎内回帰。妊婦ですね、コレは。
ミシ:グレートマザーをうち倒し、獲得するはずの母性を暗示してますね。
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(のぞき見する美也)
ミシ:兄のこんな痴態を目の当たりにしたら、そりゃぁ歯噛みもしますわ。
QP:もう勘弁してくれよぉ……。
醤油:ここにも絶望する妹が一人。
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図書室から逃亡し、先ほど犯した秘密の悪事の共有から高まりと快感を覚える2人)
醤油:楽しそうなんですよねぇ。
QP:イライラします。
ミシ:相当「男らしさ」に拘ってますね。
醤油:あんまり男らしくても駄目なんですけどね。もし純一に男性器を持ち出されてたら、薫は卒倒したでしょうね。
QP:異性とはじめての性的な交流に及び、なんだこんなものかと、自らを安堵させ恐怖心を和らげてるんですよね。可愛ええな。
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(公園で枝にひっかかったシャトルをとる薫と純一)
醤油:ほら、QP先生の大好きなマウントですよ。
QP:嬉しーなー。と言うか、シャトルって鳥の羽根やん。
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バイトに遅れると言って去る薫。純一「薫って、あんなに可愛かったっけ?」)
醤油:結局、なにが自覚の契機だったんですか?
ミシ:へそへのキスでしょう。
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バイト先への道すがら、見知らぬ男と待ち合わせをする母の姿を目撃してしまう薫)
醤油:ああ、不潔ですね。薫は潔癖ですから、これはショックでしょう。
ミシ:これまでずっと母を母としてしか認識してこなかったのですから、無理もありませんね。元来同じ女性なんですけどね。純一と恋愛関係に発展しなかったのも、母に認めたくなかった女性性を、自らの内に見出すのも無自覚に忌避してきたからでしょう。
醤油:しかし、これから薫は純一と男女の関係に移行せねばならんのでしょう? アンビバレントやわ。
ミシ:なかなか母離れできぬ娘に、業を煮やした母がとった積極的なアプローチかもしれませんよ。『ヘンゼルとグレーテル』の魔女も、最後は自らパンがまの中に入って行くんです。薫の母もまた、娘がグレートマザーに囚われて精神的な死を迎えぬよう、あえて自己消滅の道を選んだともとれます。
QP:なんにしても重すぎる話です。
ミ・醤:たしかに。