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京大漫トロピーのブログです

【12/19】突然いいところに行く友を君は祝えるか

ふれにあです。
今日12月19日は「BLEACH 巻頭歌骨牌」の再販開始日でした!
僕は初版のときに買えなかったので、日付変わるちょっと前からスタンバイして無事購入することが出来ました。
届くのはしばらく先だそうですが、とても楽しみです。


アドカのテーマとしては、奇数日なので「赤」ですね。
というわけで、BLEACHにおける「赤」の話します。
BLEACHは名前を非常に大切にしている作品ですが、彩色に関してもかなり思慮を入れています。
本作における最も重要な色はもちろん白と黒ですが、赤はその次くらいに重要な位置づけにある色だと思っています。いや、BLEACHが白黒を大事にしている作品なら、赤を大事にしているのはBURN THE WITCHの方でしょうか。

さて、BLEACHにおける2大・赤いキャラといえば、誰と誰でしょうか?


阿散井恋次(※1)」と「バズビー」ですよね。

この2人は結構似た立ち位置にあるキャラで、接点、共通点を挙げれば
・髪が赤い
・特徴的なオシャレを施している
・火属性の技を持つ
・幼少期からの友が突然、圧倒的な力を持つ者に迎え入れられる
・クールな上司(赤に対して白を象徴する)にただならぬ因縁があり、衝突し、敗れる
・組織の今の動きと反発する過去からの強い意志を抱えている
・最終章にて敵として対峙するが、そこそこ気が合う

と、明らかに死神側、滅却師側の対比をなすキャラとなっています。
BLEACHには対となるキャラというのが数多く存在します。一護と銀城、織姫とリルカ、浦原とマユリのように。この2人もそういった対比の一つですね。しかし、この2人は互いがアイデンティティを賭けて争うようなことはなく、物語上のポジションとしての対比がこの上ないほどに強く出されたキャラとなっています。
自分としては、この2人は「赤=主人公」のステレオタイプよろしく、各陣営側のある種の主人公であると捉えています。
(本当の主人公であるところの一護はどこか"主人公の役割"を果たしているだけというか、物語の大きな軸を支えるための「楔(※2)」となっているように思えて、彼がストーリーの大きな流れを決めてくれているからこそ、他のキャラクターが魅力を余すことなく出せているのではないでしょうか。)
という話はさておき、この2人の対比の美しさについて触れていきますね。


恋次「牙」、バズビーは「指」
2人はともに、自身の固有能力の技に身体の一部を象徴とする技を複数持っており、恋次は狒狒王蛇尾丸(双王蛇尾丸)の「狒牙絶咬」、「蛇牙鉄炮」と牙を使った攻撃、バズビーは「バーナーフィンガー1~4」、「バーニング・フル・フィンガーズ(※3)」と指を使った攻撃が作中何度も登場します。これは2人を表紙とする3冊の巻頭詩にも漏れなく登場しており、獣っぽさと人間らしさの対比は、両者の幼少期の戦い方から来ているのでしょうか。


・別れを祝福した恋次と、憎んだバズビー
二人とも、自分-友-敵(本当は同じ意志を持つ) という構図で強い因縁を持っていますが、恋次のケースは恋次-ルキア-白哉なのに対して、バズビーはバズビー-ハッシュ-ハッシュと、同一の人物が友と敵の両方のポジションを担っています。幼少期のパートナーとして研鑽し、志を共にした2人は、圧倒的な力を持つもの(朽木家/ユーハバッハ)に友が突然迎え入れられるという事件に見舞われます。そこでは、よく知らんが力と金が莫大にある世界へとルキアを連れて行かれる恋次の境遇と、故郷を焼かれ、ずっと恨んできたユーハバッハという強大な敵に自分ではなく無能だと思い込んでいたハッシュが認められるというバズビーの境遇は、別れとしてはあまりに違うものでした。


・悔しがる恋次と、悔しがれなかったバズビー
原作17巻・尸魂界編にて一護に敗れてルキアを助けるという自身の真意に気づいた恋次は、習得したばかりの卍解を使って朽木白哉に挑むが、白哉卍解になす術なく敗北。白哉から告げられる勝敗の理由は「格が違う」。名ゼリフ「自分自身の魂にだ!」とともに立ち上がるもその牙で白哉を倒すことはできず、倒れるときに吐いた言葉は「ちくしょう」でした。

対して原作69~70巻・千年血戦編にて、聖別によって力を削がれ、他の滅却師たちとともに完全に反旗を翻したバズビーは、遂に幼少期からの因縁のあるハッシュヴァルトに戦いを挑むが、ハッシュヴァルトの能力すら使われず惨敗を喫します。最期の言葉は「お前に敗けたらもっと悔しいもんだと思ってたぜ」。バズビーは自分が選ばれなかったことが腑に落ちた、自分と研鑽を積んだハッシュが思っていたよりずっと強くなっていたことにどこか嬉しさを感じながらも命を落としました。

一方はずっと格上との戦い、もう一方は元子分との戦いで、更に強くなったばかり、弱くなったばかりという状況で死闘を終えた2人がこうしたセリフで散っていくのは少し皮肉っぽく、友を自分の手で奪い返せずに悔しがった恋次を思い出させながらバズビーの最期を印象づけています。
そしてこの死闘での敗北によって、恋次は生き残り、バズビーは死亡します。戦った相手はどちらも、彼らとの仲間意識を取るか組織の一員としての振る舞いを取るかの中で揺れていたという、それを知れたらどんなに良かったかということを生き残った方だけが知ることとなります。
最終的に幼少期からの友と結婚するに至る恋次と、もう一方で対話ができないまま殺し合いになってしまったバズビーの物語を同じ話の中で見事に描ききっています。友と本当にぶつかり合い、最期までわかり合えないという、それまでのBLEACHの作品内では描かれてこなかった関係を物語終盤で提示してきたところには並々ならぬ構成力を感じます。


今回の記事を書くにあたって改めて読み直し、考えたのですが、これほどまでに綺麗な対比をして異なる結末を示しているのは本当に痺れました。
BLEACHにはルキア恋次、一護とチャドのような「友」の2人はよく登場しますが、バズとハッシュの物語はここまでの展開が合った上でようやく描ける、もう一つの「友情」の形なんですね。
アニメでのバズとハッシュの対決楽しみにしてます。

なお、今回紹介した尸魂界編の部分は、現在「ゼブラック」にて無料配信されています。是非読み直してみてください。
zebrack-comic.shueisha.co.jp



※1 僕がBLEACHに触れたのは小学生の頃の2009年あたりなのですが、この名前って多分2003年のスーパー戦隊爆竜戦隊アバレンジャー」から来てるんじゃないか?と思っていました。どうなんでしょうか。
※2 これは一護が霊王の資質を備えていることとかけている。
※3 Burning Full Fingersを略すとBFF、つまりBest Friend Foreverになるという指摘を見た時はかなり胸熱でした。