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mantrog

京大漫トロピーのブログです

【12/15】Forget me not not

 ミシェルです。2回目の投稿だ。わはは。先日、某サークルで冬のかもがわに飛び込んだ。刺すように冷たかった。20秒間潜水するルールだったのだが、辛すぎて15秒で上がってきてしまった。艱難辛苦に耐える間、さまざまなことを走馬灯のように考えた。その中の一つ。僕が恋愛ADVをプレイしなくなった理由。
エロゲーマーの聖地・批評空間の中央値80より上のラインナップに疎外感を得るようになったから。素晴らしき日々から全てがおかしくなった。
・現実への怨み言を忘れるようになったから。
・類型化の進行。
・四を知って十を知っちゃったから。
・ものの見方の揺れ幅が固定されてきたから。
よつばと13巻。
・器に入れられる許容量をこえた。
 そうか。僕はもう、これまで蓄えてきた出逢だけで余生を充分に歩けるのか。冷水から上がり、触れた外界は、先ほどよりちょっぴり暖かく感じた。

◇しぇいむ☆おんレビュー

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picture1:タイトル画面。OPも必見
 2007年。2ちゃんねる発祥のツンデレ喫茶ADV。もともとの企画は「有志によるツンデレ喫茶の経営」だったが、さすがに無理があって浪漫と妄想を詰め込んだゲームの制作へ変更。半年で商業品に負けず劣らずのクオリティのものが出来上がってしまった。クレイジーだ。現在のフリー恋愛ADVの雛型を打ち立てた傑作である。同好の士が見返りもなく集まって作り上げたものだからか、キャラが生きてる。愛を感じる。筆者は、ジュニア・ハイの頃に本作と出会ってから、これまで人生のさまざまなシーンでリプレイを繰りかえしてきたが、そのたびにあらたな発見、若き日にはなんとも無しに感じた、凝り固まった思考をのどけく融かす金言のシャワーを一身に浴び、未だ持続する宗教体験の余韻をしゃぶりつくしてたりする。クリスチャンにとっての聖書のようなもの、と言ったら怒られるだろうか。筆者が知り得るうち、あきらかに最高のゲームの一つである。未プレイの諸君は直ちにVectorからダウンロードしてプレイすることをすすめる。
 え? 2ちゃんにも、ツンデレにも、ミシェルにも興味あるけど、もう一押しくれって? よござんす。レビューしましょ。
 夏。田舎から上京してきた大学生・内藤隆也は、ツンデレ喫茶「しぇいむ☆おん」と運命の邂逅を果たす。アフロでハードゲイでグラサンのくせに超人な経営者(もはやこのネタも失われつつあるが)の存在をのぞけば、至って快適な憩の空間。そこには一夏のアバンチュールを予感させる、5人の魅力的な攻略対象の姿があった。

内藤隆
 鈍感でスケベ。些か馬鹿で、おちょーし者な男だが、どこぞの誰みたく説教じみたヒロイズムをふりかざすことなく、どちらかと言うとパッシブにヒロインのアプローチや悩みに向き合う主張の無さのお蔭で、不思議と好感がもてる。バイトもせず毎日喫茶に通えるほどの富を蓄えた変態ニート。無闇矢鱈とアグレッシヴで、ふき荒れる<ツン>にめげず、そのくせ<デレ>には一歩下がって弁えるチキンっぷり。優れたバランス感覚を有した隆也で無かったら、ヒロイン達の攻略は不可能だったろう。憧れるよ。
 ゲームシステムとしては、マップ型。選んだ地点へ行く前から誰に会えるか判ってるなんて、ちょっと変だよな。でも一昔前のADVはコレが普通だったんだぜ。8月4日から10日までの一週間、午前・午後の2回ずつ、計14回の選たくで誰と会うかによってルートが分岐する。意外とシビアな難易度設定で、標的を絞らず無為な毎日を過ごしてるとBADEND&ヒントコーナー直行。特定のキャラに至っては、あるキャラとの並行攻略が鍵となってきたり。まぁ、フォークダンスで「あっちゃー外れくじだぁ」って唾棄されるような俺達がオンナのコとつき合おうって言うんだから、難しくて当然だよね。ときメモのヒロインにキレる後輩の姿を見て、そこらへんの謙虚さは忘れてはならぬと改めて思った。
※これより下、各ヒロインルート(文量を割くのは諸事情あって2人だけ。僕が愛せる人の数は決まってるんだ)への諸感を記す。無慈悲なネタバレを含むため、敏感な未プレイ者はブラウザバックだ。

◇典乃(タイトル画面右上の子)
 ノリノと読む。テンノと呼ぶと怒る。うん?逆だったか?まぁええわ。トラブルメーカーなボクっ娘。素直で真っ当に可愛e。ホリィ・センが好きそう。エンディングが一人だけVIP仕様。

◇早苗(真ん中の子)
 …………。

◇美幸(右下の子)
 人見知りニーソ。こちらを信頼してくると、天然な側面と料理スキルを見せてくれるようになる。その上耳年増。おほっ数え役満じゃん、これ。とは言え、美幸ちゃんの可愛さを知るには、かなりの忍耐が要される。なにせ出逢かたが最悪。落としものを善意で拾ってくれたオンナのコを突然口説きはじめる男ってどうよ。そりゃぁ敬遠されるよね。プロローグでそんな大それたチョンボをしでかしちゃうもんだから、マップ選たくで会っても基本無口。さすがの隆也も、これにはちょっと凹んでて安心した。悲惨な現実を打開するには、隠しキャラ・美幸ちゃんのお母さん(外見フランケンシュタイン)に街で3回ほど会って好感度を上げておく必要がある。すると、10日目に家にまねかれ、帰って来た娘の美幸ちゃんとバッタリ遭遇。あとはトントン拍子に攻略が進んでゆく。美幸ちゃんの抱える問題とはありふれた、上手くゆかぬ人間関係に起因するソレで、解決の手段にも真あたらしさは皆無であるが、淫獣的な攻戦(パンツとか耳かきとかタックル。抉りこんでくるファーストキスとか)がとにかくこちらの理性に負荷を掛けてくるので、一見の価値はある。無事エンディングを迎えた二人には飽きるまで肉を貪り合う日々がまってるんだろうなぁ。あぁ゛誰か筆者にも美幸ちゃんお手製豆腐ハンバーグを届けてくれよぉ。
 ところで上述のフランケン、BBAなのに作中最も<ツンデレ>を体現したキャラである。落としものを拾うのを手伝った隆也に対し「べ、べつに頼んでなんか(以下略)」と捲し立てる反骨精神や、売り言葉に買言葉で家に連れ込み、憎まれ口を叩きながらもさりげなく料理をふるまって出かたを窺う奥手さ。言行の一つ一つに滲み出る天邪鬼な好意は、世に氾濫する記号的なツンデレが見習うべき美徳である。ふとしたおりに見せる弱み、どこまで自らをさらけ出したものか、他者と関るのがおっくうで、それでも他者からの理解を欲してると憚ることなく本音を告げた言葉は、建前を演じることに慣れきって乾燥しがちなペルソナを貫通して、不覚にもグッと来た。可愛eの星はこんなところに在ったんだ。立ち絵及び、下着姿を目撃するイベントグラが未実装なことが惜しまれる。

◇里美(左下の子)
 フリーADVに馴染みのなかった筆者が手はじめにクリアしたリトルデビル。下心を完全にコントロールされ、辛酸をなめる結果となった。作中、最も危険なルート。

◇可奈(左上の子)
 フランス人とのハーフ。同じ大学、同じサークルに通う金髪巨乳。実は隆也の生き別れのおさな馴染みであり十年来の好意を寄せるが、鈍感な俺達のヒーローはそれと知らず、ぎくしゃくとした上滑りの人間模様が展開される。他人行儀な苗字呼びをされることに内心ブチギレており、無愛想にふるまう。しかし、8/6に身内合コンへ出席すると世界は一変。酒乱と化した可奈ちゃんは、日頃の鬱憤を晴らすかのごとく、途惑う隆也にチョークスリーパーと愛の言葉を囁きつづける。あのさぁ、普通ここまでされたら、さすがに自覚的になると思うんだけど、そこは俺達の分身だよね。お前女性関連でなんかトラウマあるだろって疑うほどの慎重さで、へべれけになった可奈ちゃんには指一本触れようとせず、たとえ酒のちからを借りた一時的なものでも、ちょっとだけ仲良くなれて良かったなぁなどと呑きにかまえてたりする。あぁ゛堪らねぇぜ。これをシナリオに強要された不自然な鈍感さと唾棄するのは簡単だが、ギャルゲーマーが嬉しくなってしまうのは実際こうした無自覚ゆえのある種の聖人君子性の発露なんだよなぁ。オーケー。わかりました。最後までやきもきを楽しみましょう。ん?本ルートに突入したら、突然可奈ちゃん視点の回想がはじまったぞ。隆也との出逢をなぞる夢。あっ知ってる。これ可愛eやつだ。夢の中、子どもの可奈ちゃんはクソガキどもに髪や瞳の色を理由に仲間外れにされる。家に帰り「どうしてわたしの髪は金ぴかなの。みんなと同じ黒だったら良かったのに」と泣きじゃくる可奈ちゃん。ああ、わかるわかる。オレゴンで同じ憂き目に遭ったから解るよ、それ。子どもってちょっとした差異に過剰なまでに辛辣だよね。これ、ライターはきっと同じ体験をした帰国子女だな。シンパシー?感じるよね。
 髪をお団子にまとめ、やきう帽に隠して遊びに行く可奈ちゃん。同情を禁じ得ず、ハラハラと木陰から見守る筆者。人目を避け独りブランコに乗ろうとすると、頭の軽そうな少年・在りし日の隆也が一緒に遊ぼうと話しかけてくる。快諾する可奈ちゃん。二人仲良く夢中になってブランコで遊んでると、神のイタズラで帽子が飛ばされ金髪を目撃されてしまう。予想される好奇のリアクションに身をすくませ涙目になると、お馬鹿な隆也は思ったことをそのまま口にするのである。なにそのかみ、うわぁ、かっこいー!
 ああ、コンプレックスで塞ぎがちだった女の子はここにすくわれた。筆者もすくわれた。ホリィ・センは夢精した(一緒にプレイした翌日、炬燵の中でしちゃってた。ウソのようで本当の話)。こんなんされたら、そりゃ惚れもする。二人は順調に交友を深め、おままごとに興じたり一緒に絵本を読んだりする充実した日々は、一方が引っ越しするまで継続した。同じ頃隆也もまた、まどろみの中、過去へのタイムスリップを果たす。そこでは、可奈ちゃんの美化の進んだ回想中では秘匿された真実が、ありありと語られる。ようちえんを牛耳る、お転婆で世話焼きな女の子にふり回される毎日。おんぶを強請られたり、サラダとしょうして雑草を食べさせられたり、パンツの中を観察されたり。さんざんな目に遭ったりもしたが、脳裏に浮かぶ映像が女の子の目を細くして笑った表情なあたり、自らは幸せだったのだと、件の子への好意を悟るのである。
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picture2:変わらなかったものもある
 終盤、離れた時間を埋めるかのように旧交を温める二人は、なし崩しで半同棲をはじめる。あさ、シーツを引っ張り上げて起こしてくれるグラが90'sのKEY作品を髣髴とさせるタッチで、ほほえましさとノスタルジーが綯交ぜになって、見る者に多幸感を与えてくれる。ああ^~生き返るわぁ^~。余談だが、筆者の金髪崇拝は宮ちゃんではなく、可奈ちゃんに由来してたりする。

◇そしてギャルゲーマーはあしたを生きる

 人はどうして恋愛ADVをプレイするのか。秀逸なシナリオにこう惚とするため。恵まれなかった学園生活のリプレイ。可愛eヒロインに快楽をもとめて。ノスタルジーの羊水にまどろむため。否。そのような陳ぷな回答は路上アンケートにでもくれてやれ。ギャルゲーマーと呼ばれる人種が、狂ったようになん十なん百とプレイ済みの外箱を積み上げる理由はたった一つ。自らの現実をより豊かに、正しく彩るためだ。聖書に羅列された教えを実現したキリスト者の魂が神と通じその罪を許されるかのように、僕らもまた、作中の異なった境遇にあるキャラクタ達(一人として同じものはなく)と苦楽を共にし、クリエイター(おっさん達)が託した憐憫やら禱りやらへの理解を育むことで、自らの内に多方向からの足場を築く。おそらく足場の中でも特に見栄えが悪く雑然としたそれは、それでも人の生に関する真理のようなもの、普遍的で超越的な存在へちゃんと通じてる。熟練したADVプレイヤー(泣くためにゲームやってるヤツはダメ。コイツらが批評空間をダメにした)は、ある問題に直面したとき、これまで出逢ってきた数千のヒーロー・ヒロイン達の中から、デュルケームの唱えた特定諸規則の総体のごとく、最も事態に即した者が正しき選たくをこちらに耳打ちし、光ある方へと的確に導くのを発見するだろう。独りっきりでこの世に生を受けた筈のかれは、今や幾千もの人格に支えられ、これからの生を謳歌するのである。
 メリークリスマス! 僕は、こんなにもたくさんの贈りものを貰ったよ。

(ミシェル)

P.S.
 あ、漫画の話?最近は、ニコニコ静画の『電車内でJKがダベるだけのヤツ。』の更新をこころまちにしてるよ。やっぱ茶麻先生は天才だね。アマガミプレイしよっと