mantrog

京大漫トロピーのブログです

【12/23】悩みについて悩まずに書く

ホリィ・センです。漫トロ7年目です。今年のアドカは煩悩がテーマだと聞きました。この際「煩」はどうでもいいです。いつも性について考えてばっかりの人間なので、「悩(み)」の方にフォーカス当てます。

しかし、悩みについて書くことをイチイチ悩みたくないです。僕は院生なんですけど、修士論文提出が来月13日ということであんま時間ないんで、ちゃっちゃと終えます。ということでこの文章は自動筆記のような書き方をしています。「自動筆記」のちゃんとしたやり方を僕は知らないけども、とりあえず何も考えずに言葉が浮かんでくるまま書く、ということをやります。アドリブとも言うのかもしれない。

鴻上尚史の『孤独と不安のレッスン』という本を読んでいたら、「悩む」ということと「考える」ということは違うのだ、ということが書いてありました。うんうん悩むことによって費やされた時間はただただ無駄で、おそらくネガティブにもなるのでしょう。それに対して「考える」は建設的です。考えることに時間を費やせば費やすほど、物事は進展していきます。なるほど、そのような分類はできるかもしれない。

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)

ところで僕は昔からよく何かを考えている人間だと思います。一人で自問自答を繰り返します。兄が独り言癖のある人だったのもありますが、どうも自閉的な何かがあるんだと思います。独り言を繰り返して一人で納得を重ねていきます。
そう、「悩む」とは終わらない独り言を繰り返すことなのかもしれません。確かにそれは「考える」なのだろうけど、自己の中で閉じて完結したシステムの中で導き出される答えは、建設は建設でも象牙の塔でしょう。僕の人生においては「悩む=考える」という等式は結局のところ成り立っているのかもしれません。

終わらない独り言、そこで思い出すのは「セカイ系」です。ユーカリさんが君の名は。の話をしていて、「セカイ系」にぶち当たっていたのでついついいろいろと思い出してしまいました。セカイ系にもいろんな定義がありますが、それこそ『セカイ系とは何か』(前島)の中にある一つの定義を出すならば、「エヴァっぽい」ということです。具体的にはエヴァンゲリオンのシンジくん的な自分語り、すなわち「独り言」でセカイが成り立っているという状況です。

この要素を突き詰めると、その後のサブカルチャー作品にも一つの線が見出せます。ひたすらに主人公の目線でセカイを語り続けるエロゲー。「ヤレヤレ系主人公」が独白し続けるライトノベル。これらは悩み=独り言の系譜だったのだと。

僕はそんな作品が昔から好きでした。他愛のない作品にも主人公の独白を見出しました。今や『マギ』でビッグマネーを掴んだ作家、大高忍先生の過去作品に『すもももももも』というのがあるんですけども、これも僕に言わせれば「無力な主人公がそれでも葛藤してあがく作品」なんですよね。なお、『マギ』においてはこの要素はアリババくんに受け継がれているような気がします。バトル漫画の系譜を読み解けば、ポップ(『ダイの大冒険』に出てくるキャラクター。最初はヘタレだけど、後に成長し頼もしいキャラクターになる。「ヤムチャ」の対義語)的なものだとは思います。


まあ、「案ずるより産むが安し」って言葉があるぐらいで、悩んでるのがバカらしいところはあります。自閉的な人間は自己完結している分、むしろ行動的だったりします。そこには他者はいない。セカイ系も「きみとぼく」で閉じられた想像力の欠如したものとされていますけど、それは「自閉」だって同じでしょう。セカイ系を好む人間の大きな層としては自閉的な人間がいるのだと思います。

君の名は。』についても僕は結局あくまで新海誠の作品として観ています。『秒速5センチメートル』の第二話「コスモナウト」でメールを送ることができた主人公、それがタキくんなのだと。悩むことをやめて動き出したんだろう。飛騨に会いに行く行動力がタキくんにはあった。自閉していた人間(新海)が悩み抜いた結果、動き出したんでしょう。

何も方向性を見出さないまま悩みについて思うこと書きましたけど、独り言と言えば、オススメの漫画は『吾輩の部屋である』ですね。大学院生が自分の部屋にこもって独り言を言いながら(あるいは「喋る家具」にツッコまれながら)くだらないことに悩み続ける作品です。自己完結した世界も意外とポップで笑えるんだなという希望に溢れています。
時期が悪かったのか、宣伝が足りなかったのか、ジャンル的に受け入れられないのか、漫トロではあんま流行らなかったなあ。

吾輩の部屋である 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

吾輩の部屋である 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

駄文失礼しました。

ホリィ・セン

【12/23】七咲逢編④(終)

七咲逢編 第4章「コクハク」

ミシ:This is a story about control. My control. Control of what I say. Control of what I do. And this time I’m gonna do it my way.
QP:急にどうしたんですか。
ミシ:イヤ、自分が17のときは何も出来なかったなと。
醤油:好きだからって、『glee』ネタぶっこむの止しましょうよ。
ミシ:「control」は「成熟」を扱う七咲編にピッタリだと思って、言っちゃった。てへ。
f:id:mantropy:20161223121137p:plain
(創設祭。純一は七咲との約束通り、女子水泳部のおでん屋台を手伝う)
QP:女子水泳部の屋台なのに男子が店番をしてたら憤怒しますけどね、僕は。
ミ・醤:たしかに。
QP:そんなこんなで最後のOPです。
(OP)
f:id:mantropy:20161223121140p:plain
茶道部の2人がサクラとして屋台にやって来て一芝居を打つ)
醤油:梨穂子パートへの繋ぎですね。一応、七咲の成熟を描く意図もありそうですが。
ミシ:この程度、はじめから出来てたように思うのですが。
(甘酒で酔っぱらった高橋先生と、監査役綾辻さんがやって来る。見つめ合う二人)
f:id:mantropy:20161223121142p:plainf:id:mantropy:20161223121145p:plain
QP:次々とキャラが集まってきますね。
ミシ:休憩時間です。尺が余ってるんですね。
醤油:七咲、おでんを贈賄して、純一との交際を綾辻さんに認めさせようとしてますね。
QP:マウントを獲ってやったぞと言った表情をしてますね。
醤油:実際に簒奪したのは、綾辻さんの婿となるべき人間ですね。
ミシ:ここの綾辻さんは、七咲の前向きな変化を誇張させるための単なる装置です。許さん。
f:id:mantropy:20161223121148p:plain
ガンダムが暴走する)
醤油:尺が余ってるためガンダムですら動き出します。
ミシ:怒れる巨神兵ですね。
QP:これ、やっぱり夢ですよ。マッチ売りの少女が火の中に幻視する悪夢です。
醤油:饗宴ならぬ狂宴です。
f:id:mantropy:20161223121151p:plain
(順調に屋台を経営する2人。おでんを溢してしまった子供を見た七咲は、無償で代わりを提供する。おでんは無事完売した)
ミシ:露骨やけど、在りし日の七咲逢と郁夫、ですかね。
QP:母性の安売り。バーゲンセールですね。
ミシ:ばぶぅ。
醤油:前話のノリで、隙あらば挿入歌が流れ出します。
ミシ:2番を使うの卑怯ですよ、卑怯。
醤油:Can’t you make up your mind~♪
QP:覚悟は出来ましたか?
f:id:mantropy:20161223121154p:plain
(Bパート。最終のバスでどこぞの山奥に連れて行かれる純一)
ミシ:これ、帰りのバスどうするんですか? 片道きっぷ?
醤油:今日は帰しませんよ、先輩。
ミ・QP:ああ゛~?
f:id:mantropy:20161223121157p:plain
(山を登る2人。純一を待つのは、天然の温泉だった)
QP:老婆心ながら忠告しますと、夜に登山は危険ですよ。
醤油:満月に照らされてますから、視野は良好です。私有地ですから、慣れたものです。
ミシ:月も蒼ざめてますよ。
QP:もう何なん? 怒るで?
f:id:mantropy:20161223121201p:plain
(混浴する2人。七咲「見てもイイですよ。下、水着着てますから」)
醤油:嘘です。着てません。
QP:肩紐が見当たりませんし、この時点で判ると思うのですが。
ミシ:2人とも動揺してますから、無理もありません。
QP:そもそもなんで温泉入ってるんですか、この2人?
醤油:不器用な七咲なりのOKサインです。対人スキルが壊滅的なため、まず環境をしつらえる。終バスでここに来ることで、純一と自身の退路を断ってるんです。ここまでして、ようやく「好き」と伝えることが出来るんです。
ミシ:まるで女郎蜘蛛のようですね。慄きます。
f:id:mantropy:20161223121204p:plain
(七咲「わたし、先輩が好きです。好きなんです」)
ミシ:どこにもおらぬ神に祈ってるで、この娘。不憫やわ。
醤油:身体から溢れてしまう隠しきれぬ恋情は、火ですね。その身を焦がすのです。
f:id:mantropy:20161223121206p:plain
(純一「僕も七咲が好きだ。どうしようもなく」)
QP:お前、トラウマはどうしたんや。
ミシ:性にほだされてません?
醤油:高校生の恋愛なんて、そんなもんでしょう?
ミ・QP:うへぇ。
f:id:mantropy:20161223121209p:plain
(感極まって純一に抱きつく七咲。はだけたバスタオルの下は、生まれたままの姿だった。動揺する純一。七咲「恥ずかしかったので、嘘をつきました。でも、先輩に告白したことを考えたら、些細なことでした。なにも問題ありません。イイんです。わたし、先輩のことが大好きですから」)
f:id:mantropy:20161223121211p:plain
ミ・QP:うわあああああああああああああああああああああああああああああ!?
QP:問題しかありませんよ。
ミシ:アダムとイヴです。
QP:衣類をまとえ! 衣類を!
f:id:mantropy:20161223121214p:plain
(密事を鹿に目撃される)
醤油:愛の営みを鹿に目撃されます。SS+で話題に上るのですが、このあと鹿が異常繁殖して、この山、立入禁止になるんですよね。
ミシ:鹿も、本能に火、点けられちゃったんですね?
QP:最悪だぁ。
f:id:mantropy:20161223121220p:plain
(エピローグ。晴れて恋人関係となった2人は、淫蕩の限りを尽くすのであった)
f:id:mantropy:20161223121225p:plain
(fin)
QP:実際のところ、七咲は自らを天に結びつけることはできたんですか?
ミシ:理想の恋人が出来て、もうウハウハですよ。天にも昇る心地でしょう。
QP:なんかもう、やりきれませんわ。
醤油:もはや好みの問題でしょう。僕は、七咲の「地上の火」にひき摺られ、弱体化してしまった純一が好きではありませんが。
ミシ:ファンに怒られますよ。
QP:七咲が「火」の女であることは、頑なに譲らんのですね。
ミシ:ともあれ、次は桜井梨穂子編です。
醤油:ようやく平和なレビューができそうだ。

【12/24】桜井梨穂子編につづく。

【12/23】七咲逢編③

七咲逢編 第3章「ヘンシン」

ミシ:満身創痍でやって来た第3話です。
f:id:mantropy:20161223120606p:plain
(街頭。奇怪なピエロに遊園地の無料優待券を貰う純一)
QP:この恰好、どこかで見た覚えがあります。
醤油:ブラックマジシャンですね。
ミシ:ああ、道理で既視感があると思った。
(OP)
f:id:mantropy:20161223120726p:plain
(遊園地の前で待ち合わせをする純一と七咲。本来は郁夫も来る予定であったが、風邪をひき留守番だと言う)
醤油:おそらく嘘でしょうね。郁夫に話すら通さなかった可能性も考慮できますよ。
ミシ:そのセンが濃厚ですね。どうしても、2人きりになりたかったんでしょう。
醤油:1月から始まるアニメ「セイレン」には、高校生になった郁夫が出てくる予定ですから、かれの口から真相が明かされるやもしれませんよ。
ミシ:あの日、姉ちゃんは病床に臥せった僕よりも、どこぞの馬の骨と遊園地で遊ぶことを優先した。
QP:42度の高熱にうなされ、僕は自室で一人、生死の境を彷徨った。これまで、姉が僕を軽んじたりすることなんて一度たりとも無かったのに……。
ミシ:全部、全部、あの男が現れたからだ!
醤油:茶番やめーや。
(七咲「あの、先輩? 今日のわたしの服に何かコメントとかナイんですか?」)
ミシ:正直、似合ってます。
醤油:精一杯背伸びをして、おめかしして来たんでしょうね。
(純一「あの、ごめん。よく似合ってるよ」)
(七咲「遅すぎます」)
QP:は?
醤油:ハイ、そこ落ちつきましょう。単なる照れ隠しですからね?
ミシ:寛容の精神が試されてます。忍耐ですよ、QP先生。
f:id:mantropy:20161223120609p:plain
(ジェットコースター、コーヒーカップ、ガンシューティング。遊園地を満喫する2人)
ミシ:コーヒーカップって、同じところぐるぐる回るんですよ。
QP:前に進めず、足踏みしてる状態なんですね。
醤油:ちょっと無節操に含みをもたせすぎですよ。
f:id:mantropy:20161223120612p:plain
(2人は遂に問題の迷宮。「ファラオ謎の入口」に立ち寄る)
ミシ:原作ゲームですと、各ヒロインルートで、薫が男性になったり、綾辻さんが小学生になったりと、不思議な出来事が起こる特異点のような場所ですが、アニメだと尺の都合からか全て七咲編で回収してしまうんですよね。些か突飛な印象を感じてしまうのは、そのためでしょう。
醤油:仕組みは全く不明ですが、おそらく、各人の抱える問題、潜在意識や変身欲求が反映される設定のアトラクションなんでしょう。したがって、父性を渇望する薫は男に、子どもの頃の夢を大事に想う綾辻さんは小学生となった。
ミシ:ここ、綾辻さんが懐に犬を抱えてるんですが、有り得たかもしれぬパラレルな可能性、幻影のため直後に掻き消えます。
醤油:あくまでもこの世界に犬は登場せず、神も不在であります。
ミシ:ちなみにゲームですと、森島先輩はポメラニアン、中多さんは辞書(知識の泉ですね)、梨穂子はド根性ガエルTシャツになります。では七咲は一体なにへと姿を変えるのか。
QP:う~ん、黒猫とかでしょうか?
醤油:味噌ラーメンです。
QP:え?
醤油:味噌ラーメンです。
f:id:mantropy:20161223120615p:plain
(迷宮の最深部に鎮座するファラオの憤怒を買ってしまった2人は、呪われてしまう。ファラオ「戯言なぞ要らん。覚悟を決めろ」)
f:id:mantropy:20161223120618p:plain
(そして七咲は、味噌ラーメンに姿を変えられてしまった)
QP:嘘でしょう? クレイジーすぎる。
ミシ:これは罰なんでしょうね。
醤油:ここでキーワードとなるのは、ファラオの口にした「覚悟」と云う単語なんですね。純一は、七咲の隣に並んでおきながら、トラウマの影響もあるんでしょうが、未だどうにも腹を決め兼ねており、七咲の抱く好意に釣り合わぬ中途半端な、不誠実な状態にあった。それをファラオは咎める。
ミシ:ちょうど、悩むと云う行為に関して苛烈な、七咲の性格を代弁するようですね。昼食のメニューを悩むのも駄目、他の女性に目移りするのも駄目。
醤油:1話の食堂のシーン、覚えてますか? 純一は悩んだ結果、シーフードカレーでもとんかつ定食でもなく、ラーメンで妥協した。このラーメンこそ七咲です。純一は七咲を選んだのではなく、ただなんと無しに第3のメニューを選ばされた。そこに純一本人の主体性は皆無であり、七咲と接する姿勢にも同じことが言えます。七咲の本質に向き合わんとする「覚悟」が元より欠落してるんです。
ミシ:味噌ラーメンへの変身は、純一に己が罪を自覚させる、ファラオによる痛烈な風刺なんですね。
QP:とすると、このファラオ、結構な世話焼きですよね。七咲を好きになれるようオプションのバターまで渡して、純一の背中を押すんですから。
f:id:mantropy:20161223120621p:plain
(純一は味噌バターの香りの誘惑にあらがえず、丼に口をつけようとする)
f:id:mantropy:20161223120624p:plain
(すると、タイミングを計ったかのように集団催眠が解かれる)
QP:七咲を食べようとしたと言うことは、純一が選ぶ「覚悟」を見せたと言う解釈でイイんですよね?
ミシ:なんだか合点が行きませんが、おそらくそう云うことなんでしょう。
醤油:もしかすると七咲は、本来純一に選ばれる可能性の無かった存在であったのかもしれません。
ミシ:しかし、神なる中枢管理機構がその調整機能を停止し、世界にバグが起きた。ファラオは破壊された統治システムの名残でしょう。
QP:或は、既に全員死んでおり、神無き死後の世界と言う可能性も。
ミシ:七咲ルートが正史で、他のルートが夢なんじゃなかろうか。
QP:なんだか壮大な話になってきましたね。
f:id:mantropy:20161223120628p:plain
(デートの〆。2人は、はじまりの公園へ。「一緒にブランコに乗ろう」と提案する七咲)
醤油:駅弁してますよ。
ミシ:下品ですよ。純一の視界を自分の姿で埋め尽くそうとしてるんですね。
f:id:mantropy:20161223120632p:plain
(七咲側からのキス)
ミシ:と思ったら、ちゅーしてしまった。
QP:唐突すぎて感情の昂ぶりが感じられませんね。
醤油:不器用ですから恋の駈ひき、ドラマチックな大人のキスが演出できなかったんですよ。
f:id:mantropy:20161223120635p:plain
(Bパート。放課後。中庭で七咲と待ち合わせする純一であったが、なかなか姿を現さず、心配する。プールサイドに様子を見に行くと、七咲と塚原先輩の口論を目撃してしまう)
醤油:ここから、七咲最大のもろさが露出してしまうイベントです。
QP:橘側のイベントが全くありませんね。
醤油:七咲の面倒を見るので手一杯になってしまってるんですよ。
f:id:mantropy:20161223120638p:plain
(プールに飛び込み逃亡を図る七咲であったが、後を追う純一に捕まる)
ミシ:制服のまま咄嗟にプールへ跳び込むなんて、なかなか出来ることではありませんよ。
QP:純一の中に覚悟は、ちゃんとあったんですね。
醤油:それにしても、背景で鳴ってる曲が新海作品のようにエモくて笑ってしまう。
(帰路。スタメン落ちがショックだったと吐露する七咲。しかし、その表情はどこか晴れやかだった)
f:id:mantropy:20161223120642p:plain
(なぜ逃亡したのかと問う純一。涙を見られたくなかったからだと答える七咲。純一「僕は嬉しかったよ。普段と違う七咲が見れて、なんか嬉しかったよ」)
醤油:こうした心理は薫編でも見られましたが、七咲の場合はその理由が判然としませんね。
ミシ:弱みを秘匿したかったなら、プールの一件以前に遡らなくてはなりませんからね。既に純一にはさんざん見せてます。
QP:単にブサイクな泣き顔を見られたく無かったんでしょう。
f:id:mantropy:20161223120645p:plain
(なぜ追ってきてくれたのかと問う七咲。七咲の涙を見たら、無我夢中になったと答える純一。別れ際、七咲「これから時間ありますか?」)
醤油:露骨に誘ってますが、時間も時間ですし、さすがに自重します。
ミシ:かわりにクリスマスの約束をとりつけて、第3話は閉幕です。
(ED)

【12/23】七咲逢編②

七咲逢編 第2章「トキメキ」

ミシ:恋の呪文はスキトキメキトキス
醤油:さすがの猿飛
QP:2話のサブタイトル、「サイアク」から一転「トキメキ」ですか。
ミシ:観て行きましょう。
f:id:mantropy:20161223115929p:plain
(純一・薫・梅原の三馬鹿は、ハイレベルな容姿の転入生が図書委員をはじめた噂を耳にし、図書室へ野次馬をしに行く。誰が確認するかで揉めてると、またもや偶然その場に居合わせた七咲に「周りの迷惑」だと諫められる)
ミシ:この段階では純一と七咲との接点が希薄なため、偶然出くわすパターンが連続しますね。
醤油:森島ルートと似てますね。ただし、前者では純一が血眼になって日常に先輩の姿を見出さんと奮闘してたのに対し、後者の七咲編では七咲側から純一に声を掛けてくる。反転してるんですよね。
QP:さっきから疑問なんですけど、この娘運動部ですよね? それなのに先輩に接する態度がまるでなってませんよ。慇懃無礼にも程がある。
醤油:純一にのみですから。おそらく美也から幾らか事前情報は聞かされてるんでしょう。それで話の中で親近感を抱くようになり、多少のやんちゃ、素の己を出しても兄の甲斐性で許してくれるだろうと高を括った。七咲の中では美也を仲介にして、既に純一との疑似的な兄妹関係が構築されてしまってたんでしょうね。そして現実との齟齬に困惑して、あのような陰険な態度をとってしまったと。もっともすぐに自分のよく見知った側面を純一に見出し修正しましたけどね。
ミシ:お、シンデレラコンプレックスですかぁ? 中多さんを見習え。
醤油:狭量ですよ、ミシェル君。僕の寛容さをわけてあげましょう。
ミシ:なんか、ねちゃっと湿ってるので遠慮します。
図書室でなにをしてたのかと問う純一に「数学の追試の勉強をしてた」と答える七咲。「よかったら教えようか」とやたら先輩風を吹かす純一)
醤油:純一が数学得意である設定は、七咲編でしか出てきません。
ミシ:どのヒロインも軒並み純一よりハイスペックですからね。梨穂子以外に、数学得意だなんてわざわざ喧伝できません。綾辻さんに鼻で笑われます。
QP:噂をすれば出てきましたよ。
f:id:mantropy:20161223115932p:plain
(通りがかる綾辻。純一に七咲を紹介され、見つめ合う2人)
QP:え、怖っ。無言で腹の中探り合ってません?
ミシ:牽制です。一瞬の交差で2人の格付けは終わりました。ゴミを見る目でしたね。
醤油:綾辻さんにとって薫や森島先輩は別次元の人間ですが、七咲は自分と同一直線状の下位互換と言って差し支え有りませんからね。
ミシ:圧倒的な人間力の格差を除外すれば、なかなかどうして似通ってるんですけどね。要は純一にポーカーフェイスの裏側、とり繕った人格の奥にあるChildlike、純真さに触れて貰うのを密かに待ち望んでる訳でしょう?
QP:便利な言葉ですね。ポーカーフェイスとChildlike。
醤油:濫用しすぎですよ。
f:id:mantropy:20161223115935p:plain
(七咲「先輩、本当に数学得意なんですね。見直しました」)
(反抗期に入った小学生の弟との接しかたを純一に相談する七咲)
ミシ:郁夫君のことですね。
QP:親友の美也には相談せず、あえて純一に相談する辺り嫌らしさを感じます。
ミシ:美也は弟の存在すら知りませんでしたからね。
QP:己のプライベートな領域に踏み込ませる誘導。恋の駈ひきですね。
ミシ:否、そのような戦略性のある行為ではありません。単に七咲の人間強度が下がり始めてるんですよ。そしてそれは、僕らの英雄にも波及します。
f:id:mantropy:20161223115938p:plain
(翌日。担任に呼び出され、遅刻の多さを注意される純一。その理由を問われ「ビーバー三国志に夢中で夜更かししてしまったからだ」と捲し立てる)
QP:これ、本当にあの純一君ですか?
醤油:おつむもモラルも、あきらかに弱くなってますね。
ミシ:英雄の資質を剥奪されてます。あの大判焼きを食べてしまったのが良くなかった。
(「しっかりしろ」と担任に尻を叩かれ「そうだ。そうなんだよ! 解ったぞ、七咲」と何かを閃く純一)
QP:もう何もわかりませんよ……。
ミシ:期待感の強かった中多さんのときと異なり、嫌な予感しかしません。
f:id:mantropy:20161223115941p:plain
(Bパート。テラスで昼食を採る七咲・美也・中多の3人。そこに純一が走ってくる。美也「お兄ちゃん! イキナリ出てきて何なの? 紗江ちゃんが吃驚してるでしょ」)
ミシ:ああ、中多さんは天使ですね。
QP:むねを見るな。むねを。「それにしても、スゴイね……」って何やねん。
(純一「美也も七咲も、中多さん位に成長するとイイな」)
ミシ:さすがに失言ですよ、純一君。
f:id:mantropy:20161223115944p:plain
QP:七咲、激怒して席を立ちましたね。
醤油:第2話は冒頭・高橋先生、中盤・中多さんと、一貫して他の女性に目を奪われてしまう純一の痴態が描かれ、それに対し七咲が怒りを露わにします。「わたしだけを見て」ですね。
ミシ:「悩む」と言う行為に関して、非常に苛烈ですよね。1話で言えば、高橋先生がシーフードカレー、中多さんがとんかつ定食、美也が(元より選択肢に入ってなかったことから)B定食、そして最後に行きつく味噌ラーメンが七咲に相当する。
f:id:mantropy:20161223115947p:plain
(放課後、女子水泳部が練習するプールに忍び込む純一。暴挙に及んだ理由を詰問され、職員室での一件よろしく、再び独自の論理を捲し立てる純一)
(純一「それは、決して大きいとは言えなくても、毎日の部活で鍛えられた胸筋に内側から押し上げられ、外側からは抵抗を無くすために開発された競泳水着によって圧迫されてるムネ! 僕は、その美しく火薬のように爆発しそうなエネルギーを蓄えた感じが見たくて、のぞきに来てしまったんです! 本当にすみませんでした!」と土下座。七咲のほうを見る)
(頬を赤らめ、たじろぐ七咲)
ミシ:これが、英雄のなれの果て、ですか。
QP:こんな純一さん、僕は見とうなかった。
(塚原「そう。君はそのことをたった一人に伝えたかったようね。まったく。あとは任せたわ、七咲」)
ミシ:塚原先輩の対応も、人智を超えてます。純一への不信感を逸らし、あの場をおさめるだなんて、さすがのカリスマです。戦慄します。
醤油:他のルートの純一だったら、もっと上手くやれたんでしょうにねぇ。神亡き世界ですから、多少の理不尽は許容するほかありません。
QP:地獄やな。
f:id:mantropy:20161223115950p:plain
(七咲「先輩って、一体何なんですか? あんなことを大声で言うなんて、わたしには理解できません」)
QP:大丈夫。僕らにも理解できてませんよ。
(純一「でも、七咲に謝りたくて。ごめん」)
(七咲「部活が終わるまで、外で待ってて貰えますか」)
ミシ:もう全てを許した表情をしてますね。満更じゃなさそうです。
醤油:ミッションクリアですね。神は、人の子らに乗り越えられぬ試練など課しません。
QP:だから、神は死んだって言ってるじゃありませんか。
醤油:失礼。言葉のあやです。
ミシ:僕らの知ってる純一も、もう死んだんやね。かれ等は、どうしようもなく原罪を背負っとる。
f:id:mantropy:20161223115954p:plain
(放課後。浜辺。トイレ施設前。弟の一件に関して、純一はアドバイスする)
(純一「七咲の弟、少し甘やかしてもイイんじゃないかな? 今日高橋先生に叱られて、思ったんだ。僕も小学生のとき、わざとイタズラして女の先生に怒られた。今思うと、そうやって、興味をもって貰えるように甘えてたんだよな。きっと今の七咲の弟も、それと同じなんだよ。だから、甘やかしても大丈夫だと思う」)
ミシ:ヒロインの抱えた苦悩に関し一応の解決は提示してますが、なにかふに落ちませんね。この言及は郁夫のことであり、七咲の純一への態度でもあるんですよね。
醤油:構ってほしくて、迂遠な容喙をしてますからね。
QP:これ、純一のほうも「もっと僕を甘やかしても大丈夫だよ」と暗に仄めかしてませんか?
醤油:バブみ、を感じてるんですね。
ミシ:ああ、人間強度が下がってますね。共依存の関係です。
f:id:mantropy:20161223115957p:plain
(七咲は問題解決のお礼として、弟に贈ろうとして断られた「イナゴマスクの変身セット」を、純一に贈答しようとする。さすがに躊躇する純一だったが、七咲の寂しそうな表情を見て、しぶしぶ貰う)
醤油:七咲は純一をヒーローにしたくて、こんなことをするんですね。
ミシ:しかし、この世界での純一は、ヒーローにはなれません。しかたなく、ベルトは七咲が装着することになります。未熟な七咲自身に変化を要請してるんですね。
f:id:mantropy:20161223120229p:plain
(暫くごっこ遊びに興じる2人。通りがかった子ども達に変身をせがまれ、ノリノリで演じる七咲。最後にはベルトを譲ってしまう)
醤油:もうベルトは不要なんです。変身しなくとも、なにも出来ぬ現状を打破しなくとも、隣で純一が笑ってくれるなら、もう大丈夫だって安堵を得たんです。
ミシ:えっ、第3話のサブタイトル「ヘンシン」ですけど……。
醤油:……。
QP:あくまで好意的な解釈をすれば、外部から強制される変化ではなく、自己の内部から生じる自発的な変化で無くては無意味であると感じ、手離したんでしょう。ベルト一本で大胆にヒーローを演じることが出来るならば、幾らでも望むものになれる。己の可能性を見出し、それに賭してみたくなった。
ミシ:えっ、しかし3話は再び外部から変化を強制されて――。
醤油:次、行きましょう。
f:id:mantropy:20161223120239p:plain
(就寝前。純一を想って「ときめく」七咲。七咲「たぶん、意識し始めてるんだ。年上なのに頼りなくてちょっとカワイイ。それでも時おり見せる安心感にほっとする」)
QP:「トキメキ」の回収、無理矢理すぎません?
ミ・醤:ああ゛~。
(ED)

【12/23】裏アドベントカレンダー3日目。七咲逢編①

七咲逢編 第1章「サイアク」

醤油:次は、七咲編ですね。
ミシ:2年前のあの日の回想から、再び話が始まります。やはりこの日は、アマガミの世界が生まれたXデーなんですね。
(七咲「郁夫の欲しがってた玩具、やっと買えた~」)
QP:早速、七咲が出てきましたね。昔のほうがお洒落な格好してません?
ミシ:せやね。2年間の内に何かあったんでしょうか?
醤油:水泳部への入部ですね。
ミシ:すぐ答えが出ました。
f:id:mantropy:20161223114213p:plain
(失意の内にあった純一は、曲がり角で少女と行き会う。家族と幸せなクリスマスを過ごすであろう少女に、羨望と嫉妬を感じる)
(新OP)君は君のままで~♪
一同:ああ゛~、歌が変わってるよぉ~。
QP:2期ですか? これ、2期なんですか?
醤油:2クール目やね。4人目やから。
f:id:mantropy:20161223114216p:plain
(森島ダンス)
醤油:謎の森島ダンス。好きですね。好き。
f:id:mantropy:20161223114219p:plain
(梅原と下校する純一は、立ち寄った公園でブランコに乗る七咲を見つける。めくれたスカートの中身を咄嗟に凝視してしまうと、咎められる)
ミシ:はじめて会った人間に辛辣な悪態をつく七咲ですが、その実、高圧的な態度をとるのは僅か15分ほどなんですよね。
QP:巷ではツンデレに分類されるとの話でしたが?
ミシ:すぐ陥落します。(ツン)デレですね。
醤油:本人もどうふるまうべきか迷ってるんですよ。自己のキャラクター・アイデンティティへの理解が未確立なんです。
ミシ:まだ高校1年生ですからね。
QP:また自分探しの話ですか?
f:id:mantropy:20161223114222p:plain
(とり繕うように自己紹介をする純一。しかし、七咲は「警察を呼ぶ」などと言う)
QP:スカートの中を覗き見てしまったとは言え、あまりのユーモアの無さに純一君、びびっちゃってますよ。さすがに可哀想じゃありませんか?
ミシ:完全に委縮してますね。でも、七咲としてはこうして純一が逐一反応してくれること自体、嬉しかったりするんでしょう?
醤油:そもそも他者との間合の詰めかたが下手ですからね。平静を装ったところで、内心ドキドキものですよ。可愛くありません?
QP:う~ん、まだちょっと分かりませんね。続き観ましょう。
f:id:mantropy:20161223114225p:plain
(翌日、食堂。悩む純一に「うしろが閊えてる」と突っかかる七咲。七咲「優柔不断なんてミットモナイですね」)
ミシ:ここもまた随分と苦言を呈されてますね。空腹で苛々してるんでしょうか?
醤油:自己理解の未熟さからくる攻撃性が顕著になってますね。パンクに憧れてるんでしょう。
QP:結局、純一が選んだのは悩んでたシーフードカレーでもとんかつ定食でもなく、ラーメンですか。
ミシ:てっきり七咲と同じB定食にすると思ったんですけどね。
醤油:これ、後の展開を鑑みるに、やはり味噌ラーメンなんでしょうねぇ。
(昼、美也が話題にしてた黒猫を見つける純一。あとをつけると、七咲に出会う)
ミシ:犬ではなく黒猫。
醤油:本編に犬が未登場なのって、七咲編だけですよね。
ミシ:すでに森島ルートで確認したことですが、DOG=GOD。つまり、七咲編は神不在の世界を描こうと試みてるんですわ。
QP:さすがに牽強付会ではありませんか?
醤油:たとえそうだとしても、それなら、あの黒猫は、一体なんの象徴だと言うのです?
ミシ:……CAT=ACT。
一同:!?
ミシ:ああ、なるほど。どうやら取っ掛かりを掴んでしまったようです。CAT=ACT。神不在の世界で、人はどのように生きるのか。精査してゆきましょう。
f:id:mantropy:20161223114229p:plain
(黒猫を抱き上げる七咲。その弾みで、スカートの中身に関心を奪われてしまう純一。目ざとく感知した七咲は不敵な笑みを湛え、自らスカートをまくって黒スクを見せつける)
ミシ:Jesus……。これ、倫理観やら貞操観念やら、諸諸大丈夫ですか?
醤油:水着ですから、見られても問題ありません。
QP:イヤ、「痴漢は止めろ」と煽ってるくせに、自ら見せてしまうのはどうなんでしょうか。卑猥すぎますし、色色とチグハグでしょう?
醤油:しかし、スポーツですから大丈夫です。
QP:譲りませんね。
ミシ:それは、その、有酸素運動的な意味で……?
QP:止しましょう。これ以上は藪から蛇を突きかねません。
(七咲「わたし、1-Aの七咲逢です。美也ちゃんと同じクラスですよ」)
ミシ:ここら辺の自己紹介を装った会話、酷く形式的ですよね。
醤油:悪態をつき過ぎてしまった「サイアク」の邂逅を、修復しようとしてるんです。空空しく映るのは、そのためですよ。CAT=ACT。猫かぶれって言うしね。
ミシ:七咲は道を過またねば、古手川唯のようになれた筈です。
醤油:むかつくけど、言ってることは理解できます。
ミシ:話は再び脱線するのですが、CATの密意に関連して「好奇心は猫をも殺す」と言うことわざがありますよね。
醤油:つづけて。
ミシ:この「好奇心」と言うのが曲者です。『トルーデさん』と言うグリム童話をご存知でしょうか? わがままでナマイキな少女が両親の制止も聞かず、トルーデさんと言う得体の知れぬ隣人の家を訪ねる。するとトルーデさんは魔女の正体を現わし、娘を棒きれに変えて火の中に投込んでしまうと言う話です。
醤油:好奇心の誘惑に屈した人間は、報復されると言った教訓ですか?
ミシ:否。娘の行動は、心の中に存在する個人的な父親や母親の像を超え、なお深く、普遍的無意識の領域へ向かって行った、至極自然な行為として解釈されます。しかし、普遍的無意識の内容は、人間に畏敬と恐怖の感情を呼び起こす。同じくグリム童話の「名付け親さん」に出てくるヴァシリーナの賢明さや、「マリアの子ども」の発揮した剛情さなど、的確なアプローチを取らなくては、母なる自然の炎は辺りを一瞬の間明るく照らすにしろ、すぐに闇に戻ってしまうと言うことです。
QP:しかし、その話が七咲編とどう関係するのですか?
ミシ:七咲の六大での立ち位置は「火」の元素、「成熟・浄化」でしたよね。『トルーデさん』で語られる魔女の火は、グレートマザー、大地と結びつく、重く、暗くかがやく炎であって、天上にかがやく聖なる火と比較される。ユング夫人は、マリアを天に存在する「高位の母」に位置づけ、トルーデさんを典型的な「低位の母」とします。しかし、後者にも天へ向かう意志は潜在する。その象徴がトルーデさんの息子である火ですが、それは上方に向かって閃くものの、あくまで大地に結ばれてる。この「劣等なロゴスとして特性づけられる」・「娘の好奇心」は手段を誤ったがために結果、天には至らなかった。七咲編は、七咲の中の劣等なロゴスが、天と結びつき「浄化」の炎となるか、大地に留まり「卑俗な火」のままになるか、その「成熟」の顛末を純一と共に見守る話なのです。
醤油:火は、人間の文明にとって建設的で不可欠なものですが、反面すべてのものを焼き尽くす破壊性をも有します。
QP:しっかし、ゆかなの声で「先輩」って呼ばれるのは、ええもんやな。
ミ・醤:同感です。
f:id:mantropy:20161223114234p:plain
(Bパート。商店街の福びきの一等・ハワイ旅行を強請る美也。しかし、純一は漫画『ビーバー三国志』に夢中で、まともに取り合わなかった。翌日、その報復で「ハワイ当たれ」と書かれた額を七咲に笑われる)
QP:タオルを貸したりだとか、憧れの森島先輩に笑われたことを慰めるだとか、もう堕ちてませんか? え、なにか劇的なイベントありましたっけ?
醤油:これが本来の逢ちゃんなんです。本来は素直でイイ子なんですよ。
QP:頭がおかしくなりそうだ。
醤油:耐えろ。
ミシ:突然挿まれる梨穂子と中多さんのカットインが癒しです。サンキュー、サッエ。
QP:ファッキュー、アッイ。
醤油:やめろぉ。
(放課後。荷もつ持ちを頼まれた純一。七咲「両親が共ばたらきなので、家のことはわたしがやってるんです。結構好きなんですよ、家事」)
QP:本当、距離の詰めかたが下手ですね。突然、放課後デートですか……。
醤油:他のヒロインが超人過ぎるんですよ。普通はこんな感じです。
ミ・QP:ダウト。
醤油:もたざる者同士の、精一杯の歩みですよ。応援しましょうよ。
ミシ:あ、でも、澄ました表情で家事出来ますよアピール、可愛ええな。
QP:ちょろすぎますよ。
(荷もつ持ちのお礼として、福びき券を渡された純一。結局一等は当たらず、六等・500円分の商品券が当たる)
QP:はずれ、ですね。森島先輩辺りとなら、必ず一等をひき当てるでしょうに。
ミシ:アレは神さまですからね。較べるのは酷です。それに、神は人に身に余る幸運を与えなどしません。破滅を招く元です。500円程度のささやかな祝福が、身の丈ですよ。もっとも、元よりこの世界に神など存在しませんがね。
醤油:さっきから辛辣ですね。黒猫に肉親でも殺されたんですか?
ミシ:あ、先日13年連れ添った愛猫が亡くなりまして。悲しかったなぁ。
醤・QP:知らんがな。
f:id:mantropy:20161223114243p:plain
(手に入れた商品券で、2人は大判焼きを買って食べる。七咲「はじめて買ったんです。クリーム入り。普段は手堅く小倉餡を買うんですけど、せっかくだから試そうかと思ったんです」)
醤油:知恵の実を齧ってますね。
ミシ:そして楽園を追放されるんですね。ゆえに神不在の世界であると。
醤油:七咲、普段とは違う味を選んでますよ。自らの殻をやぶって、前進してます。
ミシ:これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、七咲にとっては偉大な飛躍である。
QP:ニール!
ミ・醤:アームストロング!
ミシ:しかしこの一歩も、案外大判焼きの食べさせっこや交換を目論む、七咲の奸計やもしれませんよ。だのに、純一君が一息で食べきってしまって、辛酸を味わってます。
QP:絶妙に歯車が噛み合わんなぁ。
(浜辺を散歩する2人。純一「七咲はスゴイよなぁ。部活やって、ボランティアやって、こんな風に家のことまでやって、僕なんてイイとこ無いよ」)
(七咲「そんなこと無いですよ。水着を見てたスケベな目は、可愛かったですよ」)
(純一「それ、褒めてる?」)
(ボランティアの話で感化されたのか、浜辺で目につくゴミを拾う純一とその姿に感激する七咲)
f:id:mantropy:20161223114246p:plain
(七咲「先輩っ。大判焼きのクリーム、美味しかったですよ」)
ミシ:え、なんのためにゴミ拾ってるんですか?
醤油:地元愛ですよ。
ミシ:ダウト。水泳部で何となくやらされてるだけでしょう。イマイチ哲学が感じられんのです。
醤油:そんなものではありませんか? たかだか女子高生に、確固たる意志を見ようとし過ぎなんですよ。
QP:きまぐれですからね。猫ね。
醤油:大判焼きのクリーム美味しかったって言ってるんですよ? 一念発起して踏み出した新世界は鮮やかな色彩をしてましたって、出てきて良かったって言ってるんですよ?
ミシ:へぁ~?
f:id:mantropy:20161223114248p:plain
(ED。ゆらゆら揺れてる~♪(中略)ポーカーフェイス。Childlike~♪)
QP:恋はみずいろ。曲名はともかく、歌詞ピッタリですね。
ミシ:笑ってしまうわ、こんなん。
醤油:不謹慎ですよ。

【12/22】中多紗江編④(終)

中多紗江編 第4章「コイビト」

ミシ:名残惜しさも感じる。最終回です。
醤油:「コウハイ」から「トックン」を経て「ヘンカク」。そして「コイビト」ですか。全て関係性の変遷を明快に表します。類を見ぬ、完璧なサブタイトルですね。
QP:その点に関しては認めざるを得ません。
f:id:mantropy:20161222174100p:plain
(前回のラスト。幸福なデートから一転。再び押し入れの中にひき籠もってしまう純一)
(純一「好きだよ」)
(ナレ「少女の頑張りで大きく動き始めた恋のメリーゴーランド。しかし少年は、その動きに翻弄されていたのであった」)
(純一「ちゃんと僕から言わなくちゃ。でも……」)
(ナレ「2年前のクリスマスに経験した失恋が、少年を恋に臆病にさせていた。少年よ、ほんの少しでイイ。勇気と自信を持つのだ」)
醤油:不覚にも、グッと来てしまった。
ミシ:僕もです。
(OP)
f:id:mantropy:20161222174109p:plain
(喫茶店でデートする2人であったが、中多さんには密かな野望があった。それは、完食すると末永くラブラブでありつづけられると噂される「スペシャルバナナパフェ」に挑むことであった)
醤油:うおぉぉぉぉぉっ! 聖杯や! 遂に聖杯が出てきた!
ミシ:聖杯、サングリアルと云うのは、救世主が最後の晩餐の際、それから飲んだと言われる盃ですね。救世主はその盃をヨセフに与え、ヨセフはそれをロンギヌスの槍と共に保管し守護します。しかし、あるとき子孫の一人が、神聖な義務を忘れ、一人の巡礼女がひざまずくときに計らずもはだけた衣服を、守護の役目にあるまじき目で眺めてしまう。すると聖なる槍はその子孫の頭上に落ちかかって癒えること無き傷を負わせ罪を罰し、サングリアルの盃は人の目からその姿を隠してしまった。
醤油:のちに偉大な預言者であり魔術師であるマーリンが、奇蹟をもたらすサングリアルを再び発見すべきであるとアーサー王に伝え、その捜索を円卓の騎士たちは命じられます。件のガラハドは、聖杯を発見した三人の騎士のうちの一人ですね。幾多の困難を乗り越え、遂に聖杯を発見したガラハドはその最期、聖地に至り、最も穢れ無き騎士として天に召されることになりました。
QP:もはや問答無用で、純一はガラハドなのですね。
f:id:mantropy:20161222180512p:plain
(創設祭当日。梅原はマグロを象ったヌイグルミ「トロ子」とベストカップルコンテストに出ようとする)
醤油:もう道化を演じさせるのは勘弁してやってくれ。可哀想でしょう。
QP:本ルートでの梅原の立ち位置は、ガウェインです。アーサー王が謎の答えを得るため、担保として醜女の良人に差し出されたガウェインですが、覚悟をもって臨んだものの、やはり夜になると婦人の年齢・容姿の醜さ・身分の低さへの嫌悪を隠しきれなかった。そのことを正直に婦人に告白すると、驚くべきことに、醜かったはずの婦人は見目麗しき美女となった。実は、婦人は悪の魔術師に姿を変えられてたんですね。その呪詛を解くには、2つの条件があった。一つは若く優秀な騎士を伴侶に迎えること。これが成就したために、呪詛の半分が解かれ、婦人は一昼夜の半分のみ本来の美貌を保てるようになります。婦人はガウェインに問う。自分は昼と夜、どちらをもとの姿で過ごすべきかと。ガウェインは婦人の最上の美を独占するため、一度は「夜」と答えますが、「皆の前で美しくふるまえること」で得られる婦人の幸福を慮り、譲歩します。そしてこれこそが、もう一つの条件であった。ガウェインのために呪詛は完全に解かれ、婦人は常に美しく在ることが許されます。
ミシ:とすると、このウメハラは、頑なに「夜」と答え譲らなかったガウェインですか。トロ子は一昼夜のうちの半分しか魔法が解かれず、本来の美しさを衆目(象徴的な意味合での「昼」)に晒すことが出来なかった。
醤油:その解釈は、あんまりにも悲惨ではありませんか。
QP:しかし、揶揄されるのが目に見えながら、なおコンテストに出場せんとする背景には、それなりの事情があって然るべきだと思うのです。選択を誤った騎士の、贖罪ですね。
f:id:mantropy:20161222174112p:plain
(梅原「トロ子、今夜は2人で解体ショーだ」)
醤油:うわあああああああああああああああああああああああああああああ! こんなん酷すぎる……。
QP:痛痛しくて直視できません。
f:id:mantropy:20161222174115p:plain
(司会の綾辻さん「まるで結婚式のようです」)
ミシ:ああ、本当におとぎ話で語られる結婚式のようだ。
醤油:驚嘆すべきはウメハラとの落差ですよ。
QP:リアルガチやな。こんなん他の生徒ヒきますよ。
ミシ:ちなみに、奥ゆかしさから、衣装は母親によるオーダーメイドと偽ってますが、全て中多さん本人による手作りです。
QP:リ、リアルガチやな……。
醤油:ちょっと重すぎ。
ミシ:醤油君には重すぎるかもしれませんが、再起した純一君には背負うことが出来るんです。
f:id:mantropy:20161222174118p:plain
(純一の好きなところを質問される中多さん。「た、頼りになる教官なところです……」)
ミシ:(うんうん)
QP:声も出さず狂ったように頷くの、キモチワルイですよ。
醤油:放って置きましょう。もう駄目です。堕ちてから45分たちましたから。
ミシ:カムパネルラーッ!
f:id:mantropy:20161222174120p:plain
(森島・塚原ペアに敗れ優勝を逃すが、見事2位にかがやき、賞品の映画館個室シートチケットを授与される)
ミシ:実質1位ですよ。1位。やったー!
醤油:わかりましたって。少し落ちつきましょう。
f:id:mantropy:20161222174123p:plain
f:id:mantropy:20161222174127p:plain
f:id:mantropy:20161222174129p:plain
f:id:mantropy:20161222174132p:plain
(Bパート。翌日、クリスマス。早速貰ったチケットを使って映画館でデートをする。緊張した純一はトイレへ逃げ込むが、変な外国人に応援される)
ミシ:What’s up boy? Are you falling in love with the mirror?
醤油:Don’t worry about the failure of the love.
QP:So, good luck.
ミシ:この男性は、まあこれから2人が観る映画「愛の行方 愛の行く先…」の監督なんですが、自然を超越したちからで英雄の必要とする魔除けやアドバイスを与える運命の案内人ですね。アーサー王伝説で言うところ、マーリンのポジションです。
f:id:mantropy:20161222174134p:plain
(トイレから戻った純一を迎えたのは、コートをぬぎ、純一の好みに合わせたドレスに身を包んだ中多さんであった)
ミシ:小悪魔的ですね。よく似合ってます。
醤・QP:……。
(行儀良く映画鑑賞をする2人。やがてエンドロールが流れる)
(中多「監督さんの女優さんに対する感情が、スクリーンに溢れてます。愛情に満ちてますね」)
f:id:mantropy:20161222174144p:plain
(純一「僕のほうがキレイに撮れるさ。僕は監督だ、紗江ちゃん。君は今から、僕の撮るフィルムの主演女優だ」)
QP:もう無茶苦茶ですね。
ミシ:2人のきもちが通じ合ってれば、その関係性は多彩に変容し、なにものにでもなれる。こうしたアクロバティックな関係の再定義は、中多さんの「土」の性質、「盤石・不変」が基礎にあるからこそ為せる業なんですね。
醤油:ここで六大を持ち出してくるんですね。
QP:奔放ですねぇ……。
f:id:mantropy:20161222174146p:plain
(ふざけてるとソファのリクライニングが倒れ、純一は中多さんを押し倒してしまう)
(中多「先輩。本当に、色色とありがとうございました。先輩とこうして過ごせて、すごく嬉しいです」
(純一「今日は、ちゃんと言うよ。紗江ちゃんが好きだ。大好きなんだ!」)
f:id:mantropy:20161222174153p:plain
ミシ:ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
醤油:ちゃんと言えましたね。
QP:う~ん。
f:id:mantropy:20161222174203p:plain
(中多「先輩、わたし幸せです」)
f:id:mantropy:20161222174206p:plain
(中多「わたし達カップルに見えるでしょうか?」)
ミ・QP:見える、見える。
(純一「うん、見えるよ。だって僕達、本当に恋人同士なんだから」)
f:id:mantropy:20161222174214p:plain
(ナレ「失恋のトラウマを抱え、奥手で臆病でチキンであった少年と、極度に内気な少女の恋の物語はこれで終わりである。まだようやく一歩を踏み出したばかりの2人が、この先ずっとラブラブなままでいられるよう、心からねがおう」)
ミシ:うんうん。神聖で幻想的なラストだ。まさしく英雄譚です。
醤油:しかし後日、カメラ片手に怪しげなフィルムを撮る純一の姿が……。
f:id:mantropy:20161222174220p:plain
QP:は? 台無しですよ、これ。フルマラソンを走り終えた後に、お湯ぶっかけられた心境や。
ミシ:違うんですよ。最後、冒険を終えた英雄は、未知の領域で獲得した宝を携え、もとの世界・社会へと帰還しなくてはなりません。これはその、平穏な日常の描写ですよ。
f:id:mantropy:20161222174225p:plain
(中多「先輩、これからもずーっと、わたしのことを一番可愛く撮ってくださいね?」)
(fin)
ミシ:イヤぁ、秀逸でしたね~。うん? どうしたんですか、お2人とも黙りこくって。
醤・QP:…………。
ミシ:ふん。異教徒には何を言っても無駄か。次は、……あちゃぁ、七咲編ですか。まあ、イイでしょう。どれ、再生ボタンを押して。ポチッとな。

【12/23】七咲逢編につづく。

【12/22】中多紗江編③

中多紗江編 第3章「ヘンカク」

醤油:「変革」ですよ!
ミシ:もうね、僕達の大好きな言葉!
QP:え。あの厳しすぎる導入から大逆転があるんですか? 否、そのようなことが許されてイイ筈が……。
f:id:mantropy:20161222174017p:plain
(あさ。普段のように純一を起こしに行く美也であったが、押し入れの中に兄の姿はなかった)
醤油:うわあああああああああああああああああああああああああああああ!
ミシ:中多さんが連れ出してくれたんですよ。教え子と同じ目標へ向かって進む一連のトックンが、純一の生活に瑞瑞しさと充実感を与えてくれたんです。
QP:しかし、これ未だ純一のトラウマは解消されてませんよね?
ミシ:そう慌てなさんな。少年と少女の紡ぎ出す奇蹟のサクセスストーリーは、ここからが本番です。2人の躍進から目が離せませんよ。
(OP)
(昼。テラス。純一「あのさ、妹じゃ嫌ですってどう云う意味なんだろう?」)
(梅原「はぁ!? そんなことも分からねーのか?」)
f:id:mantropy:20161222174019p:plain
(森島「妹じゃ駄目ってことは、つまりお姉さんになりたいってことよ」)
ミ・醤:あははははははは!
醤油:しかたありませんよね。人ならざる存在ですから、恋する人間の心理なんぞ理解できなくて当然です。それが為されるの森島ルートでのみです。
ミシ:しっかし、ユーモアあるなぁ。
f:id:mantropy:20161222174023p:plain
(同時刻。美也は中多さんに「ミス・サンタコンテスト」への出場を提案するが、拒む。しかし「ベストカップルコンテスト」には関心を示す)
ミシ:この中多さんが首を左右にふるシーン。何度くりかえし視聴したことか。
QP:知らん間に正座して観てるのやめーや。
醤油:自然と姿勢が正されるのでしょう。大目に見ましょう。
f:id:mantropy:20161222174025p:plain
(満をじして教え子をバイトの面接に送り出す教官。大きくなった中多さんは、純一にこれまでのお礼と感謝を伝え、最後の敬礼をする)
QP:ようやくやってきましたね。審判のときが。あまりにも長かった……。
醤油:結果は?
ミシ:当然、合格。一人立ちの瞬間です。
(中多「面接に合格できたのは、先輩の特訓のお蔭です。先輩に色色はじめての体験をさせて貰って、それが合格に繋がったんです」ナレ「少女の言葉を聞き、少年の脳裏に浮かんだ特訓の数数は、少年にとってもはじめての体験ばかりであった」)
ミシ:2人で沢山の「はじめて」と向き合って、苦楽を共有し、それが見事に結実した。教官と教え子。二人三脚でここまで歩んできたんです。
f:id:mantropy:20161222174028p:plain
(中多「先輩、わたし、まだ卒業したくないです。本当に大変なのは、これからだと思うんです。ちゃんとアルバイトのお仕事できるかどうか、やっぱり不安です。まだまだ色色とアドバイス、してくれたらなって。駄目、ですか? ずっとわたしの教官でいてください」)
ミシ:教官と訓練生の関係はつづきます。しかし、その内実はこれまでと若干異なる。
醤油:中多の側から関係の継続を頼んでますからね。そこに当人の確固たる意志が介在してます。
(Bパート。ナレ「少女がアルバイトにも少しずつ慣れてきたある日のこと。少年は妹や友達を伴って、少女のアルバイト先へと足を運んだのであった」)
f:id:mantropy:20161222174031p:plain
醤油:ちゃんと仕事できてますね。エライっ。
ミシ:ああ、可愛ええ~。
(純一は不注意からコップを倒してしまう)
f:id:mantropy:20161222174035p:plain
ミシ:ほら。教官が失態をおかしても、すかさずフォロー出来てますよ。それに、この天使のようなほほ笑み。癒されますね。
QP:あきらかに意図的なミスですよ、これは。
醤油:教え子の進歩のほどを見極めてるんですね。
f:id:mantropy:20161222174038p:plain
バイト先の常連に貰ったチケットで、純一を遊園地に誘う中多さん)
醤油:え。その常連とは行かず、純一と行くんですか? 可哀想。
ミシ:女性や年配の常連さんかもしれませんよ。
QP:常連なんて存在しませんよ。純一を誘うための方便です。
醤油:なるほど。金欠の純一に金銭的な負担を掛けぬための配慮ですね。
ミシ:優しすぎますね。
f:id:mantropy:20161222174042p:plain
(メリーゴーランドに乗る2人)
醤油:完全に姫と騎士の構図ですね。
(中多「メリーゴーランドって、お姫様になれたような感覚になれるんです」)
QP:自分から口にしちゃうのか。
f:id:mantropy:20161222174045p:plain
(ヒーローショーにはしゃぐ中多さん。中多「そう言えば、今回のシリーズでは、イナゴマスクが13にもいるんですよね」)
ミシ:そう、ヒーローに憧れてるんですね!
醤油:ん? 13人のイナゴマスク? 13人……、あ、円卓の騎士か!
ミ・QP:!?
醤油:そうだ! 確信を得ました! やはり、これはアーサー王伝説をモチーフとしてるんです。ただし、純一はアーサー王としてではなく、マーリンに呪われた13番目の席に恐れず座り、12番目の騎士の座を獲得したランスロットの息子、ガラハドとして描かれる!
ミシ:うおぉぉぉぉぉっ。たしかに、ガラハドならこの先の展開にも符合する! 純一君のトラウマは、マーリンに掛けられた詛呪やったんや。そして、打克つことで真の騎士になる。
QP:俄然面白くなってきましたね。となると、梅原君は腕萎えのカラドク辺りやろうか。否、ガウェインって可能性もあるな。
ミシ:ええ、QP先生。これは大発見ですよ! 醤油君はスゴイ! 並外れた洞察や!
醤油:照れます。
QP:心なしか、中多さんの表情も嬉しそうになってますね。僕らの発見を祝福するかのようだ。
醤油:ヒーローショーで中多さんが怪人に攫われるトンデモ展開なんてどうでも良かったんですね。
f:id:mantropy:20161222174048p:plain
(ぷぷぷ、面白すぎるよ中多さん)
ミシ:ええ、些事ですよ。些事。
(恥を忍び、クリスマスに催される創設祭のベストカップルコンテストに誘う中多さん)
f:id:mantropy:20161222174052p:plain
(中多「中多じゃなくて、紗江って呼んで下さい」)
ミシ:純一は、中多さんの懇願を全て承諾します。一見順調ともとれますが、しかし、ここから例のトラウマの片鱗が影を見せはじめます。積極的に距離を詰めようとする中多さんに対し、その行動を拒まぬにしろ、一歩下がった位置に留まろうとするんですね。
醤油:目の前の少女へ抱く好意に関し、自覚的になるのを恐れて間が空くシーンが多く見られましたね。
f:id:mantropy:20161222174055p:plain
(並んで帰路につく2人)
QP:ここも、並んで歩んでるように見えますけど、実際は中多側が一歩先を歩く。2人の関係性の発展の「足をひっ張ってる」のは、まさしく純一の側なんですね。第2話とまるっきり立場が逆転しております。
f:id:mantropy:20161222174057p:plain
(先ほど言出そうとして出来なかった中多さんの意図を察し、バス停で手を繋ぐ2人。ナレ「2人の手が、遂に繋がれた瞬間。2人の恋のメリーゴーランドが、ゆっくりと動き出したのであった」)
QP:ここも、あくまで中多からの要請に純一が応える流れなんですね。遊園地以降のアプローチは、全部が全部中多さんからです。
ミシ:しかし、現代の英雄が最後に手にするのは、異形のものを滅ぼすための剣ではなく、愛すべき人の手です。剣は姫への忠誠として、むねに秘めておく覚悟なんですよ。
醤油:最後。しっかりと手を繋ぐ画が、トラウマの解消を暗示してるんですね。
(ED)