新萬です〜。
テーマ「忘却」ということで、書いていきます。題して「石川凛は何を忘却したのか?-新井英樹『SUGAR』と『RIN』について」です。
無理でした。*1
改めて、書いていきます。
買ったのに読み忘れていた漫画をレビューします!*2
今年僕が読み忘れていた漫画といえば*3、榎本俊二『榎本俊二のカリスマ育児』(秋田書店、全2巻)ですね。

この漫画で特筆すべき点は2つ。
ひとつは、1ページ1ページがコマによって非常に細かく分割されていることです。
まるで4コマ漫画のように正方形の均質な大きさのコマが敷きつめられていますが、べつに4コマ漫画というわけではないところが大事です。つまり、4コマという短いサイクルで話の起承転結を作らなければいけないという形式上の制約はありません(もちろん、この制約に応えない4コマ作品もたくさんあり、4コマを1セットとして捉えるのは必ずしもスタンダードと言いきれない部分があるのは、承知之助👍)。話運びは普通のストーリー漫画と同じように自由なわけです。
逆の言い方をしてもいいでしょう。べつに4コマ漫画じゃないのに、4コマ漫画のように画面を細かく均質に割りまくっているところが大事です。次に語る特徴とも大きく関わる話ですが、これによって作者が作品全体の「リズム感」をコントロールしやすくなっています。

「育児」のもうひとつの特徴へ移ります。
それは、コマとコマの間の時間上および絵面上のジャンプのさせかたです。榎本先生がXに貼っているので、第1話「カリスマ開幕」を読んでみてください。
↓リンク↓
冒頭の6コマは好例です。各コマの内容を書き起すなら次のようになるでしょう。
1コマ目:じたばた
2コマ目:顔クローズアップ
3コマ目:荷造り
4コマ目:奥さん妊娠
5コマ目:子供産まれる
6コマ目:顔クローズアップ
ぜひ実際に読んで体感してもらいたいですが、基本的にペースが速いというか、トントン拍子に感じられるのではないでしょうか。
しかし、大事な点ですが、コマからコマへの飛びかたをよく見ると、大ジャンプの中に小ジャンプが混ざっています。たとえば先の6コマでいうと、3→4、4→5は大ジャンプ、1→2や5→6は小ジャンプ、といったふうにです。
また、各コマの内容をみてみると、重要度はまちまちです。というのも、実に普通な内容に1コマが割り当てられているのと同じように、妊娠や出産など、普通の漫画ならまるまる1話使いそうな展開が僅か1コマで描かれて終わりになることも多いのです。
さて、これら2つの特徴があわさることで、「育児」に独特のリズム感が生まれていると思います。
大ジャンプも小ジャンプも、大事な話も些細な話も、すべてが似たようなサイズのコマ割の画面につめこまれ、パッと見の印象は同じままページは進んでいきます。
それゆえのスピード感。あっという間にすべての出来事が過ぎ去っていく感覚。作品の主題と結びつけてみるなら、ここにはまさに育児の「忙しなさ」が現れていると言えるのでしょう。
画面全体が生み出すテンポの良さに矛盾するように、セリフの末尾には罫線が多用され、文字面には妙に間延び感があるのも興味深いです。じつは罫線が使われているのは榎本俊二のセリフだけなのですが*4、目まぐるしい育児生活における彼の置いてけぼり感や一種の余裕さが読みとれると思います。
以上、『榎本俊二のカリスマ育児』のレビューでした。漫画っておもしれーな。
多分だけど、自分に子供ができてからこういう漫画を読んだら個別の内容への共感がどうしても強くなって、表現形式重視で読むのって不可能になるんでしょうね。今のうちです。
ほな、良いお年をお迎えください。