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mantrog

京大漫トロピーのブログです

【3/24】セイレン第1期完結によせて

 今、桃乃編を見終えた。これで今季の『セイレン』はひとまず終わりだ。
 僕は放送前から、『オデュッセイア』の「セイレーン」が鍵だと主張した。これは、本家アマガミレビューで柳田國男が、アマガミは「天つ神」の密意だと述べたことからヒントを得たものだった。しかし蓋を開けてみれば、的中したのは常木編だけだった。続く宮前編、桃乃編には「セイレーン」の再現と言える要素はおよそ存在せず、3編に共通するモチーフは、なんと「鹿」だった。こんなの誰も考えつかねぇよ……
 では、鹿とは何だったのか。結論から言ってしまうと、僕はちんぽだと思う。そのままズバリ男根のメタファーであり、男性性の象徴こそ、『セイレン』における鹿の角が意味するものだ。『セイレン』は、何の目標もなく漠然と生きている少年が成長して青年になる、つまり男になる物語なのだ。
 『アマガミ』の橘純一は、物語開始の時点で、すでに一人の男であった。2年前のクリスマスイブのデートをすっぽかされたと言うトラウマは、紛れもなく男性としての敗北である。彼はヒロインの問題を解決しながら、彼女によって過去の傷を癒される。そして、補い合うようにして二人は結ばれる。我々は橘純一の中に英雄を見出し、敬意を込めて「橘さん」と呼ぶ。我々は決して彼のようにはなれない。それゆえ、アマガミをプレイするときも、主人公の名前は「橘純一」のままで始めてしまう。変態的とも言えるアクロバティックな手法で問題を解決し、トラウマを克服する彼の姿に憧れはするも、どこか自己投影出来ないままでいるのだ。
 『セイレン』の嘉味田正一は、まだ少年だ。失恋のトラウマを負うこともなく、今日まで漠然と生きてきた坊やなのだ。クラスのマドンナにからかわれ、隠れてマイナーゲームや少女漫画を楽しむことで日々を漫然と消化する。橘に比べて、ずっと身近に感じられるだろう。明確な目標もなく、進路調査の第一希望には「カブトムシ」と書いてしまうよう嘉味田だが、実は、この「カブトムシ」こそキーワードなのだ。分かるだろう?角だよ、角。つまりちんぽだ。嘉味田は無意識に男性性に憧れを抱いており、一人前の男になれば現状の停滞感から抜け出せるのでは、と期待しているのだ。各編の最終話ラストに描かれる5年後、10年後の嘉味田の姿は、それぞれが彼の夢想したカブトムシである。『アマガミ』では森島編と絢辻編でしか描かれなかった未来の光景が、『セイレン』においてはより強い意味を持つのだ。
 さて、鹿の話に戻ろう。まずは、鹿が各編でどのように機能したか、簡単に振り返ってみよう。
 常木編での鹿はまず、勉強合宿から逃げた常木曜を追い回し、正一の元へ送り届けるという役割を果たす。そのせいで鹿に恐怖心を植え付けられた常木だが、嘉味田が鹿の習性を教えてもらうことで克服し、ついには料理人として鹿肉料理が得意になる。これはちょうど、常木の男性との距離感の推移と一致する。学園のマドンナとして、他人からの期待に応えるように「ビッチ」を演じる常木だが、彼女も本当は初心な少女であった。多くの男子生徒から言い寄られるも、誰とくっつくこともなく、ズーフィリアの荒木先輩や、明らかに自分より弱そうな嘉味田にのみ接近していた。そして勉強合宿で嘉味田と交流した彼女は、男性からの好意を素直に受け入れられるようになり、そのままスペインへ旅立つ。そしてスペインから帰国した彼女は、鹿肉の扱いと同様、真の「ビッチ」として男の扱いも得意になり……あれ、常木さん、もう非処女かもしれない……悲C…… まあなんであれ、常木は嘉味田を通して男性を知り、内面が外見に追いつく形で完成する。一方、嘉味田は、常木によって己の男性性を見出されることで、それを自覚し、常木より一歩遅れて成長を遂げる。最終章の、常木が嘉味田を「男らしかった」とねぎらうシーンがその証左である。そして、常木と嘉味田の微妙な上下関係は、5年後、料理人と管理栄養士という関係へそのまま移行するのだ。
 続いて宮前編だが、この物語は繰り返し見ると精神に異常をきたすので、一度見た記憶を頼りに書いていく。この章を真面目にレビューする予定のQP君には頭が下がるばかりだ。嘉味田正一と宮前透との接点はゲームであり、ソフトの名は「鹿大好き」だ。なんじゃそりゃ。鹿を育成するゲームであり、通信することで他プレーヤーの鹿と繁殖行為をすることも出来る。なんじゃそりゃ。プレイしている途中で、宮前が飼育する鹿がメスであることが判明するシーンは、だいたい嘉味田が宮前を異性として意識する時期と一致する。そうだったはず。よく覚えていない。うみゃみゃみゃみゃ…… まあ話の大筋は、中学時代に無自覚にサークルクラッシュを行ったムテキの女神(爆笑)・宮前透は、高校でも嘉味田のグループに、オタサーの姫として君臨する。一時は嘉味田たちの仲も不穏になるも、他がズーフィリアと小学校時代の初恋をこじらせたストーカーだったので、ノーマルの嘉味田が無事に宮前をゲットというもの。宮前の鹿がメスなので、ケリュネイアの鹿と絡めようかとも思ったけど、もう疲れたからいいや。嘉味田はオタサーの姫を女性として意識することで男性性を獲得し、彼女のサークルクラッシュのトラウマを払拭することで好意を勝ち取り、ゲームで疑似セックスしたわけです。やっぱり鹿はちんぽ。トラウマの克服というテーマもあって、実は嘉味田が一番英雄になろうとしている話かもしれない。ゲームで戦ったりもするし。ケリュネイアの鹿っていうのもそういう点で使おうかなって。でも救うべき姫がオタサーの姫だから締まりがないし、嘉味田はヘタレなので英雄になれませんでした。おしまい。
 桃乃編を書く前に、疲れちゃったので今日はここまで。来週ぐらいには後半に続く、かも。

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