mantrog

京大漫トロピーのブログです

【12/31】最強の漫画雑誌を決める③

最強の漫画雑誌は何か?


多種ある掲載媒体がルールなしで戦った時…

ジャンル・読者層を問わない何でもありの

『面白さ』で戦った時 最強の漫画雑誌は何か?


今現在 最強の漫画雑誌は決まっていない


第三試合

【13】アンダーグラウンド唯一のS級格闘士・櫻井裕章。
【オグ】文字通りアングラ出身の最強の漫画雑誌といえば…?
【13】アックスとか…?
【オグ】確かにガロというレジェンドの後継誌でありながら、世間からの認知度は低い。
【13】ガロ系琉球空手だった…?
【オグ】しかしなぁ、個人的には楽園を推したい…
【13】というと?
【オグ】コミティアという名のアンダーグラウンドからの最高到達点って感じせぇへん?
【13】なるほどね。まぁ漫トロ民は楽園大好きだしね…
【オグ】「恋愛系」を標榜しながら、全系統のシラットを修めたような幅広さを持ってる。
【13】作家陣も豪華だからね。
【オグ】でもアックスも捨てがたいねんな。
【13】やっぱり「戦いの螺旋から逃れられない」という業を背負ってる感はアックスだよね。
【オグ】龍の技(シカップ・ナガ)の動き、斧を振り下ろしてる感あるし。

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アックスは完璧にして最強…?

【13】そこ?
【オグ】「俺は強い」という自負をもって世に漫画を送り出してる感じは2誌ともある。
【13】う~ん、やっぱりアックスで!
【オグ】そしてオートマ免許の無職童貞・入江文学は…
【13】死ぬほど弱そう。ちゃんと一子相伝古武術の継承者だって言ったげて。
【オグ】佐藤十兵衛がLINEマンガだとして、その師匠って何よ?
【13】やっぱネット漫画の先駆けちゃう?
【オグ】う~ん… あっ、新都社とか…?
【13】名が体を表してるし、古のインターネットだし合ってる気がする。
【オグ】ワンパンマンが一撃で倒してたのは金剛打ち込んでたからだったんやな。
【13】『女を殴りたい!』の主人公もそのうち金剛打ちそう。

原稿料がなくとも漫画の面白さだけを信じ戦い続ける孤高の雑誌
アックス


掲載自在の古流投稿サイト
新都社
neetsha.jp


【オグ】なんか雑になってきたな…
【13】まぁここまでは原作でもテレビ放送されない試合だったから…
【オグ】チャンピオンVS電撃大王、LINEマンガ(本来は朝日新聞)VS週スピ、アックスVS新都社
【13】しょっぺ~

(つづく)

【12/31】最強の漫画雑誌を決める②

最強の漫画雑誌は何か?


多種ある掲載媒体がルールなしで戦った時…

ジャンル・読者層を問わない何でもありの

『面白さ』で戦った時 最強の漫画雑誌は何か?


今現在 最強の漫画雑誌は決まっていない


第二試合

【13】まずは悪魔の子・佐藤十兵衛
【オグ】黒い瞳のダミアン・ソーン!
【13】主人公だしジャンプ…?
【オグ】じゃあねぇよなぁ?
【13】毒とか使う極悪高校生がジャンプな訳ない。
【オグ】ダークホースの新興勢力だし、雑誌じゃなくてアプリのほうが合ってそう。
【13】早速『最強の漫画雑誌は何か?』というコンセプトから逸れてない…?
【オグ】本当に強いやつ決めるなら無視できないから…多少はね?
【13】ちょっとくらい…入れてもバレへんか…
【オグ】アプリ入れて良いなら十兵衛はLINEマンガやろな。
【13】まあ『喧嘩独学』も載ってるし、合ってる感じはするね。
【オグ】やっぱり最強の格闘技はテコンドー。
【13】サンキューパック。
【オグ】ウェブトゥーンの縦読みも、少なくとも日本では”陰”側の技術。
【13】YouTubeで広告バンバン入れてくるのも、”陰”側の何でもやる感じ。
【オグ】「LINEマンガはここまでやる」
【13】えげつねぇな…
【オグ】これが現代格闘術・富田流のやり方や。
【13】LINEマンガの師匠に当たる富田流・入江文学は何になるんだ…
【オグ】それは第三試合でね? まずは川徳を決めよ。
【13】こいつも結構条件厳しいんだよな。サイコな兄がいて、実は本人もサイコな雑誌…
【オグ】やってる日本拳法は間違いなく”陽”側で、才能もピカイチ。
【13】雑誌なら大手出版社から出てて、知名度や有名作品も結構ある感じだよね。兄弟誌もあるヤツ。
【オグ】ただメンタルがブレブレ。
【13】そして空手王・上杉や柔道金メダリスト・関ほどの認知度や厳つさはない。
【オグ】これは…スピリッツやな?
【13】あ~確かに。知名度あるけど線が細い感じね。
【オグ】メンヘラな作品も多々あるし、兄弟誌もあるし、決まりでは?
【13】カウンター得意なのも重なる。既存の青年誌に対してカウンターというかオルタナを出す印象。
【オグ】「日拳に掴みはない」と思わせて、実は隠していたのは…やわらかスピリッツだったんかな。
【13】”陽”側もインターネットという”陰”の技術が使えないわけじゃないからね。
【オグ】しかしその格闘センスと高等技術もLINEマンガの権謀術数には敵わず…
【13】「卑怯者…」
【オグ】「超ウケる」

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圧倒的な物量&更新頻度という名の右ストレート

【13】そういえば作中で一度「シリウス」って呼ばれてたけど…
【オグ】全部をピッタリにはできないから… 実際に週スピがLINEマンガに負ける訳でもないしね?
【13】おっ、そうだな。

東洋のハエの王
LINEマンガ
manga.line.me

創刊から読者のメンタルを揺さぶる事のみに紙面を割いてきた青年誌
週刊ビッグコミックスピリッツ


【オグ】LINEマンガに排除された石橋強はなんやろ。
【13】WBOヘビー級世界1位の漫画雑誌… アメコミとか?
【オグ】う~ん世界編にまだ取っておきたい… そもそも原作が世界編まで行くか怪しすぎるけど…
【13】けどここでジャンプとかのカード使うのも勿体ないし…
【オグ】悩まし~。
【13】…朝日新聞とか…?
【オグ】ファッ⁉
【13】いや発行部数という面では間違いなくヘビー級だし…
【オグ】『ののちゃん』や『サザエさん』、『落第忍者乱太郎』とかも出してるから実際強い…?
【13】新聞、スマホの登場で雑誌以上に打撃受けてそうだし…
【オグ】「毎朝家まで届く新聞が最強の媒体に決まってる」とか言ってたらアプリに倒されたンゴ…
【13】現実かな?

どんなに時代が進んでも倒れないヘビー級メディア
朝日新聞
www.asahi.com


【オグ】不動産という名の一枚アバラ。
【13】実際強い。

(つづく)

【12/31】最強の漫画雑誌を決める①

最強の漫画雑誌は何か?


多種ある掲載媒体がルールなしで戦った時…

ジャンル・読者層を問わない何でもありの

『面白さ』で戦った時 最強の漫画雑誌は何か?


今現在 最強の漫画雑誌は決まっていない



1353です。年末ですね。
お笑い、格闘技、音楽…なんでも競わせて一番強いやつを決める季節がやってきました。
というわけでね、最強の漫画雑誌も勝手に決めちゃおうと思います。


どうやって?
独断と偏見で選んだ16の媒体を、トーナメント形式で対決させます。

世に感動を与え広く認知され、表の世界で最強と呼ばれる雑誌、アングラやサブカル、独自に形成された特異な風土を持つ裏の世界で最強と呼ばれている媒体…
『表』と『裏』 『光』と『影』が入り交じる
最強の漫画雑誌を決めるヴァーリ・トゥード トーナメント…

『陰陽トーナメント 漫画雑誌Ver.』を行います

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漫画雑誌でこれをやる

早速、出場者を1353とオグリビーの二人で決めていこうと思います(以下、【13】と【オグ】と表記)。
はじまりはじまり~。



第一試合

【オグ】原作では、ステゴロ最強の喧嘩師・工藤優作と隻腕の忍者・梶原修人
【13】さっそく濃い面子だぁ。
【オグ】工藤は…チャンピオンやろなぁ。
【13】純粋でまっすぐな面白さでぶつかってくる感じがね。
【オグ】これはチャンピオンで決まりですわ。問題は梶原よ。
【13】未知の”技”を駆使して、相手を絡め手で翻弄する現代の忍者。
【オグ】漫画雑誌で? そんなのある?
【13】工藤とは正反対なんでしょ。男くさいチャンピオンと対照的な雑誌だから…
【オグ】少女漫画とか?
【13】まず三大出版の雑誌ではなさそう。
【オグ】まあ「月マガ」や『ゲッサン』とかの月刊誌はそれなりに”陰”だけど、梶原っぽくはない。
【13】もうちょっとマイナーな感じよね。
【オグ】KADOKAWAとかスクエニあたり?
【13】ハッ…電撃大王…?
【オグ】電撃…? あっ、『雷』…
【13】『萌え』は純粋な面白さの殴り合いとは違った次元の”技”感ある。
【オグ】確かに萌え文化の流行しだしたとき、チャンピオンは面食らってたやろな。
【13】そして工藤(チャンピオン)も戦いの中で初めての”技”を繰り出す…
【オグ】その技の名前は…
【13】イカ娘。
【オグ】イカ娘」はステゴロの漫画だった…⁉
【13】そうでゲソ。

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その象形から”卜辻”という

【オグ】絵はプロレベル。話は漫画を馬鹿にしてるとしか思えません。
【13】それは投稿作のときの話だろ! いい加減にしろ!
【オグ】萌え系をして「こういう面白さも…あるんだな」と認めるチャンピオンか~。
【13】実際そっちの路線もしっかり模索してるしね。
【オグ】イイハナイダナー

殴られれば殴り返し 捕まえればへし折る
原始的な面白さを追求する少年誌

週刊少年チャンピオン


直球ではないエンタメを得意とする萌え系漫画誌
月刊コミック電撃大王


【オグ】チャンピオン最新号の表紙、なかなか”技”使ってるやん。
【13】第二試合もお楽しみに~。

(つづく)

一介の漫画読みによるキングオブコント2020の感想

シチョウです。漫画評論サークルのブログではあるんですけど、お笑いの話がしたくなったので今年のキングオブコントについていろいろ書きます。

滝音 『ラーメン屋』
ただのラーメン屋の一風景と思いきや、実は大食い選手権の最中だった……というミスリードを誘うことで笑いを生むタイプのコント。「大食い選手権の最中である」ことを明かすところが笑いのピークでそれ以降尻すぼみになっていったと審査員に思われたことが点数が振るわなかった原因でしょうか。ただそう思われるのは本人たちにとっては心外だったのではないかなと思います。というのは、設定を開示した後は大喜利的な笑いにシフトしていくんですけど、そこでのさすけさんの言葉選びに独自性が見られたからです。恐らく本人たちの中ではツッコミのワードセンスでもっと笑いが起きている予定だったのでは?と思います。観客が「滝音はツッコミのフレーズが面白いコンビ」と説明するようなくだりを入れればもっとウケたのでしょうか。ただツッコミのフレーズで笑わせるコンビって珍しくもないのでそこまで丁寧に(昨年のM-1におけるミルクボーイやぺこぱのように)やる必要もないような……。難しいですね。設楽さんが言葉の掛け合いがよかったと仰っていたので、ワードセンス自体はきちんと評価されていてよかったです。

好きな台詞:「あたしだけ足軽フードファイターやと思われてまうやん!」(一回一回どんぶりを下げるくだりも含めて面白かったです)

GAG『河川敷』
昨年の『芸人の彼女』でファイナルに進出できなかったのが相当堪えたんでしょうね。これまでKOCで披露してきたネタとは打って変わって、今回のGAGは以前に増してギャグ漫画成分の強いネタで勝負をかけてきました。ただ点数はあまり伸びなかったですね……。以下ではなぜGAGが今回跳ねなかったかを考えていきたいと思います。
この項を読んでいる方なら全員思っていることなんでしょうが、このネタってGAGらしくないんですよ。具体的に言うとGAGのネタは周囲の状況に振り回されるダサい人間を描いたコントが多く、GAGを好きな人ってGAGのネタにそういうのを求めていると思うんですが、今回はそういった部分がなかったんですよ。だから松本さんの「テグス」発言にはそういった、GAGらしいコントをやってほしかった、小道具頼りのネタをやってほしくなかったという意図があったのではないかと思います。あとこれは個人的な意見なんですけど僕はリアリティの無いボケがあまり好きではないので、中島美嘉さんが自分の姿が目の前にあるのに気づかないのくだりはどうかなと思います。漫画読み的な意見なので共感を得られるかはわからないですけど、作者の一方的な都合で配置された舞台装置的なキャラが好きではないので、あそこはネタを都合よく進めるために無理やりボケたように感じました。
ただこれで4年連続2ネタできないというのはあまりにも浮かばれないですね。決勝への行き方は熟知している方々なので、特に今年は最もファイナルに行ける(と自分たちが思っている)ネタを用意しているはずなんですけれども……。今後どうすればGAGがファイナルステージに駒を進めることができるのか、正直いってわかりません。せめて5組に二ネタやらせてくれないですかね?ファイナル3組制になってから毎回2ネタ目も見たいコンビ(あるいはトリオ)が4,5位にいるのがとてももどかしいです。

好きなくだり:草野球のおじさんがフルートになるくだり

ロングコートダディ『効率』
これは凄いネタ。今回披露された中では一番好きなネタです。「頭の悪さ」をストレートにボケとして機能させているのが素晴らしい。普通頭の悪さは頓珍漢な発言や回答を行うという形で表現するしかないと思うんですよ。それをこのネタでは視覚的に、パズル的に表現することに成功している。最初の段ボールを積み上げる段階で、ああこんな数学チックなものをコントに持ち込めるんだなと感じ、面白いネタであることを確信しました。頭の悪さを効率の悪さ、思考の放棄という形で表現した、斬新な発想に基づいた見事なネタだったと思います。漫画読み的な文脈でもう一つこのネタの話をすると、「俺馬鹿だから」なんて発言をするようなキャラクター=時折本質を突く一言を発するキャラという図式が漫画(というよりあらゆるエンタメでか?)でよく見られ、不文律として共有さえされていますが、兎さんの場合本当に頭が悪いというのもボケとして優れていますね。上半身の筋肉が異常発達した人といい、アルファべットと数字だけ描かれた段ボールといい、シンプルながら一枚絵としてかっこいい構図も印象的でした。巷ではニッポンの社長の『ケンタウロス』が騒がれているようですが、このネタもそれくらい騒がれていいんじゃないですかね。あと「爆発がほしかった」的なことがこのコントに関してよく言われるんですけど個人的には不要だと思います。あれで完成されています。だいたいこのネタにそれを言うならニューヨークの『ヤクザ』にも言えと。惚れました。単独ライブ毎回行きます。

好きな台詞:「俺の前で効率の話をするな」

空気階段霊媒師』
展開の妙に重きをおいた、空気階段らしさの詰まった一本。このネタのいい所といえば、フリの回収のカッコよさに尽きるでしょう。まず霊媒師が本物であると判明するくだり。確認のためにかたまりさんがradikoのアプリを起動したところ、radikoであるがゆえに霊媒師の放送のほうが早いところは芸の細かさが出てよかったですね。そしてもぐらさん演じる霊媒師が「マジで破産する5秒前」であることが判明するくだり。めっちゃ長いストラップの伏線を言葉で回収するのではなく、小道具であっさりと回収するところに空気階段のコントの面白さ、奥深さを感じました。そこからかたまりさんともぐらさんの(話の流れ上当然なんですが)声がハモるのも絵として観ていて面白い。いいネタですね。

好きなくだり:としあんストラップを取り出すくだり

ジャルジャル『野次ワクチン』
今までの大型賞レース(具体的にはM-1とKOC)におけるジャルジャルのネタの中では最も好きなネタです。なぜかというと、今回のネタは福徳さんが人として自然だからですね。ジャルジャルのネタは大半が福徳さんが異常者でそれに振り回される後藤さんという構図なんですけど、今回は福徳さんは普通の人なんですよ。競馬場に野次があるのも自然で、だからそれに対する耐性をつけようという発想に至るのも自然です。導入がジャルジャルにしてはかなり丁寧で、そこからの展開も後藤さんが二つの選択の板挟みになって苦しむというわりとスタンダードな構造で、ジャルジャルにしては相当笑いどころが分かりやすいネタだなという印象を受けました。
余談ですが、ジャルジャルは今回最も大衆ウケのよさそうなネタを選んだとのことで、彼らのいう大衆性というのが導入の自然さであるとすれば、僕は大衆側の人間なんだろうなあと思います。

好きなくだり:契約書が和紙みたいなところ

⑥ ザ・ギース『ハープ』
個人的な評価と審査員の評価が最も乖離したネタです。ギースはある尖った発想があり、その尖った発想が前提として存在する世界の中で話を展開させていくタイプのコント師でその発想の質がネタの面白さに直結します。では今回のネタの肝は何かというと、「高佐さんがやっている音楽がハープ」というものです。僕が高佐さんが実際にハープを演奏できるのを知っているからなのかもしれないんですけど、何やら音楽を嗜んでいるらしい→ハープ!?というのはそこまで裏切りにはなっていないのかなと。どの楽器も弾き手がいるから成り立っているわけであって、「音楽をやっている」というフリがある以上実在の楽器では裏切りになれないと思うんですよ。もっとミスリードを誘うことは出来なかったのかなというのがこの部分に関して思ったことですね。
あと固有名詞が僕には分からないものが多く、ジェネレーションギャップを感じました。他のギースのネタでそういう思いをしたことはあまりないんですけどね。ギースのネタって結構固有名詞を出すのに。なんでこうなったかを考えると、ひとえにこれはハープが発想として弱いことをギース自身が認識しているからだと思うんですよ。弱いからハープではなく、固有名詞を笑いの核に据えようとしたのかなという印象を受けました。また、ハープをばらした後の台詞が全体的に説明調なのも気になりました。そもそも普段のギースは世界観が狂っているので台詞を世界観の説明に使っても違和感はあまりないんですけど、今回は一般社会の話なので観客に説明するような台詞は不自然だと感じました。全体的に高佐さんの特技であるハープをネタの中心に据えるためにギースらしさを中途半端に崩した結果とっ散らかってしまったなというのが率直な印象です。正直言って僕はこのネタより一昨年の『サイコメトリー』や今年の2本目でやる予定だったらしい『SLクラブ』のほうが好きですね。でもあのギースがハープを、それもうまく弾いて且つネタにうまく取り入れた、という点を評価して高得点をつけた審査員の考えも理解はできますね。ネタを成立させる難易度も重要な指標です。

好きな台詞:「家には冷蔵庫もクーラーもありません、四畳半一間にこれだけです」

うるとらブギーズ『陶芸家』
審査員評の通り、全体的にこじんまりとしてしまった印象。「師匠の師匠の壺を割ってしまう」というオチは結構な人数に予想されてしまったのではないでしょうか。また、師匠の気が狂って弟子に判定を丸投げするくだりは無理やり感があって不自然だなと感じました。こういうネタにこそ「爆発を待った」的なコメントは相応しいんじゃないんですかね。昨年の『催眠術』のような斬新なギミックを見たかったですね。ただあれほど優れたネタを量産しろというのは……厳しいか。

好きな台詞:「そんなダメ?」

ニッポンの社長ケンタウロス
これはやばいねえ。どうやばいかは後述するとして、とりあえずこのネタの流れを追っていきます。最初のケンタウロスが出てきた段階でもっとウケてもいいのになと思いました。ケンタウロスが出るだけでも面白いでしょ。そこからケンタウロスあるあるを愚痴るパートもそれだけで充分面白かったですね。僕ならそれだけで一本のネタとして成立させてしまうかもしれません。そうやって普通のお笑い物語が進んでいくんですけど、舞台上にミノタウロスが表れ、ケンタウロスミノタウロスの目が合う瞬間お笑い物語は崩壊します。一目ぼれする、その瞬間曲が流れる←ここまではぎりぎりわかりますよ。そしてケンタウロスが歌い始めるだがこの曲はデュエットだ、さあどうする?→吠えたやんけ!あーもうめちゃくちゃだよ(歓喜)!ミノタウロス引くなや!→ラップノリノリやんけ!→吠えラップやんけ!→ミノタウロスパートか→(間奏)この瞬間のための曲なんですねえ→ミノタウロス愛の力できれいな歌声になったよ!イイハナシダナー→お、デュオでもやんのか?→ミノタウロスの声が今度はいかれた!→終幕(というよりはフェードアウト)。このネタの凄いところはただでさえ歌い始める時点でお笑いを壊しているのに、最後のミノタウロスが声変わりするところでもう一段階の破壊を行っている、つまり物語を破壊している点ですね。目が合う~ケンタウロス声変わりパートまでは実は細かい演出がしっかりしていて、例えば吠える時照明が赤くなるんですけど、間奏のキスシーンになると派手照明(名前なんでしたっけ?)を消して二人(二匹)にスポットライトを当てたり、ミノタウロスが雌であることを示すために花をつけたりですね。ただその流れでデュオでもやるのかと思いきや、全員の予想の上をいって終了。
この「ちゃんとしたネタやね」→「滅茶苦茶やってるようで実はちゃんとしてる」→「ちゃんとしてる部分を否定しやがった!」という構成の漫画を僕達は知っていますね?そう、『ファイアパンチ』です。このネタっていわば『ファイアパンチ』なんですよ。①ケンタウロスあるあるを笑いの主軸としたコントを展開②その流れを覆してラブストーリーを展開③ラブストーリーの大団円を否定するという流れってまさに藤本タツキが『ファイアパンチ』にて行っていた「読者の事前に予想していた展開から別の方向へと突き進む」という流れを地で行っていると思うんですよ。台詞で笑わせる王道コントを馬鹿にするような構成なのに物語自体はしっかりしているのも近いですしね。このネタはお笑い界の『ファイアパンチ』です。藤本タツキ作品で気持ちよくなりたい漫トロ会員諸君は今すぐparaviに登録してキングオブコントを観よう!
さて、ここからはなぜこの伝説のネタがいまいち跳ねなかったのか考えていきましょう。三村さんの点数が良く取沙汰されていますが、そもそも他4人も滅茶苦茶高い点数をつけているわけではないのでこの責任を三村さん一人に押し付けるのは違うんじゃないと。少し思ったのは最初のノーマルお笑いパートが意外と受けていなかったことですかね。恐らく「三学期やぞ」や「一番足速いのに一番モテへん」の部分でもっと笑いがあって然るべきで、そこでウケること自体が歌い続けることへのフリになってたのかなと思います。敗因はそこの計算が狂ったことかなというのが個人的な結論です。

好きなくだり:ケンタウロスが声変わりするところ

⑨ ニューヨーク『結婚式の余興』
余興のレベルがエスカレートしていくという、尻上がりに盛り上がっていくのが明らかなネタ。こういうネタに対していちいち何かを書くというのも野暮ですよね。観ていて楽しいネタという意味では、今大会では一番良かったと思います。

好きなくだり:嶋佐さんの変な歩き方

ジャングルポケット『脅迫』
相関図のボケがやりたかったんだろうな。バナナマンの両名が仰っていた「ずれ」に関してはあまり感じなかったですね。ごちゃごちゃしてるのは相関図へのフリなのかな?と思いながら見ていたんですけどそうでもないみたいですね。身内の情報を掴んでいるという脅迫あるあるから掴んでいる情報が細かすぎる方向へ発展させ、娘の話から近所の浮気話へとシフトし、相関図で落とすという流れは観ていて飽きず、賞レース慣れしていることを感じさせました。「それがお前の父の日のプレゼントだよ!」とか資格の情報とか個々のボケも面白かったですね。得点発表後のおたけさんの「俺だ……」は今回の平場では一番好きです。

好きなくだり:相関図

ここまでがファーストラウンドの感想ですね。3組好きなのを上げるとすればロングコートダディジャルジャルニッポンの社長かな?ここからはファイナルラウンドについてです。

空気階段定時制
いや~いいコントでしたね。もぐらさんの滑舌が悪すぎて筆談でさえ聞き取れないのが恋仲が発展するにつれて(観客に)聞き取れるようになる(具体的には「教えない」のところからですね)ところはとてもお洒落でしたね。1本目もそうなんですけど、ギミックの使い方やフリの回収の仕方が空気階段は本当にかっこいい!内容はというと、教師にばれないように筆談する、わからない問題の解答を教えてもらうも間違えるといった思春期の甘酸っぱい恋愛モノあるある(実際その辺から着想を得たのでは?)を定時制の男女が行うというねじれを笑いにしたもの。かたまりさんが美形だからなのかもしれませんが、そのねじれを嘲笑うネタに仕上げるのではなく、そんな中でも気持ちが通じ合うことの素敵さを謳うネタに仕上げたのは見事だと思います。昨年のかが屋もそうですけど、嘲笑ずに優しく包み込むネタを作るのを選択できるってすごいですよね。その滑稽さを馬鹿にするほうがはるかに容易なのに。
これはネタとは関係ないのであまり触れたくないんですけど、「優勝するネタではない」系の審査員コメントが嫌いです。たとえ思っていても言わないでほしい。このネタが賞レース向きのネタではないことは空気階段自身も重々承知のはずで、それを理解したうえで賞レースの決勝で披露するんだという覚悟を買ってほしいですね。「今一番自分たちのやりたい二ネタ」を披露できたという点で空気階段は実質優勝といっても過言ではないでしょう。

好きなくだり:かたまりさんが解答をもぐらさんに教えてもらうも間違えていたところ

⑫ ニューヨーク『ヤクザ』
ニューヨークといえば底意地の悪い偏見を仕込んだネタで有名で、ニューヨークのネタが好きな人はニューヨークにそういうのを求めるはずなんですよ。一本目のネタに物足りなさを感じた人は多いはずで、日村さんのコメントにそれが集約されていましたね。さて、ではこのネタで彼らが一体何を馬鹿にしているかというと、「ヤクザのノリ」ですね。何かにつけて面子を重んじ、生死の問題に持ち込もうとするヤクザのノリをいじるネタを作りたいというのがおそらく発想の起点で、ヤクザのノリの馬鹿馬鹿しさを際立たせるために日常のあるあるとしても微妙な「切りすぎた髪を見せるタイミングを失う」を設定として起用した、という経緯でこのネタが生まれたんじゃないかと。このネタの凄いところは観客に馬鹿らしさを説明する台詞が一切ないことですね。ヤクザの日常を切り取ったという体を最後まで崩していない。ニューヨークお得意の偏見を直接台詞で表現するのではなく、その世界観で当たり前のこととして表現することでコントとしてのリアリティを格段に上げた、現時点でのニューヨークの最高傑作だと思います。

好きな台詞:「俺への墓参りは、帽子とって来いよ」

ジャルジャル『空き巣タンバリン』
このネタは公式のyoutubeに上がっていることもあり、事前に知っている人も多かったのではないでしょうか(少なくとも僕の周りのお笑い好きは全員知っていました)。ただいざネタを見て思ったのが「これyoutube版のほうが面白いな」ですね。なぜかというと、会社がボケになっているからですね。「空き巣」という絶対に音を出してはいけない状況なのにタンバリンという携帯すれば100%音が鳴る楽器を持っているというジレンマにこのネタの面白さはあって、金庫にタンバリンがあるというボケはこのネタの本質からずれるなという印象を受けました。まあこれに関してはジャルジャルがこのネタの面白さを動きの笑いと位置づけているだけかもしれないので何とも言えませんが。

好きなくだり:金庫が開いたことに喜んでタンバリンを鳴らすところ

以上がファイナルラウンドの感想ですね。この中だとニューヨークの『ヤクザ』が一番好きかなあ。最初のネタと合わせて考えた場合個人的な優勝は空気階段です。

ここから総評です。今回のKOCは、大型賞レース決勝初進出の関西コント師三組が持ち味を存分に発揮した1ネタ目を披露したのに対し、賞レースに慣れているニューヨーク・ギース・GAG(・ジャルジャル・うるブギ)がらしくないネタを先に披露したのが印象的でしたね。ジャルジャルはらしくないネタだとは思いませんが、彼らにしてはわかりやすいネタをかけてきたのでこの括りに入れてもいいのかなと。うるブギに関してはネタをあまり見たことがないので何とも言えませんが、繰り返しをネタの中心に据えているところが近年のKOCの傾向に合わせてきたなと感じました。また、近年のKOCでよく見られる2本目で失速する現象(ロッチチョコプラばかりが取り沙汰されますが、一昨年のわらふぢなるおや昨年のうるブギもその傾向はあったように感じます)がなかったのも特筆すべき点としてあげられるでしょう。ここから見えてくるのは現行の体制に対する傾向と対策が確立されてきたという事実です。「是が非でも二ネタやるために最初に一番強いネタをぶつける」より、「1本目は初見の人に笑ってもらうためのネタを用意し、2本目に自信作をぶつける」というのがこれからのKOCにおける芸人の基本的な方針になっていくのではないでしょうか。この状況をどう捉えるかは人それぞれですけど。


くぅ~疲れましたw これにて完結です!
お笑いが好きで、言語化する作業も好きなので、こうして今回のKOCに対する自分の感想を保存したくて挑んでみた所存ですw
こうして初めて自分の思いを書き連ねたあと客観的にみて思ったのは、僕が好きなのは斬新なネタと物語として自然なネタですね。あと今大会の感想を書いた後にいろいろな方のブログを巡回したのですが、結構内容が被ってしまっていますね。好きな台詞の部分に至ってはほぼ同じことをやってしまっていたんですが、パクったわけではないのでご容赦を。独自性のあることも書けてはいるのでそこはよかったかなと思います。これからのM-1やKOCの後も感想記事を書くかもしれませんし書かないかもしれません。それに関しては未来の僕の気分に任せます。

【C97】コミックマーケット3日目 参加のお知らせ

今回のコミケも、京大漫トロピーは参加します!
明日です!!

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【日時】2019年12月30日 (3日目)
【場所】南ム41a
【頒布物】23号(新刊) 60部ほど バックナンバー(22,21,20,19号) 

新刊は京大11月祭で発売された、メンバーで2019年一年の最強の漫画を決めるランキング号です。

ランキングはこちら
http://mantropy.net/ranking/2019%E5%B9%B4%E6%BC%AB%E3%83%88%E3%83%AD%E5%80%8B%E4%BA%BA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0

お待ちしております!!

【12/26】料理って見るのも楽しいよね

 延長戦や。
 今年のアドベントカレンダーは料理の話多かったっすね。
mantropy.hatenablog.com
mantropy.hatenablog.com
mantropy.hatenablog.com

 やっぱりパーティに料理はつきものだからね。
 料理するyoutuberとかも人気らしいし、料理ってのは食べたり作ったりだけじゃなくて、その工程を見るのも楽しい。
 雑然と並んだ食材が次第に一皿へとまとまっていく様子を見ていると、なんか心が落ち着く。

 で、今年の漫トロランキングで総合10位に入った『ルーツレポ』の作者、ルーツはもともと動画投稿者で、ニコニコ動画に色々とゲーム実況を上げてたのよ。

 そのなかでも後期の動画に『しゃべる!DSお料理ナビ』の実況動画があるのね。実況って言うか、ゲームの指示に従って実際に料理する動画なんだけど。
www.nicovideo.jp

 雑な包丁さばき、足りない食材、微妙な完成度、そして曖昧ながら共感を誘う感想。たまらねぇ~。
 9年前に最終回を迎えたんだけど、最近、youtuberとなって復活してたんだよ。
www.youtube.com

 「ちゃおです。今日はね~」と9年のブランクを感じさせない導入、辻先生の音声もあの頃と変わらないままだ。落ち着く~。
 でもルーツの左手薬指にね、結婚指輪がはめられてるのよ。よく見ると調理の手際が良くなってたり、「子どもがニンジン好きなんだよね」とか言ってたり、ところどころに時の流れを感じさせられて、なんだか感慨深くなっちゃった。みんな大人になっていくんだな。『アフロ田中』が結婚、出産を迎えたのを見たときと同じような気持ちになった。

結婚アフロ田中(1) (ビッグコミックス)

結婚アフロ田中(1) (ビッグコミックス)

 頭の中で「ひろしの回想」が流れる。そういえば最近のオタク文化ってマジで「オトナ帝国」感あるよね。老害が感傷に浸ってさ、昔の2chは、ニコニコは云々と懐古してて、今のガキはどう思ってんだろうな。漫画やアニメがくだらないって言われたから、大人に反発するようにオタクになった節が俺にはあるんだけど、今やちょっとハイカルチャー気味に扱われてるでしょ。今の避難所はどこなんだろうな。ゲームもeスポーツ化されてるし、全部が全部目的ありきになりそうで怖いわね。駄文失礼。醤油でした。

【12/25】漫トロピーというサークルがどう成り立っているのか考えてみる

 新会長のちろきしんです。漫トロ入って1年目ですが、現時点で学部2回生になります。

 この前、文ピカ*1で、『よいこの黙示録』という漫画を読みました。
 小学生たちが宗教を作り出していく漫画なのですが、宗教をどのように立ち上げ、どうやって信者を獲得していくかという経緯がリアルで、エンタメとしても面白い、名作漫画でしたね。宗教の仕組みを解説したちくま新書の『完全教祖マニュアル』をエンタメ化したようなイメージです。

よいこの黙示録(1) (イブニングコミックス)

よいこの黙示録(1) (イブニングコミックス)

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

完全教祖マニュアル (ちくま新書)


 僕はこれから漫トロの運営に本格的に携わっていく立場になりますが、『よいこの黙示録』や『完全教祖マニュアル』で書かれたような宗教活動の実践はサークル運営の大きなヒントになると考えています。組織運営について解説した本は山ほどありますが、その大半は企業などの営利組織について書かれたものになってしまうんです。営利組織は利益を出すことを第一の目的として動いているという点で、人間関係の構築が目的のサークルとは大きく違う存在です。給料なんていらないから働かせてください、なんて言う人はいないでしょう。企業内の人間関係はあくまで利益を得るための手段という色彩が濃いのです。それに対して、宗教組織は、営利組織以上に人間関係の構築そのものが大きな目的になる組織です。宗教に入る目的は、やはり生きづらさの解消という面が大きいと思います。救済と言い換えた方がいいかもしれませんね。ただ、宗教組織内の人間関係は、救済に至るための手段に留まりません。宗教内の人間関係で居場所が得られれば、生きづらさの解消に直接繋がるという点では、宗教を通じた人間関係の構築も目的の一つといえるでしょう。たとえば、創価学会は、農村から移住した都市労働者を基盤に発展してきた歴史があるのですが、田舎から出てきて地域共同体から切り離され孤立した彼らに居場所を与えることで信仰を集めていたという側面があります。宗教活動は、「居場所」といわれるものと深く関わっているのです。

 「居場所」とは、「ここにいてもいいんだ」と思えるような場所のことです。自分に合った価値基準が通用している場所と言い換えることもできるでしょう。価値基準は社会的に構成されるものですから、今の価値基準で幸せになれないときは、別の基準が通用する集団に入っていくのが一番でしょう。そうした社会・コミュニティを作るという機能は宗教の非常に大事な側面です。

 別の価値基準が通用する場所という点では大学のサークルも宗教と同じです。

 漫トロの場合、漫画の知識量・レビューする能力*2が重要な価値基準になっています。実際、漫画の知識やレビュー力があると、いろいろと頼られたり、議論好きな会員の会話において不自由しなくなるでしょう。また、社会的に留年は忌避されがちですが、漫トロでは留年の会員が非常に多くいるために、留年したからといって自らの価値が変わることはありません。僕自身も漫トロに入る前と比べて、留年に対して抵抗感がなくなっているように感じます。留年は一例ですが、このような漫画と関係ないところにも、そのサークル特有の価値基準は存在しているのです。

 そうした居場所を作るのは簡単ではありません。まずは、ある程度の数人を集める必要があります。集まってきた人同士を繋ぎとめ、結束を強める仕組みも必要でしょう。居場所作りには、人集めから結束の強化に至るまで円滑に進めるための高度なシステムが必要なのです。先ほど名前を出した『完全教祖マニュアル』では、布教を成功させ、信者の信仰を強化するために宗教がどのような仕組みを持っているかについて解説しています。

 その中でサークルの運営に関わる部分は、4つの要素にまとめることができます。

 ⑴ 勧誘の際はターゲットを絞る。
 ⑵ 集団の構成員で集まる場を設ける。
 ⑶ 集団の内側と外側に温度差を作り、外の世界と差別化する。
 ⑷ 義務を与える。

 これらの事項は宗教だけではなく、すべてのサークルにとって重要なテクニックです。宗教の事例を参考にしながら、漫トロではどのようにして、こうしたテクニックが実践されているか、少し考えてみます。


 ⑴ 勧誘の際はターゲットを絞る。

 多くの宗教では布教を始める際、まず最初に社会的弱者や貧困層に狙いを定めます。宣伝・勧誘をするとき、メッセージが届く人の数とどのくらい心の奥深くに届いたかはトレードオフの関係にあるからです。
さて、漫トロではどのような宣伝手法がとられているのでしょうか。漫トロのビラには、普通のサークルの物とは異質な、異常さを感じさせるものが多いです。人によってはビラを見て「ヤバいサークルだ。入らないでおこう」と思うようなデザインです。つまり、そう思うような人たちの集合を排除しているのですね。宣伝対象を制限していると言い換えても同じです。逆に言えば、あのビラを見ても入ろうと思えるような人こそ漫トロに来て欲しい人材ですし、おそらくそういった人を強く引きつけるものがあるのでしょう。

 ⑵ 集団の構成員で集まる場を設ける

 信者間のネットワークを作るための定期的な集会は宗教でもありますが、注目すべきは、集会の場所になるキリスト教の教会、イスラム教のモスクなどの宗教建築がどれも普通の建物とは違う建築様式であることです。日常から飛躍している感じを出すことで、特別な体験という感慨と集会参加者の結束の強化を生み出しています。
金曜5限後、漫トロ会員が集まる文ピカは、漫トロのホームページを見れば分かるとおり、学生運動の自由な雰囲気を残したような内装になっています。なんせ黒板の真上にデカい赤文字で“自 主 管 理 貫 徹”ですからね。この部屋の雰囲気が漫トロの自由な雰囲気や会員の帰属意識の強化に深く関係していると僕は見ています。心配なのは、近い将来文学部東館が取り壊され、この文ピカがなくなってしまうんじゃないかと言われていることです。文ピカが無くなったら漫トロは衰退してしまうような気がして、不安で仕方がありません。

 ⑶集団の内側と外側に温度差を作り、外の世界と差別化する

 外部との差別化は、集団の結束力を高めるのに重要なポイントです。宗教組織では、断食や独自の暦・記念日など、内部でしか通じないルール・慣習を作って差別化を図っています。
漫トロでは、このアドベントカレンダーや忘年会での漫画交換会、夏の合宿などが当てはまるでしょう。会誌作りにも差別化の効果はあると思います。外部からの視点で言えば、ビラもそうですね。


 ⑷ 義務を与える。

 念仏や断食などの宗教上の義務は信者の信仰を強めるために与えられています。宗教の信者は、神の救済を信じることで救われようとしていますが、何もしないで、救済を信じることはなかなか難しいことです。そこで何か義務があると、救済に至るための目標が明確になり、信者を信仰・救済へ導くことができます。
漫トロでこの義務に当たるのが、会誌作りです。サークルは居場所を得るための場所ですが、もし、サークルの成員になるための義務がなければ、簡単にはサークルの一員としてのアイデンティティを身につけることができません。帰属意識は居場所が得られるとはどういうことかを考える上で非常に大事なポイントです。また、会誌作りには、共同で同じ課題に向き合うことによって会員の親密度を上げる効果があります。漫トロの会誌の場合は、秋会誌で今年出た漫画の中からランキングを作るのですが、ある年出た漫画の中で名作と言われるような作品は限られますから、必然的に会員は同じ漫画を読む機会が増えます。共通認識を強引に作ることで、仲を深めやすくなっているのです。この過程を何年も繰り返すと誰であろうと漫トロに馴染んだ人間になってくるわけです。本当によく出来たサークルだと感心してしまいます。




 さて、ここまで、居場所作りの場としての宗教の事例と並列して漫トロの仕組みを明らかにしていきましたが、大学のサークルには宗教と決定的に違う部分があります。
毎年古い順に会員が卒業していくのです。
こうした団体では、新入生をどのように教育しサークルの運営や慣習を引き継がせていくのかが大問題になります。漫トロはこの課題をどのように対処しようとしているのか、考えてみたいと思います。

 漫トロの活動の根幹は11月発行の秋会誌と3月発行の春会誌です。4月、5月に入トロした新入生には、6月という早い段階から秋会誌に備え、今年出た漫画の中から5作選んでくる*3という課題(プレラン)が課せられます。このために新入生は、本屋で新刊を買ってきたり、漫画喫茶に行ってきたりしなければならず、その過程で“漫画読み”としての行動を習得していくのです。ここで漫画への意識を高めた新入生は、先輩たちに教わりながら、秋会誌が完成する頃には、一人前の漫トロ会員に成長しています。

 秋会誌の発行が終わると新入生の代はいよいよ会の運営を任されます。新生漫トロピーの初仕事は春会誌の制作です。新入生は自分たちが中心になって制作を行う中で、より大変な秋会誌制作のためのノウハウを覚えていきます。漫トロが年2回会誌を作るのは、新入生の教育のためなんですね。漫トロには、将来にわたって常に高い会誌のクオリティを保つための教育システムが整えられているのです。生み出すもののクオリティが高ければ、作るのが大変な分、会員の結束力は強くなるというカラクリです。

 しかし、漫トロの本当のすごさは会誌のクオリティの高さではありません。そのクオリティの高さと自由とが両立しているところがすごいのです。普段の例会では、連絡・決定事項の話が終わると、漫画を読む人もいる一方、ボドゲをやったり、みんな思い思いの行動を取っています。漫画のレビューをする時間が設けられているものの、毎回誰かがやらなければいけないという決まりもありません。あくまで、自主的な行動に委ねられているのです。もちろん、誰かがレビューしなきゃという義務感でする人はいると思いますが、そこには他者からの強制はありません。それでいて、かなりの頻度でレビューをする人がいるのがすごい。漫トロに長くいると会員としての意識が自然と身についていくのでしょう。

 もちろん、会員に義務が課せられるときもあります。プレランと秋会誌・春会誌の制作、アドベントカレンダーです。ここで重要なのは、誰が何をやるかが明確で、それぞれ期限が定められていることです。たとえば、会員が立候補制によって義務を果たすシステムがあったとします。そこでは、すすんで立候補して義務を果たした人と後になってからイヤイヤ義務を果たした人との間で心理的に格差が生まれてしまいます。人は平等さを常に求める生き物ですから、結束力は弱まってしまいますよね。一方、期限が不確定の義務があった場合を考えてみます。例としては、毎週特定の漫画雑誌を読まなければいけない、という規則が挙げられます。義務は終わりが見えるからこそ、やってやろうという気分になることができます。いつ終わるかわからないという思い込みはそれだけで、人のやる気を削いでしまうのです。終わりの見えない義務は必ず心理的な反発を招きます。一週間に一度雑誌を読むなんて簡単な規則ですが、毎週やると思うと気が重くなり、義務を内面化しすぎて、やがて漫画を楽しく読めなくなってしまう人も出るはずです。漫トロで課せられる義務は常に明確で有限です。サークルでの義務の問題を考えるときに明確性・有限性は重要なキーワードなのだと思います。

 漫トロに入って8ヶ月。僕もすっかり漫トロに染まってしまったのを感じています。最近はよくコンビニで立ち読みするようになりましたし、漫画喫茶に行きたい衝動は常に襲ってきます。やはり、人を変えるだけのシステムがこのサークルに備わっているからなんでしょう。そういえば、漫トロ会長としての所信表明をしていませんでした。僕の目標は、しっかり会長としての職務を遂行すること、きちんとした引き継ぎ文書を残すことです。まず、春会誌をしっかりとこなすのも大事ですが、新歓で漫画読みとして優秀な新入生が入ってきやすいような環境整備をしたいですね。自分が漫画読みとして力がないだけに、優秀な新入生が絶対に必要なのだという確信があります。

 ああそうでした。「パーティー」に絡めて文章を書かないといけないんでしたね。ですがよく考えると、英語の"party"には、単に「人の集団」という意味もあります。漫トロピーという集団について考えたこの文こそが、このアドベントカレンダーのトリにふさわしいのではないでしょうか。

 (文:ちろきしん)

*1:京大文学部学生控え室。漫トロ他複数の団体が、活動場所として利用している。

*2:他に締め切りを守る能力などがある

*3:2年目以降は10作。プレランは新入生の教育だけでなく会員同士でどんな漫画がいいのか情報を交換するという役割も大きい。