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京大漫トロピーのブログです

【12/9】紅、流血、即ち・・・

 こんにちは。自分の担当を白だと勘違いしたまま原稿を書いていた男、くさつだ。
もうすぐ12月も中旬に入ろうとしている。北海道に住む友人からの雪の写真や、乾燥のせいで頭を掻いてフケや髪がポロポロ落ちた枕を見て、冬の訪れをひしひしと感じる。
さて、今回のテーマは「紅」。紅といえば流血、ということで紹介するのは『腸よ鼻よ』というエッセイ漫画。
 第一話、物語は沖縄のバーにて作者の島袋全優氏(現在のすがた)の「あたし 大腸が無いの」という衝撃的な告白から過去を回想する形で始まる。そして全優氏(過去のすがた)が登場。漫画家を目指して専門学校に通いながら、学生ローンを支払うためにバイトを何個も掛け持ちするというハードな学生生活を送っていた様子が描かれている。

若者の貧困

そんな生活のさなか、血便が出る。

今回の「紅」要素

  病院へ行き、腸炎と診断され薬を貰うも、全く効果が無い。入院して様子を見るも、全く症状が改善しない。そんな彼女の病状に医者は・・・

フィクションであってくれ

という反応。この第一話は終始この医者の見た目と中身のギャップが凄まじく、それが彼の無能さを一層際立たせている。非常に秀逸なキャラ造形だ。恨みを込めてもっと酷い見た目にすることもできたはずだが、あえてイケメンキャラとして出してくる作者のセンスにただただ脱帽する。

その後の内視鏡検査により、病名が国の指定難病「潰瘍性大腸炎(UC)」であることが判明、これで第一話が終了。つまり、「19歳の苦学生が難病にかかり、ヤブ医者の誤診のせいで治療に効果がないどころか病状が悪化した」という内容になっている。壮絶の一言に尽きる。その後、セカンドオピニオン(10,500円)で専門医に診てもらおうとするも、内視鏡検査が白黒で正確な診断ができず・・・

リアルだとキツイ

最終的には転院してちゃんとした治療を受けるものの、波乱に満ちた闘病生活は続く・・・。

とまぁこんな風に、難病で入退院を繰り返す漫画家の様子がこの漫画で描かれる訳なのだが、一連の流れを見る通り、一歩間違えれば鬱漫画になりかねない内容になっている。しかしこの漫画は、こうした過酷な状況をそのまま描こうとはしない。ギャグとして昇華し、我々に提供する。闘病エッセイとしてはかなり異端な仕上がりだが、コメディの本質とはこんなものかもしれない。

チャップリン

「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」

と言ったように、悲劇は視点を変えれば喜劇になるのだ。

これが沖縄か…

自らの苦痛をも笑いに変えようとする強かさを、この漫画から感じ取れるような気がする。

自分が小学生の時から知っている作家なので、これからも病気に気を付けながら漫画を描き続けてほしい。

【余談】

パロネタも充実

最近『ベルセルク』を読んでパロネタの意味を理解した。