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京大漫トロピーのブログです

【12/2】クリスマスをやっつけろ!(やっつけない)(やり過ごそう)

3回生も後半にさしかかり、人生に「就職」の2文字がちらつき始めた。親、友達、サークル、バイト……どこに行ってもその話ばかりしている気がする。嫌だ。大抵はへらへら笑うか叫ぶかして乗り切っている(?……やり過ごしている)が、断罪の時が刻々と近づいているのは確かだろう。人生のツケを支払うべく、処刑台に足をかける。今年のテーマは「紅白」。俺の担当は白。目障りなエントリーシートは、依然として空白のままだ。


こんにちは、夕陽です!京大漫トロピーが主催する12月を盛り上げる激熱イベント、紅白ファボ・RT合戦の2日目をお知らせするよ!
今日は偶数日なので、テーマは「白」です! というわけで、「白」に合ったいいテーマがないかと頭をひねった結果……なにも思いつきませんでした!

冒頭で白と就職をかけて話をしていたが……それは書いてて段々辛くなってきたので、やめた。せっかくのブログ企画なんですから、明るい話がしたいよね!嫌な「就職」の話じゃなくて、なりたい「目標」の話をしましょう!なにになろうかな?




犬……犬になりたい。




というわけで日々の疲れを癒してくれる犬漫画を紹介するぞ!みんなも獣になってクリスマスをやり過ごそう!

犬姫様二宮ひかる/アフタヌーンコミックス)

ただのポルノ漫画。主人公・健一(以下ケンイチまたはケニチ)が自室のベッドにて彼女とSMプレイに興じていると、毛布の下から見知らぬ全裸の美女が現れる。事態を呑み込めずにいるケンイチをよそに、浮気と勘違いした彼女は激怒し、出て行ってしまう。誤解だー!と三文台詞を吐いた主人公が次にとった行動は、濡れ衣の釈明ではなく謎の美女をリリーフ登用したSMセックス続行であった。

出だしはホンマにただのエロ漫画。いや、出だしだけではない。なんとこの主人公、全6話中にやったことが1回の露出プレイと2回のセックスだけという性豪っぷりである。この3回中に己の人生を顧みて前に進む決意をするわけだ。なめとんのか。

なっとるやろがい!
謎の美女の正体はケンイチ家の飼い犬・ライであった。ケンイチを見るうちに人間の生活にあこがれを抱き、気づけば変身してしまっていたらしい。彼女には振られちゃったけど、新しい従順な嫁が出来たぜ!よし、ハッピーエンドだな。風呂行ってくるわ……とはならないのが、この作品がアフタ漫画であるための最低限のエクスキューズだろう。うまい話にはなんとやら。ある朝ケンイチが洗面所の鏡をのぞくと、なんとそこには犬になった自分の姿が。エネルギー保存の法則に従い、飼い犬の人間化は飼い主の犬化によって贖われるのだった。
入れ替わってる~!?
この漫画最大(最低限)の見どころは後半の告解シーンである。犬にはなりたくねえが、人間でいることの理由を示せない主人公。「誰だって強く望めばなんにでもなれる」というライの言葉は、何者かになることを恐れ、努力を怠ってきた彼の心にブスりと刺さるのだった。 モラトリアムでぬくぬくしながら欲望に従うだけだった毎日。それこそ犬そのものだと吐き捨ててケンイチはむせび泣く。ついでに腰も振る。目に湛えるは懺悔の涙。シモから流るは白い涙。まったく忙しい奴である。
行為前から賢者モードに入っている
若干貶しつつもわざわざこの漫画を紹介してるのは、このシーンが今の自分に刺さるとまでは言わなくてもそれなりに感じ入ることがあったから……。 この漫画では、序列的な関係性というものがひとつのキーポイントとして存在する。ケニチに与えられているスケベパワーは、他者に対して優位に立つための道具として作用しているわけですな。そして、彼にとっては現実の諸問題(将来の選択、ライの人間化、etc.……)を振り切るためのエンジンでもあるんです。

飼い犬・ライが人間になる過程で獲得していくのもこの性のパワー。異性に対する自意識、羞恥心、というふうに段階を経て、最終的に初潮という形で明示されます。 アフタヌーンは初潮を真正面から描く。ジブリはメタファーする。

二人が同じ立場に立つことで仮初のエロエロ主従関係が破壊されます。同時にエンジンも切れて、ケニチの問題が前景化する。ライの変化に戸惑うのは、自分の掌の中だと思っていた存在が解放されていく姿に、自分が社会に合わせて変化していく・させられていくことを重ねて怯えているからなんでしょう。見事や。これはもはや『君の名は。』です。違います。

ほんで先刻の犬と人間の二者択一の話につながんねんな。前者は権利の剥奪。じゃあ後者は現状維持?ノンノン。自分が犬じゃないのなら、立派に人間がしたいなら、変わらなければいけません。受験や恋愛、そして就職…………人間の人生には、変化がイニシエーションとして設定されているのですから。まぢ最悪~~。

さあ、果たして主人公は許されるのか!?それとも犬に成り下がるのか!?真相は君自身の目で確かめろ! 全1巻、アフタヌーンが放つ衝撃の(文字通り)意欲作!




ま、俺なら犬ゥ選びますけどね……なんて軽いことを言える状況ではなくなってきている。コロナで就職氷河期になったってマ?どちらにせよ、高潔なニート精神に乗っかっていれば誰かが救ってくれる、なんてことは無さそうだ。NHKはぶっ壊され(ていないが)、岬ちゃんはそのメサイア思想とともに社会へ消えて行ってしまった。俺は降りしきる雪の中、モラトリアムのかけらを漫画から拾い集めている。死んだようにこの世を生きる犬、そう、ゆうれい犬として_____

京大漫トロピーは、働く新社会人の皆様を応援しています!(会員によります)


おまけ
・『天国への道』 作者:太ったおばさん
https://www.pixiv.net/artworks/58561073

犬と雪で思い出した。Pixivに載ってる無料漫画。最初と最後はロードムービーとして完璧に近いが、途中で人権派のガキんちょが急に〈〈真理〉〉に目覚めるシーンが挟まるので、苦手な人は要注意だ!

ほな、さいなら