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京大漫トロピーのブログです

キングオブコント2021感想

キングオブコント2021が最高だったので感想書きます。敬称略です。まだみていない会員はTVerでみましょう。
tver.jp

蛙亭 ホムンクルス
めっちゃ面白かったですね。個人的に、特にコントでは「いいものを見させてもらったな」という感覚をもらったネタを特に高く評価するようにしているのですが、このネタにはそれを感じました。164から最後「ひろし」呼びにつながるところとか最高でしたね。岩倉が中野の粘液を反射的にふき取り、それに対して中野が「僕があなたでもそうしたと思います」と返す部分など、一つ一つのくだりも面白く、なおかつそれぞれがどういうキャラなのかが一瞬で把握できるようになっていて、終盤の中野無双(展開という意味でも笑えたという意味でも)につながっているのが凄いなと思わされました。ここまで書いて思ったんですけど、秋山や山内の審査コメントをなぞっただけみたいになっていますね。今回は審査コメントがどれも的確で、思ったことを書いただけだと大半が審査コメントと被ると思うので、これからは誰のスタンスに最も僕の感想が近いのかを書いていこうと思います。あと前から思っていましたし、既にそう思っている人も多いんでしょうが、中野ってめっちゃいい演者だなあと。見た目もいいんですが、何より声がいいですね。

好きなくだり:(さっきも書いたのですが)岩倉が中野の粘液を反射的にふき取るところ

ジェラードン 幼馴染
スタンスとしては秋山が一番近いかな。松本に「ハリウッド映画」と評された蛙亭と打って変わって、一昔前のエロゲ・ラノベ原作の深夜アニメ臭が強いネタ。ジェラードンが凄いなと思うのは「ギザなクラスメイトキャラ」だけでも強いのにさらに強いキャラを持って来れるところ。煽りVでも言っていたんですが、大ボケと超大ボケなのがジェラードンの強みだなと思います(小並感)。「海野君の友達第一号立候補しちゃおうかな」や「さいばんちょー、どう思われますか?」からの一連のくだりなど、あまりに臭すぎて今日日どんなアニメでもみないような台詞を持ってくるのもいいし、その台詞のセンスも本当にいい。そうなんだよな、このコメディについてまともに考えたことない奴がとりあえず作品にコメディっぽい要素を加えるために変な台詞を吐かせる感じがいいんだよな。今時こういう台詞を書いてくる漫画があったらランキング上位に入れると思います。まじで僕のランキングに入れたいので漫画化してくれないですかね?

好きなくだり:(さっきも書いたのですが)「さいばんちょー、どう思われますか?」からの一連のくだり

男性ブランコ ボトルメール
一番スタンスが近いのは松本かな。何を面白がるべきネタかはわかるし、そこを面白いとも思えたんですけど、それ以上の感覚はありませんでしたね。そもそも関西弁をいじる系のネタがあんまり好きじゃないかな。あくまで観客を裏切るための要素の一つであって、そこがネタの本質ではないのはわかっているんですが、地域や学部といった属性で人間性を決めつける輩が嫌いなので(この感覚は普遍的なものだと信じたい)。その上で、序盤の、顔で裏切ると見せかけて方言で裏切るのと、終盤の観客に「どうせボトルメール出してそうなおしとやかな女性来るんでしょ」と思わせてからの裏切りは凄いと思います。

好きな台詞:「ボトルメールっちゅうのはあれやね、博打のマッチングアプリやもんね」

うるとらブギーズ 迷子センター
飯塚・小峠に全面的に同意したいですね。訳の分からないことを言っている父親ではなく、それを聞き取って館内に放送する側を主体に笑いを取りにいこうとするのがまず凄いし、どうしても笑いに論理を求めたくなってしまう中で(というかネタって意図して観客を笑わせなければいけないのでどうしても論理で笑わせざるをえない)故意ではないミス、つまり論理ではない笑いをメインに据えようと思えるのが凄い。さらに「故意ではないミス」を故意に、観客に不自然さを悟らせずに、成立させられる演技力も凄いですね。これで7位はちょっときついなあ……。今回の中では空気階段に次ぐくらいには評価できるネタだと個人的に思うんですけどね。

好きなくだり:最初に館内放送するところ(このネタは特に構造そのものが好きなので構造がわかるくだりが一番好きになってしまいます。一つ言っておくと、細かい笑いどころはたくさんあります。構造を楽しむだけのネタではありません。)

ニッポンの社長 バッティングセンター
秋山と松本のスタンスの間くらいかな。良くも悪くもいつものニッポンの社長だなー、といった印象。辻がケツのアドバイスを無視し続けるところは面白いし、映像として魅せるのも流石ですし、溜めて溜めて最後にケツがホームランを連発するのも面白いんですが、「いつものニッポンの社長」以上のものは感じなかったのでなぜ4位になれたのかはよくわからないんですよね。逆に言えば、いつも通りのことをやって4位につけれるニッ社が凄いんでしょうけど。僕がニッ社見慣れ過ぎただけのかなあ。あるいは僕がこのネタの面白ポイントを取りこぼしているのでしょうか。

好きなくだり:オチ

⑥そいつどいつ パック
飯塚のスタンスが一番近いですね。今回の中では一番好きじゃないネタだなあ……。ストーリー性を持たせようとしているのにオチが脅かそうとしてただけ、というのは尻すぼみ感が否めないですね。こういうふうにコントで整合性を持たせるために申し訳程度にストーリー性を持たせるの嫌いなんだよなあ……。パックをコント内で面白く魅せられる、というところから着想を開始したコントだと思うんですけど、それならわざわざストーリー仕立てなんかにせずに、ナンセンスに寄せたほうがよかったんじゃないんですかね。肝心のパックも笑いのための道具にしきれてはいないような気がしてならなったです。「パックで笑わせる」より「パックでできることを魅せる」ことを優先してネタを作っているように僕の目には映りました。うるブギのように「笑いの構造として斬新なことをしている」なら評価したいんですが、そのようには見えなかったですね。最後に一応言っておくと、どんなに僕が酷評してもそれは僕の感性が合わなかったというだけのことなので、自分の好きなネタが多少酷評されても気にしないでください。

好きなくだり:特にないかな…

⑦ニューヨーク 結婚式
秋山に完全に同意ですね。ボケの質が低いとは思わないし面白いとは思うんですが、なんか普通過ぎるんだよなあ……。とはいっても、去年の「結婚式の余興」同様、1STステージを万人受けするネタで突破しよう、という戦略は理解できますし、実際去年はそれが見事にはまったのでそれを今年も行おうという発想になるのもわかります。ただ去年とは審査傾向が大きく変わったのが運の尽きだなあ……。M-1でもKOCでも実績は残しているので、今回最下位になったところで面白くない芸人の烙印を押されることはないでしょうが、ニューヨークの毒の強いコントが好きな時分としては「こんなこと言われるならあのネタやこのネタをやってほしかったなあ…」と思わざるをえません。もどかしいですね。あとしばしば持ち上げられているニューヨークの平場ですが、去年のM-1と今年のKOCに関しては正直面白くないと思います。

好きなくだり:「BTSは、韓国のアイドル」「それは知ってるわ!」(これが一番好きなくだりになってしまう時点でコントではないんでしょうね)

追記:これをみて「ニューヨークのコントって面白いな」って思ってほしいです
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⑧ザ・マミィ 変質者
山内の意見が一番近いかな。最後ミュージカル調で終わるのめっちゃいいっすね。あと飯塚の言う通り、ヤバい人のヤバさを笑うネタが多い中で、ヤバい人に絡む人のヤバさに目をつけるのは慧眼ですね。審査コメントとほぼ同じ感想を抱いたので、もう書きません。

好きな台詞:「お前らが俺を避けてんじゃねーぞ、俺がお前らを避けてるんだよ!」(一番こういうヤバい人がいいそう感があって好きです)

空気階段 火事
圧巻でしたね。山内の言う通り、映画を1本観たかのような満足感がありました。褒めるところなんてありすぎてどれを挙げればいいかわからないくらいですね。全てがよかった、完璧なネタでしたね。このネタを見終えた段階で今年の優勝を確信させてくれました。

好きな台詞:「俺はこのくらいの熱さ、慣れっこなんだよ!」みたいなSMとかっこいい台詞テンプレをかけた台詞全部

マヂカルラブリー こっくりさん
吊り革やん、というのが万人の感想でしょう。僕もそうです。これ好きか嫌いか聞かれれば好きですし面白いんですけど、もっと違った角度のネタ持ってこれただろうしそっちを見たかった、というのが本音ですね。あと山内の言う通り、凄さが先に入ってしまった感は否めないですね。野田がこういう笑いの取り方をするのはもう知れ渡ってしまったのと、そもそもパントマイムがうますぎて感心が先に来てしまうのはわかります。

好きなくだり:野田が10円玉になるところ

男性ブランコ レジ袋を買わなかった男の末路
完全に意見が合う審査員はいませんでした。1本目よりこちらのほうが好きなのですが、審査員の得点はこちらのほうが低かったですね。まず「レジ袋をケチった男」という設定が面白い。映像的にも楽しめたし、「レジ袋をケチった男」の放つワードセンスも全体的にかなりよかったし、そういった部分、つまりは「レジ袋をケチった男」そのものを楽しむネタだと思ってみたので、各審査員がいうほど劇的な展開がない点については気にならなかったですね。うーん、このネタを「いい」と思えただけに、何度考えても、審査コメントを見る限りどの審査員も完璧にはまってないのが納得いかないなあ。

好きな台詞:「大の袋は5円じゃない」

⑫ザ・マミィ ドラマ
山内・秋山の言った通りですかね。まずオチが好きじゃない。読めた、というのはもちろんそうなんですが、即興で起きたこと、という設定なのにボイレコ使うのは不自然だなあと。もっといいオチがあったんじゃなかなとは思います。それと、ドラマ(というより池井戸ドラマか)あるあるの切り口も真っ先に思い浮かぶようなのばかりでしたし、何よりこういう発想ってどんな芸人でも一度は考え付くと思うんですよ。実際ドラマあるあるの天丼ネタって有名コント師なら一つは持っていますし。ドラマあるあるをネタに組み込むなら空気階段の1本目や去年のニューヨークの2本目みたいなドラマそのものをネタにするほうが個人的には好みかなあ。正直にいって、もっと独自性に富んだネタが見たかったです。

好きなくだり:特にないかな…

空気階段 メガトンパンチマン
1本目が完璧でしたが、これも相当面白いネタでしたね。こっち先でも最終3組には残っていた気がします。下手したらこっちでも1st一位通過だった気もしますね。まず「コンセプトカフェ」という設定が素晴らしい。いくらでも面白くできそうな題材ですが、そういえば誰も手をつけていませんでしたね。それと、1本目も、去年の1本目もそうなんですが、空気階段は2つの要素を掛け合わせるのが本当に巧いなと。去年の「霊媒師」だと霊×電話、1本目だと火事×SM、今回だとコンセプトカフェ自体がそもそも2つの要素を掛け合わせた題材で、こういう話の組み立て方をする作家って多いと思うんですけど、数多いるそういった作家の中でも特に空気階段は設定の選び方が巧いなと思います。ガロン関連の設定も、「車輪も含めて足」という設定を頑なに貫くところも、豆にこだわっているなどの現実的な要素も、それ単体で面白いんですが、「この世界観なら確かにそうなるだろうな」という納得感もあってよかったですね。笑いって納得の笑いと逸脱の笑いに分けられるらしいんですけど、逸脱した設定で納得の笑い重ねるの大好きなんですよ。バラシも何重にも渡って敷かれており、普通は1個で満足してしまいそうなところで満足しない空気階段の本気度がうかがえました。一見突飛ですが、こちらも隙の無いよく練られたネタでした。今年の優勝は必然でしょうね。

好きなくだり:コーヒー豆にこだわりをみせるところ

以上です。興奮冷めやらぬまま勢いで書きました。たぶん誤字脱字がめっちゃあるでしょうが我慢して読んでください(といってもここに到達した奴は我慢して読んでるか)。書いてて気づいたんですけど、僕は「驚かせたかった」とか「○○のふりをしていた」みたいな、ネタの中に演技が入って、しかもそこに必然性のないネタが嫌いですね。僕は基本的にコントを一つの作品としてみているので、先ほど言ったようなのは一見ストーリーを持たせているようでいてその実放棄しているように見えて冷めるんですよね。僕の中では夢落ちと同じカテゴリです。逆に、コント内のキャラクターの人生を覗きたくなるネタには高評価する傾向にあるなと。今回で言うと男性ブランコの2本目と空気階段の2本目でしょうか。やっぱり漫画好きなんで、キャラクターの魅力を感じたネタには高評価せざるを得ません。
1stステージのネタ10組で好きなのを3つ挙げるなら蛙亭・うるブギ・空気階段ですね。2ndステージの3組でいえば、一番は空気階段ですね。蛙亭とうるブギに上がってほしかったですが、彼らが2ndステージでどんなネタをやろうと空気階段の優勝は変わらないでしょう。単独ライブを一番見に行きたいと思わせてくれたのは男性ブランコですね。10/2の19:00~22:00における今年の運営に対して特に文句はありませんが、欲を言えば全組2ネタやらせてくれないですかね?ニューヨークとマヂラブがあのまま不完全燃焼で終わるのが残念なんですよ。