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京大漫トロピーのブログです

【12/19】いくつになってもプレゼントは欲しい

三回生のきゃべるです。中学一年生まで本気でサンタクロースを信じていた人間には悲しい季節になりました。正直何も知らない小学生時代よりも金のありがたみを知った大学生の今こそ白ひげのボランティアに来てほしいです。

今年のテーマは「プレゼント」。
プレゼントは名詞なので視覚的にわかりやすいテーマですが、いざ漫画のストーリーとなると表現が難しいテーマだと思います。けれど今まで一度だけ、シナリオの積み上げの末に訪れたたったの1ページに対して、何より得難い「贈り物」だと感じた漫画があるのです。

それが今回紹介したい竹良実デビュー作『辺獄のシュヴェスタ』です。

舞台は15世紀のドイツ、魔女狩りに母親を殺された主人公エラが首謀者であるエーデルガルドに復讐を誓う話です。エラの意志の強さと賢さの力強い表現こそ、最も見てほしいおススメポイントです。

薬物も体罰も横行する劣悪な環境の中でいちばんの強敵は『己自身の復讐心がすり減っていくこと』です。復讐なんかに人生を費やすよりも、それを実行するだけの労力で幸せに生きればいいじゃないか。誰もが考えるこの意見を、こともあろうかこの話では復讐対象が展開してきます。復讐されるのを防ぐためにあえて幸せな道を示してくるのです。酷い話です。

きっと、二話で決心した時点でエラ・コルヴィッツの復讐は必ず成されると決定されていたのでしょう。けれどその他の結末は3年間の雌伏の日々で彼女が自ら選んだ生き方が呼び込んだものです。復讐対象である教会と同じように、目的のために小さな命は見捨てる生き方をしていれば、もっと早期に、早く決着をつけられたかもしれない。それでもあの結末に至ったのは彼女が決して良心を捨てないことを自らに課していたからです。

復讐をテーマとした物語は多く、復讐を止めるか否かの議論も使い古されてきました。昨今では机上で語られがちな復讐を軽い説得で止める展開を紙面上で見つけることは難しいくらいです。そんな飽和したテーマをメインに据え、どこまでも誠実に描き続けていくスタンスは本当にすごいと思います。

エラ・コルヴィッツが戦い続けた三年間への『報酬/贈り物』の象徴するシーンは一目見れば明らかです。どうかそのページまでたどり着き、彼女の選んだ道を見届けてほしいと思います。