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京大漫トロピーのブログです

【12/13】怒らない人

男子大学院生の、ハルアキです。
漫トロの例会後は、メンバー内でマジック(カードゲーム)をやるのが好きです。
あんまり勝ててないですが…
そのマジックを初めてやったのは小学生のころです。
当時はルールがよく分からなかったのですが、イラストとか文章がかっこよくて集めていました。
あれはなかなか複雑ですね…
今になってみると、あのゲームのよさがもっと分かります。
プレイヤーは魔法使い、という設定が作りこまれていて、時間を忘れて没頭してしまいます。
そういえば、男性が恋愛相手が居ないままだと魔法使いになるなどと聞きます。
それをカードの能力にするなら、「あなたのクリスマス・ステップの開始時に恋愛相手1人と性交する。できない場合、あなたはウィザードに変身する。」……

っと、それは置いておきましょう。
小学生のころにはまったものというと、他には藤子・F・不二雄マンガがあります。
あの「すこしふしぎ」な物語を読んでワクワクしていた少年時代…
最高のプレゼントを日々もらっていたんですね。
あれも、年月を経て読み返すと新たな楽しみポイントを見つけます。
作品のテーマやキャラの性質、シュールギャグなどの面で。
小学生のころは、「SMクラブ」という言葉の意味は知りませんでしたよ…(『パラレル同窓会』参照)

藤子・F・不二雄は生命や文明、自然環境などの広範なテーマを描いてきました。
その中で、今から紹介する作品は宗教を強く感じさせると思います。

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この『ボノム=底ぬけさん=』という作品は藤子・F・不二雄マンガの中ではSF・異色短編というジャンルに入ります。
藤子・F・不二雄は一話完結の短編を数多描いていて、さっきの『パラレル同窓会』もそういった作品の一つです。
『ボノム=底ぬけさん=』で紹介されている考え方はまるで宗教で、かつけっこう極端なものです。

主人公は、仁吉(ひとよし)さんという並はずれておっとりして親切な性格の中年サラリーマンです。
作者がよくつける、無造作とも言うべきそのまんまな名前です。
ドラえもん』の野比のび太なんかその代表ですよね。

ときに、みなさんは最近、めちゃくちゃ怒ったことってありますか?
非常識な人、聞き分けの無い人、怒りたくなる相手はたまには出てくるはずです。
その点、仁吉さんは凄い人です。
一切怒りません。

その仁吉さんが会社の後輩と一緒に屋台で一杯やるという話です。

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左が仁吉さん、右が後輩です。
顔がもう明らかにお人好しですよね。
飲んでる最中の後輩の話の中で、仁吉さんの聖人エピソードが紹介されていきます。

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彼ら、仁吉さんを完全になめきってますよね。

短気な性格の後輩は、それで平然としている仁吉さんを歯がゆく思います。
そこに娼婦が客引きにやってきて…、と話が進展していきます。

話の後半で、仁吉さんは語りだします。
(注)以下、重大なネタバレを含みます。
















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人間の行動や性格は、周りの環境と親から受け継いだ遺伝子によって決められるものだ、という話です。
そして、人間というのはそれらに操られた人形であるのだから、そんな人形のやることに怒ることはできない、と仁吉さんは続けます。
自分を含め人間を矮小な存在とみなし全てを赦すべきだ、という考えは宗教でよくある考えだと思います。
この仁吉さんはそれを普段の生活で貫いていて、ある種の畏怖さえ感じさせられます。

僕の彼女事情も環境と遺伝子が決めることであって、それはまるでプレイヤーに操作されている恋愛ゲーの主人公のようなものなのかも知れません……

この作品は、以下の藤子・F・不二雄大全集に収録されています。

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1

価格は1500円+税で、「ボノム」含め17作の短編が読めます。
なお、表紙のイラストは『ミノタウロスの皿』という別の短編のもので、SF短編の中で特に有名な作品です。
他も粒ぞろいなので、ぜひ読んでみてください。
ワクワクしてくると思いますよ。

それでは、いいクリスマスや新年を迎えられますように……