【12/02】神と和解せよ
初日から怪文書流してハードルあげまくるとか勘弁してや。推敲しまくってたら更新が翌日にずれ込んでもうたやんけ(言い訳)。
先日後輩から「先輩、黒鷺さんのことけっこう好きですよね」って言われた。鋭いね。大好きやで。黒鷺が会長になってくれて本当に良かった! 黒鷺が漫トロに来てくれて本当に良かった!! 黒鷺が京都大学に来てくれて本当に良かった!!!!
今日紹介する漫画は西島大介の『I Care Because You Do』です。ちょうど黒鷺も電球も音楽の話してたし、電球の記事の中にAphex Twinが出てきてるしな。
- 作者: 西島大介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/01/23
- メディア: コミック
- クリック: 20回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
神の裏切りと和解
『I Care Because You Do』を一言で表すなら、神の裏切りと和解。
やっぱクリスマスってのは神さまを信じる機会でありたいわけで、クリスマスに読みたくありませんね(こじつけ)。和解してるから普通に「読みたい漫画」でも通る。
舞台は90年代終わり、オウムの地下鉄サリン事件があったあたり。主人公はAphex Twin好き、エヴァ好き、X JAPAN好きの3人。3人にとってそれぞれは「神」といえる存在です。
ちなみにタイトルの『I Care Because You Do』は同名のAphex Twinのアルバムから。僕はテクノはわかりませんが、一通り聴いてみて、無機質な音がこんなになるんだ、へえすげえ、と思いました(小学生並みの感想)。
- アーティスト: Aphex Twin
- 出版社/メーカー: Rhino / Wea
- 発売日: 1995/04/21
- メディア: CD
- 購入: 2人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (31件) を見る
物語は彰晃マーチを誰かが口ずさむ中、主人公それぞれの「神」との出会いの場面から始まります。
身もふたもない解説
「神の裏切りと神との和解」における「神」とは宗教的絶対神ではなく、コンテンツであることにミソがあります。言うまでもなく「裏切り」とは自分の信じていた(=あってほしいと自分勝手に思っていた)像から「神」が離れていったに過ぎず、つまるところは自分の独りよがりが裏切られただけなのです。
そこに主人公らは区切りをつけ、「神」と和解します。その和解の過程にこそ、この作品のおもしろさはあります。
たとえば、エヴァに関して言えば、テレビアニメシリーズで物語は全て完結しており、旧劇場版はテレビアニメシリーズをダメにする蛇足であるというコアなファンがいます(僕にはよく理解できませんが)。エヴァ好きの主人公はそのタイプのファンであり、旧劇場版の発表に大変憤慨します。これが「神」の裏切り。
時代は流れ流れて現代、新劇場版が公開されます。そのとき主人公は「神」であったエヴァとの距離感をつかんでおり、静かな気持ちでその公開を迎えます。これが「神」との和解。
(Aphex Twinの話とかX JAPANの話はよく知らんので電球か誰か解説してくれ)
そういった時代を生きてきた西島大介はその辺の話を表現面ではスカスカにもかかわらず説得力ある形で提示します。
この漫画を読んだのはエヴァをテレビアニメシリーズ・旧劇場版・新劇場版と立て続けに見た直後、Wikipediaとかで当時の反応とかも少し見ていたので、なるほどなあと思いながら読めました。クリスマスが暇で暇でしょうがないという人は、エヴァを片っ端から全部見て(言うまでもなく、それに値する作品だと思います)、オマケとして『I Care Because You Do』を読んでみるといいかもしれません。
西島大介先生について
この作品の評価できるもう一つの点として、西島大介があまり斜に構えず、アツくなっていることがうかがえる希有な漫画であることが挙げられます。
先ほども述べたとおり、西島大介自身はこの漫画の舞台をAphex Twin・X JAPAN・エヴァと共に生きてきています。つまり、主人公3人は、西島大介本人の投影なのです。
西島大介がディスられるポイントとしては、スカスカの漫画表現と斜に構えた姿勢のいけすかなさ、つまりは糞サブカルの権化であるということが挙げられます。前者はこの作品でも健在であり、この作品がディスられる主要なポイントとなっています。しかし、後者に関しては、やはり西島大介が自身の体験を語っていることもあり、あまり感じられない作品に仕上がっています。西島大介について何か物思うことが(ポジティブにせよ、ネガティブにせよ)ある方には、一読の価値ある漫画だといえましょう。
まあ、その後の作品群を見るに、どうやらそれはもう見れる機会がなさそうな気がします。残念ですね。西島大介ホンマいい加減にせえよ。
- 作者: 西島大介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/11/21
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (7件) を見る
Young,Alive,in Love 1 (ヤングジャンプコミックス)
- 作者: 西島大介
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/10/10
- メディア: コミック
- クリック: 15回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
ところで、最近自分の人生が停滞していない。——むすびに代えて
幼稚園児の頃からLC 520(右図)を触り、『トイ・ストーリー』のアンディと一緒におもちゃたちと遊び、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチ*1を自分の人生の指針としながら高校生活を送り、『トイ・ストーリー3』のアンディと一緒に大学生になった私にとって、Appleは私にとっての「神」です。
しかし、「神」は死んでしまいました。
スティーブ・ジョブズの死後のAppleには本当に失望しています。iOS7のフラットデザインなどは最たる例でしょう。今までの質感あるデザインは、遊び心だけではなく、直感的な使いやすさを指向したものではなかったか。Appleの商品は、仕事をこなすためではなく、世界を変えるために生きる人たちの強力なツールではなかったのか。*2
おそらくこれも、『I Care Because You Do』の主人公たちの感じた「裏切り」と同質のものであり、僕の独りよがりでしかないのだと思います。そのことはまだ僕には全く腑に落ちませんが、『I Care Because You Do』を読みながらAppleと和解できる日を待っています。
(ふわ)