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京大漫トロピーのブログです

「藤野」「京本」=「藤本」論で読み解く『ルックバック』

(著:みかんばこ)
ジャンプの無料マンガアプリ「少年ジャンプ+」で「ルックバック」を読んでます! #ジャンププラス https://shonenjumpplus.com/red/content/SHSA_JP02PLUS00020183_57

さて、『ルックバック』です。藤本タツキ久々の読切です。読切のくせ146pです。146pも描いたからには、どうしても146pで表現したいことがあったんだろうと考えるのが妥当です。きっとそれは一つではなくて、一本の論理的な筋道に沿って語れるようなモンでもないんでしょう。でもやっぱり内部に芯として通っている骨格じみたテーマは存在して、俺はそれが巷でも囁かれてる「藤野」「京本」=「藤本」論なのではないのかと、思ってならないのです。以下はその論拠を示していきたいと思います。ちなみにガッツリネタバレします。

まあ下品なほどわかりやすいですね。「藤野」はタツキ先生の漫画家としての人格の投影です。学級新聞で4コマ漫画を連載し、周りからその(小学生にしては)高いクオリティに評価を受けています。実際作中で出てくる藤野の4コマ、面白いんだよ。明らかに面白い漫画を作るセンスに溢れている。だけど、絵は稚拙なんです。
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この「絵が稚拙」というのは、京本がいない環境下で藤野は大して漫画に対して真剣ではないということです。天才的なセンスを持ちながら、彼女にはまだ漫画を描く理由がない。

彼女に漫画を描く理由を与える存在、それが「京本」です。京本が藤野に提供したものは主に2つ。「読者」と「理想」です。そしてそのどちらも、藤本タツキ自身が内部に抱えているものだった。先にあったのは「理想」としての京本です。同じ小学四年生で抜群に絵がうまい女の子がいる。藤野はそいつに追い付くために必死に絵の練習をするんだけど、そいつの描く緻密で繊細な絵はどうにも描けない。ある時ふと気付く。「ああ、こりゃ敵わねーや」と。そうして藤野は筆を置いてしまうわけです。だけどその後、京本は自分の熱烈なファン(=藤野の作家性の理解者)であり、自分が絵を描き始めたのも藤野がいたからだ、ということを告げられる。その言葉を受けて藤野は、再び漫画を描く決意をする……。
京本の絵が「こんな絵が描きたい」という「理想」であったと解釈すると、藤野が筆を置き、再び取るまでの過程が驚くほどするすると頭に入ってくる。「自分の理想」を、最初は自分の敵だと錯覚してしまうわけですね。俺から作家性を、意味を奪うものだ!と。しかしある時、それは自分の内部から漏れ出たものであったと理解するんです。俺の作品を心から面白いと思っているもう一人の「俺」がいて、そいつが俺に理想を与えてくる。ならば俺は、その「俺」に応えなければならない。俺は「俺」のために漫画を描くんだ!と……。タツキ先生はこの叫びを、自分から「京本」という存在を分離させて描くことでわかりやすく示したのです。

藤野と京本は中学生になり、二人で沢山読切漫画を描きます。この「二人」というものが重要です。藤本タツキは、研鑽の末「自分の理想」である京本を自分のものにしつつあった。自分の理想に応えているんです。物語の中で、彼女たちが最も幸福なのはこの期間です。つまり、(あくまでこの作品中では)自身の理想を正しく成就させているときが、何よりの美徳であった、という一本のテーマがまず見えてくるわけです。だからこそ、クライマックスでこの作品はそれを壊します。
藤野キョウはついに連載を勝ち取ります。しかし、自由に描いて自由に載せることができた読切と違い、週刊連載で絵に拘っている暇はありません。絵を描きたい京本は、美大へ進学してしまいます。京本が得意とした背景作画は「藤野」「京本」でない別の人間に頼らねばなりません。作家性を保ちつつ、絵を極めるという彼女の「理想」を、殺さねばならないときが来たのです。そしてその喪失は心の準備なんてものを待たず、通り魔のごとく唐突にやってくるのです。これが、作中あまりに唐突な「京本」の死の理由です。
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京本は、「理想」は、漫画を描く原動力でした。あんな表現がしたい、こんなことを試してみたい。そういったものを失い、漫画を描く意味というものがわからなくなり、藤野キョウは長期休載に入ります。
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ここらの藤野のモノローグは一見分かりづらいけど、これまでの話を踏まえて読むと驚くほど単純な感情表現であるとわかります。
間に挟まれるifは、(妄想かパラレルかという議論はどうでもよくて)「京本」が生きて漫画の連載を始める=理想を体現したのちに漫画の連載を始めていれば、私の理想を殺さなくても良かったのでは? という反省を、そのまま都合の良いifとして反映しているものなのです。
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しかし、先に話したとおり、京本が藤野に与えたものは「理想」だけではありませんでした。「読者」として藤野の作品を見ていた京本、すなわち「俺の作品」を楽しむ「俺」という存在は、消えていないのです。藤野は、京本が藤野の4コマを模した描いた漫画を読んで、京本の背中に書かれた自分のサインを見て、それに気付きます。
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それは、俺の作品を読んでくれる京本のために、俺の作品を読んでくれる「俺」のために描くんだ。これは藤本タツキ自身の宣言でもあります。死んだと思っていた、だが確かに自分の中に残っていたモノに再び語りかけるのであります。

理想に押し潰される苦悩、どこかで理想を手放さねばならない苦悩、それでも表現せずにはいられない。これは、そんな創作者としての在り方が詰まった作品なのであります。「理想」の背中を追うだけでなく、俺の中の「読者」が、俺の背中を見ている。そういうものに俺は突き動かされている。そんなことに気付けたら……。これが、「ルックバック」というタイトルに込められた意味なのではないかと、そう思うのであります。

あらすじ割り振りDX計画

会誌制作もDXしたあああああい!!

ということで1353です。突然ですが新入生の皆さんは弊サークルがどんな活動をしているかご存知でしょうか?
麻雀?ボドゲ」まあ9割くらいそうですが(コロナで今はそれらも難しい)、実はちゃんとした活動もしています。それが会誌製作です。
漫トロの会誌は年2回発行(昨年は1回)していて、特に秋の会誌はその年の漫画ランキングをはじめとして非常にボリューミーな内容になっています。しかし、濃い内容に比例するように非常に会誌製作に手間がかかっているのも事実です。

具体的なタスクとして、

  • その年の漫画ランキングの提出
  • 締め切りに遅れた人への催促
  • クロスレビューの原稿提出
  • 締め切りを守らない人への催促
  • 座談会
  • 座談会文字起こし
  • 締め切りを破るどうしようもない人にパンチする
  • 原稿をフォーマットに流し込む
  • 印刷所との調整
  • 校正作業
  • この後に及んで締め切りを破るクズを処刑する
  • 折り作業 etc

ざっと挙げただけでもこれだけあります(実際はもっと多い)。年々会員の負担が増えてきているのも事実で、できることなら製作の工数を削減したいですよね。
前置きが長くなりましたが、
「タスクの一部をDXして工数を削減しよう!」
というのが今回の記事の趣旨になります。

あらすじ割り当て業務をDXする

今回DXするタスクは、あらすじの担当者の割り当て作業になります。私たちの会誌ではランキングの上位30位の漫画に対して、あらすじを載せます(下図参照)。

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シチョウくんも過去の記事で会誌のあらすじに触れていましたね。
mantropy.hatenablog.com

基本的に各漫画を高く評価している人がその漫画のあらすじを書きますが、どの作品にどの会員を割り当てるかは運営代が決めます。ただでさえ他の仕事で忙しい運営代の負担を減らすために、最適化の手法を用いて運営代の意思決定を支援します!

漫トロのランキングシステム

最適化の解説を行う前に、漫トロのランキングシステムについて簡単に説明します。まず各会員がその年に面白かった漫画を1~30位までランク付けします。順位の高さによって得点がつけられ、1位:30点、2位:29点、……30位:1点という形になります。例えば『対ありでした。 〜お嬢様は格闘ゲームなんてしない〜』は僕の個人ランキングで2位になっているので、この作品に29点加算されることになります。

これを全ての会員に行い得点を集計したものが、総合ランキングになります。会誌ネタバレを防ぐため、この記事では極力総合ランキングの内容には触れませんが、興味のある人は是非会誌を買ってください。twitterとかにDMを送ってね❤️

最適化する

話を戻して最適化について解説します。
最適化は大きく分けて下の3つのステップからなります。

  1. 決定変数を決める
  2. 目的関数を決める
  3. 制約条件を決める

ぶっちゃけ上の3つが決まればあとはソルバーがなんとかしてくれます。便利な時代ですね。それでは各ステップを見ていきましょう。

決定変数を決める

決定変数とは文字通り、最適化の過程において最終的に解を求める変数になります。
今回の問題で欲しいのは、「どの会員がどの作品のあらすじを担当するか」ということですよね。
その解を得るためにちょっと複雑ですが、i番目の会員がj番目の漫画のあらすじを担当するか否かを示す0 or1の変数を導入します(0:担当しない, 1:担当する)。
 x_{i, j} : i番目の会員がj番目の作品のあらすじを書くか否か


目的関数を決める

前述の通りなるべく作品に思い入れがある人にあらすじを書いて欲しいですよね。そこで目的関数を設定するにあたって、どの漫画をどれだけ評価しているかを示す重み行列を導入します。仰々しい表現ですが要は各会員が総合ランキング30位以内の漫画をどれだけ評価しているかということです。

 w_{i, j} : i番目の会員がj番目の作品にどれだけ得点を入れたか


そうすると目的関数は以下のように書けます。
maximize \displaystyle \sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^m x_{i_j} w_{i_j}
nは会員数, mは作品数(今回は30)

制約条件を決める

最後に制約条件を決めましょう。条件として考えられるのは以下の二つです。

  1. 一人あたりの担当作品数がなるべく均等になるようにする
  2. 各作品ごとにあらすじ担当者が必ず一人割り振られるようにする

1人あたりの担当作品数の上限値と下限値を設定すると1の条件式は以下の通りになります。


全てのiに対して
最低担当作品数  \leq  \displaystyle \sum_{j=1}^m x_{i_j}
最高担当作品数  \geq  \displaystyle \sum_{j=1}^m x_{i_j}


続いて2つ目の条件式は各作品に対して一人の担当者を割り振るので

全てのjに対して
  \displaystyle \sum_{i=1}^n x_{i_j} =1


これで必要な式は全て出揃いました。

実装する

これをpythonで実装していきます。まず重み行列の作成ですが、レニが毎年ランキングデータをまとめてくれているので、この情報を用います。ですが人が作ったデータを勝手に記事にするのもあれなので、重み行列の作成については割愛します。
最適化はpythonpulpパッケージを用いて行います。関数はこんな感じ、

~
import numpy as np
import pandas as pd
import pulp as pp


def synopsis_distributer(weight_array, model_name, member_array, comic_array, output_file_path):
    #会員の人数、あらすじを書く漫画の作品数を取得する
    member_num, comic_num = weight_array.shape

    #一人あたり最低あらすじ数
    synopsis_pp_min = comic_num // member_num
    #一人あたり最高あらすじ数
    synopsis_pp_max = synopsis_pp_min + 1
    #均等にあらすじ担当が割り切れる時
    if comic_num % member_num == 0:
      synopsis_pp_max = synopsis_pp_min

    #問題を定義する,今回は最大値問題を設定する
    model = pp.LpProblem(name=model_name, sense=pp.LpMaximize)

    #決定変数を定義する
    x = pp.LpVariable.dicts("x", [(i, j) for i in range(member_num) for j in range(comic_num)], cat="Binary")
    
    #目的関数
    model += pp.lpSum(x[(i, j)] * weight_array[i][j] for i in range(member_num) for j in range(comic_num))

    #制約条件
    #第一条件
    for i in range(member_num):
        model += pp.lpSum(x[(i, j)] for j in range(comic_num)) >= synopsis_pp_min
        model += pp.lpSum(x[(i, j)] for j in range(comic_num)) <= synopsis_pp_max

    #第二条件
    for j in range(comic_num):
      model += pp.lpSum(x[(i, j)] for i in range(member_num)) == 1

    #モデルを解く
    model.resolve()

    #最適化された配列を作成する
    best_array = np.zeros(weight_array.shape)
    for i in range(member_num):
      for j in range(comic_num):
        best_array[i][j] = x[(i, j)].value()
    #結果をデータフレームに格納する
    best_synopsis_distribution = pd.DataFrame(best_array, index=member_array, columns=comic_array)
    #結果をcsvで保存する
    best_synopsis_distribution.to_csv(output_file_path)
    return best_synopsis_distribution


~

結果

スクリプトを実行すると下の写真のように各会員のあらすじ担当作品が出力されます。

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本来はヘッダーに漫画タイトルが存在しますが、会誌のネタバレ防止のため黒塗りしています

出力結果において僕のあらすじの担当作品は「対あり」と『往生際の意味を知れ!』となっています。

これらは僕の個人ランキングにおいて2位と3位の作品であり、この結果からおそらく最適なあらすじ担当の組み合わせが出力されていると考えられます。やったね!!

最後に

これにてあらすじ割り振り業務のDXが完了しました。もう運営代が頭を悩ますことはなくなるので、ちょっとだけ業務が楽になりますね。普段老害と呼ばれているので、たまには益になることができて良かった。

ちなみにですが、ちゃんと担当を割り振ったところで何人かは締め切りをぶっちして代筆が立てられるので、最適化しても正直インパクトは薄いです。というか会誌製作の業務が大変な理由の半分くらいは会員が締め切りを守らないこと。DXとかビッグデータ活用とかの現場ってこんな状況ばっかりなんでしょうね、悲しいなあ。なのでタスクを軽くしたいなら締め切りを破る奴を減らすのが一番手っ取り早いです。ということで、
みんな締め切りは守ろうね!!

新歓毎日投稿企画【4/28】春が終わる

146Bです。

昨日の記事でラマくんにすごい期待をかけられてますね。同期怖い。

https://pbs.twimg.com/media/EqJ0nBeU8AADwu8?format=jpg&name=medium


さて今日は6月に発売される単行本の話をしようと思います。



社交ダンス部の所属する春間ききは学内行事である「カドリール」という憧れの舞台に特別なペアの「パートナー(女役)」として出場したいんですが、体格的に「リーダー(男役)」という役柄を当てはめられているんです。もちろんどうしようもない理由なので諦めるしかない。そんな彼女は誰も見てないからと階段の踊り場で「パートナー」の振りをして踊るんでいたところ、新入部生である鳥羽見みちるに見られ「私のパートナーになってくれませんか」と言いよられる。鳥羽見みちるは作品内でよく「人形」のようだと形容される美少女でどちらかというと「パートナー」向きなんですが「リーダー」しかやりたくないと言うんですね。それは似合わないことをして傷つくくらいならしないほうが良いと思うききとは対照的であり、羨むものでもあったんです。

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本作のテーマとして「コンプレックス」があるのですが、劣等感や愛情と訳されるようなものでなく原義通りの複雑な感情という感じなんです。憧れていて近づけない。なれないけどなりたい。近づけそうな時に離れたくなってしまう。

上のみちるのプロポーズのような言葉も、似合わないからと否定するんですよ。引きうければいいのに。

私が好きなのはそういったコンプレックスもそうですし、それに負けたり抗ったりするききが好きで、一緒に立ち向かうみちるが好きだからです。みちるが王子様のようであり、ききがお姫様のように映るのがドラマチックなんですね。

5話でみちるが似合わないと断わろうとするききを憧れの舞台の会場である大講堂で説得するのとか用意されているものとして完璧。
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まとめに入ります。

『踊り場にスカートが鳴る』はコンプレックス×社交ダンス×百合の漫画、とても綺麗な絵柄で、自身の感情と戦いながらなりたい自分になろうとする登場人物の感情が美しい作品です。

さて今日で「春」がテーマの京大漫トロピーの新歓毎日投稿企画も終わりです(現状出ていない日もありますが……)。明日から大型連休に入りますし、もう春が終わってしまいそうな時期になりました。

ところで今回この漫画を紹介したのは5話のサブタイトルが「春が終わる」だからなんですね。

雑なタイトル回収をしてしまった。

まあ、様々な漫画が今回の企画で紹介されたわけですし、そういった漫画を読んで連休を過ごすのもいいと思います。

私としては『踊り場にスカートが鳴る』をみんな読んで買ってなって思います。お疲れさまでした。

新歓毎日投稿企画【4/27】ワンワン!ワンワン!がるるるる…

どうも、2回目の登場のラマです。自分で決めたこととはいえ、ひと月に二回も書くのはクソ面倒くさいですね(当たり前)。前回宣言した通り、今回は考察(笑)ではなく適当に書いていこうと思います。しかしながら春というテーマに忠実に従うと何も書けなさそうだったので、春は出会いの季節!というわけで人と出会う漫画についてダラダラ書いていきます。

え、どんな漫画でも誰かと誰かが出会うのは当たり前だろって?



…何の話ですか?(すっとぼけ)

Amazonリンク

さて気を取り直して、今回紹介するのは米代恭の『僕は犬』という作品。春会誌のクロスレビューで某46Bの推薦漫画ということで同作者の『あげくの果てのカノン』を読んだのだが、これがまあ面白かった。(具体的な内容は1〇6Bに聞こう!)というわけで同作者の作品に注目してはいたのだが、まあ探すのは面倒なわけで特に調べるわけでもなく過ごしていたのだが、ある日高野の古本市場に行くと、店頭の安物セール(1冊80円くらいで買える)の中に「米代恭」の文字があるではないか!

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どこにあるかわかるかな?

運命の出会いだと確信した私は迷うことなくこれを購入。家に帰ってすぐに読んだというわけだ。


さてこの作品のメインキャラは2人で、その2人の異常な関係性に焦点を当てて物語は進んでいく。

登場人物① 雲居夢子
 引きこもり中学生。主人公(後述)をペットにする。

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一見普通の可愛げな少女だが…

登場人物② 結城肇
 ②って書いたけど一応主人公(なはず)。友達代行サービスに勤めていたが、依頼者の夢子にペットにされる。

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(多分)主人公

その他 くるみさん、吉田さん
 前者は雲居家の家政婦?後者は結城の前依頼人。結城のストーカーになった。

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前者
<>
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後者

はいこんな感じ。1巻完結とはいえ全部を説明するのはだるいので、いくつかピックアップしていく。

まず冒頭、夢子に依頼された結城が彼女の家に行ったところ、彼女は学校は嫌いではないが行かないと言う。理由として

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核心をついてくるJC

ハァァァァァ………………………(クソデカ溜め息)。

いやー、まあこれは物語の性質上学校に行かないという極端な行動に移されていて現実に投影しにくいのだが、群れが嫌という意見を実に的確に表現している。キモオタ陰キャサークル・漫トロピーに入っている私も群れが嫌いだ。そもそも群れる人がいない 中学・高校の「友達といないでぼっちでいるやつは可哀そう」みたいなあの空気感!これが死ぬほど嫌だった。

うるせぇ!俺は好きで(環境的側面も少なからずあるが)ぼっちなんだよ!…と心の中でよく叫んでいたものだ。

尤も自分の被害妄想であった可能性も十分に考えられる。がしかし、昨年一人旅で広島に行ったとき、夕食を食べていたら近くの作業員風の男性グループから「あの人一人で飯食ってるww」とのお言葉が鮮明に聞こえてきたので、上記のような哀れみ・ともすれば侮蔑ともとれる感想を抱く人間は一定数いるのは事実なのである。

話を戻すが、要するにこの発言は日本に蔓延る悪しき集団主義を批判しているのである。

その後彼女は「誰だってやりたい事をやりたい時にしたいでしょ」と言っているが、我々のように義務教育修了後、高校・大学に進学するという周囲の”当たり前”の進路を歩んできた人にとっては耳の痛い話である。やりたい事を選択しているというのは幻想で、実際は周囲の”やりたいと思ってやっている”という雰囲気に流されているだけだからね。だからこそ逸脱の象徴としての留年という行為が、趣味に生きる漫トロ民の中で正当化される現象が起きているのではないか。勿論集団で行動することのメリットがないとは言わないが、この発言を通して我々がそうした社交性(同調性)を無自覚に受け入れていることに気が付くのである。


また彼女は、“友達”代行サービスの結城に対し、

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はい!喜んで!

と言い放つ。困惑してやんわりと拒絶を示す結城に対し夢子は、彼が上辺を取り繕って優等生的な(サービス提供者としての)、言い換えれば保身的な受け答えをしていることを看破し、結果として結城をペットの「チロ」として扱うことになる。結城は勿論「ああ、こんなの…、正しくないのに…」と心の中でつぶやくのである。

後日再び雲居家を訪れた結城は、家政婦?のくるみさんに夢子のペットという発想は普通でないと吐露すると、彼女は
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とばっさり切り捨てたのだ。

さて、規範に基づいた社会を生きる我々からしてみれば、社会的には言うまでもないが、倫理的観点からしてみても確かにペットという発想は少なくとも普通でないということには同意してくれるだろう。しかしこのような考え方は、結城と同じく自分が正しいと思っている”常識“の範疇で導き出された結論に過ぎない。

まさに注目すべきはこの点ではないだろうか。確かにメインストーリーの流れとして彼は彼女の考え方に染まっていくのだが、この経過における本質はその点ではないと考えている(そこを純粋に楽しむのもいいが)。彼女の対応に苦戦する彼は、業務の“基本”である「相手を否定しない、受け入れる」という言葉を確認したり、吹き出しの隅に業務上とぼやいているシーンがあるなど、あくまで彼女と仕事上の常識の上で接しようと試みているのがわかる。もちろん我々が結城の立場ならそうするだろうし、それが当たり前だと思われる。しかしそうした態度はあくまで相手を“逸脱した人”だと決めつけた上で、自身は”普通“だという前提で成立しているのである。普段相手の立場になって考えているつもりであっても、実際は自分のことしか考えていないということを示唆していると言えそうだ。

夢子はこうした本質的な発言をしてくれるので、漫画作品としてやはり稚拙で単調なところもあるが、その内容は非常に面白いのである。米代恭という作家は、人間の気持ち悪さの本質を描き出すのがうますぎる…。



さてそろそろ文章を書くのが面倒になってきたし、普通に時間も危ういのでこれくらいで終わりにしようと思う。ちなみにこの作品は、最終的に彼のM気質が露見して、彼女のペットとしての立場を受け入れていく…という風になっていく。一応そこがメインだと思うが、特に書くことが思い浮かばなかったので割愛した。どんな感じかはぜひ自分の目で確かめてね♡

明日は14〇B(たぶん)が素晴らしい記事(たぶん)を書いて有終の美を飾ってくれることだろう。今から非常に楽しみである。

わくわく、わくわく…

新歓毎日投稿企画【4/26】『きかんしゃトーマス』で格付けした

 シチョウです。春といえば変化の多い季節ですね。新しい環境に移る人も多いでしょうし、新年度になったことを機に新たな領域に挑戦する人も多いでしょう。ここ最近の漫トロでも新たな潮流が生まれており、それが『ドラえもん』の映画をランク付けしたり、「セーラームーン」のキャラに対して優遇されているか不遇かでランク付けしたりと、往年の子供向け作品を大学生の観点で見直してランク付けするという流れです。せっかくなので僕も乗っかろうと思います。ランク付けするのは『きかんしゃトーマス』です。

 さて、まず漫画やアニメでランク付けすると言われて思い浮かぶのはやはり「強さ議論」でしょう。「〇〇(漫画名) 強さ議論」と検索すれば5chの強さ議論スレが真っ先に出てきますし、漫画やアニメを格付けするときは大抵は「強さランキング」です。なので『きかんしゃトーマス』で強さの格付けをすることを当初は考えていたのですが、強さ議論スレでいうところの「強さ」がそのキャラクターの設定やステータスで決まる表面的な指標であることを踏まえると、会誌を見ていただければわかる通り、仮にも漫画の内容についての議論を交わすことを主たる活動とする当サークルのブログに相応しい内容ではないと思い、辞めました。読者の皆さんも「ゴードンはでかいから強いw!」みたいなのを見るためにこのページを開いてるわけではないでしょ?あとは単純に5chでやり尽くされているからというのと、トーマスやその仲間たちが戦う描写が作中で殆どないので内容に踏み込むことができなさそうなのも辞めた理由ですね。

 というわけで、今回は『きかんしゃトーマス』のキャラクターの物語の登場車両としての魅力でランク付けします。要はキャラが立っていればいるほどランクが高いということです。また、『きかんしゃトーマス』はキャラクターが多すぎるので、第3シーズンまでに登場したキャラクターでなおかつそれなりに登場頻度の高いキャラクターに限定しました。初めに断っておくと、『きかんしゃトーマス』を悪意で茶化すような内容ではないので、『きかんしゃトーマス』に触れていない人間が読んで楽しめるかどうかいわれれば微妙だと思います。こういう視点でキャラクターを格付けするのもアリだな、的な感じでみていただければ何よりです。

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これpowerpointで編集していたんですけど、その際に写真が自動で文字媒体に変換されており、それがちょっと面白かったのでこれからはこの部分に写真の代替テキストを貼っていきます

Sランク:どういう場面で起用しても使いやすい、勝手に動いてくれるタイプの強度の高いキャラクター。
Aランク:一貫した性格を持っている良キャラ。
Bランク:Aランクのキャラには見劣りするが、十分に固形の人格は備えている。
Cランク:キャラが立っていると言えば立っているが無理やり立たせているだけだったり、諸事情で無個性になるなどした、Dランクに置くほどでもないが堂々と個性的であるとは言いにくいキャラ。
Dランク:ある程度の条件さえ満たせば、他の誰でも代用可能なキャラ。

  • Sランク
  • Aランク
  • Bランク
  • Cランク
  • Dランク
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新歓毎日投稿企画【4/25】こんな青春がしたかった

みかんばこです。歳を重ねるごとに人生の可能性が目減りしていくのを感じて、青春という時間の重さを実感するよ。最近は何か新しいものに挑戦する意欲も気力もなく、迫りくる就活、「何者にでもなれる期間」の終わりに戦々恐々とする毎日だ。こうなって始めて、青春の意義が「無意識に抱えている『なりたい自分』という像に向かって、他者との関わりや趣味研鑽を通して自己を固めていく」ことだったんだなあって思う。ふわふわしながら漂うように日々を過ごしていたらなんかふわふわしたまま固まっちゃって、なんとか自立しねえかなコイツって試行錯誤を強いられる羽目に陥ってしまっている。まあ、何も考えず無為に青春を過ごしていたというよりは、前述した青春の意義を漠然と理解したうえで「有意義な青春」を諦めていたという方が正しい。俺の理想は「一生懸命頑張れる奴」だったのに、俺は努力とか根気とかいったものが死ぬほど苦手だったし嫌いだったんだよね。その時点で俺は俺自身の青春を享受することを諦めざるを得なくて、ひたすら創作の中での青春に没頭し、その物語を己の疑似的な思い出として取り入れる、なんてことの繰り返しだった。ヒーローショーを見た幼児がヒーローに憧れるみたいなもんで、そんな仮初の思い出、血肉として定着してくれないんだよな。ヒーローになりたいならもっと他にすべきことがあったはずなんだよ。

武田綾乃の小説、『響け!ユーフォニアム』のスピンオフ作品。「頑張る」ことは嫌いだけど、「頑張る奴」には憧れる。そんな矛盾した心理をこの小説は端的に説明してくれた。
中川夏紀の中学の時のエピソードが好きでさ。頑張ることが嫌いな彼女は大縄跳び大会の練習に精を出すクラスメイトを尻目に校庭の隅でサボっていた。なんでコイツらはこんな意味のないことに真剣になれるんだろう?なんてことを思いながら。クラスのリーダー的存在・傘木希美はそんな夏紀に声をかける。意義のない、感じられないことに対する努力を強要してくる学校という組織に対する反発を見せる夏紀に対し、「とりあえずやらせてみる」という機会を与えているに過ぎない、それは素直に享受した方が自分にとってもプラスだよと諭す希美。俺は別に希美の意見を正しいとも好ましいとは思わないけど、希美とのこの問答が夏紀の中でずっしりと重たいものになっていて、希美という人間に強烈な羨望を抱くようになった流れがたまらなく好きなんだ。高校入学後、夏紀は希美に誘われて吹奏楽部に入ることになる。頑張ること、「部活」といったものに懐疑的だった彼女が入部した理由は憧れである希美に誘われたから、という一点だ。俺と同じような素質を持ちながら、焦がれた青春を諦めようとせず、憧れの少女に近づくため彼女は部活動という青春に身をやつしていくのである。ああ、これだよこれ!俺がしたかった青春は!ラスト、副部長を引退した夏紀が優子と2ピースバンド組んで友人のイベントライブで演奏するシーン読んで涙が止まらんかった。失った青春が確かにそこにあった気がしてしまったんだ。俺は傘木希美には出会えなかったし、中川夏紀にはなれなかった。しかし運命の歯車が少し違えば、俺だってあのステージに立てていたかもしれないと思うのは傲慢だろうか?

まぁユーフォで描かれているような青春送りたかったかといわれると全然そんなことないんだけどね。頑張るのは嫌いだし。人間関係面倒くさそうだし。だけど彼女たちみたいな人間にはなりたかったなって思う。そして彼女たちのような人間になるには、情熱に満ちた環境が必要で、俺はそれを尊ぶべきなんだな、とも思うのだ。だから俺は『けいおん!』が嫌いだ。

描かれている日常は理想だよ。かわいい女の子とバンド組んで、ゆるく練習して、部室に集まってお喋りして、お菓子食べて、合宿なんかもしちゃったりして。最高だよ。これぞ「送りたかった青春」だよ。でもこの空間に溺れることは、肯定できない。したくない。それはなんだか、人生で大切なものを踏みにじる行為な気がしてしまう。放課後TTの演奏に感動して、本気で音楽をするために入部した中野梓が彼女たちの空間に毒されていくのが辛くて見ていられなかった。「楽しむことが何より大切」だ?うるせえ!黙れ!そんな言葉俺自身が擦り切れるまで使い倒してんだよ。何も為せていない、何も為そうともしていない俺が、これを許容することはやっちゃあいけないんだ。

ああ、異世界に行きてえな。冒険者としてイチから人生始め直してさ。等級なんて指標があれば進むべき目的があるし、何より魅力的な世界を回る楽しさ、容姿偏差値の高い異世界での美少女との出会いも期待できる。なら、俺みたいな人間だって少しは頑張れる気がするんだ。詰まる所、異世界転生って青春のやり直しがテーマなんだね。

新歓毎日投稿企画【4/24】春だし、私も明るくがんばるぞ〜〜!

こんばんは。2度目の登場になります ぴぴぽん です。



前回はくそ適当に書いてしまったので今回はもう少し真面目に書こうと思っているのですが、何を書けばいいのやら。

この前のは「春休み」から無理やり引っ張って書いたので、今回はどうしようかな……あ、そうだ。


私事で恐縮ですが、この春引越しをしました。市内の山の方で2年間一人暮らしをしていたのですが、今年から妹と二人暮らしになり、広めの部屋に引っ越すことができました。新生活がスタートしたわけです。

幸い、私も妹も比較的穏やかな人間なのでトラブルが起こることもなくのほほんと暮らしています。物理的にも精神的にも負担がかなり減って楽になりました。

以前に比べて文ピカにもかなり行きやすい場所になりましたし。とは言ってもしばらく行けそうにありませんが……


と、いうわけで(?)春の新生活から物語がスタートするこちらの漫画を紹介します。

バブル期ドンピシャの1988年〜1991年にスピリッツで連載されていた『ツルモク独身寮』全11巻。

作者の窪之内英策さんは現在イラストレーターとしての活躍が主になっていて、最近だと日清食品カップヌードルCMシリーズ「HUNGRY DAYS」(魔女宅とかワンピとかのキャラをめちゃめちゃ爽やかに描いてるやつ)のキャラクターデザインをされたりしているのですが、元々は漫画家としてデビューされたのが始まりで、今回紹介する『ツルモク独身寮』はその初期の作品になります。


物語は、主人公:宮川正太(18)がツルモク家具に入社し、独身寮に入寮するところから始まります。

正太は独身寮で田畑、杉本という先輩と同室となり、寮内を案内され屋上に出ると、そこは女子寮が丸見え。正太は部屋で着替え中の女の子と目が合ってしまい……というような具合の、主人公:正太と、正太が住む独身寮の住人たちとの人間模様を描いた青春群像劇であり社会人ラブコメです。

小学校高学年くらいの時に祖父母の家に置いてあった(おそらく叔父が学生の頃に買ってそのまま置きっぱになっていた)のを読んだのがこの漫画を知ったきっかけで、当時はおそらくストーリーをきちんと理解できていなかったと思うのですが、とにかく印象に残っているのが、


扉絵がめちゃめちゃお洒落なことと、

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ヒロインである姫野みゆきが茶目っ気たっぷりでめちゃめちゃ可愛い……ということ。


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可愛い〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!元気な美人は最強!!!!!!!!!!


私、男性キャラのストライクゾーンはめちゃめちゃ広いのに女性キャラのストライクゾーンはめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃ狭いっていうクソ人間なのですが、みゆきさんは好き。見た目も中身も可愛い。正太くん場所代わってくれや。


大きくなった今改めて読むと、キャラクターたちの派手派手でバブリーな服装が一周回ってお洒落に感じたり、現代だとかなりエグいと感じる下ネタがあったり、当時の結婚観にビビったり。二十歳過ぎたらすぐ結婚!みたいな感覚の時代だったんだなぁ。これが元気だった頃の日本か……と、かなり新鮮に感じて面白いです。



話としては青春群像劇なので、様々なキャラクターが様々なことを起こして各々成長していくのですが、物語の一番の見所であろう部分として、主人公である正太くんが「上京先で出会った女性」と「田舎に残してきた彼女」の間をふらふらして、一体どちらを選ぶのか……?というのがあります。


簡単に言うとこの主人公かなりのクソ野郎で、先ほど紹介したみゆきさん(上京先で出会った女性)と田舎に残してきた彼女であるともみちゃんの2人を結構長い期間キープし続けます。なっかなかどっちを選ぶのか結論を出さない。

ともみちゃんもね……可愛い子なんですよ……

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こういう演出、昔の月9で観たことあるぞ!!!!!!!せつねぇ!!!!!!!


でも、でもですよ。読んでいて正太くんに対してそんなにイライラしなかったんですよね。不思議なことに。多分それは正太くんが純粋で優しくって頑張り屋さんで……という具合に、「女性2人に対してだらしない」という点以外の部分であまり悪い要素がなかったから。明るく真面目な好青年なんですよね。



そういう明るい部分がこの漫画の魅力というか特徴でもあって、ド美人やナンパ野郎、ダメ人間やビジュアルに特徴のありすぎる人……などなど個性的でキャラの濃すぎる登場人物がたくさん出てきて、みんなそれぞれ違うけど、登場人物全員に共通しているのが「根が明るい」ということ。いわゆる陰キャポジの人も出てくるのですが、そういう人でも根本的な部分が明るくて、前向きでちゃんと自立してる。そういう明るさで溢れた時代だったんだなぁと思うと同時に、暗い人間にいかにスポットが当たっていなかったのか、というのを考えさせられます。そういう人は排除されていたのかな……



この絵のタッチもそうだし、この漫画全体の雰囲気にも言えることなんですが、まさに「あの頃はよかった…」なバブル期らしい明るさと華やか、希望に満ちていて、昭和の空気を感じることのできる漫画なので、現実に向き合いたくない人におすすめします。元気で明るい登場人物たちに心とお腹を痛めること間違いなしです。




あと、恒例になりつつありますが、顔のことも言っておきます。この漫画は女の子だけじゃなくて男の子の顔も可愛い。



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太眉で目がくりくりの人って可愛いよね……来世は顔の可愛い色男になりたい……














そんなとこです。ではでは。