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京大漫トロピーのブログです

【12/13】伊藤いづも先生へ愛を叫ぶ。

みかんばこです。今月行われる日本最大規模のパーティーって何か知ってますか?
そう、コミックマーケットです。京大漫トロピーは今年もコミケに出展します。

漫トロピーは今年のNFで売った、「今年最も勢いのあった漫画50選ランキング」が掲載されている秋会誌を売ります。
今年は割と「このマンガがすごい!」に寄ったランキングが出来上がってしまったので、興味のある方は購入いただいて見比べていただければと。

さて、コミケといえば同人誌です。伊藤いづも先生*1の同人誌の話するか。


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「えちごやキッチン」
パン食べ放題で有名なパン屋「神戸屋キッチン」をモデルにした架空のレストラン「越後屋キッチン」で働く女の子たちの日常漫画。日常漫画っていうかもはや飲食バイトのあるあるを羅列しただけなんだけど……作者の引き出しがバカみたいに広くてそれだけで面白い。ストーリーといったようなものはないしキャラクターが滅茶苦茶可愛いわけでもないいわば質素な料理なんだけど、それをバラエティーに富んだ食材で独特な味付けをして調理してくれているのですげー楽しい漫画になってる。初めて知る雑学に感心させられつつ、この作者ならではのアイデアの奇抜さ、語彙力のセンスはすさまじくて、それを直接的に摂取できるこの漫画は今世に出しても遜色なく受け入れられると思う。続編出ねえかな~~~。
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あるある……のか?

ただ伊藤いづもの真髄はそこじゃないんだよね。この作品に限らず、キャラクターの描き方がめちゃくちゃ巧ぇ。「えちごや」で描かれるキャラクターは店で働く姿だけ。個々の掘り下げを全く入れず、プライベートの話を一切しない。キャラクター同士のやり取りは休憩室で行われる他愛もない雑談、仕事上の事務的なやり取りに限られる。読者とキャラクターの間に一定の距離を設けているわけだけど、それがまるでフィクションなこの作品にリアルを生んでいる。この子たちと一緒に働いているかのような錯覚すら覚えるんだよね。
ともすれば「キャラが薄い」印象を与えがちなんだけど、それは違う。「キャラクター造形を作り込んでおきながら、その表層しか見せない」んですよ。他愛のないやり取りの中に、彼女らの人間としての個性がさりげなく垣間見える。だからこそ楽しいし、愛着もわく。これ全部計算して書いてるんですよ。やっぱ天才ですわ。まあ作者の個性が強烈すぎて、キャラクターに作者自身がこんにちわしてしまう事態もままあるんですが、それもまた同人誌ならではの楽しさですね。

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杏子ちゃんは不憫かわいい。

いづも先生、天才なので何書いても面白いです。同人誌はもうプレミア付いてて入手困難なものが多いですが、アンソロや初商業作品である『エミル・クロニクル・オンライン』(とあるMMORPGのコミカライズ)などは密林でポチれば読めます。『まちカドまぞく』とはまた一風変わった世界観、作品構成に舌鼓をうつこと間違いなし。『まちカドまぞく』が好きな方は是非読んでみてもらいたいです。

*1:『まちカドまぞく』の作者。