mantrog

京大漫トロピーのブログです

【12/3】いちご20%

三日なのでみかんばこです。

五等分の花嫁(11) (講談社コミックス)

五等分の花嫁(11) (講談社コミックス)


ヒロインは五つ子の姉妹。成績不振な彼女たちの父親から家庭教師として雇われた学年主席の秀才・上杉風太郎が、彼女ら五人からただ一人の花嫁を見つけるまでの物語。所謂ハーレムラブコメの金字塔。累計700万だっけ?アニメ二期も決まったし、凄いね。大阪でやってる「五等分の花嫁展」も最近行った。楽しかった。

この漫画の何が凄ぇってハーレムラブコメの賞レースとしての魅力を極限まで追求したことですね。ヒロインが複数出てくるラブコメは、最終的に誰が選ばれるか外野からやいのやいの不毛な議論を投げ合うのが半ば様式美みたいなとこがある。それをここでは賞レースと揶揄するわけだけど、『五等分の花嫁』はこのレースをいかに緊迫感を出して盛り上げるかに心血を注いでいる。
走力の差が出ちゃうと途中で勝ち馬がバレちゃってつまらないから、まず五人の足並みを揃えさせることから始まる。五つ子だから容姿が一緒、胸の大きさも一緒、付き合いの長さも一緒。風太郎との行事イベントは「五つ子の教え」に則り五等分。誰か一人が抜きんですぎないように徹底して調整。なんなら、主人公の恋愛感情をひた隠しにして現状誰がどの立ち位置にいるのかすら見えなくする。その結果、花嫁が決まる回まで風太郎が誰を選ぶのか全く予想がつかないという状態を保ち続けた。五択状態のまま引き伸ばし切ったのだ。
それでちゃんと盛り上がれるのは、春場ねぎの演出がめちゃくちゃ上手いことが大きい。ヒロインが最高に魅力的な瞬間を引き出すために、展開を操作し、風太郎の言動を操作し、クッソきれ~な見開きで読者の心をつかみに行く。「アンタを好きって言ったのよ」のシーン、完璧じゃない?

こういう構成上仕方ないんだけど、あくまでヒロインって「五つ子」自体なんだよね。主人公である風太郎と出会い、絆を育み、互いの在り方を変えていくのは、誰か一人のヒロインじゃなく「五つ子」全員。風太郎が選ぶのは「五つ子」の中の誰か、というだけ。
いちご100%』の話していい?あの作品において東城は「夢を追う同志」、西野は「高嶺の花」、北大路は「気のおける友人」というそれぞれの役割がはっきりしていて、その上で真中は誰を選ぶべきかを延々と悩んでいた。実際その選択によって真中の人生も変わってくるし、だからこそ俺たちも彼の選択に興味を持てたわけで。まあ真中はまだ高校生なので衝動的に西野選んじゃったわけだけど。あの時東城がノーブラじゃなかったら結末は変わってたかもしれないね。ホンマ最低の漫画や。
ヒロインの名前の通りだよね。「いちご」はベクトルで、「五等分」はスカラー。「いちご」は各ヒロインのルート分岐で物語の広がりが見えたけど、「五等分」は誰を選んでも一緒。だって五つ子だもん。ただ「五等分」にはもう一人、「零奈」っていう”ゼロ”を冠するヒロインがいたんですよ。五年前京都で風太郎と出会い、彼に生きる目的を与えた女の子。五つ子のヒロインたちとは全く異質の役割を持っていて、こいつが物語をひっかきまわしてる時が一番面白かった。正体は四葉で、だからこそ俺は四葉推しだったんだけど、先も述べた五人の足並みを揃えさせるために、「過去との決別」という形で零奈はその存在を四葉へと昇華させ、消えてしまった。

こういった犠牲も払いつつ、今日まで成り立たせてきた花嫁レースもあと数時間で終止符が打たれる。先週の展開を見るに、恐らく明日発売のマガジンで風太郎が花嫁を選ぶからだ。二か月引き伸ばした続いた文化祭編の果て、彼は誰を選ぶのか。歓声を上げるもの、泣きを見るもの、今から後夜祭パーティーが楽しみだ。