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京大漫トロピーのブログです

【12/22】中多紗江編④(終)

中多紗江編 第4章「コイビト」

ミシ:名残惜しさも感じる。最終回です。
醤油:「コウハイ」から「トックン」を経て「ヘンカク」。そして「コイビト」ですか。全て関係性の変遷を明快に表します。類を見ぬ、完璧なサブタイトルですね。
QP:その点に関しては認めざるを得ません。
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(前回のラスト。幸福なデートから一転。再び押し入れの中にひき籠もってしまう純一)
(純一「好きだよ」)
(ナレ「少女の頑張りで大きく動き始めた恋のメリーゴーランド。しかし少年は、その動きに翻弄されていたのであった」)
(純一「ちゃんと僕から言わなくちゃ。でも……」)
(ナレ「2年前のクリスマスに経験した失恋が、少年を恋に臆病にさせていた。少年よ、ほんの少しでイイ。勇気と自信を持つのだ」)
醤油:不覚にも、グッと来てしまった。
ミシ:僕もです。
(OP)
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(喫茶店でデートする2人であったが、中多さんには密かな野望があった。それは、完食すると末永くラブラブでありつづけられると噂される「スペシャルバナナパフェ」に挑むことであった)
醤油:うおぉぉぉぉぉっ! 聖杯や! 遂に聖杯が出てきた!
ミシ:聖杯、サングリアルと云うのは、救世主が最後の晩餐の際、それから飲んだと言われる盃ですね。救世主はその盃をヨセフに与え、ヨセフはそれをロンギヌスの槍と共に保管し守護します。しかし、あるとき子孫の一人が、神聖な義務を忘れ、一人の巡礼女がひざまずくときに計らずもはだけた衣服を、守護の役目にあるまじき目で眺めてしまう。すると聖なる槍はその子孫の頭上に落ちかかって癒えること無き傷を負わせ罪を罰し、サングリアルの盃は人の目からその姿を隠してしまった。
醤油:のちに偉大な預言者であり魔術師であるマーリンが、奇蹟をもたらすサングリアルを再び発見すべきであるとアーサー王に伝え、その捜索を円卓の騎士たちは命じられます。件のガラハドは、聖杯を発見した三人の騎士のうちの一人ですね。幾多の困難を乗り越え、遂に聖杯を発見したガラハドはその最期、聖地に至り、最も穢れ無き騎士として天に召されることになりました。
QP:もはや問答無用で、純一はガラハドなのですね。
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(創設祭当日。梅原はマグロを象ったヌイグルミ「トロ子」とベストカップルコンテストに出ようとする)
醤油:もう道化を演じさせるのは勘弁してやってくれ。可哀想でしょう。
QP:本ルートでの梅原の立ち位置は、ガウェインです。アーサー王が謎の答えを得るため、担保として醜女の良人に差し出されたガウェインですが、覚悟をもって臨んだものの、やはり夜になると婦人の年齢・容姿の醜さ・身分の低さへの嫌悪を隠しきれなかった。そのことを正直に婦人に告白すると、驚くべきことに、醜かったはずの婦人は見目麗しき美女となった。実は、婦人は悪の魔術師に姿を変えられてたんですね。その呪詛を解くには、2つの条件があった。一つは若く優秀な騎士を伴侶に迎えること。これが成就したために、呪詛の半分が解かれ、婦人は一昼夜の半分のみ本来の美貌を保てるようになります。婦人はガウェインに問う。自分は昼と夜、どちらをもとの姿で過ごすべきかと。ガウェインは婦人の最上の美を独占するため、一度は「夜」と答えますが、「皆の前で美しくふるまえること」で得られる婦人の幸福を慮り、譲歩します。そしてこれこそが、もう一つの条件であった。ガウェインのために呪詛は完全に解かれ、婦人は常に美しく在ることが許されます。
ミシ:とすると、このウメハラは、頑なに「夜」と答え譲らなかったガウェインですか。トロ子は一昼夜のうちの半分しか魔法が解かれず、本来の美しさを衆目(象徴的な意味合での「昼」)に晒すことが出来なかった。
醤油:その解釈は、あんまりにも悲惨ではありませんか。
QP:しかし、揶揄されるのが目に見えながら、なおコンテストに出場せんとする背景には、それなりの事情があって然るべきだと思うのです。選択を誤った騎士の、贖罪ですね。
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(梅原「トロ子、今夜は2人で解体ショーだ」)
醤油:うわあああああああああああああああああああああああああああああ! こんなん酷すぎる……。
QP:痛痛しくて直視できません。
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(司会の綾辻さん「まるで結婚式のようです」)
ミシ:ああ、本当におとぎ話で語られる結婚式のようだ。
醤油:驚嘆すべきはウメハラとの落差ですよ。
QP:リアルガチやな。こんなん他の生徒ヒきますよ。
ミシ:ちなみに、奥ゆかしさから、衣装は母親によるオーダーメイドと偽ってますが、全て中多さん本人による手作りです。
QP:リ、リアルガチやな……。
醤油:ちょっと重すぎ。
ミシ:醤油君には重すぎるかもしれませんが、再起した純一君には背負うことが出来るんです。
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(純一の好きなところを質問される中多さん。「た、頼りになる教官なところです……」)
ミシ:(うんうん)
QP:声も出さず狂ったように頷くの、キモチワルイですよ。
醤油:放って置きましょう。もう駄目です。堕ちてから45分たちましたから。
ミシ:カムパネルラーッ!
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(森島・塚原ペアに敗れ優勝を逃すが、見事2位にかがやき、賞品の映画館個室シートチケットを授与される)
ミシ:実質1位ですよ。1位。やったー!
醤油:わかりましたって。少し落ちつきましょう。
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(Bパート。翌日、クリスマス。早速貰ったチケットを使って映画館でデートをする。緊張した純一はトイレへ逃げ込むが、変な外国人に応援される)
ミシ:What’s up boy? Are you falling in love with the mirror?
醤油:Don’t worry about the failure of the love.
QP:So, good luck.
ミシ:この男性は、まあこれから2人が観る映画「愛の行方 愛の行く先…」の監督なんですが、自然を超越したちからで英雄の必要とする魔除けやアドバイスを与える運命の案内人ですね。アーサー王伝説で言うところ、マーリンのポジションです。
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(トイレから戻った純一を迎えたのは、コートをぬぎ、純一の好みに合わせたドレスに身を包んだ中多さんであった)
ミシ:小悪魔的ですね。よく似合ってます。
醤・QP:……。
(行儀良く映画鑑賞をする2人。やがてエンドロールが流れる)
(中多「監督さんの女優さんに対する感情が、スクリーンに溢れてます。愛情に満ちてますね」)
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(純一「僕のほうがキレイに撮れるさ。僕は監督だ、紗江ちゃん。君は今から、僕の撮るフィルムの主演女優だ」)
QP:もう無茶苦茶ですね。
ミシ:2人のきもちが通じ合ってれば、その関係性は多彩に変容し、なにものにでもなれる。こうしたアクロバティックな関係の再定義は、中多さんの「土」の性質、「盤石・不変」が基礎にあるからこそ為せる業なんですね。
醤油:ここで六大を持ち出してくるんですね。
QP:奔放ですねぇ……。
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(ふざけてるとソファのリクライニングが倒れ、純一は中多さんを押し倒してしまう)
(中多「先輩。本当に、色色とありがとうございました。先輩とこうして過ごせて、すごく嬉しいです」
(純一「今日は、ちゃんと言うよ。紗江ちゃんが好きだ。大好きなんだ!」)
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ミシ:ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
醤油:ちゃんと言えましたね。
QP:う~ん。
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(中多「先輩、わたし幸せです」)
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(中多「わたし達カップルに見えるでしょうか?」)
ミ・QP:見える、見える。
(純一「うん、見えるよ。だって僕達、本当に恋人同士なんだから」)
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(ナレ「失恋のトラウマを抱え、奥手で臆病でチキンであった少年と、極度に内気な少女の恋の物語はこれで終わりである。まだようやく一歩を踏み出したばかりの2人が、この先ずっとラブラブなままでいられるよう、心からねがおう」)
ミシ:うんうん。神聖で幻想的なラストだ。まさしく英雄譚です。
醤油:しかし後日、カメラ片手に怪しげなフィルムを撮る純一の姿が……。
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QP:は? 台無しですよ、これ。フルマラソンを走り終えた後に、お湯ぶっかけられた心境や。
ミシ:違うんですよ。最後、冒険を終えた英雄は、未知の領域で獲得した宝を携え、もとの世界・社会へと帰還しなくてはなりません。これはその、平穏な日常の描写ですよ。
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(中多「先輩、これからもずーっと、わたしのことを一番可愛く撮ってくださいね?」)
(fin)
ミシ:イヤぁ、秀逸でしたね~。うん? どうしたんですか、お2人とも黙りこくって。
醤・QP:…………。
ミシ:ふん。異教徒には何を言っても無駄か。次は、……あちゃぁ、七咲編ですか。まあ、イイでしょう。どれ、再生ボタンを押して。ポチッとな。

【12/23】七咲逢編につづく。