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mantrog

京大漫トロピーのブログです

「君の名は。」と折り合いをつけた話・教

 どうもユーカリです。

 今回はtrickenさんからご教授いただいた『セカイ系』の系譜や「君の名は。」への影響、「君の名は。」の何がすごいかをまとめていこうと思います。

 「君の名は。」を語るには『セカイ系』の文脈を知ることが割に前提です。

 みなさん、『セカイ系』はご存知ですか。
 わたしはあまり知りませんでした。「エヴァ」も『セカイ系』だったんですね…。知らんかった…。

 『セカイ系』の定義を簡単に言えば、『「ぼく」と「きみ」の関係(小さな”セカイ”)の行く末いかんによって大きな”世界”そのものの命運まで左右することになる』物語たちのことです。

 「君の名は。」では三葉と瀧が出会うことが重要で、隕石孔の淵で2人の『セカイ』がひとつ閉じたところでやっと彗星の危機へ立ち向かうステップになる。2人があそこで出会えるかどうかで糸守町の住民の運命が決まってしまうわけです。

 『セカイ系』は、世界にどんな危機が迫っていようが、とにかく主役2人の『セカイ』にフォーカスを当て続ける様式なんですね。なるほどね〜。

 また、2人がかたわれ時に出会うシーンでは、何回かすれ違い、手を伸ばしてはつかみ損ねる、という「点滅」の描写があります。

 これは2人が今までに何度も会おうとしてしかし会えなかった世界線が裏側に無数にある、2人がこれまで何度もループを繰り返してきたことを示唆するものです。これが2人の切ない物語性を増幅させるんですね。

 「君の名は。」は「人格入れ替わり」、「タイムスリップ」、「ハルマゲドン」そして「ループ」ものでもあるわけです。欲張りすぎですね。

セカイ系』と「ループ」と新海誠の融和

セカイ系』を作り上げてきたおおまかなファクター(主にゲーム部門)
90年代:”泣きゲー”を築き上げた「葉鍵系」、同時期に流行った「エヴァ
00年代:ゼロ年代を牽引した奈須きのこ虚淵玄竜騎士07(+ゲーム映像作家として活動する新海誠
10年代:以上の流れを汲んで『セカイ系』ゾンビとして立ち現れた新海誠君の名は。

 「君の名は。」への影響を考える時に重要な作品は竜騎士07ひぐらしのなく頃に」です。全8章+番外編のこの作品は寒村で繰り返される怪死、失踪事件の顛末を描いたミステリーゲームで、「ループ」ものの極致として有名です。(知らなかった)

ひぐらし8章/三葉・瀧」

 構成としては、1章から7章までは全滅を繰り返しながら情報を集め、8章でやっとハッピーエンドを迎えることになります。「君の名は。」が作品内で描いているのは「ひぐらし」でいうハッピーエンドの8章からということになります。(7章までの虚しい繰り返しは前述の「点滅」に込められています。)

ひぐらし番外編/ユキノ」

 さらに、「ひぐらし」番外編では「ループを抜けた後にもう1ループ」する話が描かれます。8章で無事生還を果たしたはずのキャラクターがまたしても「生と死」の選択を迫られる。これをくぐり抜けることで物語はトゥルーエンドへ向かうことになります。

 tricken氏はここに、新海作品「言の葉の庭」のヒロイン・ユキノとの関連性を見出しています。

言の葉の庭 Memories of Cinema

言の葉の庭 Memories of Cinema

 ユキノは「君の名は。」冒頭の女国語教師と同一キャラです。なぜ四国にいるはずのユキノが飛騨で教師をしているのかは不明ですが、ファンは、ユキちゃん生きてた!と大喜びです。
 しかし、他作品キャラを唐突に登場させるなんて、ただのファンサービスだけではないはず。ユキノは「言の葉の庭」で、メンタルを壊したものの、死を選ぶことは避けられたキャラクターです。彼女を「君の名は。」に登場させる意味とは。


 前作で死を免れて一応のハッピーエンドを迎えた(あがった)はずのユキノが、彗星が何度も落ちるループ世界に放り込まれてしまった。
 これはつまり、新海監督は、前述のひぐらし番外編をユキノにプレイさせているのです。そしてそのループは三葉・瀧のセカイがかたわれ時に結実することでしかトゥルーエンドへと導かれない。ユキノはループを抜け出すために、「黄昏時」のヒントを何度も送っていたということになるわけです。

 さぁ、「ひぐらし8章/三葉・瀧」、「ひぐらし番外編/ユキノ」というつながりが見えてきました。しかし、役者はもう一つあります。

ひぐらし7章まで/新海誠の経歴」

 02年「ほしのこえ」からはじまり、04年「雲のむこう、約束の場所」、07年「秒速5センチメートル」、11年「星を追う子ども」、13年「言の葉の庭」と、映像監督として新海誠はコンスタントに作品を発表してきました。しかし、興収的には成功した作品はなく、”知る人ぞ知る作家”という評価を打ち破れないまま似通った結末を迎える作品のループを続けていたのです。
 しかし、2016年。新海誠はついに「君の名は。」にたどりつきました。

 それまでナルシズムたっぷりにして男女のすれ違いをバッドエンドで締める作品ばかりをループしてきた新海監督は川村プロデューサーと「ぼくときみ」の関係を手に入れて、ハッピーエンド作品「君の名は。」を発表することができました。
 「ひぐらし7章まで」をずっと繰り返していた新海監督は、「君の名は。」という「ひぐらし8章」を無事クリアし、世界的大ヒット、というトゥルーエンドに導かれたことになるのです。(「ひぐらし番外編」にはユキノがすでに投げ込まれているため、新海はもうループする必要は無くなりました。やったねユキちゃん!)


 ここまで説明をもらった時点で「君の名は。ってすごい!こりゃあファンやオタクは大喜びだ!」となったわけですが、わたしが「君の名は。」に抱いている不満や恨み(前記事後部に記載)は何も解決されていないので、そこについてはまた以降の記事で……。