mantrog

京大漫トロピーのブログです

【12/6】ひとつ大人になりました

こんばんは。ころもです。
今年のテーマはパーティーですが、コンパもパーティーに入るでしょう。
コンパといえば、やっぱり合コン!!

漫画のなかの合コンあるあるはたくさんありますね。王様ゲームからのサービスシーン、いい感じになった二人がそのまま夜の街に消えていく、お酒を飲みすぎて帰れないからのお泊りなどなど、たくさん思い浮かびます。
あと最近聞いたのですが、合コン女子の間では「合コンさしすせそ」なるものが広く知られているようです。みなさんは何だと思いますか?

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さあ、乾杯です!!

正解は……

さ:さすがですね! し:知らなかった! す:すごいですね! せ:センスいい! そ:そうなんですか!

こちらが「合コンさしすせそ」です。すべての語尾に!マークがついているのがポイントですね。強調してます。
確かにこれを言われたら、悪い気はしませんね。

さて、なぜ私が合コンの話をしているのかといたしますと、先日わたくし、ころもは人生で初めて合コンに参加しました!!!!
パチパチパチ!!すごい!!感動!!!合コンなんて都市伝説だと思っていた私ですから、「漫画でよく登場する合コンは果たしてどんなものなのか!?」確かめる機会を得たので、ウキウキです。

さて、合コンはどんなものだったか……。率直な感想としては……




ただの楽しい飲み会やん!!!!!!私の知ってる合コンじゃない!!!!!!!!!!!



って感じでした。それもそのはず、頑張ってコミュ力をあげたところで、集まった奴は結局のところ陰キャであるからです。私が集めたメンバーだもん、パリピであるはずがないんですね……。世の中の合コンとはどんなものなのか、何もつかむことはできませんでした。でも、「合コンさしすせそ」の″そ”は使ったのでほめてください。
しかし、ひとつ学びました。合コンはただの出会いの場に過ぎないということを。そこで出会った人とどうなるかは、自分次第なんですね。
ひとつ、私も大人になれました。




さて、まだ漫画を紹介してないですね。合コンの話をしてきたので、飛鳥時代の合コンが描かれている漫画を紹介します。

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とっても重い空気の合コンですね…。
ちなみに1カップル誕生します!

そうこれは『天智と天武』です。天智と天武といえば、みなさん!歴史の授業で習いましたね!?
そう、大化の改新白村江の戦壬申の乱!!!!!!!!

最高のイベント、3連荘ですね~。
まずは大化の改新蘇我入鹿の首を切ったことによって、天智天皇の歯車は狂い始めるんです。
イベントの発生によって、天智天皇大海人皇子はいびつな兄弟愛を燃え上がらせます。
中臣鎌足額田王重祚した斉明天皇そして大友皇子などの重要人物を巻き込んだ愛憎劇がここにあるのです!!!!!!!
不倫に寝取られ、殺しもあるよ。
拗らせた狂人でありながらも、心のどこかで愛を求めている天智天皇と、彼を憎みながらもなぜか憎み切れず、言葉に表せない愛を抱える大海人皇子。ふたりが白村江の戦いのなか、海の上で互いへの感情をぶつけ合うシーンは脳裏にこびりついて離れません。そして、時は過ぎ、燃え上がる寺を背景に大海人皇子天智天皇をお姫様抱っこするのです!!!!!サイコーだ!!!!

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やっぱり天智天皇は受けだよね~弟がんばれ!!!!

日本史のブロマンスの中でもなかなか凝った作品です。おかげで高校受験の際はこの時代だけよくできました。私のバイブルです。
さあ、みなさん、『天智と天武』を読みましょう。

天智と天武 コミック 1-11巻セット (ビッグ コミックス)

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ころも

【12/5】ハッピーライフ

 

こんばんは。ついに、念願のジムデビューを果たしたのびです。街雄鳴造とともに、日々筋肉強化に努めてます。ジムに通っていて思ったことは、「運動するとポジティブになれる」ということですね。ストレス解消にもなるし、身体も鍛えられるし、何より超楽しい。

私、ジムに通って良かった~!

みんなも爽やかな汗を流して、鬱々とした学生生活から抜け出そうぜ。

 

今回のお題は「パーティー」なので、ポジティブパーティーな映画を紹介しようと思います!

 

私が今回紹介する作品は、『I feel pretty!~人生最高のハプニング~』という映画です。題名からし自己啓発じみてるなぁ。でも、「イエスマン」みたいに面白いんじゃないかな、と思って期待に胸を膨らませて観てみました。結構こういったコメディ映画好きなんだよね…。

 

 

あらすじ
主人公のレネーは、ぽっちゃりした体型とパッとしない顔で、容姿に強いコンプレックスを持っていた。高級コスメ会社のオンライン部門に勤めているが、華々しい本社ではなくチャイナタウンの地下室に追いやられ、日々を悶々と過ごしていた。ある雨の日、レネーは神様にお願いをする。「私を美人にしてください!」と。それから数日たち、一念発起したレネーはジムに通い始めるが、自転車のマシンから横転し頭を強打!目を覚ますと自分がトップモデル並みのの美人になっていたのだ。しかし、それはレネーの思い込みであって、他人から見てもレネーの見た目は何一つ変わっていないのです…。

 

 

結論から言うと、この映画めっちゃ元気が出ます。

この映画の一番良いところって、主人公の見た目が一つも変わらない所なんだよね。人って思い込みだけで、こんなに変われるんだと思ったよ。レネーが魔法にかかって自分を美人だと思ってる時って、今までと表情、言動、服装とかが全然違うんだよね。軽快なBGMに、全身ピンクでミニスカート、高いハイヒールを履いて、右手を突き上げて「Foooo!」って言いながら、レネーが本社を闊歩するシーンとかめっちゃワクワクしたな。それくらいレネーの面白いほど突き抜けたポジティブさに魅了される。この映画を見終えた時、余韻で眠れなかったもん。


他のキャラクターとレネーの対比もうまく描かれているなと思って、美人でコスメ会社の社長のミシェルは一見全てを持っているかと思われるけど、声の高さがコンプレックスで自信をもって話すことができない。レネーのボーイフレンドのイーサンも、俗にいう草食系男子で会社での男社会に馴染めずにいる。みんなそれぞれにコンプレックスを持っているんだけど、レネーの自信満々で前向きな姿勢にみんな魅了されて、変わっていく。

最近また『ご近所物語』を読んで、主人公の実果子も背が小さくて華奢な体型にコンプレックスを持っているけど、それを上手く利用したファッションをしていて、短所を長所に変えて個性を生かすことって大事だと思ったよ。

 

 

ご近所物語 完全版 全4巻 完結セット (愛蔵版コミックス)

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私も自分になかなか自信が持てないまま、先日二十歳になっちまいましたが、ジムに通ったりバイトをしたりして少しでも自分を変えていこうと思ったよ。顔はなかなか変えられないしね、うん。

毎日を楽しく生きていたいね!そんなわけで、のびでした~!

 

【12/4】マンガって超intellectualなpursuitじゃん

どうも、コト。です。今回のテーマはパーティー…っていわれてもこちとら陰キャ大学生、縁がないよ~って思っていたのですが、ありました、パーティー。今年の夏、オーストラリアに一か月ほど留学していたのですがそこで友人にパーティーに誘われたんですね。海外の“パーティー”っていうとドレス着てみんなで踊って…みたいなイメージがあるんですが私が行ったのは全然そういうのではないです。ペルー人の友人の家に行って、メキシコ料理を一緒に作って食べておしゃべりする、っていう所謂ホームパーティー。でもよく考えたら私似たようなことを友達とたくさんしてるなって思ったんです。私は月に一回高校の友人と集まって料理を作ったり踊ったりDVD爆音上映会してるんですが、これって…立派なパーティーじゃない?パーティーって言うと楽しさ倍増する気がする。要は物は言いようなんだなって思いました。

せっかく留学の話をしたし向こうで買った漫画を紹介しようかな、じゃん!

Laura Dean Keeps Breaking Up With Me

Laura Dean Keeps Breaking Up With Me

  • 作者:Mariko Tamaki
  • 出版社/メーカー: First Second
  • 発売日: 2019/05/07
  • メディア: ハードカバー

Amazonにあるんか~い。ま、本屋で選んでいるときのワクワクや店員さんとの会話はプライスレスやもんね。

この漫画、いい意味で海外作品っぽくない絵柄ですよね、すごく綺麗で一目惚れしました。
『Laura Dean Keeps Breaking Up With Me』表紙の2人はメインキャラのLauraとFreddy。もうタイトルでドロドロの恋愛って感じがして面白そうじゃないですか?でもね、さらに面白いことに、表紙のLauraとFreddyは両方女の子なんです!!!!つまりガールズ・ラブです。Foo~~


ざっくり内容を説明しますね。主人公・Freddyは17歳のアジア系の女の子で、レズビアン。ボーイッシュな見た目のLauraは学校でも有名なプレイガール。FreddyはそんなLauraに頭を悩ませつつタイトル通り付き合ったり別れたりの煮え切らない関係を続けています。物語はFreddyのLauraとの何度目かの失恋から始まり、日常生活のなかでのFreddyとLaura、親友のDoodle、友人たちとの交流を描いています。

この漫画、微妙な距離感の変化とか恋に振り回される多感な女の子たちが本当に上手く描かれているんです。Lauraはもう、本当にどうしようもない遊び人なのにFreddyは「恋は盲目」。ずるずるとLauraに入れ込み、親友DoodleのSOSに気が付けない……。読んでいると口出ししたくなります。「なんでLauraと別れないの?あんな子どこがいいのよ!」「FreddyとDoodle最近話してなくない?大丈夫?」ってね。読者はFreddyたちのゴシップを楽しんでおせっかいを言うクラスメイト、みたいな立場で楽しめるのがこの漫画の人物描写の綿密さと人間関係の動かし方の上手さを物語っているのではないでしょうか。


……まぁ確かに英語なのでニュアンスが分からないところ結構あるんですけどね……。I feel like Charlie Brownとか……どういうことだよって思ったよねPeanuts詳しくないもん。でも勉強になるし一石二鳥なのかな。いや~英語力あげたいなってつくづく思いますね。
でもレズビアンである主人公の複雑な感情とか、それゆえの学校での噂話、gayとhomosexualの言い方で揉めるクラスメイトとか興味深いシーンがいくつかあります。ただの女の子同士の恋愛の話ではなく、あくまでこの漫画は私たちと同じように社会の中で日常を送る、17歳の女の子の話なんです。たまたま彼女がレズビアンだっただけ。そういう描き方がされた良い作品だと思います。

心理描写が上手いし絵もきれいなので日本の漫画しか読んだことないよって人にも読みやすい作品だと思います、ぜひ。(私のガバガバ英語力で読めたから気を張らなくてもいけるいける)言ってくれればブンピカ持ってくよ~。


最後にこの作品で好きなやりとりを貼っておきますね。おやすみっ♡
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【12/2】パーティーって言葉に悪い印象があるなら全部パリピのせい

こんにちは。漫トロピー副会長のふれにあです。
若干遅くなりましたが12月2日分のアドベントカレンダーです。
先日のNFは楽しかったです。

やってきましたね、今年もアドベントカレンダーの季節が。
今年のテーマは「パーティー」。パーティーってなんかいいよね、言葉の響きが。大学生になると友達とわいわいやるのって「飲み」とか「コンパ」と呼ぶようになるじゃないですか。それに対してパーティーという言葉の無邪気さよ。誰かの家で壁に折り紙でつくったチェーンみたいなやつ貼り付けてさ、料理囲んでクラッカーとともに始めたいもんだね、ああパーティー
というと凄く懐かしく素敵な感じがしてよいけれど、そう考えると「パーティーピーポー」略して「パリピ」ってほんと頭の悪い品格のない言葉だな。我々の無邪気さを汚さないでくれ。

🌲🌲🌲

さて、漫画の紹介。今回はNFの総合ランキングでは語られなかった新しい作品を探してきて語ろうということで、今回もジャケ買いをしてきました。プレラン(漫トロ内で総合ランキングを考える数か月前に各自良さそうな作品を10作ピックアップして紹介する会)で3作ジャケ買いしたときは正直はずれが多かったけど、懲りずに選んだよ。はいこちら。

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あ!! いま読んでる漫トロ会員の何人かの心の声聞こえたよ!?
「あ~、こいつが好きそうな表紙やな……」って。
それは否定しないけど。ジャケ買いだしね。
この漫画は2019年10月5日付けで発売されたイトイ圭さんによる作品です。僕はこの作者の作品を初めて読みました。「楽園」で連載していたそうです。残念ながら来年のランキングには入れられません。
ところで僕は昨年施川ユウキさんの『ヨルとネル』について書いたので、奇遇にもまた「○○と○○」というタイトルのものを紹介しているんだね。
パーティー? 関係ないっす。

ーーー
主人公は女子高生の頬子。父親はロックバンド「花と頬」のリーダーを務めている。ある日委員会の仕事で話すこととなったクラスの男子・八尋に、父親がミュージシャンであることを気づかれてしまう。コアな音楽趣味を持つ八尋は頬子の父の大ファンだったのだ。そこから二人は静かな図書室での筆談を通して、互いの趣味などについて話を深めていく。気づけば頬子は、八尋に紹介された音楽ばかり聴くようになり、八尋に想いを寄せてるようになっていた。しかし、距離を縮められたかと思うと、話の中心は父の音楽のことばかりだった。「好きなミュージシャンの娘だから私と話しているの?」と不安になり始める。未だ垢抜けない不器用な二人と、彼らを取り巻く人々の、ひと夏の物語。
ーーー

というお話。1巻完結だよ。
率直な感想は、「淡々とした進行でこちらが行間を読まないといけない部分が多分にあるが、キャラの機微を繊細に描けていて素直に切ない気持ちになれた。面白かった。」といったところでした。
雑に言うと、「田島列島や『違国日記』好きな人は割と好きそう」。
この作品をジャンル分けするなら「恋愛もの」ということになるけど、ドラマチックな事件やボロボロ泣けるシチュエーションはあまり見つけられないかもしれない。しかし、我々の日常も別に「恋愛もの」でも「バトルもの」でもないし、回収されない伏線もあるし、覚えていることしか覚えていないものでしょう?
ジャケ買いが大外れだったら別の漫画で描くことを考えていたので、これで書けることを嬉しく思う。

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視線の移り変わり上手いね

作中の描写はほぼすべてが、「舞台に役を配置し、吹き出しでセリフを言わせる」だけのシンプルな手法で進んでいく。
静かなタッチで描かれていく登場人物は、いつも表情にコンテクストが込められている。特に視線の向け方が毎回毎回上手いなと思った。会話文も不自然さがなく、作り話感を抱かずに読み進められる。それだけ丁寧に作りこまれている。
物語中何度も、頬子と八尋によるルーズリーフ上の筆談が描かれるんだけど、ふたりの文字の癖から明らかに書き手が区別できるところや、一昔前のメールのような、もどかしくもドキドキするやりとりには、つい「いいなぁ」と思わずにはいられなかった。あまずっぱい。

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なんかいいなぁ

音楽、文学、時には漫画が会話の中で数多く紹介され、物語のアクセントになっている。コアな音楽には全く知識がない中で、親しい人から勧められたものをとりあえず見てみるという展開は、多くの人が経験したことがあるのではなかろうか。

主要キャラ二人の関係性が変化していくところが主な話題だが、有名人の娘に生まれた頬子が父のファンである八尋に想いを寄せていくという設定は、他のどこかで似たようなものを見たことがあるような気がしながらも、陳腐さはなかった。
そこでミュージシャンの父親をもつ頬子と医者の父をもつ八尋の、似ても非なる家族観が物語を引き立てている。大きな力を持つ父をずっと見続けてきた二人はその家族観に少し冷めたところがあり、そこが話しやすさにつながっていたのではないかと思う。

一番心にきたのは終盤の展開だが、それをここで語るわけにはいかない。
読み手が意欲的に読もうとすれば深く味わえる作品だから、ここまで読んで「良さそうだな」と感じたら実際に読んでみてほしい。

しかしながら、僕が2回読んだ程度では直接描写されていない設定や出来事を読み取るのは難しかった。ブンピカ持ってくからみんな読んで話聞かせてくれ。
作者はあとがきで「世界で3人ぐらいしかこれを読んでいないんじゃないかと思って描いた。登場人物の背景のストーリーはあるが、それを描くより読み手のなかで余韻に浸ってほしい」というようなことが書かれているが、僕としてはもうちょっと説明が欲しかったなあ。これだけ精神描写上手いんだから。

🌲🌲🌲

ところで、この前みかんばことだちと僕だけがブンピカにいたときに、「読み手である自分が物語の主人公より一回り年上になっちゃうと、もう『浸る作品』としての側面が大きくなりすぎちゃって悲しいね」という話をしたけど、この作品でもかなりそういう要素はあった。くぅー。

俺たちの青春はまだまだこれからだ!


(ふれにあ)

【12/1】ワインを楽しむ

お久しぶりです、現会長のだちです。
NFも終わり、そろそろ代替わりの時期です。
この時期といえば、今年もやりますアドベントカレンダー
アドベントカレンダーとは何ぞという方は文字をクリックすると解説のあるページに飛べます。便利ですね。

さて、今年のテーマは「パーティー」だそうです。これからのシーズン、クリスマスに年末年始に、パーティーを開く口実はいっぱいあります。
最近漫トロでもNFの打ち上げがあったのですが、大学生にもなると「パーティー」というより「飲み会」と呼ぶべきものが多いです。パーティーなんて単語はめったに聞きません。
飲み会では自分は酒を飲んで酔っ払う上回たちを見るだけだったのですが、つい先日20歳の誕生日を迎え、自分も酒が飲めるようになりました。祝え。
そいやバースデーパーティーとかもありますね。この時期だとクリスマスと一緒くたにされてしまうという話はよく聞きます。自分は別々でしたが、実際まとめられる閾値がどこら辺なのかは結構気になりますね。

話が関係ない方向へ飛びだしたので漫画の紹介へ移ります。
ここはやはり酒に関する漫画を、ということで紹介するのはこちら、『ワインガールズ』。

ワインガールズ 1 (マイクロマガジン・コミックス)

ワインガールズ 1 (マイクロマガジン・コミックス)

一言で言えば、ワインの擬人化漫画。正確に言うと、ワイン用ブドウの擬人化です。
内容は、擬人化された少女たちがワインを作ったり飲んだりしている、日常系の類でしょうか。
擬人化や日常系はもうありふれたものになっていますが、その中でこの漫画はテーマの活かし方が非常に上手い。
まず、当然ワインの話がメインなのですが、それがめちゃくちゃ詳しい。品種毎の特徴やワインの製造法といった基本知識から豆知識まで、内容が豊富かつ解説が丁寧で、読んでいくとワイン知識がどんどん増えていきます。
次に、舞台やキャラクターの設定。実際の品種の特徴などに合わせて設定が作られているので読みやすく、ワインの歴史というのが背景にあるので自然とキャラに深みが出ます。
ワインの話、それに応じた設定というのがまたもう一つ良い要素を生み出します。それが百合要素です。
どういうことかといいますと、ワインは必ずしも一つの品種だけで作られるわけではなく、相性の良い品種を配合して味や香りのよりよいワインを作ることもあるわけです。つまりカップリングが存在します。
というわけで、そういう配合などを元にした百合が展開されます。擬人化漫画特有のキャラ作りがここでも存分に活かされており、一つの百合の表現としてとてもよく出来ていると思います。
そして、これらの要素が全編通して一気に押し寄せてくるので、非常に濃い漫画となっています。正直一回で入りきらないくらいの物量。ワインの擬人化というテーマを話の様々な要素に落とし込んでいて、擬人化漫画として完成度が高いです。

ワインとか全然知らないよって人でも楽しめる(というか自分がそう)漫画なので、これからのパーティーシーズンにこれを読んでワインに思いを馳せてみるのも良いかもしれませんね。

『空の青さを知る人よ』を見ろ

こんにちはファービーです。先日、醤油とばいたるとの関東出身の3人で『空の青さを知る人よ』を見てきました。埼玉の秩父が舞台だからね、しょうがないね。(なぜか)映画の上映前に面白かったら感想をブログに書くと醤油と約束してしまったので、感想を書きます。ネタバレを含むのでまだ見てない人は映画館へGO!
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あらすじ

あらすじは公式サイトから引用します。

山に囲まれた町に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。将来の進路を決める大事な時期なのに、受験勉強もせず、暇さえあれば大好きなベースを弾いて音楽漬けの毎日。そんなあおいが心配でしょうがない姉・あかね。二人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、二人きりで暮らしてきたのだ。あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。姉の人生から自由を奪ってしまったと…。そんなある日。町で開催される音楽祭のゲストに、大物歌手・新渡戸団吉が決定。そのバックミュージシャンとして、ある男の名前が発表された。金室慎之介。あかねのかつての恋人であり、あおいに音楽の楽しさを教えてくれた憧れの人。高校卒業後、東京に出て行ったきり音信不通になっていた慎之介が、ついに帰ってくる…。それを知ったあおいの前に、突然“彼”が現れた。“彼”は、しんの。高校生時代の姿のままで、過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。思わぬ再会から、しんのへの憧れが恋へと変わっていくあおい。一方で、13年ぶりに再会を果たす、あかねと慎之介。せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。

「空の青さを知る人」とは

本作のタイトルにもなっている「空の青さを知る人」とは誰のことなんでしょう。おそらくひとり目は、相生あかねです。
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本作ではしきりに井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」という言葉が使われます。これは井戸にいるカエルは大海を知ることはないけれど、一つの場所に止まり続けたからこそ、知っていることもあるという意味です。妹のために地元に残り成長を見守り続けたあかねこそ、この「空の青さを知る蛙」なのでしょう。
もう一人は13年前の慎之介こと「しんの」も「空の青さを知る人」です。
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本作の主題歌であるあいみょんの『空の青さを知る人よ』の歌詞にこんなフレーズがあります。

赤く染まった空から
溢れ出すシャワーに打たれて
流れ出す 浮かび上がる
一番弱い自分の影
青く滲んだ思い出隠せないのは
もう一度同じ日々を
求めているから

様々な解釈ができると思いますが、この歌詞を大人になって現実の厳しさによって自分の無力感が明らかになった時に若い頃の自分を思い出しているのだと僕は思いました。
青二才という言葉があるように、青さというのは若さの象徴です。主人公のあおいは妹であり、あかねは姉です。若者は根拠の無い自信をを持つものです。それが若者の特権と言わんばかりに。しんのの持つ「空の青さ」とは「思春期の全能感」に他なりません。主要人物4人の中でこの「思春期の全能感」を持っているのはしんのだけです。
以上のこと踏まえると、本作はあおいが二人からそれぞれの「空の青さ」を受け取る話だと考えることができます。
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あおいはあかねに対して、当初、複雑な感情を抱いていました。これまで育ててくれた感謝を持っていると同時に、自分のせいで地元に繋ぎ止めてしまった罪悪感、あるいは大海に出て行こうとしなかった若干の失望感。あおいが地元から出ていきたいと思っているのは、ベースで成功したいという思いからではなく、どこかぎごちなさの残る姉との関係に踏ん切りをつけたいという思いからでした。しかし、物語の終盤であかねが書き続けてきた自分の成長を記したノートをみて、あかねがいかに苦労して生きてきたか、そしてあかねは決して不幸ではなかったことをあおいは知ります。一つのことに向き合い続ける大変さと、そして一つのことに向き合い続ける価値をあおいはあかねから学んでいきます。
また、作品を通してあおいはしんのに惹かれていきます。それはしんのが自分にないものを持っているからです。それこそが「思春期の全能感」です。あおいは両親を事故で亡くし、姉に迷惑をかけてこれまで生きてきました。そのため、どこか擦れていて現実から目を逸らすためにベースを弾いているような面があります。だからこそ、天真爛漫に楽器を奏で希望を持って前に進もうとするしんのの姿が魅力的に映るのでしょう。

本作のメインテーマ

本作のメインテーマは「思春期の全能感」の肯定です。一般論として、若者の根拠なき自信というのは空虚なものであり、やがて若者は現実に叩きのめされ、自分の限界を知っていきます。それを象徴するかのように13年後の慎之介は現実に打ちのめされた存在として登場します。またしんのが蔵から出られないという設定も「思春期の全能感」が現実に影響を与えることは出来ないのを表しているのでしょう。だからこそ、物語終盤であおいとしんのが手をとって蔵から飛び出すシーンは、「思春期の全能感」が現実を変える可能性を持っていることの提示に他なりません。しんのとあおいが共に空を舞うシーンは観客にカタルシスを与えると同時に、「なんでもできる」というのを端的に示した素晴らしいシーンであると個人的に思っています。
「思春期の全能感」は大人たちにも影響を与えます。しんのの思いに触れた慎之介は、空は飛べないながらも現実的な手段であかねの元へと走り出しますし、あかねはしんのとのやり取りでどこか諦めていた慎之介との恋愛の最初の一歩を踏み出します。そういった意味で、「思春期の万能感」というのは空虚なものではあるけれど、外へ一歩踏み出す勇気を与えてくれる存在である、だからこそ無価値ではないというのがこの作品の伝えたいことなのでしょう。
最後のシーンであおいは空に向かって思い切りジャンプします。しんのと一緒に空を飛んだことを思い出すかのように。しかし、そのジャンプは空は愚か、地面からわずかに離れただけのように描かれます。このシーンは、あおいが「思春期の全能感」をしんのから受け取ったこと、世界にはどうしようもなく現実が存在すること、それでも一歩進むのは出来たことを全て同時に描き切った儚くも希望のあるものではないでしょうか。


最後に

本作はどちらかと言えば大人に向けて作られた作品であると思っています。私自身、学生の身分であり「思春期の全能感」を失いつつも現実に打ちのめされる経験はまだしていません。なので本作が心の奥にまで響く作品であったかと言われると難しいです。ですが5年後,10年後に見返したい作品であることは間違いありません。だからこそ、今大人の人に見てもらいたいと思っています。
今回、映画の絵、音楽、演技などに関して詳細に書くことはしません。ですがどれも高水準で素晴らしいものであると思っています。もしこの記事読んで映画に興味を持ったら映画館にいって見て欲しいです。売り上げがあまり芳しくないらしい…

P.S「こち亀」永遠じゃありませんでしたね。