mantrog

京大漫トロピーのブログです

【1/18】Catanを楽しむための101の方法②

mantropy.hatenablog.com
のつづきです。

③3番目のプレイヤーの思考
 1番目・2番目のプレイヤーが開拓可能領域と資源種類を確保する守りの姿勢であったのに反し、3番目のプレイヤーには攻めの姿勢が必要となります。具体的には、幾らか無理を通してでも、4番目のプレイヤーの動きを制限する配置を選ばなくてはなりません。4番目のプレイヤーは(Catanの勝敗を7割左右する)初期配置に関して圧倒的優位であり、したがって最も警戒すべきプレイヤーとなります。前回、1・2番目のプレイヤーが下流の動きを想定する行為は無駄であると論じましたが、3番目は事情が異なります。動きを把握すべき対象が一人に絞られ不確定要素が減ずるため、読むことの有意性が増す。4番目のプレイヤーの採用しそうなムーブを先んじて潰し、困難な盤面を叩きつけることは、あなたの可能性を高める有意義な行動です。

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 前置きはほどほどに、前回のマップを考察してゆきましょう。3番目のプレイヤーの第一に想定しなくてはならぬことは、4番目にとられたら嫌なムーブです。嫌なムーブとは、ケアすべき順に

(1)6・8のどちらにも隣接且つ資源5種類を網羅する配置。
(2)道賞と騎士賞を2つとも狙えてしまえる配置。
(3)1・2番目のプレイヤーがせっかく絞った希少資源をたやすく獲得できてしまう配置。
(4)6・8を被らせた2:1港を序盤からブン回らせてしまう配置。
(5)開拓可能領域を広く確保させてしまう配置。

 等が挙られます。(1)は考えなくてはならぬことが山積のため、あとまわし。実戦では、(2)や(3)の場合から検討するとパターン数が抑えられ、またその過程で(1)や(4)も出てくるため、スムーズです。

③-(2)道賞と騎士賞を睨む。
 3番目のプレイヤーはまず、道賞と騎士賞をそれぞれどのプレイヤーが獲得しそうであるかを考えましょう。ボーナス2点は、10点の内訳を考えたとき、強烈です。1位に立つプレイヤーは、大体このどちらかを獲得します。当然ですが、道賞は6・8の土・木に開拓地をさわらせたプレイヤーのものとなります。上のマップを見ると、1番目のプレイヤーが8土にふれさせてますね。返しに8木・9木を獲れば、割と有力な道賞候補となりそうです。しかし、木よりも小麦の供給を優先する可能性、2つ目の開拓地を最後に置くとき、道を伸ばしてゆく先が果たして残ってるか否かと言う懸念もあるため、一旦保留とします。2番目のプレイヤーに関しては、返しで6・8を含む道セットの地点を確保することは不可能と判るため、考慮しません。となると、道賞の獲得が濃厚なのは、自分か4番目のプレイヤーです。

 次に、騎士賞の候補を見てゆきます。鉄の出目が3・11・12と弱めとは言え、膠着状態に陥る盤面のため、3鉄・11鉄は試行回数の増えたぶん何回か出ると考えて結構でしょう。とすると、鉄にふれさせたプレイヤーが畢竟一歩リードします(※2:1港や3:1港の可能性は、一先ずここでは考慮しません)。盤面を見ると、1番目は返しを小麦にふれさせられたなら、チャンスがあります。2番目は既に発展セットを整えたこともあって、騎士賞を目指す意志を感じます。しかし、3番目・4番目が芽無しかと問われたら、そうでもありません。鉄は不足ぎみですが、5・6・10と、小麦と羊が潤沢な盤面で、貿易などで鉄さえ工面できれば、騎士賞は十分にとどく範囲です。そしてこれこそ、前回、上のマップが2番目のプレイヤーに辛辣だと言った理由です。自分は道賞の可能性を捨ててしまってるのに、周囲は道賞と騎士賞のどちらをも視野に入れたプレイングを許されてしまってる。キツイと嘆きたくもなります。

 3番目のプレイヤーは通常、4番目の道賞と騎士賞どちらかの可能性を消しに掛かります。しかし現状、可能性は等しく残されており、なにをしばるべきなのかイマイチ判然としません。困った。更なる糸口を求め、(3)の考察へ移行します。

③-(3)レアメタルを睨む。
 反復となりますが、上図で希少なのは鉄です。レアメタルです。感謝すべきことに、1・2番目のプレイヤー達は、レアメタルをしばってくれました。初期配置フェイズは、1~3番目のプレイヤーが協同して、4番目の動きを鈍化させる段階でもあるため、上の2人は見事に仕事を果たしたと言えます。3番目は、なるべくこの恩に報じなくてはなりません。特に2番目は、シビアな状況であろうに1番目の土港さえ睨む燻し銀なムーブをしてくれてます。こんなんされたら濡れます。ビッシャビッシャのノアの大洪水です。筆者が3番目なら、この理性的なプレイヤーとはゲーム中も友好な交渉関係を築こうと目論見、不足した資源を補完しあえるよう、無理の生じぬ範囲で主力の資源を被らぬよう初期開拓地を配置します。好きです。些か余談を口にしました。再び話を戻す。(3)で浮上してくるのは、2人のしばった鉄を自分もしばるべきかと言った問題です。早速、マップを眺めましょう。

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 鉄の獲れる地点を列挙しました。この内、F・Gは12鉄がplayableな数字ではなく、候補から消去します。次に、「11鉄・12鉄」の木港です。(4)を先取しますが、これを4番目のプレイヤーが活用する場合、もう一つの開拓地を8木・9木のどちらかにふれさせなくてはなりません。まず8木だと、考えられる置き方は「3羊・4木・8木」もしくは「4木・8木・10麦」で、前者は土と麦を、後者は土と羊を犠牲にする。8木のパワーに期待を寄せたとしても、個人的には大して優良だとは思えません。9木はG「5麦・9木・12鉄」の一点。こちらも、せっかく4番目に置くと言うのに、一つも6・8にふれられず微妙。したがって木港のセンも消去。残るはD・E・Hですが、D・Eのどちらかに置くともう一方は潰れ、且つ6麦を有するEのほうが出目として優秀です。以上より、3番目が4番目の鉄をしばるなら、Eに開拓地を置くべきであると言うことが導き出せます。

 ここでもう一歩踏み込んで考えることは、Eに開拓地を置くと、依然3鉄はHが残ると言う点です。4番目のプレイヤーがHをとるなら、もう一つの開拓地の候補は「2木・6羊・9土」と「3羊・4木・9土」辺りでしょうか。前者は2木がplayableでなく、初期ハンドで木を1枚確保できたとしても、終始木の弱さを補うプレイを要し、隙が生まれます。後者は、4と9の道セットを含んだバランスの良さが光るものの、6・8を欠き、4番目の行動としては弱めです。よって、3番目がEに置くなら、4番目の鉄をしばることができた、或は弱体化させたと言っても大丈夫でしょう。騎士賞を潰すこともでき、(2)の観点にも合致します。

 しかし、以上の理由からEに置くと決めるのは、些か早計です。次は逆に、自分がEに置かぬパターンを想定しましょう。このパターンで4番目は、6麦と3鉄にさわらせぬ理由が見当たらず、ほぼ確実にE地点を獲ってくる。すると、もう一つの開拓地では木と土のセットを押さえたくなる。

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 その候補は上図のようになります。まず、IとJですが、やはり2木がネックです。Eでふれた11羊を補完するてだてもなく、①や②のプレイヤーに騎士賞も競負けそうです。Kは6羊が優秀ですが、Eの6麦と被っており、また3鉄がそれほど出る筈もなく、ハンドで資源を腐らせそうです。唯一6羊を活かせる羊港も遠く、最速で3:1港を獲りに行くとしても2木でデメリットのほうが目立つ。羊で木を釣出せそうな交渉先も特段見当たらず、I~Kの3地点は置かれたところで脅威は感じません。すると、問題となるのは、N・Mの道セットを含む2地点です。ここで、はじめて(1)の禁則がちらつきます。すなわち、4番目にEとN・Mのどちらかに置かれると、6麦を含む資源5種類を揃わせてしまう。これは(2)の道賞と騎士賞の阻止と言う観点からも、確実に回避しなくてはならぬ事態です。すると、3番目のプレイヤーは、Eに置かぬなら、M・N(おそらく羊港も狙えるMでしょう)に置くことになる。煮詰まってきましたね。つまり、3番目は、EかMを選ばなくてはならぬことに感づくのです。
 あとはEとMの純粋な比較です。

③-(4)2:1港の潜在性を見通す。
 これまでの話で、ちょっと待てや。4番目のプレイヤーのとる他の動きを検証してねーじゃん、と疑問を感じる人もおるやもしれません。たとえば、Kと「4木・8木・10麦」に置き、6・8を揃える物量開拓地プレイなどですね。正直、これをケアする必要も、余裕もありません。3番目は、あくまで自らの利益を損なわぬ範囲で動くべきです。過剰な奉仕精神は自滅を招きます。それに、6・8の物量作戦をケアするときは、6・8の資源が2:1港の配置と噛合うときです。マップを見ましょう。8土は①によって潰されてます。6麦の麦港は、鉄が弱めの盤面では脅威は低めです。8木にさわらせる木港は、そもそも木港が遠く、獲得するには土を捨てなくてはならぬため、期待薄です。残った6羊の羊港ですが、これはなかなかにありそうです。しかし、このマップでは出目の弱さから、鉄が盗賊や騎士に止められることはほぼなく、逆に羊の2:1港を得た6羊は恰好のマトとなります。う~ん、7を出しちゃった。とりあえず6羊を止めておこうと言う流れが一度でき上ってしまえば、そのプレイヤーは相当な苦境に追込まれます。したがって、本マップでは港を考慮したプレイングを意識する必要はありません。

③-(5) 開拓可能領域を狭める。
 そろそろ、3番目がどこに置くか結論を出しましょう。EとMの比較は割と等価です。発展プレイを好むならE、道賞を視野に入れた開拓地プレイを好むならMとしても良さそうです。ここで最後の一押しとなるのが、4番目の開拓可能領域です。Eに置くと、マップのまるまる西半分をガラ空きにしてしまうことが見てとれます。マップを広く残す動きは、下流のプレイヤーに開拓地プレイをするチャンスを与えてしまう。そうするよりは、早めに9土を確保し、返しで小麦を貰うMのほうが、幾分良さそうだ。道の伸ばす先は悩みますが、競争率の高そうな8木よりも、安全そうな6羊に向って伸ばします。

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 こんな感じになりました。疲れてきたので、4番目以降はあしたの僕が書くことでしょう。アカネチャンカワイイヤッター! 誰か琴葉姉妹のCatan実況あげてくれませんかね?
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2016アドベントカレンダーまとめ

QPです.だいぶ遅くなりましたがアドベントカレンダーをまとめます.

今年(去年)のアドベントカレンダーは連投芸がない代わりにアマガミSSのレビューがありましたね.
僕も参加したので先に裏アドベントカレンダーとして宣伝しときます.

mantropy.hatenablog.com



今年も例年通りあったアドベントカレンダー
去年(一昨年)のテーマは「宗教」.だいぶクリスマスとは遠いテーマですね.

さて,今年のアドベントカレンダーのテーマはというと...
「煩悩」

突然の仏教(例のアレ)←懐かしい


なので今年のアドベントカレンダーの更新は年末まで行われました(大嘘)

それでは1日からリンクを張っていきます.

こんなもんですか.
ユーカリの記事とアマガミレビューが熱量があっておすすめです.(めっちゃ長いけど)

QP

【1/17】Catanを楽しむための101の方法

 どうも、ミシェルです。アマガミssレビューを終えて暇なので、漫トロで最近市民権を獲得しつつあるCatanの戦略論でも書きます。因みに記事名は、某有名18禁ゲームのパクリです。101も項目を書き出せる筈もありませんが(ありませんよね?)、困難な盤面を乗りきるヒントを幾つか、皆さまに紹介できればと思ってます。これを読んだCatanプレイヤーからのフィードバックも期待してたりします。一応、(飽きなかったら)数日に亘って更新する予定です。記念すべき一日目は、初期配置に関してです。

カタン スタンダード版

カタン スタンダード版

◎初期配置のセオリー
 Catanは初期配置の段階で7割決まってしまうゲームだと頻繁に言われます。筆者もその意見には、おおむね賛成です。世界大会(youtubeに上ってます)を観戦すると、プロプレイヤーが10分以上、初期配置でうなる姿をよく目にします。それほど、初期配置は重要なのです。

1章)各資源の潜在的な価値
 実際の盤面を見てゆく前に、まず5つの資源の優先順位に関してふれておきます。あくまで個人的な見解ですが、各資源のランキングとその理由は、おおむね以下のようになります。
①小麦(4枚あるものの、開拓地、都市化、発展と、ほとんどのアクションに要求される。ゲーム中を通して需要の高くなる傾向を有すため。交渉を得意とするプレイヤーやトリッキーなプレイヤーは、鉄よりも小麦を重視する印象を受る)

②鉄(タイル3枚で供給不足になる。また、ゲームの終盤で都市化は大体必須のアクションとなる。なぜなら、都市化無しで10点の内容を考えると、開拓地5つで上限5点。最長交易路(以下、道賞)と最大騎士力(以下、騎士賞)を獲ったとしても、2点ずつで合計9点。それに5ポイントあるポイントを1枚足してようやく10点。道賞と騎士賞の内一つしか獲得できなかった場合は、ポイントを3枚。どちらの場合も、勝ち筋が大変細くなってしまう。また、貿易で鉄を賄おうとしても、都市化に必要とされる鉄は3枚。4:1貿易だと12枚、3:1貿易だと9枚もの他資源を必要としてしまって、速度不足とコストパフォーマンスの悪さが目立つ。また、鉄の重要性の高まるのは終盤で、基本その段階になると交渉の頻度は少なくなり、ましてや鉄は出回らなくなってしまう。以上の観点より、最も重要な資源は「鉄」だとするプレイヤーも大勢存在する。むしろ、マジョリティを占めるのはそっちやもしれぬ。交渉するにも発展するにも、鉄はそれ単体で最強のため、鉄と小麦のタイルが等価な場合、交渉に弱点意識のあるプレイヤーは前者を優先するべきだと感じる)

 ③土(木と同じで、街道と開拓地にしか使わぬものの、タイル3枚なので優先度は木より高め)
 ④木(タイル4枚。木と土は、3番目の開拓地を建てようと動く序盤に重要性の増す資源)
 ⑤羊(タイル4枚。騎士賞を狙うプレイで無かったなら、ハンドで腐る傾向にある。騎士賞を狙ってようと、まず鉄と小麦不足に陥って余る。騎士賞を獲ったあとは、都市化優先になるので腐る。羊の2:1港が最強とされるゆえんである)

 もちろん、以上の順位は場況やプレイスタイルによって若干変動するものの、フラットな状態ではおおむねこの理解でこと足りると感じます。これを踏まえ、次は実際の盤面を見ながらポジションとバランスに関して考察しましょう。

2章)ポジションと資源のバランス
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http://www4.plala.or.jp/hammer/catan/genlite/genlite.htmlで生成したマップです。流石に少し露骨過ぎやもしれません。

①1番目に開拓地を置くプレイヤーの思考
 念のため確認しておくと、赤の数字(6・8)は期待値が高く、最も優秀です。5・9は次に強く、4・10までを戦略の核にすることの可能なplayableなタイルとして見て大丈夫でしょう。これら6つの数字のどれかへさわらせたら、その資源はコンスタントに獲得できると皮算用して結構です。3・11は一ゲーム中に出ても3~5回まで、2・12は出たらラッキー程度に考えましょう。どのプレイヤーも基本、自分の初期配置を6・8にさわらせようと動きます。しかし、資源と数字の並びによっては、その限りではありません。
 まず、1番目のプレイヤーは、極悪な糞マップに追込まれて奇策の求められる場合をのぞき、一つ目の開拓地を3種類の資源にさわらせるべきです。なぜなら、最後に二つ目の開拓地を置くときには、一つ目と資源の重複しておらぬplayableな点は残っておらず、大体1種類の資源をきり捨てる状況になるからです。しかし、先の鉄則を守るなら、最悪でも4種類の資源を確保することができる。はじめ二つの開拓地で3種類の資源しか確保できぬプレイヤーは、よほどうまく交渉を運ばなくては満足に開拓地を建てることもままならず、そのまま出遅れて敗北します。したがって1番目、2番目のプレイヤーの置く一つ目2種は、初期配置3種のリスクを常に孕み、大変にリスキーな行為であることをよくよく自覚しなくてはなりません。一般として言われる基準ですが、6・8を含む5種は言うまでもなく、6・8を含まぬ5種か、6・8を含む4種が闘える初期配置とされます。
 それでは、上図を見てみましょう。まず、はじめに見るべきは各資源の出やすさです。中でも、真っ先に注目すべきは鉄です。このマップですと、3・11・12と弱めですね。したがって、どのプレイヤーも都市化は遠く、終盤膠着状態に陥って長期戦となることが予見されます。そうすると、鉄を獲得する方法は、3・11・12を出すか、貿易に限られます。鉄(ときに小麦)の数字が2・3・11・12と一つの4・10で構成される以下のマップは、2:1貿易と3:1貿易が極端に強くなって、港の重要性を高くする。一番目のプレイヤーはあわよくば2:1港の獲得まで視野に入れ、初期配置を選ぶことを強要されます。

◎港の重要性
 3:1港は、あると便利の典型で、割と必須です。皆さまの中にも、港が獲得できず終盤の動きが鈍化し、敗北を喫す体験をしたプレイヤーが大勢存在することでしょう。筆者も、その内の一人です。体感として、港の有る無しでは、勝率が10%ほど変わります。終盤、4枚トレードを試みると、どうしても途中でバーストしてしまうんですね。騎士や盗賊の運用で誤魔化せることもあるものの、基本、7出るなと禱るフラストレーションの溜まる展開となる。ところで、2:1港の強さに関してですが、羊港が最強です。次に、木、土、小麦、鉄港の順でつづきます。港は普通、終盤に不足した鉄を獲得する意図で活用するもののため、鉄港は最弱です。しかし、二つ目の開拓地を鉄港に置くときは例外で、序盤に不要な鉄を不足した資源へ変え、道や開拓地を建てスムーズに態勢を整えることが可能となります。但し、あくまでもその恩恵が発揮されるのは序盤~中盤までのため、二つ目を鉄港に置くことを積極的に狙うのは、やはり弱めのムーブとなります。貿易は、不要な資源を有用に変える強さの塊のようなムーブですが、1枚や2枚のロスを生じる事実を無視してはなりません。また2:1港と噛合う6・8の資源タイルは、騎士や盗賊の恰好の標的とされる。まして、卓上に誘導巧者の存在する場合は、そのプレイヤーの走る間の好都合な隠れ蓑・デコイとして活用されてしまう。最強である羊港を含め、開拓地の二つ目を港に置くときは、それ一辺倒に頼らぬ柔軟な配置をする必要が生じると言うことです。

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 上図の考察に戻ります。鉄が貴重であることは、既に確認しました。しかし、そのほかの資源は割と満遍なく出ることが見てとれます。となると、ここで2つの選択肢が浮上します。どうせ、出目は弱めなのだからと言ってあえて鉄をきるか、供給不足の鉄を重んじるかと言う二つです。この基準となるのは、playableな他2種の資源にふれさせることが可能か否かです。たとえば、3・11・12の鉄のどれかが6や8、仮に6・11・12であったなら、答えは簡単です。6鉄に隣接し且つ3種の資源を獲得できるよう配置すれば最良のムーブとなります。ところが、3鉄に隣接させ、その上得られる資源が2種であったり、3種でも残りに5・6・8・9の含まれぬようなら、本末転倒です。素直に鉄は諦め、よりバランスのとれた地点に配置するのが賢明となります。件のマップを見ると、幸運なことに、A「8土・4羊・3鉄」とB「6麦・4羊・3鉄」、C「6麦・4羊・11鉄」の3地点が候補に上ります(「6麦・11羊・3鉄」は上位互換のB・Cが存在するため、除きます)。この三つから、消極法で一つを選ぶとします。まず、配置のほかは得られる資源の内訳も期待値も同条件のB・Cですが、同条件なら港に近く位置するほう、Cのほうが3つ目の開拓地の建設地点を確約でき、安定します。一番目、二番目のプレイヤーの一つ目の開拓地の道は、外側に伸ばすべきです。内に伸ばすと、下の巡目のプレイヤーの動向によって道の先に開拓地が建てられなくなったり、余計な道を建てなくてはならなくなったりすることが、往往にして起きるからです。たとえば、Dの地点に開拓地を置き、Bのほうに向かって道を伸ばすと、そのBと「6麦・5麦・11羊」に開拓地を置かれて詰みます。たとえそうでなくとも、その2地点の付近に置かれると、道を一本余計に建てなくてはならなくなります。この一本は微差のようですが、大差です。きもに銘じましょう。話は戻り、BとCの比較ですが、たとえばBに置き、Cに向かって道を伸ばすとする。すると、「4羊・鉄11」の土港には置かれずとも、「6麦・11鉄・12鉄」に置かれ道を一本伸ばされるだけで自分の道は無駄となり、また3つ目の開拓地を建てる地点も減る。ところが、Cに置き道を大海へ伸ばすなら、「4羊」・「11鉄」の2地点が確保される。そして、理性ある卓なら、この2つが早早に潰されることなど、まず有り得ません。開拓地は4つ以上が理想のため、残り2つの内の半分を確保できることはとても魅力的に感じられます。
 BとCの比較は、Cに軍配が上りました。次は、AとCの比較です。言ってしまえば、8土と6麦の比較ですね。一見すると、割と等価です。とりあえず、こうしたときは、二つ目の開拓地で獲るべき資源は何か、そしてそれを獲る場合どこが残ってるかを適当に検討します。ここで全員の動きを全て想定しようとするプレイヤーも存在しますが、僕はあくまで「適当」を推奨します。コストと時間を浪費するし、なにより他者のこころの内なんて不確定だ。そんなことに心血を注ぐ位なら、プレイ中のカウンティングや話術にリソースを割くべきだと言うのが僕の持論です。Aに置くと、二つ目は麦と木を狙うことになります。そして、まず麦と木のどちらも獲れる地点を見てゆく。「2木・10麦」「4木・5麦」「8木・10麦」「10麦、9木」「5麦、9木」。その内、理想は「5麦、9木」ですが、貴重な12鉄の近くで、最後まで残って無さそうな印象を受る。「10麦、9木」は海辺なら残りそう。同じく「8木・10麦」も海辺なら残りそうで、且つ懸念であった3:1港を獲得できる優良そうな配置。8木が8土と被ってしまうものの、道セットなので消費は簡単でバーストの危険もなく、問題ありません。「4木・5麦」はそこはかとなく強く、残って無さそう。「2木・10麦」はそもそも2がplayableではなく、却下。木・麦のどちらかを捨てるなら、どちらかに寄せた、より強力な数字の地点も視野に入ってくる。
 Cを選ぶと、不足するのは土と木。その内、A地点は残ってる筈もなく「5土・2木」「2木・9土」はあまり置きたくありません。「9土・4木」が唯一積極的に置きたくなる地点ですが、残ってるかどうも怪しく感じられます。とは言え、Cを選ぶと発展セットが自動的に揃うのは美点のように見える。それにAに置くと、小麦を捨てなくてはならぬ可能性があるのも、幾らか不安だ。悩むところですが、土港の獲得も一応狙える(一応とするのは、他プレイヤーはまず間違なくCの地点に置き、妨害のリスクを感じるため)こともあって、Aに一つ目の開拓地を置くことにします。

②2番目に開拓地を置くプレイヤーの思考
 基本的に、1番目のプレイヤーと同じです。このマップではCに置きます。道に関しては下に伸ばし木港を確保したくなりますが、プレイヤー1の土港の妨害を睨んでとりあえず土港へ伸ばします。そもそもこのマップ、2番手にはかなり辛辣なため、初期の道を一本無駄にすることすら敗着となり得ます。前述のように道を伸ばせば、少なくとも「11鉄」の地点は確保できるため、ここは我慢を推奨します。
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 こんな感じになりました。疲れてきたので、3人目以降はあしたの僕が書くことでしょう。

アマガミssレビューまとめ

雪の降る日に完結しました。もう書きません。

◎棚町薫編
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中多紗江
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七咲逢
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桜井梨穂子
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絢辻詞
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セイレン、観ましょう。

【1/14】絢辻詞編④(終)

絢辻詞編 第4章「ヤクソク」

醤油:オーラスです。
QP:え? え? これハッピーエンドですよね? ちゃんと幸せになってくれますよね?
ミシ:うろたえるな! 苦境に追込まれものの、まだ逆転のチャンスは残されてる。要はハネツモ条件でしょう?
醤油:メンタンピン即ヅモバンバンバン! おっと、これ倍満や。
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(あれほど険悪であった2-Aのムード、一転。絢辻を中心に一致団結を果たし、わき藹藹と作業に臨む現状に、違和感を感じる純一)
ミシ:当然の疑念ですよね。一人の少女を攻撃した事実を忘却する群衆、怖すぎる。
QP:このモブ達、異常ですよ。掌くるくる狂ってる。
醤油:この狂った世界の片隅で、純一君ただ一人が正常です。
(回想)
(純一「あの子がいなくなっちゃったって、どう言うこと? 絢辻さんが二重人格者で、昨日までの人格が消えちゃったとか、そう言うこと?」)
(絢辻「二重人格者かぁ~、それはオモシロイ解釈だね。でもはずれ~」)
QP:キツイキツイキツイ。
醤油:純一に拒絶された自己のリセットを図ってるんでしょうね。望まれぬ人格と共に、不幸な記憶を葬らんとしてる。
ミシ:人間の心の相補性は二人の人間の間よりも、まず一人の人間の心の中にはたらく。人間の意識的な態度が一面を覆うと、それを補うような傾向が無意識内に形成される。そして、睡眠や飲酒によって自我の統制の弱まったとき、表出する。こうした心の、全体性を回復せんとする傾向の最たる現象こそ二重人格です。絢辻さんのケースでは、他者に嫌われることを厭わず、己の感じる正義のまま行動する第一人格を純一が否定することによって、本音を偽ることで他者から愛される第二人格が台頭してきた。ちょうど純一と出会う前の絢辻さんに戻ったと云うことですね。
QP:嫌だ嫌だ。僕は、前の絢辻さんがイイんです。
醤油:駄駄をこねるな! きもちは同じです。
ミシ:ユングはこのようにある個人の自我が否定し、受け入れ難く感じる傾向の全てを「影」と呼びました。絢辻さんにとっての影とは、第二人格のほうでしょうね。苛烈な義侠心を、あまりにも高尚な精神を、現代人は厄介事の種として厭う。狭量な世界が絢辻さんの第一人格を殺すのです。図に乗った群衆のシュピレヒコールはさながら、レクイエムでしょう。
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(皆で作業しようと誘う絢辻に腕をとられる純一。そのとき、肘が絢辻のむねに当たってしまうものの、以前のように動揺せず、実行委員の仕事を残してると言って立ち去る)
(純一「イマの絢辻さんはカワイイと思うよ。悪くないと思う。クラスのムードも明るくなったし。でも……」)
(OP「君は君のままで。 僕は僕のままで。全てわかりあえたなら~♪」)
ミシ:ああ゛~。
醤油:あ、あ、あ、ああ゛~
QP:う゛ああ゛~。
醤油:君は君のままで!
ミシ:歌詞の流れるタイミング完璧ですね。これをやるために曲を作ったとしか思えません。
QP:この曲を聴くのも最後だと思うと、不思議やな。名残惜しささえ感じる。
ミシ:そう思えるなら、本企画終了後も、自室で聴きましょう?
QP:あ、そっかぁ。でも、十年後か二十年後、また3人で聴こうね。
ミシ:それって契約?
醤油:ううん、約束。
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ミ・醤・QP:優しくなれたのは、君のお蔭~♪
(当日。クリスマスツリーは間に合った。文化祭はちゃんと開催された)
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醤油:花火とは。豪奢ですね。
ミシ:スゴイとゴージャス。合わせてゴイジャス。
醤油:田中ロミオ、お好きなんですね?
ミシ:イルミネーションもピッカピッカや。しかし、この煌びやかさに反し、純一の心情は暗く浮き彫りにされる。
QP:あのてっぺんの星、砕かれませんかね。「とらドラ!」のように。
醤油:竜児……、竜児~! 竜児、竜児、竜児……。
ミシ:勘弁してくれませんか。もう2017年ですよ?
醤・QP:あなたがそれを言うのか。
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(3人組と一つの焼きそばをシェアする絢辻)
QP:あのさぁ、コイツら仲良く焼きそばなんか食べてるけど、違和感なり良心の呵責なり感じひんの? まるで操り人形や。
ミシ:秀でた君主なら、人心掌握もあさめし前ですよ。
醤油:教室の一件は、感情の暴発として処理されてるんでしょうね。女性特有のヒステリーとして。
ミシ:絢辻さんの側は、なんとも無しに3人組を許してるんでしょうね。性悪説を標榜しながら、こころの底では性善説を信じてるような御仁ですから。
QP:尊すぎる。
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(それぞれの文化祭を過ごす生徒達。しかし、純一は賑やかなムードに2年前の翳りを見て、帰宅しようとしてしまう。途中、公園を通りすがると、ライターに火を灯し立ち竦む親友の姿を発見する。放火をするつもりなのだと慌てた純一は、身を挺して止めに入る。純一「考え直せよ!ことしもカノジョが出来なかったからって、放火だなんて! 自棄にならなくても!」)
醤油:コイツは友人を何だと思ってるんだ? あんまりな言草ですよ。
(燃やそうとしてたのは、小学生の頃に貰ったラブレターだと弁解するウメハラ。返事を書かなかった未練をたちきるためだと言う。ウメハラの行動に感じ入るところのある純一)
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(純一「後悔か……。僕、また駄目だったよ。ことしのクリスマスは頑張るとか言ってたくせに、情けないよ」)
ウメハラ「なに言ってんだよ! クリスマスイブはまだ終わってねーだろ! 情けねーって思ってんなら、行動するしかねえんじゃねえのか? 俺みたいに後悔する前によ」
(純一「ありがとう、ウメハラ。お前、イイ奴だな」)
ウメハラ「だろ?」)
(純一「なんでカノジョ出来ないんだろうな?」)
QP:なんででしょうね? 本当に不思議です。
ミシ:旺盛な性欲に起因する、女性への余裕の無さ、デリカシーの欠如あたりの問題かと。
QP:なんでそんなにハッキリと言うんですか? 可哀想でしょう?
ミシ:あっ、イヤ、すみません……。
醤油:このシーン、純一の視点からは、ウメハラがラブレターを燃やす行動と、絢辻が手帳を燃やした行動とが重なって見える。焚火の前でその動機と心情が吐露されることによって、純一はその行動の真意を、過去の自分への未練をたちきらんとした絢辻の覚悟を、はじめて理解する。
QP:あれは、お炊き上げだったんですね。本音を建前で塗り固めたこれまでの自分を、浄化によって天界へ還さんとする。
ミシ:純一を奮立たせるウメハラのはたらきは、まさにトリックスターそのものですね。トリックスターとは、神話や伝承の中で活躍する悪戯者、ペテン師を指し、低次のものと高次のものに分類される。トリックスターは善悪にはさほどこだわらぬため、日常生活では負の価値を構成するものの中に潜む行為の可能性をひき出し得るが、その破壊性が強大過ぎると、古き秩序を壊すのみならず、あらたな建設な可能性まで奪ってしまう。単なる悪戯好きの破壊者である前者は、本編で言うとあのポニテ・ヘアピン・黒髪の3人組に相当しますね。ウメハラはどうしようもなく道化な存在ですが、身を削って純一を応援するその姿は、あらたな秩序や建設をもたらす後者のトリックスターと言えるでしょう。
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(サンタに扮装してお菓子を配って回る絢辻。絢辻「メリークリスマス!」狂喜乱舞する男子生徒達「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」)
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ミ・醤・QP:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! メリークリスマス!
QP:同志諸君。君達のとほうもなく大きな喜びは、身に染みて理解できる。
ミシ:嘆きの天使や。
醤油:人間だって言ってるでしょう?
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(お菓子を子供にも贈ろうとする絢辻だったが、「要らない」と一蹴されてしまう)
ミシ:イノセンスの塊、子どもは感じとってしまうんですよね。絢辻さんの欺瞞を。とり繕った笑みを浮かべるあなたは、サンタなどではありません。
QP:堕天使や。
醤油:だ・か・ら! 人間だって言ってるでしょう?
(Bパート)
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(文化祭は無事終了し、打ち上げをする2-Aの面面。絢辻は相も変わらず、どこか機械的にふるまう)
ミシ:絢辻さん、さきほどから形而上の涙、だばだば流してますよ。大洪水や。
QP:仮面の中涙で溢れ、ふやけた仮面のまた上に仮面被って隠した~♪
醤油:「喜望峰」歌うのやめーや。
ミシ:「スパイラル」のOPですね。懐かしー。
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(空き教室に絢辻を連れ込む純一。無言の純一。教室に戻ろうとした絢辻を背後から抱きしめ、一言。「好きだ」)
ミ・醤・QP:う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? メリークリスマス!
ミシ:あすなろ抱きやね。
醤油:言ってやったぞってしたり顔するの、勘弁してくれませんか。右の拳が疼きます。
QP:メリークリスマスやで、醤油君。おててを下ろして。
(2年前のクリスマスの悲劇。実行委員に立候補した経緯。絢辻の本性に戸惑ったこと。絢辻と仕事をするようになってから、毎日が楽しく充実しており、その内クリスマスへの苦手意識も消えたこと。全てをひっくるめ「識って良かった」と純一は言う)
QP:この男はもう逃亡しません。全てをありのままに受入れ、乗りこえ、伝えるちから、決意がある。
ミシ:黄金の精神や。
醤油:イイ話やなぁ……。
(絢辻「橘君、イマのわたしは嫌い?」)
(純一「嫌いじゃないよ。イマの絢辻さんも好きだよ。でも、僕は前の意地っぱりな絢辻さんも、その前の猫を被っていた絢辻さんも、全部ひっくるめて好きなんだ。だから、いなくなったなんて淋しいこと、言わないでほしい。また僕の至らないところがあったら叱ってほしい」)
綾辻「なんで、なんでそんなこと言うの?」)
ミシ:なんで、なんであなたは純一なの?
醤油:ああ……。
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(純一に掌底を打ち込み、押し倒す絢辻。絢辻「なんなのよ! なんなのよ、あんたは! あんたがあんなことを言うから、だから、あたしは自分を消えたことにして!なのに……」)
ミシ:純一は絢辻さんにもっとうまく立ち回れと言った。王は魂を持ちません。王は統治者としての機能が全てであり、人格は不要とされる。綾辻さんは王となって、クラスを団結せしめ、文化祭を盛況に収めた。そして祭のあと、残ったのは魂を失った抜殻の筈だった。
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(純一「よかった……。僕の好きな綾辻さんが、ちゃんといた……」)
ミ・醤・QP:あああああああああああああああああああああああっ!
醤油:やっと泣くことが出来ましたね。
ミシ:産声ですよ。絢辻詞と言う人間は、他者を必要としてしまう自分を、ようやく認めることが出来たんだ。ハッケン。
QP:ウラガワ。
ミシ:裏の裏は?
醤油:表や……。
QP:コインの裏表は?
醤油:表裏一体や……。
ミシ:ユングは言った。人間にとってのはじめての数は、一ではなくむしろ二であると。一が一である限り人は「数」を意識することなど無く、対立や並置されることで「ニ」の意識が生じてこそ、「一」の概念も生じてくる。絢辻さんは純一と言う「一」を知って、「一」になったんです。
(無人の学校。正面玄関の階段に座り、2人は対話をする)
綾辻「昔の話なんだけどね、ある日、わたしはサンタさんがいないことを知ったの。サンタがいないって知ったわたしは、そのときに決めたの。わたしがサンタになるんだって。ホンモノになれないことはわかっていた。でも、サンタみたいなことなら出来るって考えたの。クリスマスイブ、皆に幸せをプレゼントすること」)
(純一「もしかして、それで創設祭の実行委員に?」)
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(絢辻「子どものころ輝日東高校の創設祭へ遊びに来て、わたし思ったの。この創設祭を自分の手で成功させれば、皆を幸せにできるんじゃないかって。でも駄目ね。皆を幸せにするって目的が、何時の間にか、わたしの満足感を満たすためのものに変わってた……。子どもには、わかっちゃうものなのね。わたしのサンタクロース、大人には評判良かったけど、子どもは懐いてくれなかった」)
(純一「さすがに絢辻さんも、子どもは騙せなかったようだね」)
QP:純一も騙せなかった。
ミシ:童心を有したまま高校生になった男やからね。縁のように無機質にふるまう絢辻さんを、許せなかった。
醤油:怒られるで。
(純一「綾辻さん。まだクリスマスは終わってないよ。来年も再来年も、クリスマスは来る。その度に、皆を幸せにすればイイじゃないか。――だから、僕のことも幸せにしてほしい」)
(絢辻「それは女性から言う台詞でしょう?」)
(純一「駄目かな?」)
(絢辻「駄目じゃないけど……」)
(風が吹く。純一「ああ、髪がくしゃくしゃだ」)
ミシ:くしゃくしゃクシャトリヤ!?
醤油:誰も言ってませんよ。
QP:なに茶化しとんねん。
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(乱れた髪を直す内にキスをする2人。絢辻「わたしも、橘君のこと好きよ。もう絶対に離さない」)
(純一「それって契約?」)
(絢辻「ううん。約束」)
(I Love you from my heart. I Love you forever with you~♪)
QP:ああああああああうわうあうああああうあうああうわうああうう!
ミシ:うあううあううあううあううあうあううあうああああああああああ!
醤油:くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp!
ミシ:完璧や! 完璧な台詞回しと突如流れる第一期OP! これや、これが観たかったんだよ、僕は!
醤油:くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp!
ミシ:うるせえぞ、醤油君! azusaの美声が聴こえなくなるでしょうが!
(純一「イイのかな?」)
(絢辻「イイわよ、これくらい」)
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(学校には秘密のライトアップ。2人だけの聖樹を見上げる絢辻と純一)
醤油:メリークリスマス!
ミシ:メリークリスマス!
QP:メ、メリークリスマス!
醤油:声が小さすぎます! もう一度! メリークリスマス!
ミシ:メリークリスマス!
QP:メリークリスマス!
ミシ:眩き光の前に、裏も表もありません。
醤油:それな! ミシェル君、ほんとそれな!
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QP:そして10年後を描く。これも森島ルートとの対比になってるんですね。
ミシ:娘ができとる……。可愛ええ……。
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(絢辻「ねえ純一、いま幸せ?」純一「もちろんだよ」絢辻「わたしも幸せよ」)
(絢辻「世界中の人達が、きょう、この良き日に幸せでありますように」)
(純一「僕達みたいにね」絢辻「ええ」)
ミシ:ねえ醤油、いま幸せ?
醤油:もちろんだよ。ねえQP、いま幸せ?
QP:もちろんだよ。ねえミシェル、いま幸せ?
ミシ:もちろんだよ!
醤油:世界中の人達が、きょう、この良き日に幸せでありますように。
ミシ:僕達みたいにね。
QP:ええ。
醤油:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!(醤油、失踪)
QP:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!(QP、失踪)
ミシ:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!(ミシェル、失踪)
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(fin)

【1/12】絢辻詞編③

綾辻詞編 第3章「プライド」
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(職員室。作業スケジュールの遅れと過労で倒れた一件を理由に、教師から創設祭の規模縮小を提案される。拒む綾辻
醤油:学校は隙あらば、すぐ祭を縮小しようとする。
ミシ:『氷菓』でも問題になってましたね。
QP:I scream……
ミシ:うわあああああああああああああああああああああっ!
QP:そんなこんなでOPです。
(OP)
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(西日に照らされた創設祭実行委員本部。綾辻は怒りを露わにして純一に愚痴を言う。綾辻「まったく、屈辱よ。屈辱だわ。このあたしが呼び出されて注意を受けるなんて!」)
醤油:もう純一の前では憚ること無しに、ふるまうんですね。
ミシ:おぉう、純一が癇癪を起こす愛娘を宥める父親のようだ。慈愛に満ちた表情をしておる。
醤油:メインステージで使うライトを探しに来た下級生にも難なく応じてましたし、純一君、有能になりつつあります。
ミシ:ところで、この下級生、めぐり先輩に似てません?
醤油:後輩なのに先輩とは、これ如何に。
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QP:あ、純一君、綾辻さんから資材倉庫の鍵を任されとる。信頼の証ですね。
ミシ:こころの鍵を譲渡やね。
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綾辻の作ってきた弁当を摘まみ、これからの指針を話し合う2人。作業ペースを補うため、人員を増やす案に難色を示す綾辻であったが、純一の説得でしぶしぶ承諾する)
QP:お弁当を作ってくるって、綾辻さんのキャラからして違和感を感じるのですが、どうでしょう? 昼食を一緒に採るための建前だとしても、わざわざ作る必要はありませんよね。
ミシ:綾辻さんも言ってたでしょう? 犬が芸をしたらご褒美をとらせるものだって。ペットへの餌やり感覚なんですよ。純一がきらきらした瞳で尻尾をふってくるから邪険にしづらく、絆されてしまってる。
醤油:不器用なんですよね。距離の詰めかたが。
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QP:しかし、このお弁当。一体何割が冷凍食品なのでしょうか。
醤油:全部ホームメイドに決まってるでしょう、馬鹿野郎。
ミシ:からあげ、ウィンナー、ハンバーグ、プチトマト。子どもの喜びそうな品目を詰め込んだお弁当、お子さまランチです。そもそも純一の好みをさほど把握しておらぬだろうし、また自らの嫌うメニューを作るとも思えませんから、綾辻さんの好きな食べものなんでしょう。
QP:味覚が子どものままなんですね。イノセントやわぁ。
醤油:便利な言葉やな、それ。
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(楽しそうにする2人を遠巻きに眺めるクラスメートの3人)
醤油:悪意の象徴ですね。
QP:右の子の棒演技、イイ味出してますね。
ミシ: 悪意なき悪意をふりまくド畜生です。
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(無事クラスメートの協力を得た綾辻だったが、それを快く思わなかった件の3人がごねはじめる)
ポニテ「あ~あ、やってらんない」ヘアピン「本当。何でわたしたちが、こんなことしなくちゃならないの~?」黒髪「あの2人が委員やるって、自分から立候補したくせに~」ヘアピン「こっちに迷惑かけないで欲しいよね~」ポニテ「2人でイチャイチャするのに忙しいんだよ、きっと。あたし達見ちゃったんだよね~。綾辻さんと橘君が昼休みに仲良くお弁当食べてるの」ヘアピン「うんうん」)
QP:弁当一緒に食べる程度、許したってや。僻んでるのか?
醤油:チープすぎます。中学生。否、へたしたら小学生ですよ、これ。
綾辻「何か、問題でもあった?」)
ポニテ「クリスマスツリーが中止になるって聞いたけど、本当? 去年よりハデな創設祭の計画を立てて、それがうまく行きそうにないからって、今更皆をてつだわせるって、どう言うつもり? 成功したら、実行委員長である綾辻さんの手柄にでもするつもりかしら? 随分と都合が良すぎない? スケジュールが遅れてるのは、誰かさんが男子とイチャイチャしてるせいでしょう? わたし聞いたよ。いつも2人きりで仕事してるって。カレシカノジョみたいにさ」)
ミシ:邪悪を孕んだダミ声です。
醤油:スキャンダラスを取り沙汰して攻撃してますけど、むしろ進行の遅れのほうを責めるべきだと思うのですが。論点を違ってますよ。
QP:何もせず不平不満を口にする愚かな平民なんですよ。
ミシ:有能な統治者はどんな時代も、愚かな民衆に苦しめられ、その心身を削られる。ああ、もう、愚者ぐしゃグシャトリヤ。
醤油:ミシェル君。言わんとしてることは理解できるが、それ武人階級や。
綾辻「橘君には、わたしの補佐的な仕事をして貰ってるから、そう言う誤解を与えてしまうのかもしれないけど、べつに仕事以外のことをしてる訳じゃないわ」)
(ヘアピン「そんなの信用できない!」黒髪「うんうん」)
(薫「ちょっとっ。アンタ達ねえ!」ポニテ「棚町さんは黙ってて」)
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(純一「誤解だよ。綾辻さんは手際の悪い僕に色色教えてくれてるだけで……」ポニテ「あんたにも聞いてない!」なぜか突き飛ばされる純一)
ポニテ「どうなの綾辻さん。なんとか言いなさいよ」ヘアピン「やっば。もしかして泣かせちゃったぁ~?」)
QP:あははは。醜悪すぎるやろ。
ミシ:これもまた奪われようとしてる瞬間なんでしょうね。己の素を出すことのできる純一の隣と言うポジションを、第三者によって理不尽に剥奪されんとしてる。
醤油:ようやく獲得した第二の家庭を失ってしまう。それゆえ綾辻さんは、全てを擲ってでも闘う。
QP:自身はともかく、飼犬まで貶されたら、そりゃあ怒るで。
ミシ:しかし、もう飼犬でもなくなったんですよね。この事件を契機に、純一は綾辻にとって愛し頼るべき伴侶となります。
醤油:激昂した綾辻さんは、衆目の前で、純一を脅迫してまで守ろうとしてきた優等生の仮面をぬぎ捨ててしまう。ここで三度、綾辻は退路をたたれる。沸き上がる激情をグッと嚥下し、穏便にすませるすべもあった。むしろ、これまではそうしてきた筈です。しかし、綾辻は、本件に関してはそうしなかった。合理性と正義のこころ・義憤を秤に載せ、後戻りのできぬ後者を貴ぶことを選んだ。
ミシ:黄金の精神や。
QP:ジョジョ4部、出来良かったですよね。OPもハイセンスで。
ミシ:BREAK DOWN, BREAK DOWN!
醤油:Great Days。名曲です。LISTEN。
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綾辻「あははははははは、あ~あ。馬鹿馬鹿しい。あなたたちの言ってることは、創設祭に関係のないことばかりじゃない。なにそれ。もしかして嫉妬? イイコト教えてあげる。クリスマスツリーは中止にならないし、スケジュールだって去年に比べて充分に間に合うペースなの。皆にてつだって貰うのはそれを確実にするため。信用できないなら、幾らでも資料を見せてあげるわよ。いるのよねぇ~。あなた達みたいに根も葉もない噂を耳にして文句ばかり言う人。何にもできないくせに他人を見下して優越感に浸るなんて、くっだらないわね。言返したかったら、どうぞ? でも、あなた達に何ができるの? 何をやってきたの? 何か一つでも、あたしに勝てるところがある? 恥って言葉を知ってるなら、自分の人生をふり返ってからにしてよね。さあ! 何か言いたいことがあったら、どうぞ? 何もないの? だったら最初からツマラナイこと言ってないで、手だけ動かしてればイイのよ。どうせあなた達には、それしかできないんだから」)
ミ・醤・QP:FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!
ミシ:カタルシス、しゅんごいね?
醤油:イイ……。こんな専制君主になら、身を委ねてもイイ……。
ミシ:Shining Justice 芽生えて~♪
(中略)
醤油:1999 Bizarre Summer~♪
QP:巡る勇気で生きる街~♪
ミ・醤・QP:Great Days~♪
QP:BREAK DOWN, BREAK DOWN - LET'S GO!
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(放課後。純一と連れ立って神社に寄った綾辻は、黒革の手帳を燃やす。綾辻「わたしには、もう必要のないもの。わたしには、もっと大事なものがあるってわかったの」)
醤油:はじまりの神社で、関係性を更新します。
ミシ:侍従→婚姻ですね。
QP:綾辻さんのこころを開くのに、もう鍵は不要なんです。その権利は、とっくに純一に託されてる。
ミシ:王権神授やね。
QP:違うぞ。
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綾辻「あなたを、わたしのものにします」純一「はぁっ!?」)
ミ・醤・QP:はぁっ!?
綾辻「あれ? ちょっとハショリ過ぎたかしら。あ、あなたといると嬉しいし、楽しいの! その、自分でも不思議なくらい……。出来れば、ずっと一緒にいたい。あなたが側にいてくれれば十分。でも、それを強制はできない。だからっ、わたしをあげる! その代わり、あなたがいる日常をわたしに頂戴!」)
(純一「僕で良ければ、喜んで……」)
綾辻「そう。じゃあ、これは契約の証」)
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ミシ:ズキュウウウン! 最高や。
醤油:神前で誓うんですよ? これが詞、詔なんやね。
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(鼻血を出してしまう綾辻。純一「綾辻さんでも興奮するんだね」)
醤油:はじめての体験に、エラーが出てますね。
QP:そりゃあ鼻血の一つや二つ出ますよ。森島と違って人間なんですから。
ミシ:クソッ。性の喜びを知りやがって!
醤油:なんか激昂しながら、踊り狂ってる人おるんやけど……。
QP:否、これ喜んでるんですよ。
ミシ:生の喜びを知りやがって!
醤油:ああ、Joy of Lifeのほうね。
(Bパート)
ミシ:ふぅ。濃密なAパートでしたね。
醤油:しかし、関係が進展を見せた、ここからが本番とも言えます。緊褌一番で臨みましょう。
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(体育の授業中。男子が校庭10週を走る間、女子はドッヂボールを行う。綾辻は内野で一人にされ、甚ぶられる)
QP:あははははははは。皆で寄ってたかってボールをぶつけるって、幾らなんでもマッチョすぎるでしょう? 何時の時代ですか。
ミシ:90年代ですよ(怒)。何時だって理不尽のほうからやって来て、ヒロインを害さんとする。
醤油:綾辻さんは人間ですから、それら困難を乗り越えなくてはなりません。
ミシ:人の世は無情です。
ポニテ「ほらほら、どうしたのぉ? もうへばっちゃったぁ? さあ、棚町さん、やっちゃって」薫「わたし、パス。だってこのチーム、ツマンナイんだもん。と言うことで、わたし、こっちのチームに入るわね。ほら、恵子! あんたもこっち来なさーい! これで3人ね」)
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(純一「いや、4人だよ」)
ミ・醤・QP:あははははははははははは! カッコイイ~!
(純一「課題の10週、もう走り終わっちゃったんだよね。退屈だから、少し混ぜて貰おうと思って」)
QP:これは、漢やで。
醤油:しっかり10週走り終えてから、やって来るのがエライ!
ミシ:果たすべき責務を果たしてから、事態を収拾する。ルールに厳粛な綾辻さんを尊重しての行動ですよね。急ぎ向うことは出来た。しかし、やるべきことを蔑ろにして差し伸べられた手を、綾辻さんはとろうとはせんでしょう。純一君は、綾辻さんのものになると言った契約を正しく理解し、遵守してるんですね。
QP:その見返りとして、こころの底からの信頼と笑顔が与えられる。
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ミ・醤・QP:可愛ええなぁ……。
(2-Aの連中はボイコットを起こし、作業は薫・田中・ウメハラ・純一・綾辻の5人で進められる。放課後。無人の教室で、綾辻は一人葛藤する。綾辻「大丈夫。わたしは平気。まだ頑張れる」)
(見兼ねた純一は、もう一度クラスメイトに応援を頼もうと提案するが、綾辻は頑なに拒む。綾辻「絶対に嫌!」)
(純一「どうしたんだよ。そんなの、らしくないよ」)
綾辻「らしくない?」)
(純一「そうだよ。綾辻さんは何時ももっと堂堂としてて、こんな状況を幾らだってうまくきり抜けられる人じゃないか。ううん。本当はこんな状況になる前にもっと……」)
綾辻「らしくないって、何!? あなたが、わたしの何をわかってるの!?」)
(純一「わかってるよ。綾辻さんが、創設祭に一生懸命なのはわかってるよ。だからさ、皆に謝って、もう一度てつだって貰えるよう頼もう? それが嫌なら、出来る範囲で少しイベントを減らすとかさ」)
(ビンタ)
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綾辻「なんで、なんでわかってるのに、そんなこと言うの……」)
QP:あ~あ、泣かせちゃった。「らしさ」って言葉は、綾辻さんにとって重く響くでしょうね。これまで両親や周囲の人間に「綾辻詞」はこうあるべきであると言う烙印を押され、遂には自分を新世界へ連れ出してくれる筈であったヒーローまでもが、その言葉を口にするんですから。キッツイですよ。
ミシ:「本当はこんな状況になる前にもっと」って言葉も、極悪ですよ。教室で退路をたたれとき、賢明な綾辻さんならこうした悪状況に陥ってしまうことは簡単に予見できた。しかし、それでも艱難辛苦に耐え、純一の名誉を尊重することを選んだ。その凄絶な覚悟を、純一は軽んじた。すくなくとも、綾辻さんにはそう聞こえた筈です。
醤油:キッツイなぁ……。
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(翌日。登校した純一が目にした光景は、泣き落としで3人組との関係を修復し、再びクラスの協力を得た綾辻の姿であった。綾辻「おはよう、橘君。聞いて聞いて。皆、創設祭の準備てつだってくれるって。皆優しいね~。わたし、このクラスになれて良かった~」)
ミ・醤・QP:…………。
(放課後、校舎裏。綾辻に事情を問詰める純一)
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綾辻「あ、もしかして、あの子のことを言ってるのかな。意固地になって、一人で創設祭の準備をなんとか間に合わせようとしてたあの子。でも、もうあなたの知ってるあの子はいなくなっちゃったの。お蔭で皆協力してくれることになったし、これで創設祭の大成功、間違いなしだね」)
(ED)
ミ・醤・QP:……これ、どうすんねん……。

【1/11】絢辻詞編②

絢辻詞編 第2章「ウラガワ」

ミシ:ハッピーニューイヤー!
醤油:読者は誤魔化せても、僕らは誤魔化されませんよ。
QP:年内の更新の筈が、新年に食込んでるやん。なにしてたん?
ミシ:ちょっと「つむの一突き」を食らってしまって、休眠状態に……。ハ、ハッピーニューイヤー!
醤油:ハッピーニューイヤー!
QP:ハッピーニューイヤー!
ミ・醤・QP:……。
QP:レビュー始めましょう。
醤油:1話「ハッケン」ときて、2話「ウラガワ」ですか。Discovery。
QP:ん? 2話で絢辻さんの「ウラガワ」に焦点を当てるなら、1話では何を発見したんですか?
醤油:落としものでしょう。
ミシ:創設祭実行委員に立候補すること、手帳を拾うこと。これら2つが絢辻さんと懇意になるための前提条件、言わば「鍵」です。2話以降は、純一が1話で獲得したこの鍵を使って、絢辻部屋の扉を開くフェイズに移行します。
QP:生来のふてぶてしさを発揮して、ずんずんと土足で立ち入って行くんですね。
ミシ:主人公にのみ許された特権やね。
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(前回のつづき。絢辻から逃れようとして、むねを揉んでしまう純一)
醤油:ひゅ~。イイ仕事してますね~。少年、君は一億分の一のラッキーボーイだ。
ミシ:あくまでも不幸な事故ですよ。騒ぎ立てるものではありません。
QP:しかし、事実として「πタッチ」してるではありませんか。不公平ですよ。
ミシ:あなたのルサンチマンなど知ったことか。不慮の事故です。
醤油:とは言え、確かに「接触」が起こり、純一は絢辻の輪郭にふれた。これは重要な予兆です。
ミシ:肉体的な接触を皮きりに、精神的な距離さえも詰まってゆくことを仄めかしてる。
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(絢辻「これから少し付き合って、く・れ・る?」)
ミシ:このジト目堪りませんね。好きです。大好きだ。
醤油:ご褒美でしかありません。
(OP)
(Aパート。純一を詰問する絢辻。「書き殴ったアレ」までは見られて無かったことが発覚し、狼狽する)
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ミシ:むふふ。(深読みしちゃった絢辻さん可愛e)
QP:先ほど、こころの中で「深読みしちゃった絢辻さん可愛e」と考えましたね、ミシェル君?
ミシ:なっ。なぜ、わかったのですか、QP先生。
QP:簡単な話です。僕も同じきもちだからですよ、ミシェル君。
ミシ:せ、先生!
醤油:茶番はさておき、このやりとり、神社の前で行われるんですよね。
ミシ:聖域。神に誓って嘘は吐くなよ、と脅してるんですね。これはなにも純一に限った話ではなく、自らにも適用される。秘密を守ると言う利己的な目的のために同級生を一人屠ってしまうことへの、絢辻さんなりの良心の呵責・懺悔でもあるんですね。
醤油:せめて神の目のとどく範囲で罪をおかし、自らを戒める。
QP:「残念だわ。クラスメイトが一人減っちゃうなんて」と言う絢辻さんの台詞、純一のことですか? てっきり、自分のことだと思ったんですが。
ミシ:ああ、不祥事が露見して自主的な転校ですか。そちらの可能性もありそうですね。そうすると、神社の前を選んだのは、背負った重荷からの解放ですか。やはり懺悔ですね。
醤油:ところで明示されてませんけど、「書き殴ったアレ」とは何なんでしょうか?
QP:裏の自分を示してしまうもの、暴言やら愚痴やらではありませんか?
ミシ:しかし、その程度で学校に通えなくなりますかね? これは、もっとヤバイもの。たとえば……
醤油:たとえば、出生の秘密。
ミシ:もしくは、これまで親がやってきた悪事の数数あたりでしょうか。それとも、セクシャルアビューズ……。
醤油:コラッ。その可能性は薫編で検討したでしょう?
QP:なんにせよ、真相は闇の中です。
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(猫を被ってることがバレてしまった絢辻。純一の口封じにかかる。絢辻「さあ、復唱して。僕は何も見ていません。絢辻さんは裏表のない素敵な人です」)
ミシ:絢辻さんは裏表のない素敵な人です!
醤油:絢辻さんは裏表のない素敵な人です!
QP:絢辻さんは裏表のない素敵な人です!
醤油:伝説のシーンですね。
QP:はぁ~、これ、ごっつきもちええわ。
ミシ:実際に復唱してみると、不思議な高揚感と充足感が得られますよね。この感情こそ、絶対君主に恭順することでもたらされる絶大な安息感。
QP:この言葉、流行らせましょう。きっと世界から貧困と戦争が消え失せますよ。
醤油:本当にそうなったら、どれほど幸せだろうか。
ミシ:この世は地獄です。
(夜。炬燵で項垂れる純一。純一「美也。世の中には知らぬほうがイイものもあるんだな」)
ミシ:ああ、この台詞、六大の「識」を臭わせますね。
醤油:「識」とは「五大の性質がわかる」こと、ですね。
ミシ:六大とは、物質的原理であるところの五大に、精神的原理であるところの識大をくわえ、宇宙の実体を表したものです。ここで重要となるのは、五大と識大が「主・客」の二元的な概念ではなく、常に融合し一体化した存在である点です。宇宙に存在する全ての存在は、性質の全く異なる要素(五大)からなっており、それらの要素が識大と一体不離、完全に融合した瞬間にはじめて、全く次元の異なる存在として宇宙に顕現する。単なる要素を、存在(或は生命)たらしめるこのはたらきは「六大能生」とされ、通常の認識では混沌として到底理解しえぬと空海は語る。
醤油:六大からどのようにして存在が現れるかは、三密瑜伽の状態下でしか解らぬ密号なんですね。
ミシ:これまで純一は、五大の性質をそれぞれ大きく宿した5人のアマガミ達との交流を経て、それらへの理解を深めてきました。しかし、図らずして、これらは三密瑜伽へ到達するための修行の道でもあった。純一はまず、アマガミ達(五大)に近づき、その本性を識った。そして、宇宙のはたらきを表す三密は、身密・口密・意密。純一は、5人のアマガミ達へ、こころで好きと言って(好意の自覚)、言葉で好きと言って(好意の告白)、身体で好きと言った(ベッドイン)。最後には、純一なる「識大」とアマガミ達が一体不離となって、これまでとは異なる、あらたな純一、あらたなヒロインが誕生する。すなわち、『アマガミSS』は「六大能生」の実態を映像化した作品だったのです。
QP:なるほど。道理で理解に苦しむシーンが散見されるはずや。純一君の奇行は、三密瑜伽の状態にあるゆえに生じた特異なものなんやね。その意図や、実際の現象を理解するには、観客の僕らも一緒になってさとりを開かなくてはならんと。
醤油:もしかして、新興宗教の配付するPVの話してます?
QP:怒られるで。
ミシ:ともかく。絢辻さんは「識」のアマガミであり、主人公の純一もまたその性質を色濃く有す。「知らぬほうが幸せだった」などと、真実を知って両目を潰したオイディプス王のような言葉を口にしてるものの、2人の識が混然一体となった末、生命の生じる話や、これは。
(翌日。約束をやぶり、昨日の出来事をウメハラに相談しようとする純一。その瞬間を絢辻に見咎められ、お仕置きされる。連日こき使われ、憔悴する純一)
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醤油:絢辻の側も、秘密を「識られた」ことで純一と接さざるを得なくなった。ここで再び退路をたたれるんですね。
QP:しかし、この男はどうして直ぐ禁を犯そうとするのか。一日も保ってませんよ。
ミシ:ところが、当の絢辻さん。フンと鼻を鳴らしながら、どことなく嬉しそうなんですよね。不出来な生徒に接する感じで。もちろん、純一の愚行にサディズムを刺激された面もあるでしょうが。
醤油:これも、絢辻攻略に要される正解の行動なんでしょうね。意図的かどうかはさておき、馬鹿な自分には遠慮は要らんと、素のままで酷使してくれと、アピールした次第となった。
ミシ:三密瑜伽へ至った者は、自ずと正解を導くと言うことなんでしょう。まるでアンサートーカー(答えを出す者)や。
QP:東大の入試試験も満点で一発合格ですね。
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(放課後。森島の中途断念したペンキ塗をこなす絢辻。純一によって缶コーヒーの差し入れがされる)
醤油:どう見ても落書きでしょう、これ。
ミシ:神の遺した壁画ですよ。らんちき騒ぎの後始末をさせられるのは、どんなときも人間です。
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(純一「絢辻さんってさ、どうしてそんなに創設祭の準備を頑張るの?」)
(絢辻「決まってるじゃない。自分のためよ。作業が遅れれば、実行委員長であるわたしの評価に傷がつくわ。そんなの絶対許せないじゃない? あたしは完璧を求めてるの。それに、もともとしきるのは好きだし、クラス委員とか実行委員とかやっておくと、推薦入試のとき有利になるのよ」)
(純一「打算的だ……」)
醤油:絢辻の言葉はまぎれもなく本音ですが、全部ではありません。幾つかの真実を語って、己のナイーブな一面を隠すための建前とする。
ミシ:あえて露悪的な言回しすることで、その奥にある一番の動機、「皆を幸せにする」と言ったプリミティブな感情をさとらせぬようにしてるんですね。まあ、照れ隠しです。
QP:善行をなしたのに、そのことを親から秘匿しようとする子どものようだ。
ミシ:可愛ええなあ。
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(絢辻「橘君って変な人ね。だって、わたしの秘密を知ってる訳でしょう? わたしだったら、そんな人には絶対に近づかないわ。何を考えているかも分からないし、近づくことに何の得も見出せないもの。なのに、橘君は自分から手伝うとか言出したり、差し入れしてくれたりして、ねえ、どうして?」)
(純一「どうしてと言われても……、楽しいからかな」)
(絢辻「楽しい?」)
(純一「うん。絢辻さん手際も良いし、一緒にやってて結構楽しいよ。それに毎日忙しいけどその分だけ充実してると言うか、実行委員の仕事も面白くなってきたし」)
(絢辻「そう。ふーん……」)
ミシ:ああ、ここの「ふーん……」堪りませんなあ。
QP:内心、ものすごく喜んでそうですよね。素の自分を、曲りなりにも受入れてくれてる訳ですから。
ミシ:絢辻編は、絢辻さんから純一への問掛けが頻繁になされる。そして、それらに純一が逐一応えてゆくことで、2人の「識」が達成されると云うことです。
醤油:ここ、絢辻さんにしては非効率なペンキの塗り方をしてます。それはもちろん、帰宅を拒んで作業時間を延ばさんとする魂胆もあるんですが、背後で純一が語る言葉に意識の鉾先を奪われ、作業がおろそかになってしまってるともとれます。
QP:鬼の霍乱やな。
ミシ:まさしく。このあと過労で倒れますからね。
QP:え、まじで? 大変だ!
ミシ:ええ、大変なんです。
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(てを貸そうかと提案する純一であったが、「いいから早く帰って寝なさい!」と逆に健康を案じられてしまう。翌日。薫から、絢辻が過労で倒れたことを知らされる純一であった)
(Bパート)
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(見舞品を携え、絢辻家を目指す純一)
醤油:バナナ! とマカ。
QP:……マラ?
ミ・醤:は?
QP:すみませんでした……。
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(家の付近で、絢辻姉に出くわす)
醤油:DOG=GOD。
ミシ:ちゃんと犬が出てきてくれたことに、安堵さえ覚えます。神。
QP:重症ですね。バナナ食べます?
ミシ:頂きましょう。うん、美味だ。
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(絢辻姉によって絢辻の部屋に招かれる純一。ベッドで寝たふりを装う絢辻。縁の退室する音を確認してから、身体を起こしタオルで汗をぬぐう。しかし、その姿を予期せぬ客人、純一に目撃されてしまう)
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ミシ:このタオルの置き方、おかしくありません? 普通、前髪の上からではなく、額に接するよう置くでしょう。やはり実姉に苛められてるんでしょうか。う~ん、前髪が濡れてキモチワルイよぉ、って。
醤油:誰かが階段を上ってくる音を察知し、慌てて額にタオルを載せたのではありませんか。狸寝入りの一環ですよ。ところで純一君、また袋小路に迷込んでますね。
QP:資材倉庫では風によって扉が閉まりましたが、次は縁によって退路が断たれる。第三者のはたらきで再び、言葉を交わさざるを得ぬ密室が作られたと言うことです。
醤油:どんどん踏み込んで行きます。もう諦めて会話するしかありません。
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(絢辻「お見舞、ありがとう。女の子を相手に、バナナと栄養ドリンクって言うのも、どうかと思うけど」)
ミシ:絢辻さんはプラグマティックですから、こうした直截的なセンスを好みそうなものですけどね。逆に、ここで洒落たものを差し入れたら、「お前どこの女に入れ知恵された?」と無駄な不信感を与えてしまうでしょう。
(絢辻「あなたって本当に変な人ね」)
(純一「え、そうかな? でも、絢辻さんのお姉さんも個性的だよね。なんと言うかポワポワっとしてると言うか、浮世離れしてると言うか。雰囲気も絢辻さんと全然違うし」)
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(絢辻「ええ~?」)
ミ・醤・QP:ええ~?
ミシ:だから純一君、君はどうしてここで姉の話をもち出すんだ! ほら、もう、絢辻さん機嫌を損ねてふて寝してしまったじゃありませんか。せっかく、こころ温まるシーンだったと言うのに……。
QP:台無しですよ。
醤油:姉と比較されるのが嫌なんでしょうね。否、むしろ純一が姉に興味をもったことのほうが許せなかったのでしょうか。
ミシ:おそらく、その両方でしょう。姉への劣等感と、純一への未分化な好意がごちゃ混ぜになった複雑な状態ではありませんか?
QP:女心と秋のなんちゃら。
ミシ:冬です。
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(絢辻邸を後にする純一。家の前の芝生で、犬にスポーツドリンクを遣ろうとする縁に見つかる。縁「ねえ、最近の野良犬って、人に懐かないように教育とかされてるのかな。全然懐いてくれないんだよね」)
QP:変ですよ、この女。犬に遣ろうとした飲料を、純一に飲ませようとするな。
ミシ:本来は妹のために買ってきたスポーツドリンクですが、絢辻さんはさておき、犬も純一もそれを飲むことを拒む。ここで、犬=純一が成り立ちます。すなわち、己に懐かなかった純一に関し「お前も妹に教育された、妹の犬なのね」と暗に非難してる。
QP:うわっ、陰湿ですね。どこか森島先輩と重なる面があると思ってたんですが。
ミシ:たしかに、容姿と自由奔放な性格は似通ってます。しかし、縁には犬は懐きません。縁の発露する全能性や、純真さ、イノセンスは全て本人によって計算され、演出されたものです。縁は神ではなく、あくまで神のようにふるまう人間なんですよ。
醤油:おそらく家庭のしがらみから、絢辻は優等生を演じ、縁は自由を演じた。しかし、なぜ絢辻は縁をあそこまで忌み嫌うのでしょうか。同族嫌悪ともまた異なる感じですが。
ミシ:両親から寄せられる期待を放棄して自由を獲得した姉への羨望、もしくは「演じる」自分を意識させられる鏡として忌避してるなどの理由が考えられますね。縁は己を欺き、イノセントな感情を忘れてしまったか失くしてしまった。ちょうど、七咲編で英雄性を失った純一を髣髴とさせますね。しかし、絢辻さんは「皆を幸せにする」と言った無垢な望み、イノセンスを未だ有するために、姉と己が採用した渡世術に疑念を嗅ぎとってしまう。演じることで、全てが嘘になってしまう未来への恐れが、姉への嫌悪感・攻撃性となって表出する。
QP:縁の評価、ちょっと辛辣過ぎませんか?
ミシ:在りかたの問題ですよ。単に、縁の在りかたが絢辻さんの想定する幸福へと繋がるものではなかったと言う話です。他意はありません。本当ですよ?
醤油:全国の縁ファンの皆さま、ご意見・反駁、お待ちしております。
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(翌日。復帰した絢辻のもとへ、森島と塚原がやって来てミス・サンタコンテストへの出場を表明する。下卑た妄想を膨らまさんとする純一だったが、絢辻に2度足を踏みつけられ、阻止される)
醤油:イイっすねぇ。絢辻がこんな干渉する人間、はじめてでしょう。
ミシ:オーキードーキー!
QP:オーキードーキー!
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(放課後。悲鳴を聞き、校舎裏へ駆けつける純一。右足を濡らした絢辻の姿を認める)
(純一「絢辻さん、なんで足が濡れてるの?」)
醤油:なんでやと思う?
(絢辻「かけられたの」)
(純一「え?」
(絢辻「おしっこ、ひっかけられたのよ!」)
(純一「ええっ? だ、誰にっ!?」)
(絢辻「馬鹿ッ! 犬に決まってるでしょ!……校内で高そうな犬を見つけたから、何か使い道があるんじゃないかと思って捕まえようとしたの。そしたら妙に懐かれて……」)
QP:嬉ションですね。
ミシ:この犬、縁に懐かなかったあの犬ですよ。絢辻さんには懐きます。どれほど建前で覆われようとも、絢辻さんの深奥に秘められたイノセンスを嗅ぎとって失禁しちゃったんですね。
醤油:たしかに、DOG=純一だ。ただ、この犬は絢辻さんの思惑通りにならぬ存在として描かれる。
QP:わんわん。
ミシ:くぅ~ん。
醤油:君達まで犬にならなくてもイイんですよ。
(水道まで絢辻をおぶる純一。はずかしがる絢辻。絢辻「皆さ~ん、ここに変態がいますよ~!」)
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ミシ:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! これが観たかったんですよ、これが!
QP:むふふ。
醤油:しゅんごい。
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ミシ:ご覧よ、この満ち足りた表情。与えられなかった父性を感じてます。
醤油:やはり家庭の問題へと帰着するんですね。甘えてますわ。絢辻の防壁がどんどん崩れてゆく。
(夜。純一を想う絢辻)
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(絢辻「橘君、本当に不思議な人……」)
(絢辻「わたしとは違う価値観を持っているのかな? ちょっと気になるかも」)
(絢辻「あれっ? そう言えば、わたしが誰かを気にするなんて、もしかしてはじめてじゃない? ふふふ、変なの」)
ミシ:もしかして、詞、お気に入り?
醤油:なんで先に言うんですか!
QP:ふざけんな!
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(絢辻「もしかして、詞、お気に入り?」)
(絢辻「……もうっ。なに考えてるんだろう、わたし。ああ~、橘君のせいで勉強する時間が減ってるじゃない! ん~っ、もう、アッタマきたぁ! 今度からもっと苛めてやるんだからぁっ! ……ふふふ。覚悟してなさいよぉ~」)
ミシ:うわあああああああああああああああああああああ!
醤油:うわああああああああああああああああああああああ!
QP:うわあああああああああああああああああああああああああ!
醤油:絢辻さん、好き!
QP:僕もです。……あれ、ミシェル君、なんかズボン濡れてません?
ミシ:……洩らしちゃったかも……。
醤油:ええ~?
QP:嬉ションですね。
(ED)