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京大漫トロピーのブログです

【1/14】絢辻詞編④(終)

絢辻詞編 第4章「ヤクソク」

醤油:オーラスです。
QP:え? え? これハッピーエンドですよね? ちゃんと幸せになってくれますよね?
ミシ:うろたえるな! 苦境に追込まれものの、まだ逆転のチャンスは残されてる。要はハネツモ条件でしょう?
醤油:メンタンピン即ヅモバンバンバン! おっと、これ倍満や。
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(あれほど険悪であった2-Aのムード、一転。絢辻を中心に一致団結を果たし、わき藹藹と作業に臨む現状に、違和感を感じる純一)
ミシ:当然の疑念ですよね。一人の少女を攻撃した事実を忘却する群衆、怖すぎる。
QP:このモブ達、異常ですよ。掌くるくる狂ってる。
醤油:この狂った世界の片隅で、純一君ただ一人が正常です。
(回想)
(純一「あの子がいなくなっちゃったって、どう言うこと? 絢辻さんが二重人格者で、昨日までの人格が消えちゃったとか、そう言うこと?」)
(絢辻「二重人格者かぁ~、それはオモシロイ解釈だね。でもはずれ~」)
QP:キツイキツイキツイ。
醤油:純一に拒絶された自己のリセットを図ってるんでしょうね。望まれぬ人格と共に、不幸な記憶を葬らんとしてる。
ミシ:人間の心の相補性は二人の人間の間よりも、まず一人の人間の心の中にはたらく。人間の意識的な態度が一面を覆うと、それを補うような傾向が無意識内に形成される。そして、睡眠や飲酒によって自我の統制の弱まったとき、表出する。こうした心の、全体性を回復せんとする傾向の最たる現象こそ二重人格です。絢辻さんのケースでは、他者に嫌われることを厭わず、己の感じる正義のまま行動する第一人格を純一が否定することによって、本音を偽ることで他者から愛される第二人格が台頭してきた。ちょうど純一と出会う前の絢辻さんに戻ったと云うことですね。
QP:嫌だ嫌だ。僕は、前の絢辻さんがイイんです。
醤油:駄駄をこねるな! きもちは同じです。
ミシ:ユングはこのようにある個人の自我が否定し、受け入れ難く感じる傾向の全てを「影」と呼びました。絢辻さんにとっての影とは、第二人格のほうでしょうね。苛烈な義侠心を、あまりにも高尚な精神を、現代人は厄介事の種として厭う。狭量な世界が絢辻さんの第一人格を殺すのです。図に乗った群衆のシュピレヒコールはさながら、レクイエムでしょう。
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(皆で作業しようと誘う絢辻に腕をとられる純一。そのとき、肘が絢辻のむねに当たってしまうものの、以前のように動揺せず、実行委員の仕事を残してると言って立ち去る)
(純一「イマの絢辻さんはカワイイと思うよ。悪くないと思う。クラスのムードも明るくなったし。でも……」)
(OP「君は君のままで。 僕は僕のままで。全てわかりあえたなら~♪」)
ミシ:ああ゛~。
醤油:あ、あ、あ、ああ゛~
QP:う゛ああ゛~。
醤油:君は君のままで!
ミシ:歌詞の流れるタイミング完璧ですね。これをやるために曲を作ったとしか思えません。
QP:この曲を聴くのも最後だと思うと、不思議やな。名残惜しささえ感じる。
ミシ:そう思えるなら、本企画終了後も、自室で聴きましょう?
QP:あ、そっかぁ。でも、十年後か二十年後、また3人で聴こうね。
ミシ:それって契約?
醤油:ううん、約束。
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ミ・醤・QP:優しくなれたのは、君のお蔭~♪
(当日。クリスマスツリーは間に合った。文化祭はちゃんと開催された)
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醤油:花火とは。豪奢ですね。
ミシ:スゴイとゴージャス。合わせてゴイジャス。
醤油:田中ロミオ、お好きなんですね?
ミシ:イルミネーションもピッカピッカや。しかし、この煌びやかさに反し、純一の心情は暗く浮き彫りにされる。
QP:あのてっぺんの星、砕かれませんかね。「とらドラ!」のように。
醤油:竜児……、竜児~! 竜児、竜児、竜児……。
ミシ:勘弁してくれませんか。もう2017年ですよ?
醤・QP:あなたがそれを言うのか。
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(3人組と一つの焼きそばをシェアする絢辻)
QP:あのさぁ、コイツら仲良く焼きそばなんか食べてるけど、違和感なり良心の呵責なり感じひんの? まるで操り人形や。
ミシ:秀でた君主なら、人心掌握もあさめし前ですよ。
醤油:教室の一件は、感情の暴発として処理されてるんでしょうね。女性特有のヒステリーとして。
ミシ:絢辻さんの側は、なんとも無しに3人組を許してるんでしょうね。性悪説を標榜しながら、こころの底では性善説を信じてるような御仁ですから。
QP:尊すぎる。
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(それぞれの文化祭を過ごす生徒達。しかし、純一は賑やかなムードに2年前の翳りを見て、帰宅しようとしてしまう。途中、公園を通りすがると、ライターに火を灯し立ち竦む親友の姿を発見する。放火をするつもりなのだと慌てた純一は、身を挺して止めに入る。純一「考え直せよ!ことしもカノジョが出来なかったからって、放火だなんて! 自棄にならなくても!」)
醤油:コイツは友人を何だと思ってるんだ? あんまりな言草ですよ。
(燃やそうとしてたのは、小学生の頃に貰ったラブレターだと弁解するウメハラ。返事を書かなかった未練をたちきるためだと言う。ウメハラの行動に感じ入るところのある純一)
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(純一「後悔か……。僕、また駄目だったよ。ことしのクリスマスは頑張るとか言ってたくせに、情けないよ」)
ウメハラ「なに言ってんだよ! クリスマスイブはまだ終わってねーだろ! 情けねーって思ってんなら、行動するしかねえんじゃねえのか? 俺みたいに後悔する前によ」
(純一「ありがとう、ウメハラ。お前、イイ奴だな」)
ウメハラ「だろ?」)
(純一「なんでカノジョ出来ないんだろうな?」)
QP:なんででしょうね? 本当に不思議です。
ミシ:旺盛な性欲に起因する、女性への余裕の無さ、デリカシーの欠如あたりの問題かと。
QP:なんでそんなにハッキリと言うんですか? 可哀想でしょう?
ミシ:あっ、イヤ、すみません……。
醤油:このシーン、純一の視点からは、ウメハラがラブレターを燃やす行動と、絢辻が手帳を燃やした行動とが重なって見える。焚火の前でその動機と心情が吐露されることによって、純一はその行動の真意を、過去の自分への未練をたちきらんとした絢辻の覚悟を、はじめて理解する。
QP:あれは、お炊き上げだったんですね。本音を建前で塗り固めたこれまでの自分を、浄化によって天界へ還さんとする。
ミシ:純一を奮立たせるウメハラのはたらきは、まさにトリックスターそのものですね。トリックスターとは、神話や伝承の中で活躍する悪戯者、ペテン師を指し、低次のものと高次のものに分類される。トリックスターは善悪にはさほどこだわらぬため、日常生活では負の価値を構成するものの中に潜む行為の可能性をひき出し得るが、その破壊性が強大過ぎると、古き秩序を壊すのみならず、あらたな建設な可能性まで奪ってしまう。単なる悪戯好きの破壊者である前者は、本編で言うとあのポニテ・ヘアピン・黒髪の3人組に相当しますね。ウメハラはどうしようもなく道化な存在ですが、身を削って純一を応援するその姿は、あらたな秩序や建設をもたらす後者のトリックスターと言えるでしょう。
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(サンタに扮装してお菓子を配って回る絢辻。絢辻「メリークリスマス!」狂喜乱舞する男子生徒達「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」)
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ミ・醤・QP:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! メリークリスマス!
QP:同志諸君。君達のとほうもなく大きな喜びは、身に染みて理解できる。
ミシ:嘆きの天使や。
醤油:人間だって言ってるでしょう?
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(お菓子を子供にも贈ろうとする絢辻だったが、「要らない」と一蹴されてしまう)
ミシ:イノセンスの塊、子どもは感じとってしまうんですよね。絢辻さんの欺瞞を。とり繕った笑みを浮かべるあなたは、サンタなどではありません。
QP:堕天使や。
醤油:だ・か・ら! 人間だって言ってるでしょう?
(Bパート)
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(文化祭は無事終了し、打ち上げをする2-Aの面面。絢辻は相も変わらず、どこか機械的にふるまう)
ミシ:絢辻さん、さきほどから形而上の涙、だばだば流してますよ。大洪水や。
QP:仮面の中涙で溢れ、ふやけた仮面のまた上に仮面被って隠した~♪
醤油:「喜望峰」歌うのやめーや。
ミシ:「スパイラル」のOPですね。懐かしー。
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(空き教室に絢辻を連れ込む純一。無言の純一。教室に戻ろうとした絢辻を背後から抱きしめ、一言。「好きだ」)
ミ・醤・QP:う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? メリークリスマス!
ミシ:あすなろ抱きやね。
醤油:言ってやったぞってしたり顔するの、勘弁してくれませんか。右の拳が疼きます。
QP:メリークリスマスやで、醤油君。おててを下ろして。
(2年前のクリスマスの悲劇。実行委員に立候補した経緯。絢辻の本性に戸惑ったこと。絢辻と仕事をするようになってから、毎日が楽しく充実しており、その内クリスマスへの苦手意識も消えたこと。全てをひっくるめ「識って良かった」と純一は言う)
QP:この男はもう逃亡しません。全てをありのままに受入れ、乗りこえ、伝えるちから、決意がある。
ミシ:黄金の精神や。
醤油:イイ話やなぁ……。
(絢辻「橘君、イマのわたしは嫌い?」)
(純一「嫌いじゃないよ。イマの絢辻さんも好きだよ。でも、僕は前の意地っぱりな絢辻さんも、その前の猫を被っていた絢辻さんも、全部ひっくるめて好きなんだ。だから、いなくなったなんて淋しいこと、言わないでほしい。また僕の至らないところがあったら叱ってほしい」)
綾辻「なんで、なんでそんなこと言うの?」)
ミシ:なんで、なんであなたは純一なの?
醤油:ああ……。
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(純一に掌底を打ち込み、押し倒す絢辻。絢辻「なんなのよ! なんなのよ、あんたは! あんたがあんなことを言うから、だから、あたしは自分を消えたことにして!なのに……」)
ミシ:純一は絢辻さんにもっとうまく立ち回れと言った。王は魂を持ちません。王は統治者としての機能が全てであり、人格は不要とされる。綾辻さんは王となって、クラスを団結せしめ、文化祭を盛況に収めた。そして祭のあと、残ったのは魂を失った抜殻の筈だった。
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(純一「よかった……。僕の好きな綾辻さんが、ちゃんといた……」)
ミ・醤・QP:あああああああああああああああああああああああっ!
醤油:やっと泣くことが出来ましたね。
ミシ:産声ですよ。絢辻詞と言う人間は、他者を必要としてしまう自分を、ようやく認めることが出来たんだ。ハッケン。
QP:ウラガワ。
ミシ:裏の裏は?
醤油:表や……。
QP:コインの裏表は?
醤油:表裏一体や……。
ミシ:ユングは言った。人間にとってのはじめての数は、一ではなくむしろ二であると。一が一である限り人は「数」を意識することなど無く、対立や並置されることで「ニ」の意識が生じてこそ、「一」の概念も生じてくる。絢辻さんは純一と言う「一」を知って、「一」になったんです。
(無人の学校。正面玄関の階段に座り、2人は対話をする)
綾辻「昔の話なんだけどね、ある日、わたしはサンタさんがいないことを知ったの。サンタがいないって知ったわたしは、そのときに決めたの。わたしがサンタになるんだって。ホンモノになれないことはわかっていた。でも、サンタみたいなことなら出来るって考えたの。クリスマスイブ、皆に幸せをプレゼントすること」)
(純一「もしかして、それで創設祭の実行委員に?」)
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(絢辻「子どものころ輝日東高校の創設祭へ遊びに来て、わたし思ったの。この創設祭を自分の手で成功させれば、皆を幸せにできるんじゃないかって。でも駄目ね。皆を幸せにするって目的が、何時の間にか、わたしの満足感を満たすためのものに変わってた……。子どもには、わかっちゃうものなのね。わたしのサンタクロース、大人には評判良かったけど、子どもは懐いてくれなかった」)
(純一「さすがに絢辻さんも、子どもは騙せなかったようだね」)
QP:純一も騙せなかった。
ミシ:童心を有したまま高校生になった男やからね。縁のように無機質にふるまう絢辻さんを、許せなかった。
醤油:怒られるで。
(純一「綾辻さん。まだクリスマスは終わってないよ。来年も再来年も、クリスマスは来る。その度に、皆を幸せにすればイイじゃないか。――だから、僕のことも幸せにしてほしい」)
(絢辻「それは女性から言う台詞でしょう?」)
(純一「駄目かな?」)
(絢辻「駄目じゃないけど……」)
(風が吹く。純一「ああ、髪がくしゃくしゃだ」)
ミシ:くしゃくしゃクシャトリヤ!?
醤油:誰も言ってませんよ。
QP:なに茶化しとんねん。
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(乱れた髪を直す内にキスをする2人。絢辻「わたしも、橘君のこと好きよ。もう絶対に離さない」)
(純一「それって契約?」)
(絢辻「ううん。約束」)
(I Love you from my heart. I Love you forever with you~♪)
QP:ああああああああうわうあうああああうあうああうわうああうう!
ミシ:うあううあううあううあううあうあううあうああああああああああ!
醤油:くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp!
ミシ:完璧や! 完璧な台詞回しと突如流れる第一期OP! これや、これが観たかったんだよ、僕は!
醤油:くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp!
ミシ:うるせえぞ、醤油君! azusaの美声が聴こえなくなるでしょうが!
(純一「イイのかな?」)
(絢辻「イイわよ、これくらい」)
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(学校には秘密のライトアップ。2人だけの聖樹を見上げる絢辻と純一)
醤油:メリークリスマス!
ミシ:メリークリスマス!
QP:メ、メリークリスマス!
醤油:声が小さすぎます! もう一度! メリークリスマス!
ミシ:メリークリスマス!
QP:メリークリスマス!
ミシ:眩き光の前に、裏も表もありません。
醤油:それな! ミシェル君、ほんとそれな!
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QP:そして10年後を描く。これも森島ルートとの対比になってるんですね。
ミシ:娘ができとる……。可愛ええ……。
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(絢辻「ねえ純一、いま幸せ?」純一「もちろんだよ」絢辻「わたしも幸せよ」)
(絢辻「世界中の人達が、きょう、この良き日に幸せでありますように」)
(純一「僕達みたいにね」絢辻「ええ」)
ミシ:ねえ醤油、いま幸せ?
醤油:もちろんだよ。ねえQP、いま幸せ?
QP:もちろんだよ。ねえミシェル、いま幸せ?
ミシ:もちろんだよ!
醤油:世界中の人達が、きょう、この良き日に幸せでありますように。
ミシ:僕達みたいにね。
QP:ええ。
醤油:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!(醤油、失踪)
QP:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!(QP、失踪)
ミシ:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!(ミシェル、失踪)
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(fin)

【1/12】絢辻詞編③

綾辻詞編 第3章「プライド」
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(職員室。作業スケジュールの遅れと過労で倒れた一件を理由に、教師から創設祭の規模縮小を提案される。拒む綾辻
醤油:学校は隙あらば、すぐ祭を縮小しようとする。
ミシ:『氷菓』でも問題になってましたね。
QP:I scream……
ミシ:うわあああああああああああああああああああああっ!
QP:そんなこんなでOPです。
(OP)
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(西日に照らされた創設祭実行委員本部。綾辻は怒りを露わにして純一に愚痴を言う。綾辻「まったく、屈辱よ。屈辱だわ。このあたしが呼び出されて注意を受けるなんて!」)
醤油:もう純一の前では憚ること無しに、ふるまうんですね。
ミシ:おぉう、純一が癇癪を起こす愛娘を宥める父親のようだ。慈愛に満ちた表情をしておる。
醤油:メインステージで使うライトを探しに来た下級生にも難なく応じてましたし、純一君、有能になりつつあります。
ミシ:ところで、この下級生、めぐり先輩に似てません?
醤油:後輩なのに先輩とは、これ如何に。
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QP:あ、純一君、綾辻さんから資材倉庫の鍵を任されとる。信頼の証ですね。
ミシ:こころの鍵を譲渡やね。
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綾辻の作ってきた弁当を摘まみ、これからの指針を話し合う2人。作業ペースを補うため、人員を増やす案に難色を示す綾辻であったが、純一の説得でしぶしぶ承諾する)
QP:お弁当を作ってくるって、綾辻さんのキャラからして違和感を感じるのですが、どうでしょう? 昼食を一緒に採るための建前だとしても、わざわざ作る必要はありませんよね。
ミシ:綾辻さんも言ってたでしょう? 犬が芸をしたらご褒美をとらせるものだって。ペットへの餌やり感覚なんですよ。純一がきらきらした瞳で尻尾をふってくるから邪険にしづらく、絆されてしまってる。
醤油:不器用なんですよね。距離の詰めかたが。
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QP:しかし、このお弁当。一体何割が冷凍食品なのでしょうか。
醤油:全部ホームメイドに決まってるでしょう、馬鹿野郎。
ミシ:からあげ、ウィンナー、ハンバーグ、プチトマト。子どもの喜びそうな品目を詰め込んだお弁当、お子さまランチです。そもそも純一の好みをさほど把握しておらぬだろうし、また自らの嫌うメニューを作るとも思えませんから、綾辻さんの好きな食べものなんでしょう。
QP:味覚が子どものままなんですね。イノセントやわぁ。
醤油:便利な言葉やな、それ。
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(楽しそうにする2人を遠巻きに眺めるクラスメートの3人)
醤油:悪意の象徴ですね。
QP:右の子の棒演技、イイ味出してますね。
ミシ: 悪意なき悪意をふりまくド畜生です。
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(無事クラスメートの協力を得た綾辻だったが、それを快く思わなかった件の3人がごねはじめる)
ポニテ「あ~あ、やってらんない」ヘアピン「本当。何でわたしたちが、こんなことしなくちゃならないの~?」黒髪「あの2人が委員やるって、自分から立候補したくせに~」ヘアピン「こっちに迷惑かけないで欲しいよね~」ポニテ「2人でイチャイチャするのに忙しいんだよ、きっと。あたし達見ちゃったんだよね~。綾辻さんと橘君が昼休みに仲良くお弁当食べてるの」ヘアピン「うんうん」)
QP:弁当一緒に食べる程度、許したってや。僻んでるのか?
醤油:チープすぎます。中学生。否、へたしたら小学生ですよ、これ。
綾辻「何か、問題でもあった?」)
ポニテ「クリスマスツリーが中止になるって聞いたけど、本当? 去年よりハデな創設祭の計画を立てて、それがうまく行きそうにないからって、今更皆をてつだわせるって、どう言うつもり? 成功したら、実行委員長である綾辻さんの手柄にでもするつもりかしら? 随分と都合が良すぎない? スケジュールが遅れてるのは、誰かさんが男子とイチャイチャしてるせいでしょう? わたし聞いたよ。いつも2人きりで仕事してるって。カレシカノジョみたいにさ」)
ミシ:邪悪を孕んだダミ声です。
醤油:スキャンダラスを取り沙汰して攻撃してますけど、むしろ進行の遅れのほうを責めるべきだと思うのですが。論点を違ってますよ。
QP:何もせず不平不満を口にする愚かな平民なんですよ。
ミシ:有能な統治者はどんな時代も、愚かな民衆に苦しめられ、その心身を削られる。ああ、もう、愚者ぐしゃグシャトリヤ。
醤油:ミシェル君。言わんとしてることは理解できるが、それ武人階級や。
綾辻「橘君には、わたしの補佐的な仕事をして貰ってるから、そう言う誤解を与えてしまうのかもしれないけど、べつに仕事以外のことをしてる訳じゃないわ」)
(ヘアピン「そんなの信用できない!」黒髪「うんうん」)
(薫「ちょっとっ。アンタ達ねえ!」ポニテ「棚町さんは黙ってて」)
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(純一「誤解だよ。綾辻さんは手際の悪い僕に色色教えてくれてるだけで……」ポニテ「あんたにも聞いてない!」なぜか突き飛ばされる純一)
ポニテ「どうなの綾辻さん。なんとか言いなさいよ」ヘアピン「やっば。もしかして泣かせちゃったぁ~?」)
QP:あははは。醜悪すぎるやろ。
ミシ:これもまた奪われようとしてる瞬間なんでしょうね。己の素を出すことのできる純一の隣と言うポジションを、第三者によって理不尽に剥奪されんとしてる。
醤油:ようやく獲得した第二の家庭を失ってしまう。それゆえ綾辻さんは、全てを擲ってでも闘う。
QP:自身はともかく、飼犬まで貶されたら、そりゃあ怒るで。
ミシ:しかし、もう飼犬でもなくなったんですよね。この事件を契機に、純一は綾辻にとって愛し頼るべき伴侶となります。
醤油:激昂した綾辻さんは、衆目の前で、純一を脅迫してまで守ろうとしてきた優等生の仮面をぬぎ捨ててしまう。ここで三度、綾辻は退路をたたれる。沸き上がる激情をグッと嚥下し、穏便にすませるすべもあった。むしろ、これまではそうしてきた筈です。しかし、綾辻は、本件に関してはそうしなかった。合理性と正義のこころ・義憤を秤に載せ、後戻りのできぬ後者を貴ぶことを選んだ。
ミシ:黄金の精神や。
QP:ジョジョ4部、出来良かったですよね。OPもハイセンスで。
ミシ:BREAK DOWN, BREAK DOWN!
醤油:Great Days。名曲です。LISTEN。
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綾辻「あははははははは、あ~あ。馬鹿馬鹿しい。あなたたちの言ってることは、創設祭に関係のないことばかりじゃない。なにそれ。もしかして嫉妬? イイコト教えてあげる。クリスマスツリーは中止にならないし、スケジュールだって去年に比べて充分に間に合うペースなの。皆にてつだって貰うのはそれを確実にするため。信用できないなら、幾らでも資料を見せてあげるわよ。いるのよねぇ~。あなた達みたいに根も葉もない噂を耳にして文句ばかり言う人。何にもできないくせに他人を見下して優越感に浸るなんて、くっだらないわね。言返したかったら、どうぞ? でも、あなた達に何ができるの? 何をやってきたの? 何か一つでも、あたしに勝てるところがある? 恥って言葉を知ってるなら、自分の人生をふり返ってからにしてよね。さあ! 何か言いたいことがあったら、どうぞ? 何もないの? だったら最初からツマラナイこと言ってないで、手だけ動かしてればイイのよ。どうせあなた達には、それしかできないんだから」)
ミ・醤・QP:FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!
ミシ:カタルシス、しゅんごいね?
醤油:イイ……。こんな専制君主になら、身を委ねてもイイ……。
ミシ:Shining Justice 芽生えて~♪
(中略)
醤油:1999 Bizarre Summer~♪
QP:巡る勇気で生きる街~♪
ミ・醤・QP:Great Days~♪
QP:BREAK DOWN, BREAK DOWN - LET'S GO!
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(放課後。純一と連れ立って神社に寄った綾辻は、黒革の手帳を燃やす。綾辻「わたしには、もう必要のないもの。わたしには、もっと大事なものがあるってわかったの」)
醤油:はじまりの神社で、関係性を更新します。
ミシ:侍従→婚姻ですね。
QP:綾辻さんのこころを開くのに、もう鍵は不要なんです。その権利は、とっくに純一に託されてる。
ミシ:王権神授やね。
QP:違うぞ。
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綾辻「あなたを、わたしのものにします」純一「はぁっ!?」)
ミ・醤・QP:はぁっ!?
綾辻「あれ? ちょっとハショリ過ぎたかしら。あ、あなたといると嬉しいし、楽しいの! その、自分でも不思議なくらい……。出来れば、ずっと一緒にいたい。あなたが側にいてくれれば十分。でも、それを強制はできない。だからっ、わたしをあげる! その代わり、あなたがいる日常をわたしに頂戴!」)
(純一「僕で良ければ、喜んで……」)
綾辻「そう。じゃあ、これは契約の証」)
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ミシ:ズキュウウウン! 最高や。
醤油:神前で誓うんですよ? これが詞、詔なんやね。
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(鼻血を出してしまう綾辻。純一「綾辻さんでも興奮するんだね」)
醤油:はじめての体験に、エラーが出てますね。
QP:そりゃあ鼻血の一つや二つ出ますよ。森島と違って人間なんですから。
ミシ:クソッ。性の喜びを知りやがって!
醤油:なんか激昂しながら、踊り狂ってる人おるんやけど……。
QP:否、これ喜んでるんですよ。
ミシ:生の喜びを知りやがって!
醤油:ああ、Joy of Lifeのほうね。
(Bパート)
ミシ:ふぅ。濃密なAパートでしたね。
醤油:しかし、関係が進展を見せた、ここからが本番とも言えます。緊褌一番で臨みましょう。
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(体育の授業中。男子が校庭10週を走る間、女子はドッヂボールを行う。綾辻は内野で一人にされ、甚ぶられる)
QP:あははははははは。皆で寄ってたかってボールをぶつけるって、幾らなんでもマッチョすぎるでしょう? 何時の時代ですか。
ミシ:90年代ですよ(怒)。何時だって理不尽のほうからやって来て、ヒロインを害さんとする。
醤油:綾辻さんは人間ですから、それら困難を乗り越えなくてはなりません。
ミシ:人の世は無情です。
ポニテ「ほらほら、どうしたのぉ? もうへばっちゃったぁ? さあ、棚町さん、やっちゃって」薫「わたし、パス。だってこのチーム、ツマンナイんだもん。と言うことで、わたし、こっちのチームに入るわね。ほら、恵子! あんたもこっち来なさーい! これで3人ね」)
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(純一「いや、4人だよ」)
ミ・醤・QP:あははははははははははは! カッコイイ~!
(純一「課題の10週、もう走り終わっちゃったんだよね。退屈だから、少し混ぜて貰おうと思って」)
QP:これは、漢やで。
醤油:しっかり10週走り終えてから、やって来るのがエライ!
ミシ:果たすべき責務を果たしてから、事態を収拾する。ルールに厳粛な綾辻さんを尊重しての行動ですよね。急ぎ向うことは出来た。しかし、やるべきことを蔑ろにして差し伸べられた手を、綾辻さんはとろうとはせんでしょう。純一君は、綾辻さんのものになると言った契約を正しく理解し、遵守してるんですね。
QP:その見返りとして、こころの底からの信頼と笑顔が与えられる。
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ミ・醤・QP:可愛ええなぁ……。
(2-Aの連中はボイコットを起こし、作業は薫・田中・ウメハラ・純一・綾辻の5人で進められる。放課後。無人の教室で、綾辻は一人葛藤する。綾辻「大丈夫。わたしは平気。まだ頑張れる」)
(見兼ねた純一は、もう一度クラスメイトに応援を頼もうと提案するが、綾辻は頑なに拒む。綾辻「絶対に嫌!」)
(純一「どうしたんだよ。そんなの、らしくないよ」)
綾辻「らしくない?」)
(純一「そうだよ。綾辻さんは何時ももっと堂堂としてて、こんな状況を幾らだってうまくきり抜けられる人じゃないか。ううん。本当はこんな状況になる前にもっと……」)
綾辻「らしくないって、何!? あなたが、わたしの何をわかってるの!?」)
(純一「わかってるよ。綾辻さんが、創設祭に一生懸命なのはわかってるよ。だからさ、皆に謝って、もう一度てつだって貰えるよう頼もう? それが嫌なら、出来る範囲で少しイベントを減らすとかさ」)
(ビンタ)
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綾辻「なんで、なんでわかってるのに、そんなこと言うの……」)
QP:あ~あ、泣かせちゃった。「らしさ」って言葉は、綾辻さんにとって重く響くでしょうね。これまで両親や周囲の人間に「綾辻詞」はこうあるべきであると言う烙印を押され、遂には自分を新世界へ連れ出してくれる筈であったヒーローまでもが、その言葉を口にするんですから。キッツイですよ。
ミシ:「本当はこんな状況になる前にもっと」って言葉も、極悪ですよ。教室で退路をたたれとき、賢明な綾辻さんならこうした悪状況に陥ってしまうことは簡単に予見できた。しかし、それでも艱難辛苦に耐え、純一の名誉を尊重することを選んだ。その凄絶な覚悟を、純一は軽んじた。すくなくとも、綾辻さんにはそう聞こえた筈です。
醤油:キッツイなぁ……。
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(翌日。登校した純一が目にした光景は、泣き落としで3人組との関係を修復し、再びクラスの協力を得た綾辻の姿であった。綾辻「おはよう、橘君。聞いて聞いて。皆、創設祭の準備てつだってくれるって。皆優しいね~。わたし、このクラスになれて良かった~」)
ミ・醤・QP:…………。
(放課後、校舎裏。綾辻に事情を問詰める純一)
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綾辻「あ、もしかして、あの子のことを言ってるのかな。意固地になって、一人で創設祭の準備をなんとか間に合わせようとしてたあの子。でも、もうあなたの知ってるあの子はいなくなっちゃったの。お蔭で皆協力してくれることになったし、これで創設祭の大成功、間違いなしだね」)
(ED)
ミ・醤・QP:……これ、どうすんねん……。

【1/11】絢辻詞編②

絢辻詞編 第2章「ウラガワ」

ミシ:ハッピーニューイヤー!
醤油:読者は誤魔化せても、僕らは誤魔化されませんよ。
QP:年内の更新の筈が、新年に食込んでるやん。なにしてたん?
ミシ:ちょっと「つむの一突き」を食らってしまって、休眠状態に……。ハ、ハッピーニューイヤー!
醤油:ハッピーニューイヤー!
QP:ハッピーニューイヤー!
ミ・醤・QP:……。
QP:レビュー始めましょう。
醤油:1話「ハッケン」ときて、2話「ウラガワ」ですか。Discovery。
QP:ん? 2話で絢辻さんの「ウラガワ」に焦点を当てるなら、1話では何を発見したんですか?
醤油:落としものでしょう。
ミシ:創設祭実行委員に立候補すること、手帳を拾うこと。これら2つが絢辻さんと懇意になるための前提条件、言わば「鍵」です。2話以降は、純一が1話で獲得したこの鍵を使って、絢辻部屋の扉を開くフェイズに移行します。
QP:生来のふてぶてしさを発揮して、ずんずんと土足で立ち入って行くんですね。
ミシ:主人公にのみ許された特権やね。
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(前回のつづき。絢辻から逃れようとして、むねを揉んでしまう純一)
醤油:ひゅ~。イイ仕事してますね~。少年、君は一億分の一のラッキーボーイだ。
ミシ:あくまでも不幸な事故ですよ。騒ぎ立てるものではありません。
QP:しかし、事実として「πタッチ」してるではありませんか。不公平ですよ。
ミシ:あなたのルサンチマンなど知ったことか。不慮の事故です。
醤油:とは言え、確かに「接触」が起こり、純一は絢辻の輪郭にふれた。これは重要な予兆です。
ミシ:肉体的な接触を皮きりに、精神的な距離さえも詰まってゆくことを仄めかしてる。
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(絢辻「これから少し付き合って、く・れ・る?」)
ミシ:このジト目堪りませんね。好きです。大好きだ。
醤油:ご褒美でしかありません。
(OP)
(Aパート。純一を詰問する絢辻。「書き殴ったアレ」までは見られて無かったことが発覚し、狼狽する)
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ミシ:むふふ。(深読みしちゃった絢辻さん可愛e)
QP:先ほど、こころの中で「深読みしちゃった絢辻さん可愛e」と考えましたね、ミシェル君?
ミシ:なっ。なぜ、わかったのですか、QP先生。
QP:簡単な話です。僕も同じきもちだからですよ、ミシェル君。
ミシ:せ、先生!
醤油:茶番はさておき、このやりとり、神社の前で行われるんですよね。
ミシ:聖域。神に誓って嘘は吐くなよ、と脅してるんですね。これはなにも純一に限った話ではなく、自らにも適用される。秘密を守ると言う利己的な目的のために同級生を一人屠ってしまうことへの、絢辻さんなりの良心の呵責・懺悔でもあるんですね。
醤油:せめて神の目のとどく範囲で罪をおかし、自らを戒める。
QP:「残念だわ。クラスメイトが一人減っちゃうなんて」と言う絢辻さんの台詞、純一のことですか? てっきり、自分のことだと思ったんですが。
ミシ:ああ、不祥事が露見して自主的な転校ですか。そちらの可能性もありそうですね。そうすると、神社の前を選んだのは、背負った重荷からの解放ですか。やはり懺悔ですね。
醤油:ところで明示されてませんけど、「書き殴ったアレ」とは何なんでしょうか?
QP:裏の自分を示してしまうもの、暴言やら愚痴やらではありませんか?
ミシ:しかし、その程度で学校に通えなくなりますかね? これは、もっとヤバイもの。たとえば……
醤油:たとえば、出生の秘密。
ミシ:もしくは、これまで親がやってきた悪事の数数あたりでしょうか。それとも、セクシャルアビューズ……。
醤油:コラッ。その可能性は薫編で検討したでしょう?
QP:なんにせよ、真相は闇の中です。
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(猫を被ってることがバレてしまった絢辻。純一の口封じにかかる。絢辻「さあ、復唱して。僕は何も見ていません。絢辻さんは裏表のない素敵な人です」)
ミシ:絢辻さんは裏表のない素敵な人です!
醤油:絢辻さんは裏表のない素敵な人です!
QP:絢辻さんは裏表のない素敵な人です!
醤油:伝説のシーンですね。
QP:はぁ~、これ、ごっつきもちええわ。
ミシ:実際に復唱してみると、不思議な高揚感と充足感が得られますよね。この感情こそ、絶対君主に恭順することでもたらされる絶大な安息感。
QP:この言葉、流行らせましょう。きっと世界から貧困と戦争が消え失せますよ。
醤油:本当にそうなったら、どれほど幸せだろうか。
ミシ:この世は地獄です。
(夜。炬燵で項垂れる純一。純一「美也。世の中には知らぬほうがイイものもあるんだな」)
ミシ:ああ、この台詞、六大の「識」を臭わせますね。
醤油:「識」とは「五大の性質がわかる」こと、ですね。
ミシ:六大とは、物質的原理であるところの五大に、精神的原理であるところの識大をくわえ、宇宙の実体を表したものです。ここで重要となるのは、五大と識大が「主・客」の二元的な概念ではなく、常に融合し一体化した存在である点です。宇宙に存在する全ての存在は、性質の全く異なる要素(五大)からなっており、それらの要素が識大と一体不離、完全に融合した瞬間にはじめて、全く次元の異なる存在として宇宙に顕現する。単なる要素を、存在(或は生命)たらしめるこのはたらきは「六大能生」とされ、通常の認識では混沌として到底理解しえぬと空海は語る。
醤油:六大からどのようにして存在が現れるかは、三密瑜伽の状態下でしか解らぬ密号なんですね。
ミシ:これまで純一は、五大の性質をそれぞれ大きく宿した5人のアマガミ達との交流を経て、それらへの理解を深めてきました。しかし、図らずして、これらは三密瑜伽へ到達するための修行の道でもあった。純一はまず、アマガミ達(五大)に近づき、その本性を識った。そして、宇宙のはたらきを表す三密は、身密・口密・意密。純一は、5人のアマガミ達へ、こころで好きと言って(好意の自覚)、言葉で好きと言って(好意の告白)、身体で好きと言った(ベッドイン)。最後には、純一なる「識大」とアマガミ達が一体不離となって、これまでとは異なる、あらたな純一、あらたなヒロインが誕生する。すなわち、『アマガミSS』は「六大能生」の実態を映像化した作品だったのです。
QP:なるほど。道理で理解に苦しむシーンが散見されるはずや。純一君の奇行は、三密瑜伽の状態にあるゆえに生じた特異なものなんやね。その意図や、実際の現象を理解するには、観客の僕らも一緒になってさとりを開かなくてはならんと。
醤油:もしかして、新興宗教の配付するPVの話してます?
QP:怒られるで。
ミシ:ともかく。絢辻さんは「識」のアマガミであり、主人公の純一もまたその性質を色濃く有す。「知らぬほうが幸せだった」などと、真実を知って両目を潰したオイディプス王のような言葉を口にしてるものの、2人の識が混然一体となった末、生命の生じる話や、これは。
(翌日。約束をやぶり、昨日の出来事をウメハラに相談しようとする純一。その瞬間を絢辻に見咎められ、お仕置きされる。連日こき使われ、憔悴する純一)
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醤油:絢辻の側も、秘密を「識られた」ことで純一と接さざるを得なくなった。ここで再び退路をたたれるんですね。
QP:しかし、この男はどうして直ぐ禁を犯そうとするのか。一日も保ってませんよ。
ミシ:ところが、当の絢辻さん。フンと鼻を鳴らしながら、どことなく嬉しそうなんですよね。不出来な生徒に接する感じで。もちろん、純一の愚行にサディズムを刺激された面もあるでしょうが。
醤油:これも、絢辻攻略に要される正解の行動なんでしょうね。意図的かどうかはさておき、馬鹿な自分には遠慮は要らんと、素のままで酷使してくれと、アピールした次第となった。
ミシ:三密瑜伽へ至った者は、自ずと正解を導くと言うことなんでしょう。まるでアンサートーカー(答えを出す者)や。
QP:東大の入試試験も満点で一発合格ですね。
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(放課後。森島の中途断念したペンキ塗をこなす絢辻。純一によって缶コーヒーの差し入れがされる)
醤油:どう見ても落書きでしょう、これ。
ミシ:神の遺した壁画ですよ。らんちき騒ぎの後始末をさせられるのは、どんなときも人間です。
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(純一「絢辻さんってさ、どうしてそんなに創設祭の準備を頑張るの?」)
(絢辻「決まってるじゃない。自分のためよ。作業が遅れれば、実行委員長であるわたしの評価に傷がつくわ。そんなの絶対許せないじゃない? あたしは完璧を求めてるの。それに、もともとしきるのは好きだし、クラス委員とか実行委員とかやっておくと、推薦入試のとき有利になるのよ」)
(純一「打算的だ……」)
醤油:絢辻の言葉はまぎれもなく本音ですが、全部ではありません。幾つかの真実を語って、己のナイーブな一面を隠すための建前とする。
ミシ:あえて露悪的な言回しすることで、その奥にある一番の動機、「皆を幸せにする」と言ったプリミティブな感情をさとらせぬようにしてるんですね。まあ、照れ隠しです。
QP:善行をなしたのに、そのことを親から秘匿しようとする子どものようだ。
ミシ:可愛ええなあ。
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(絢辻「橘君って変な人ね。だって、わたしの秘密を知ってる訳でしょう? わたしだったら、そんな人には絶対に近づかないわ。何を考えているかも分からないし、近づくことに何の得も見出せないもの。なのに、橘君は自分から手伝うとか言出したり、差し入れしてくれたりして、ねえ、どうして?」)
(純一「どうしてと言われても……、楽しいからかな」)
(絢辻「楽しい?」)
(純一「うん。絢辻さん手際も良いし、一緒にやってて結構楽しいよ。それに毎日忙しいけどその分だけ充実してると言うか、実行委員の仕事も面白くなってきたし」)
(絢辻「そう。ふーん……」)
ミシ:ああ、ここの「ふーん……」堪りませんなあ。
QP:内心、ものすごく喜んでそうですよね。素の自分を、曲りなりにも受入れてくれてる訳ですから。
ミシ:絢辻編は、絢辻さんから純一への問掛けが頻繁になされる。そして、それらに純一が逐一応えてゆくことで、2人の「識」が達成されると云うことです。
醤油:ここ、絢辻さんにしては非効率なペンキの塗り方をしてます。それはもちろん、帰宅を拒んで作業時間を延ばさんとする魂胆もあるんですが、背後で純一が語る言葉に意識の鉾先を奪われ、作業がおろそかになってしまってるともとれます。
QP:鬼の霍乱やな。
ミシ:まさしく。このあと過労で倒れますからね。
QP:え、まじで? 大変だ!
ミシ:ええ、大変なんです。
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(てを貸そうかと提案する純一であったが、「いいから早く帰って寝なさい!」と逆に健康を案じられてしまう。翌日。薫から、絢辻が過労で倒れたことを知らされる純一であった)
(Bパート)
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(見舞品を携え、絢辻家を目指す純一)
醤油:バナナ! とマカ。
QP:……マラ?
ミ・醤:は?
QP:すみませんでした……。
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(家の付近で、絢辻姉に出くわす)
醤油:DOG=GOD。
ミシ:ちゃんと犬が出てきてくれたことに、安堵さえ覚えます。神。
QP:重症ですね。バナナ食べます?
ミシ:頂きましょう。うん、美味だ。
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(絢辻姉によって絢辻の部屋に招かれる純一。ベッドで寝たふりを装う絢辻。縁の退室する音を確認してから、身体を起こしタオルで汗をぬぐう。しかし、その姿を予期せぬ客人、純一に目撃されてしまう)
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ミシ:このタオルの置き方、おかしくありません? 普通、前髪の上からではなく、額に接するよう置くでしょう。やはり実姉に苛められてるんでしょうか。う~ん、前髪が濡れてキモチワルイよぉ、って。
醤油:誰かが階段を上ってくる音を察知し、慌てて額にタオルを載せたのではありませんか。狸寝入りの一環ですよ。ところで純一君、また袋小路に迷込んでますね。
QP:資材倉庫では風によって扉が閉まりましたが、次は縁によって退路が断たれる。第三者のはたらきで再び、言葉を交わさざるを得ぬ密室が作られたと言うことです。
醤油:どんどん踏み込んで行きます。もう諦めて会話するしかありません。
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(絢辻「お見舞、ありがとう。女の子を相手に、バナナと栄養ドリンクって言うのも、どうかと思うけど」)
ミシ:絢辻さんはプラグマティックですから、こうした直截的なセンスを好みそうなものですけどね。逆に、ここで洒落たものを差し入れたら、「お前どこの女に入れ知恵された?」と無駄な不信感を与えてしまうでしょう。
(絢辻「あなたって本当に変な人ね」)
(純一「え、そうかな? でも、絢辻さんのお姉さんも個性的だよね。なんと言うかポワポワっとしてると言うか、浮世離れしてると言うか。雰囲気も絢辻さんと全然違うし」)
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(絢辻「ええ~?」)
ミ・醤・QP:ええ~?
ミシ:だから純一君、君はどうしてここで姉の話をもち出すんだ! ほら、もう、絢辻さん機嫌を損ねてふて寝してしまったじゃありませんか。せっかく、こころ温まるシーンだったと言うのに……。
QP:台無しですよ。
醤油:姉と比較されるのが嫌なんでしょうね。否、むしろ純一が姉に興味をもったことのほうが許せなかったのでしょうか。
ミシ:おそらく、その両方でしょう。姉への劣等感と、純一への未分化な好意がごちゃ混ぜになった複雑な状態ではありませんか?
QP:女心と秋のなんちゃら。
ミシ:冬です。
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(絢辻邸を後にする純一。家の前の芝生で、犬にスポーツドリンクを遣ろうとする縁に見つかる。縁「ねえ、最近の野良犬って、人に懐かないように教育とかされてるのかな。全然懐いてくれないんだよね」)
QP:変ですよ、この女。犬に遣ろうとした飲料を、純一に飲ませようとするな。
ミシ:本来は妹のために買ってきたスポーツドリンクですが、絢辻さんはさておき、犬も純一もそれを飲むことを拒む。ここで、犬=純一が成り立ちます。すなわち、己に懐かなかった純一に関し「お前も妹に教育された、妹の犬なのね」と暗に非難してる。
QP:うわっ、陰湿ですね。どこか森島先輩と重なる面があると思ってたんですが。
ミシ:たしかに、容姿と自由奔放な性格は似通ってます。しかし、縁には犬は懐きません。縁の発露する全能性や、純真さ、イノセンスは全て本人によって計算され、演出されたものです。縁は神ではなく、あくまで神のようにふるまう人間なんですよ。
醤油:おそらく家庭のしがらみから、絢辻は優等生を演じ、縁は自由を演じた。しかし、なぜ絢辻は縁をあそこまで忌み嫌うのでしょうか。同族嫌悪ともまた異なる感じですが。
ミシ:両親から寄せられる期待を放棄して自由を獲得した姉への羨望、もしくは「演じる」自分を意識させられる鏡として忌避してるなどの理由が考えられますね。縁は己を欺き、イノセントな感情を忘れてしまったか失くしてしまった。ちょうど、七咲編で英雄性を失った純一を髣髴とさせますね。しかし、絢辻さんは「皆を幸せにする」と言った無垢な望み、イノセンスを未だ有するために、姉と己が採用した渡世術に疑念を嗅ぎとってしまう。演じることで、全てが嘘になってしまう未来への恐れが、姉への嫌悪感・攻撃性となって表出する。
QP:縁の評価、ちょっと辛辣過ぎませんか?
ミシ:在りかたの問題ですよ。単に、縁の在りかたが絢辻さんの想定する幸福へと繋がるものではなかったと言う話です。他意はありません。本当ですよ?
醤油:全国の縁ファンの皆さま、ご意見・反駁、お待ちしております。
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(翌日。復帰した絢辻のもとへ、森島と塚原がやって来てミス・サンタコンテストへの出場を表明する。下卑た妄想を膨らまさんとする純一だったが、絢辻に2度足を踏みつけられ、阻止される)
醤油:イイっすねぇ。絢辻がこんな干渉する人間、はじめてでしょう。
ミシ:オーキードーキー!
QP:オーキードーキー!
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(放課後。悲鳴を聞き、校舎裏へ駆けつける純一。右足を濡らした絢辻の姿を認める)
(純一「絢辻さん、なんで足が濡れてるの?」)
醤油:なんでやと思う?
(絢辻「かけられたの」)
(純一「え?」
(絢辻「おしっこ、ひっかけられたのよ!」)
(純一「ええっ? だ、誰にっ!?」)
(絢辻「馬鹿ッ! 犬に決まってるでしょ!……校内で高そうな犬を見つけたから、何か使い道があるんじゃないかと思って捕まえようとしたの。そしたら妙に懐かれて……」)
QP:嬉ションですね。
ミシ:この犬、縁に懐かなかったあの犬ですよ。絢辻さんには懐きます。どれほど建前で覆われようとも、絢辻さんの深奥に秘められたイノセンスを嗅ぎとって失禁しちゃったんですね。
醤油:たしかに、DOG=純一だ。ただ、この犬は絢辻さんの思惑通りにならぬ存在として描かれる。
QP:わんわん。
ミシ:くぅ~ん。
醤油:君達まで犬にならなくてもイイんですよ。
(水道まで絢辻をおぶる純一。はずかしがる絢辻。絢辻「皆さ~ん、ここに変態がいますよ~!」)
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ミシ:うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! これが観たかったんですよ、これが!
QP:むふふ。
醤油:しゅんごい。
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ミシ:ご覧よ、この満ち足りた表情。与えられなかった父性を感じてます。
醤油:やはり家庭の問題へと帰着するんですね。甘えてますわ。絢辻の防壁がどんどん崩れてゆく。
(夜。純一を想う絢辻)
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(絢辻「橘君、本当に不思議な人……」)
(絢辻「わたしとは違う価値観を持っているのかな? ちょっと気になるかも」)
(絢辻「あれっ? そう言えば、わたしが誰かを気にするなんて、もしかしてはじめてじゃない? ふふふ、変なの」)
ミシ:もしかして、詞、お気に入り?
醤油:なんで先に言うんですか!
QP:ふざけんな!
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(絢辻「もしかして、詞、お気に入り?」)
(絢辻「……もうっ。なに考えてるんだろう、わたし。ああ~、橘君のせいで勉強する時間が減ってるじゃない! ん~っ、もう、アッタマきたぁ! 今度からもっと苛めてやるんだからぁっ! ……ふふふ。覚悟してなさいよぉ~」)
ミシ:うわあああああああああああああああああああああ!
醤油:うわああああああああああああああああああああああ!
QP:うわあああああああああああああああああああああああああ!
醤油:絢辻さん、好き!
QP:僕もです。……あれ、ミシェル君、なんかズボン濡れてません?
ミシ:……洩らしちゃったかも……。
醤油:ええ~?
QP:嬉ションですね。
(ED)

【12/29】裏アドベントカレンダー最終日。絢辻詞編①

絢辻詞編 第1章「ハッケン」

(日の当たらぬ路地裏。あさ露が額をじっとりと濡らす不快感に、醤油は目を覚ます)
醤油:……ここは……、どこだ……?
(霞のかかった頭をふり、周囲を確認する醤油。しかし、どれほど目を凝らしてみても、ここがどこなのか、どうした経緯で惨憺たる現状に陥ったのか、見当もつかなかった)
醤油:僕の名前は醤油、それは覚えてる……。
(好きな食べものは、ケチャップを沢山盛ったハンバーグ。太宰治をこころから愛し、休日は池袋のスタバでソイラテを愉しむのが唯一の趣味……。しかし、それ以上のこととなると、とんと記憶が無かった。とほうに暮れる醤油。やるかたなく、自身が愛用するモスグリーン色のコートを見つめる。左ポケットの端にできた真っ黒な染みは、己の不安を象徴するかのようだった)
醤油:……このままでは、寒さにやられてしまう。とにかく動き、情報を集めなくては……。
(ぼろぼろの身体をひき摺って、無人の街を徘徊する醤油。中華料理屋、バー、イタリアン。飲食店が立ち並ぶのを鑑みるに、どうやらここは繁華街であるらしかった)
醤油:昨晩、僕は泥酔して潰れたのか? しかし、それにしては吐く息にアルコール臭さが感じられず、思考もクリアだ……。
(見知らぬ道を延延と往く。やがて、モーニングセットの看板を出す喫茶店を発見した)
醤油:あさ早くから営業とは、たすかる。資本主義に感謝だな。幸運なことに金もあるし、ひとまず、ここで暖をとろう。
(おずおずと中に入る。暖かみのあるペールトーンの照明。年季を感じさせつつも、清潔感をたもったインテリア。エリック・サティの「ジムノペディ」も、人間が安らぐのに最適な音量で、なかなかどうして洒落た空間であった。なにより暖房が良く利かしてあるのがイイ。大きな安堵に背中を押され、カウンターの一番奥に位置どると、おそらく主人であろうダンディな中年男性に出迎えられる)
主人:本日はようこそ、喫茶「ブーゲンビリア」へ。ご注文はどうなされますか?
醤油:モーニングセットで。
主人:かしこまりました。
(てもち無沙汰になった醤油は、それとなく周囲に目を遣る。不思議なことに、客は醤油一人であった。ほど無くして、商品がサーブされる。焼きたてのロールパンは言うまでもなく、プリップリッの目玉焼きにパリッパリッのベーコンのコントラストが絶品であった。サラダもしゃきしゃきだ。特に、エチオピアの芳醇な土壌を薫らせるコーヒーは、醤油の失われた体温を身体の芯から補填した。あまりにも完璧なもてなしに、醤油の目から涙が溢れる)
醤油:ぐすっ。美味え……、美味えよ、マスター。
主人:お褒めにあずかり、光栄です。……失礼ですが、なにかおツライことでも?
(醤油は、目のまえの男に、嗚咽を洩らしながら吐露した。あさ、路地裏で目を覚ましたこと。記憶を失ったこと。寒さを堪え、延延と歩んだこと。本当は、直ぐにでも泣き出しそうなほど不安だったこと。その全てを、主人は黙って聞き入れた)
主人:それは、さぞかしおツラかったでしょう。心中お察し致します。
醤油:……同情してくれるのか、マスター? ありがとう……。
主人:礼には及びませんよ。わたしも若かりし頃、もう随分と昔ですが、道に迷ったことがありました。あたりは真っ暗闇で、足もとも不確か。もうこれ以上、一歩も前に進めそうになかった。しかし、そのとき、声が聞こえたんです。
醤油:声?
主人:ええ、声です。はじめ、その声は暗闇の中、どこか遠くから自分を呼ぶようでした。しかし、よくよく耳を澄ましてみると、どうにも直ぐ間近、それも己の内部から発せられてるようなんです。
醤油:自己から発せられる声……。
主人:そう。答えは全て「ここ」に用意されてる。
(人差し指で項垂れる醤油のむなもと、ハートを指差す主人)
主人:そのことを知覚できたとき、世界を覆う暗闇は嘘のように晴れ、目のまえに己の進むべき道があらわれました。お客さん、あなたはその声を聞くことのできる人間です。
醤油:…………。
主人:お帰りはあちらの扉になります。お代は要りません。本日は12/29。クリスマスはとうに過ぎたとは言え、あなたにはやり残したことがある筈だ。
(主人に案内され、奥の扉をくぐる醤油。醤油が最後に見たものは、親指を立てニッコリと笑う主人の姿であった)
主人:グッドラック。あなたのゆく末に、幸おおからんことを。
(再び目を覚ました醤油が見たものは、ミシェル家の見慣れた天井であった)
醤油:ん、んぅ……。
ミシ:……醤油君っ! 醤油っ君! 見てくれ、QP君! 醤油君が意識をとり戻したようだぞ!
醤油:こ、ここは……?
QP:覚えてませんか? 醤油君、アマガミレビューの途中に飛んだんですよ。
醤油:そうか。そうだった。僕は「空」には至れなかったのか。
QP:失神したあと、なかなか目を覚まさなくて随分と困ったんですよ。生命活動自体には問題無さそうだったため、ほうって置きましたが。
醤油:酷くありません?
ミシ:梨穂子の「つむの一突き」を食らったのだったら、自然に目覚めるまで安置しておくべきだと考えたんですよ。途中、なにやら魘されてましたが、悪夢でも見ましたか?
醤油:……導かれたんです。老賢人(オールドワイズマン)に。
ミシ:え?
醤油:……なんでもありません。それより、クリスマスは過ぎてしまったんですよね?
QP:残念ながら、もう12/29です。僕達は、5日目・絢辻詞編まで、辿りつくことは出来ませんでした。
醤油:やりましょう。
QP:え?
醤油:やりましょうよ。絢辻詞編。一旦「やる」と言った企画はどんな形であれ、最後までやり遂げるべきだ。
ミシ:……そうですね。やりましょう! 2016年をしめくくるんだ!
QP:よう言うた! それでこそ漢や!
ミ・醤・QP:やるぞおおおおおおおおおおお!
(醤油、再起。レビュー、再開)
醤油:あ、ちなみに僕が落ちてる間、2人はナニをしてたんですか?
ミシ:ナニではありませんよ、醤油君。ニコ生で「ごちうさ」の一挙を観てたんです。
QP:あ^~こころがぴょんぴょんするんじゃ^~。
醤油:Oh……(もしかして夢の中に出てきた喫茶店、ラビッドハウスだったんじゃ……)
閑話休題

ミシ:と言う顛末で、アマガミSSレビュー5日目・絢辻詞編です。
QP:ラスボスですね。
醤油:最高のレビューにしましょう。話はXデーの1年後、去年の創設祭から始まります。
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(創設祭に足を運ぶも、門の前で帰ろうと踵を返す純一。ウメハラにひき留められる)
ミシ:お前が来るのをずっと待ってたんだぜ~。
醤油:ホモでしょう、これ。
ミシ:純一の傷が癒えておらぬだろうと踏んで、故意におちゃらけてるんです。親友の鑑ですよ。
(純一の複雑な内心を慮ったウメハラ。自宅にて、2人で聖夜を過ごすことを提案する)
(OP)
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(来年こそは恋人を作ってやろうと誓う2人)
醤油:美しき友情ですね。
ミシ:ここのゲーム機、90’sと言う設定を踏まえ、しっかりプレステ1なんですよね。
QP:これでは「アマガミ」はプレイできませんね。
ミシ:「ときメモ2」は遊べますから、大丈夫です。
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(回想を終え、現在。HR。創設祭実行委員に立候補する絢辻。その姿に鼓舞され、純一もまた名乗りを上げる。やすみ時間、ウメハラと薫に「似合わぬことをしたな?」と詰問される純一。「クリスマスを頑張ってみようと思った。実行委員になれば、嫌でも当日来るはめになる」と答える)
ミシ:純一自ら、トラウマを解消すべき問題として、克己にあたらんとするのは、絢辻編にのみ見られる出発点なんですよね。
QP:他のルートですと、ヒロインとの「偶然」の遭遇に左右されたのち、はじめて「主体性」が問題となりますからね。
醤油:絢辻編が最終章に位置されるゆえんです。
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(Bパート。純一は早速、絢辻にリードされ実行委員の仕事に臨む。業務の一環として資材倉庫をチェックしに行く2人であったが、閉じ込められ出られなくなってしまう)
ミシ:ここら辺、能面のような笑みで誤魔化してるものの、その実、絢辻さんは苛立ってます。 一人で十分こなせる仕事に、無能な純一が首を突っ込んできた。無知蒙昧な隣人を頼らぬ基本姿勢を貫く絢辻さんにとっては、憤懣ものでしょう。
醤油:隣人を必要とせぬのではなくて、不確定な他者に頼る己を許せんのですよ。責任感が強すぎるんです。完璧主義者なんですね。
QP:ここの「扉を閉めるな」は重要ですよね。純一との密室を拒む。部屋は「こころ」を象徴する。さしずめ「わたしのこころの鍵は、あなたには渡しませんよ」ってところですか。
ミシ:資材倉庫は絢辻さんの仕事の領域・テリトリーである。一種のプライベート空間に、信頼できぬ男を招き入れ、蓋をすることに忌避感を覚えてるんですね。
醤油:しかし、窓から入り込んだ「風」によって扉は閉まってしまう。確保した退路が絶たれるワケです。これは純一が実行委員に立候補することで、クリスマスを逃れる退路を絶った構造と類似します。
ミシ:自発的にしろ、外圧的にしろ「退路を絶つ」ことで進展を見せる話なのか。お蔭で、絢辻さんは嫌忌してた筈の純一と会話せざるを得なくなった。やっぱりね、相互理解は共同作業からはじまるんですよ。
QP:とりあえず同じ時間・空間を共有することが鍵なんです。
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(純一「どうして絢辻さんは実行委員をやることにしたの?」)
(絢辻「だって素敵なことでしょう? 皆を楽しませる御テツダイが出来るなんて」)
醤油:難解ですよ、この台詞は。
ミシ:優等生を装ったふうにもとれますが、偽らざる本音なんでしょうね。
醤油:裏の裏となってます。
ミシ:権謀術策を駆使する絢辻さんですが、それらは全て絢辻さんなりの正義のためであって、ふとしたおりに、根本にある善意が滲み出てくるんですよね。
QP:おおっ、マキャベリズムや。
醤油:ところで、絢辻さんのエプロン姿、可愛くありません?
ミシ:ポニーテールもgoodです。青色のシュシュが堪りません。
(絢辻「橘君は、どうして実行委員になったの?」)
(純一「すこし頑張ってみようと思ったんだ。これまでちょっと消極的だったから、自分を変えてみようと思って。これは、その第一歩」)
ミシ:絢辻さんは、変わろうとする者には些か甘くなるんですよね。優しそうな瞳をしてます。
醤油:しかし、純一が「なんとなく」でした「好きな音楽は?」と言う質問には答えを濁してますよ。
QP:「なんとなく」だからでしょう。大した覚悟もなく踏み込んでくる輩に、絢辻さんはそうやすやすと自らの情報を開示しません。
ミシ:身持ちの堅ぇ女ですこと。
醤油:しかし、そこがイイ。
ミ・QP:同感です。
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(クラス演劇の衣装を借りにきた美也が、タイミング良く資材倉庫にやってくる。救出される2人)
醤油:因幡の白兎とワニザメですよ。
ミシ:『古事記』ですね。露骨やなぁ。
QP:ん? どう云うことですか?
ミシ:イヤね、ちょっと先の話になってしまうんですが、4話で件の演劇のシーンが一瞬映る。そのとき、美也は借りたワニザメの衣装なのに、紗江ちゃんの側は不可解なことにバニーガール姿なんですよ。それはなぜか。最後に並べたワニザメに毛皮を、衣装を剥ぎとられてしまったゆえと推測できるんです。
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(下校を共にする絢辻と純一。姉に出くわすと途端、絢辻は表情を曇らせる)
醤油:めちゃくちゃ不機嫌そうですね。
(姉「詞ちゃんの姉、絢辻縁です」)
醤・QP:ゆかり~ん?
ミシ:世界一カワイイよ!
醤油:ミシェル君って、王国民だったの?
QP:イヤ、これ単なるスタンドプレーですよ。僕、ミシェル君の好きな声優が照井春佳さんだってこと、実は知ってるんです。
ミシ:あわわわわわ……。
QP:ほらね?
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(翌日。クレーマーに責められる純一。堪らず、プールで補習の監修をする絢辻に救援を求めに行く。そこには楽園があった)
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ミシ:なんやこれ。
QP:視聴者サービスです。
醤油:装置ですよ。装置。濡れ場を挟みたかったのと、絢辻さん不在では実務がなり立たぬと言う描写、浪漫と実利を両立させたcoolなシーンです。
ミシ:これ、冬の話ですよ? 安直な露出で、季節感が損なわれてしまうんです。勘弁してくれよ。
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(放課後。手帳を落としたことにきづく絢辻と、それを拾う純一。「中を見たか」と問う絢辻へ「誰のものか確認するために見た」と答える純一。絢辻「そう。見ちゃったんだ」)
(ED)
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ミシ:曲名「嘆きの天使」って。90’sまんまですか。
醤油:むかつくなぁ。
QP:神になれなかった女。
ミシ:森島先輩との対比ですね。
醤油:絢辻詞。詞って名前もね、「司」ではなく「詞」。「言」がつきます。「神の言葉」なんですね。
ミシ:神そのものではなく、あくまで神から発せられたものであると。
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醤油:なんやこの羽はぁ?
ミシ:天から贈られた霊性ですよ。ギフトです。
QP:ああ。クリスマスやね。

【12/29】2016年漫トロ忘年会プレゼント交換結果

どうもQPです。今は卒論書いてます。
今年も漫トロでは忘年会がありました。23日の予約が取れなかったらしく、結局例年通り12/24に開催。
というわけでプレゼント交換の結果を書きます。

☆★☆漫画交換とは☆★☆
漫トロの忘年会では,各人が適当に漫画を持ち寄り,くじを引いて同じ番号の人と漫画を交換する会が行われるのだ!
恒例行事となっており,忘年会といえばこれ!という感じである.(コピペ)(コピペ)

参加者
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1回生:白黒 ハヤブサ わさぴ びたみん(遅刻) ふゆ
2回生:醤油 ピラタス りるっと
4回生:森のくまぞー まるた 抹茶 ユーカリ QP
5回生:黒鷺 オグリビー
O B :ふわふわ

計 16人
(3回生はどこ……?)


1組目 ふわふわ⇔QP
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ふわふわ→

人間仮免中

人間仮免中

最近続編が出ました。
人間仮免中つづき (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)


QP→

Cl 1 / 菜園モノクローム

Cl 1 / 菜園モノクローム

小僧の寿し (マーガレットコミックス)

小僧の寿し (マーガレットコミックス)

イオンモール桂川に行ったら「クリスマスにおすすめの覆面漫画本」として中身が見えない状態で『小僧の寿し』が売られてました。面白い企画だと思い購入。『菜園モノクローム』は水谷フーカの最高傑作の読み切り入りなんだって。



2組目 まるた⇔ふゆ
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まるた→

売野機子の最新作。表紙が売野機子っぽくねえな。


ふゆ→

回游の森

回游の森

ジャケ買いだそうで。



3組目 抹茶⇔ハヤブサ
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抹茶→

(全巻セット)
4回生の卒業に向けた在庫処分かな?

ハヤブサ

面白いやつな。


4組目 りるっと⇔白黒
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りるっと→

NON VIRGIN (WANIMAGAZINE COMIC SPECIAL)

NON VIRGIN (WANIMAGAZINE COMIC SPECIAL)

俺もほC。


白黒→

咲シリーズ初心者向けっぽい。


5組目 黒鷺⇔醤油
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黒鷺→

新装版。新しい読み切りが一本追加。

醤油→

野原ひろし 昼メシの流儀(1) (アクションコミックス)

野原ひろし 昼メシの流儀(1) (アクションコミックス)

こづれ行楽!  1 (芳文社コミックス)

こづれ行楽! 1 (芳文社コミックス)

飯漫画と醤油漫画。


6組目 オグリビー⇔ピラタス
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オグリビー→

『カレチ』が漫画館になかったそうで同作者から。

ピラタス→

(漫画じゃ)ないです。多分漫画の方が面白いと思うんですけど(名推理)


7組目 森のくまぞー⇔ユーカリ⇔わさぴ
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森のくまぞー→ユーカリ

くまぞーは毎年パワーがあるプレゼントを贈るなあ。

ユーカリ→わさぴ

クトゥルフ×姉もの。

わさぴ→森のくまぞー

プ~ねこ(6) (アフタヌーンKC)

プ~ねこ(6) (アフタヌーンKC)

 6  巻  


以上です。
やっぱ漫トロの漫画交換は安定感あるな。

アドベントカレンダーまとめも年内に投稿します。

<番外編>
ぽち小屋。のファンなので人間仮免中』を1回生に読んでほしかったのでさらにQPとわさぴで漫画を交換しました。
『姉なるもの』⇦Trade⇨『人間仮免中
やったぜ。

【ステマ】「この世界の片隅に」を観ましょう

コミケの季節ですね。宣伝です。

 

11月12日公開の映画、今年一番と話題の「この世界の片隅に」まだ観てないんですか?

世界人類が観るべきこの傑作を「まだ観てな〜〜〜い」とあなたが宣う理由知ってますよ。近所でやってる映画館がないんですよね。でも大丈夫、1月7日からどどーんと上映館が増えます。これも公開初期からもてはやし騒いだファンの功績です。(公式サイト 劇場情報|Theaterpage Master )あなたの街も要チェックや!

アナと雪の女王」すらやらなかった鳥取市唯一の映画館・鳥取シネマですら1月14日から封切りです。市内唯一のTSUTAYAがこないだ潰れた文化レベル超ど底辺の鳥取市民ですらありつけるんですから、硫黄島在住の方とかでないかぎり観ない理由はないですね、観ましょうね。

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この世界の片隅に」は、昭和20年前後、太平洋戦争末期の広島県呉市を舞台にしたすずさん↑(cv能年玲奈)のお話です。ハイ!「地味でつまんなそう」「戦争ものとか暗くて辛いだけ」「タレント声優はクソ」って思って敬遠してる人たくさんいるでしょう!全ッ然ちがうんだよ!!!全然全然世だよ!!!心が体を追い越すんだよ!頼むから観て!それから言ってくれ!

 

この世界の片隅に」は便宜上「戦争映画」と呼ばれてしまうかもしれない。しかし、この映画が主軸に置いているテーマは決してそれ一つでは絞りきれない。人ひとりの人生を一言で表せないのと同じ、いくつもの糸が絡みあってすずさんという女性の人生を紡いでいる。キラキラしてたりごわごわしてたり切れかけてたり色あせたりと数え切れない糸が人生を彩っている。「戦争」はそのうちの一本なんだ。それだけだ。この映画を観るとそれらの数え切れない糸が深くこころに押し寄せてまだ名前のわからない底に埋まっていた感情を縫い合わせようとしてくる。だから鑑賞後みんな言葉が見つからず途方にくれるんだろう。それでいい。すぐに答えを探してはいけない。縫いかけの感情を抱えたままそれぞれの片隅を守っていこう。

f:id:mantropy:20161228162846p:plainこうの史代夕凪の街 桜の国」帯より (神煽り)

 

作品というものは受け手がいて初めて成立します。ぜひ、「この世界の片隅に」を観て、あなただけの片隅をみつけてください。観た人の数だけこの映画は意味を持ちます。もしこころが震えたら、その震えを隣の人に伝えてみてください。

 

今年の 京大11月祭(NF)では漫トロで「この世界の片隅に」ブースを作りました。

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関連書籍読み放題! 映画感想コーナーも設けました。映画公開10日目とかだったので知名度もまだまだな時期でしたが熱意ある人たちが絶賛の跡を残してくださいました。クラウドファンディング出資者の方もメッセージカード置いていってくださいました。ありがとうございました。

 

漫画読みサークル 京大漫トロピーは映画「この世界の片隅に」を応援しています。

京大漫トロピー選定「新入生に勧めたい漫画30選」でもオススメしています(p136に載っています)。

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最新号vol.17では誌面のあちこちに「この世界の片隅に」の文字列が隠されています。

探してみよう!えっ、探したいのはやまやまだけど、今手元にvol.17がないって?

 

京大漫トロピーはコミックマーケット91の3日目12/31(土)に東V-35aにて会誌販売を行います!2016年のおもしろ漫画がまるわかり!漫トロアキネーター、こち亀全巻採点、それ町解析など個人企画も大ボリューム!!!過去の会誌もあるよ!

 

これは買うっきゃないですね!コミケ3日目、東V35aにて会員がお待ちしています!

 

【12/27】漫画で他人の気持ちを知ろう

こんばんは。日付ガバ黒部です。
アドベントカレンダーも3回目。2年半もいると思うと頭がおかしくなりそうです。
アドカは自分語りをする場だそうなのでします。

テーマは煩悩。自らを苦しめる欲望。
私は他人の考えていることを知りたい欲求が強くあります。最近はそれに躓いています。
他人と自分との違いを知ると世界が広がったように感じて嬉しくなりますよね。コミュニケーションの方法として、会話が好きです。一昨年ぐらいに習得しました。しかし現在、他人とのコミュニケーションは思うように取れていません。原因は会話以外の方法で人の気持ちを判断できないことにある、と意見を頂いたことがあります。それは言語化してもらわないとわからないということで、無責任だ、と。表情を読めと言われましたが、これがなかなか難しい。共感出来たら必要ない、とも。コミュニケーションって難しいんだなあ。いろんな人といろんな話をしたいけれども、技術が足りなくてできない。何もできなくとも自分と違う考え方や生き方を知って学びたい。できればたくさん。どうしよう…。

漫画を読みましょう。

漫画って、こっちが一言も話さなくとも吹き出しやモノローグで考えてることを教えてくれるんです。ストーリー仕立てで。表情もあるしわかりやすいし、なんなら感情に音もつく。
すごーい!
ヤマシタトモコ先生は懇切丁寧に全部言ってくれます。ポエム風味で味付けもしてくれています。

収録 『MUD』

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(つまらない毎日を送る主人公が塾の担任講師の性癖を知り恋に落ちるという青春ラブストーリー。)

特にこの作品はきっかけも理屈も勘違いも感情も全部言ってくれます。モノローグが多すぎるのは漫画が下手だと取られがちですが、題材が突飛なものであればモノローグで説明するのも有効だと思います。特に想像力が貧しい人間にとってはあるだけでとてもわかりやすく感じます。更に比喩表現はまんま描いてくれています。

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ますますわかりやす~い!
こういった表現があるのはヤマシタトモコ作品ではこの作品しかないように思います。『さんかく窓の外側は夜』では心霊現象として表現されています。流行りなのか手抜きなのかはよくわかりません。

オムニバスやキャラ紹介漫画が私は好きなのですが、好きな理由はここにあります。いろんなキャラのいろんな考え方があってそれぞれが動き、時にぶつかり合う。キャラが多いのでぶつかる頻度が高くて飽きない。キャラの記号化が顕著で理解しやすい。面白いかどうかは別の話です。私にとっては参考書なのです。ちょっと言い過ぎではあります。


最近は学びを得て、考えてることが一切書いていない、流れやキャラの心情を読まないと難しい漫画も好きになってきました。

森薫拾遺集 (ビームコミックス)

森薫拾遺集 (ビームコミックス)

収録 森薫福島聡『すみれの花』

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(立場の違う2人が仲良くなりたい話。作者談)

この作品は考える吹き出しはおろか、感情を表現するオノマトペすらありません。もちろんモノローグも。何漫画なのか、何度も読み返して、たまにはググってカンニングしてようやくわかりかけてきました。この漫画の中には他人を理解したいという気持ちを思った二人が出てきます。感情移入もしやすくなっちゃった。最初はそれにも気付きませんでした。なんとなくでも二人の感情に触れられた時の喜びはひとしおです。人間になれそう!



漫画から人の気持ちを知って学んだことはたくさんありますが、それでも代用品にしかなり得ません。漫画のキャラクターは架空のものです。人間は記号的なものでなくもっと複雑だと、それを理解することが他人の考えを理解することだと、最近また教えられてしまいました。どうにか言葉以外で人の気持ちがわかるようになりたいです。
しかしなんでわかんないんだろう。全然タイトルを回収できない。利己的だからダメなのかなあ。うーん、やっぱり難しいので今はひっくり返って『危ノーマル女子』でも読みます。おやすみなさ~い。

危ノーマル系女子(1) (メテオCOMICS)

危ノーマル系女子(1) (メテオCOMICS)